「あ、オーフェリアさん」
その女性は彼女のその格好に驚いていた。というより斑鳩も驚いていた。なにせ、現れたのがプリシラ・ウルサイスだったからだ。
「悪いわねプリシラさん、制服持って来てもらって」
「いえ、これくらい何ともないですよ、はい、制服です」
「ありがとう」
そういうと彼女は制服を受け取り、着替え始めるので斑鳩は目を逸らすと
「あら棗斑鳩、見ててもいいわよ?」
「いや、いいさ」
「そう」
にしても、見てないとみていないでこれまた興奮するのはなぜだろうと思いながらいる斑鳩。
「あっ、オーフェリアさん、きつくないですか?」
「まぁ、胸元が少しきついけど気になる程度だし、暫く戦闘しない予定だからいいわ」
布擦れの音が妙に生々しい。それから数分も経たずに
「さて、着替え終わったわよ」
そういうと斑鳩は彼女の方を向く。
「――」
斑鳩は息を呑んだ。夕陽の光がオーフェリアを後ろから照らしており彼女の綺麗な銀髪と雪のような白い肌、そして雰囲気の変わった紅の瞳が凄絶な間での美しさを際立たせていた。まさに後光が照らしているといったところだ。そんな中、彼女はこちらに視線を向け
「私はオーフェリア、オーフェリア・ランドルーフェン。レヴォルフ学園の第一位《
「…マジかよ」
此処に来て見えない事の重大さに気付く斑鳩。そんな中
「んじゃあ、私は姉のことがあるのでここでお暇しますね」
「えぇ、ありがとうプリシラ、このお礼はいずれ精神的に、ね?」
「はい」
駆け足でこの場を去るプリシラ。そして、この場で再び二人きりになる。
彼女は斑鳩のすぐ隣に座りこんでくる。同時に、正に今落ちる寸前の夕陽が二人を照らす
「…にしても、綺麗ね――こんなにも綺麗だなんてね」
うっすらと彼女の頬に涙が流れる。斑鳩はハンカチを出して渡そうとしたが、彼女はその前にこちらに向き。
「ねぇ、棗斑鳩」
「ん?なんだい?」
「少しわがまま言っていい?」
「わがまま?」
「えぇ」
そういうと彼女は顔を赤らめる。と同時に言葉を紡ぐ
「その……貴方のことを名前で呼んでいい?それと私のことも名前で呼んでほしいなって」
「あぁ、いいよ」
若干デジャブを感じるが別段断る理由もない斑鳩。彼女はベンチから立ち躍る様な足取りで斑鳩の前に出て、涙ながらもくるりと振り向き
「――ありがとう、本当にありがとう」
今までの強気な彼女と違う。まさに懸命にそれにこちらに向けて一心不乱に伝えられる言葉だった。斑鳩は思わず立ち上がり、彼女に駆け寄り、いつの間にか彼女を抱きしめる。
「――運命を…私の運命を変えてくれてありがとう」
真っ赤な夕陽が二人を照らしていた。そして、うっすらと彼女の涙が夕陽に照らされ煌いた。
数時間後
辺りはすっかり夜になっていた。斑鳩は彼女が泣いている間に、念のためクローディアと寮監に連絡を入れておいた。
「落ち着いたか?」
「ん、えぇ」
一しきり泣いたオーフェリアを半ば介抱していた斑鳩。
「(にしても、俺もこの世界に来てから本当に変わっちまったな…)」
いま、やっている行動を昔の自分に見せたらなんといわれるのだろうなと思いながら彼女の肩を抱いていると
「これが人間の温もりなのね…温かいわ」
「…ん、あぁ、とりあえず立てるか?」
「えぇ」
そういうと、軽く彼女の手を引いて立ち上がらせる。
「んじゃあ、オーフェリアが出来なかったことでもしに行こうか」
「…?」
そういうと斑鳩は近くの自販機まで一緒に歩いていく。
「なんか飲みたいものある?」
「いいの?」
「あぁ」
「…そうね、コーヒーでもいただこうかしら?」
「オッケー、まぁ、高校生にならではの行動その1、制服で自販機での買い食いってところかな?」
そういうと、彼女に缶コーヒーを渡して二人で飲む。
「あぁ落ち着くわ」
「だろ」
そういうといつの間にか肩と肩が触れ合っていた。