「おめでとうレスター、退院したんだね」
「あぁ、おめでとう」
斑鳩は綾斗と一緒に祝辞を述べる。
「……まあな、あれくらいの傷どうってことねぇよ」
「で、今日はどうしたのさ?沙々宮と一緒だなんて」
「あぁ、このちんちくりんは途中で拾っただけだ、なんか知らねぇが道に迷ってたみたいだし、どうせ行く場所が同じだったからな、まぁ、ついでだ」
「誰がちんちくりんか、でも連れてきてもらって助かった、ありがとう」
「(おう、これは地獄耳ってやつだな」
沙々宮が不意にこちらへ顔を向け、そう言ったら再びユリスと不毛な口論を再開し始める。
「そういや、行く場所が同じだったって、レスタ―も俺たちに何か用が?」
「ん、そうだな、それは気になるな」
するとレスターは眉間のしわを深めて、少し視線を反らす。
「あー……なんだ、その、サイラスの件なんだが…一応、アレだ、まぁ、結果的にとはいえ――助けてもらったことには違いねぇようだから、な、その、礼っつーか、ケジメっつーか、まぁ、それをだな」
そして彼はそこまで言うと小さく頭を下げ
「と、とにかく世話になった!それだけだ!邪魔したな!」
「わっ!ちょ、ちょっと待ってよレスター!」
言うだけ言うレスターを引き留める綾斗。
「そうだ!ちょうど、タッグ戦の訓練相手を探していたところだったんだ、レスタ―、良かったら手伝ってくれないか?紗夜も一緒に?」
「訓練相手だと?」
「う?」
レスターと紗夜とユリスが揃って綾斗に視線を向ける。
「こ、これ綾斗!何を勝手に…!」
「いんや、いいんじゃないのか?今まで三人でやっていたが、本当の実力を二人は知らないからな――」
「本当の実力?」
「そういうことだ、今まで俺が負けたことなかっただろ、技術とコンビネーションは上達しているが、とはいえ、俺に二本目の剣を抜かせていないからな、正確な実力を知らないと策を講じれないだろう」
「…確かに、そうだな」
ユリスを言いくるめ、再度二人を見ると沙々宮はあっさりとうなずく
「私は別に構わない」
「…しかたねぇな」
そういう頬をかきながら言うレスターであった。
「ほぉ、これはまた新鮮なものだな」
フィールドの端っこでレスター&沙々宮とユリス&綾斗の戦いを見ている斑鳩。
「どうしたどうした!その程度かよ!!」
果敢に綾斗を攻め立てるレスター。しかし、レスターとの間に複数の火球が割って入った。
「ちっ、いいところで」
「ふぅ…助かったよユリス」
「くそっ!相変らずちょこまかと…おい、ちんちくりん!てめぇもちゃんと仕事をしやが――」
そういうとレスターが背後の紗夜へと視線をやってそのまま固まった。いや、ユリスも綾斗もだ。
「…仕事なら今からやる」
見れば構えていたのは銃というより砲だ。しかものその砲身は優に二メートルを超えている。
「三十九式煌型
緊張感のない声で紗夜っがそうつぶやいた途端、低い唸りを上げて光の奔流が迸った。
「ちょっ、待て!」
うろたえるようなレスターの声を聞きつつ、綾斗は身を伏せる。
「(――ッ!?)」
その光の柱は、一気に壁に向かっていくが、このままでは壁が一気に吹き飛ばされかねないので
「ったく、手間をかけさせやがって!!」
そういうと、沙々宮の砲身の直線状に立ち、壁と光線の間に瞬間的に身を入れ、右手をひるかえし、
「プロテクション!!ホーリー・ランス!!」
斑鳩は光線の柱から壁を守ように障壁を展開させ、相殺できるレベルの光線をぶつけ合う。
「――っと、間一髪かな」
掃射が止み、振り返ってみるが、何とか無傷と言ったところだった。
「沙々宮、やりすぎだ」
「…まさか、防ぐなんて」
その場にいた綾斗とエリスとレスターは二つの意味で驚いていた。一つは、まぎれもなく沙々宮のその攻撃。そして、もう一つはそれから完璧に守った斑鳩の実力だ。
「――間一髪、ってところですね」
聞き覚えのあるゆったりとした声が響いた。聞き覚えがあると思ったらこの学園の生徒会長であるクローディアであった。
「このトレーニングルームはあなた方《冒頭の十二人》に貸し出しているだけで、学園の設備であることはお忘れなく」
「……わかっている、次からは気を付ける」
「なら、結構」
そういうと面白い人物がやって来た。
「いやー、でもびっくりしたよねえ、カミラ、まさかいきなり壁が吹っ飛ぶなんてさー変わっているって意味じゃうちも相当なもんだと思ってたけど、やっぱり他所は他所で面白いわねー」
「あぁ、もう、あまりはしゃぐんじゃないエルネスタ、頼むからこれ以上面倒をかけないでくれないか」
現れたのは、アルルカント・アカデミーの生徒だった。