ソード・オブ・ジ・アスタリスク   作:有栖川アリシア

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作者の一言
・ESが終わらないよー(/_<。)ビェェン


疾風が止まる時

「お願いします、先輩、ここで先輩が引いてくださればそれで収まります、そうしてください」

「その場合のキミは?」

「え?」

「キミはどうなるのさ?」

「わたしは、私のことは別にいいのです、どうにもならないことですから」

「そうなると、尚更引く気にはならないんだよな、これが」

きっぱりという斑鳩。

 

「(ま、どうにもならないよりかは、マシかな)」

チラリと鋼一郎の方を一瞥し、彼女に視線を戻す。内心、助けた女の子に決闘を挑まれるなど本末転倒だがと思いつつ、斑鳩は決闘のための距離をバックステップで取る。すると、彼女の腰元から現れたのは、煌式武装ではなく真剣だ。それも日本刀だった。

 

「(ふぅーん)」

剣気とでも言うべき鋭く冷たい圧力。しかし、何かが物足りない。

 

「――我、棗斑鳩は汝刀藤綺凛の申請を受諾する」

「参ります!!」

綺凛が短くいった瞬間に、一気に斑鳩に迫り込む。尋常ではない速度だが、斑鳩にとっては速いとしか言えない速度だ。

 

「っと」

それを最低限のステップで避け、反撃を食らわす。

 

「――棗先輩、お強いです、びっくりしました」

「それはどうも」

純粋な賞賛の声の彼女だが、こんなところで終わるほど"絶天"は安くない。

 

「(《絶天》と闘って、無事に帰れると思うなよ)」

そういうと、一陣の風が吹く。先ほどから、綺凛の攻撃はぎりぎりのところで躱される。

 

「(どうして、当たらないんですか!?)」

鋼一郎がいらいらし始める。同時に、斑鳩はその動きを加速させていく。とはいえいまだに、彼女と打ちあっていない。近づいて来ては離れ、離れれば近づきというスタンスで動き回っていく。

綺凛の振るった白刃を紙一重で交わす斑鳩。斑鳩は体制を崩そうとしてくる綺凛に対して様々な方向からの同時偏向射撃を行う。

 

「――ッ!?」

今の攻撃で完全に動きを乱される綺凛。斑鳩は、彼女に距離を詰め、上段からエリシュデータを振り下ろす。そして、そこから、剣技連携で見え見えの7連撃を繰り出す。それを防いだ綺凛は、片手で強引に跳ね起きる。とはいえ、そんなことはお見通しだ。とはいえ、このまま、彼女いや、後ろのあの男性を完膚なきまでに叩き潰すには、少し"魅せなければならない"。

 

「――んじゃあ、ほんの少し本気を見せるとするとしよう」

そういうと、こんな夏の炎天下の下なのにも関わらず、その場にいたすべての生徒、そして鋼一郎の背中に気味の悪い寒気が走る。

 

「綺凛、気を付けろ――そいつ、何をしでかすかわからないぞ」

「はい!!」

何か察したのか、綺凛は斑鳩から自分に向けられるうすら寒いさ濃密な殺気が向けられていることを理解する。同時に、距離を取るが

 

「――え」

斑鳩は一瞬にして、綺凛の懐に潜りこみ、何も無い左手にスカーレッド・ファブニールを煌めかせ

 

「――サラマンド・バタリオン(炎龍の大征伐)

剣からそ龍の形の一閃が放たれる。そして、それが彼女の校章にヒットし

 

 

 

決闘決着(エンドオブデュエル)!!勝者(ウィナー)棗斑鳩!!」

唐突に響き渡る機械音声。

 

 

 

「そんな…」

「うそ…でしょ?」

「なんだよ、あの出鱈目な力は……」

周囲の生徒たちから呆れたといった声が上がる。そんな中、斑鳩は鋼一郎の前に立つ。そして、彼にエリュシデータ、剣を突き付ける。

 

「あんたの道具である刀藤綺凛と計画は私が潰させてもらったぞ――それと、あんたはこの界隈の学生を舐めすぎだ」

そういうと、鋼一郎に向けて殺気を向ける。そして、言葉を続ける斑鳩

 

「貴様は、世界を知れ――界龍の総代はこんなレベルじゃないぞ」

「き、貴様!!私に手を上げれば貴様は――」

おびえた表情の彼だが、斑鳩から見れば見苦しいだけではない。

 

「現実が見えていないようだな刀藤鋼一郎、あんたと綺凛ちゃんの関係に口を挟む気はない、が――あんたが作った『刀藤綺凛』というブランドは、あんた一人のものではないだろう」

斑鳩の視線の先の鋼一郎は、何かを察していた。

 

「彼女は、この学園の財産だ――そしてそれはあんたのいる『統合企業財体』の財産だろ、それにあんたの私情で汚そうというなら、クローディアがだまっていないと思うが」

「…うぐ」

「それに、あんたのプランはさっきも言った通りだが、この俺が潰させてもたった、彼女のことはほおっておいて、あんた自身のことでも考えな」

そういうと、そのままふらつきながらその場を後に去ろうとした時だった。

 

「お、伯父様!!」

綺凛はその背中に向けて呼びかけた。彼は足を止めたが、振り返らない。

 

「私は伯父様に感謝しています、それは嘘じゃありません、今まで……本当にありがとうございました!!」

真摯に丁寧に頭を下げる。そして、彼はその場を去って行く。そんな中

 

 

「――完敗です、棗先輩」

「貴方もだよ・・・刀藤綺凛さん」

そういうと、綺凛はその場を去って行った。

 

 

 

「(ま、少しやらかしたかな?)」

その姿を見送る斑鳩であった。

 


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