疫病神うずまきトグロ   作:GGアライグマ

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前話と前々話の順番を入れ換え、さらに一つ前の「嵐の前に」における初の発言を少し変えました。
今話では日向ヒアシと日向ヒザシの考えを書いてみました。
「痛みを受け入れよ」の内容が難解らしく不評でしたが、自分なりに説明してみました。よろしくお願いします。


木の葉の日向にて三強

 ヒアシにとって、父は恐怖であり、憧れであり、また超えなければならない存在だった。父が亡くなったと知った時は、さまざまな喪失感に包まれた。まだ自分は父を超えていない。見返していない。親孝行をしていない。なのに……。

 また、父の死はヒアシが日向当主となる契機でもあった。彼の双子の弟は正式に分家となり、額に呪印が刻まれた。その時の、世界を憎むような、それでいて諦めているような、弟の顔。印象的だったが、ヒアシも自分の感情の整理に手一杯だったから、気のきいたことはできなかった。

 

 しかしその数日後、日向宗家に自来也が訪れる。彼はヒアシとヒザシを呼び、彼等の父の死について謝った。そして、彼が見た範囲での真相を語った。

 

「お主らの父は、九尾にも負けておらなんだ。あのままなら死ぬことはなかったじゃろう。しかし、わしの弟子であるうずまきトグロが、お主ら父に攻撃を始めてしまったのじゃ。不意打ちじゃった。体勢を崩されたお主らの父は、九尾の攻撃によって。そして、仇であるトグロも、『心の自由は縛れない』と言って自殺してしもうた」

「それは……」

「なんと……」

 

 ヒアシにとっても、ヒザシにとっても衝撃だった。

 父を殺した犯人に対する憎しみ、というレベルの話ではない。日向の慣例、宗家と分家というシステムが起こした悲劇だったからだ。それを理解できぬ二人ではない。

 ヒアシは、恐怖に苛まれることになった。共に産まれ、共に修行し、喜びも悲しみも分かち合ってきた弟。彼がもし自分に反旗を翻したら、どうなってしまうのか。自分は弟を殺さなくてはならないのか。それとも弟に殺されるべきなのか。本当は自分より弟の方がちょっとだけ優秀だ。しかし、数分早く産まれただけの自分が宗家という支配権を手にし、弟には奴隷の証が刻まれた。その悲しみ、やるせなさは、呪いを刻んだあの日の表情に見たばかりだ。

 自分は弟に、分家に何ができるのか。どうするべきなのか。ヒアシは毎日悩まされることになった。

 

 対して、ヒザシには2つの感情があった。まずは、部外者が自分と兄と父の関係に割って入って、勝手に父を殺したことへの憤り。ヒザシもまた、父を見返してやりたかったし、親孝行もしたかった。しかしそれと同時に、精々したという気持ちもある。父は分家の憎しみを身をもって知った。兄も、自来也の話を聞いて以来、分家について深く悩んでいる。

 そうだ! 俺達だって人間なんだ! 何も思わず従っているわけではない! それを今さら悩んでいるとは、今まで俺達のことをどう考えていたんだ!

 ヒザシは心の中で何度も叫んだ。しかし、兄はヒザシが黙っていた方がウジウジ悩みそうなので、放っておいて苦しめることにした。もっとも、苦しむ兄を見ていると、自分も苛立ってしまうのだが。その感情の理由は分からなかった。

 

 ヒザシに転機が訪れたのは、とある任務中に不思議な一行を見たときだった。

 木こりのような男が、大勢の少年少女を背にして、忍びと戦っていた。男は強かった。多対一でも、後ろに目があるように対応できた。まるで日向のように。うん? 日向?

 

「え? あっ!」

 

 ヒザシは、男の目に集まるチャクラの流れを見た。白眼のそれだった。

 

「な、なに!」

 

 さらに、決定的なことが起きる。男は木遁を使ったのだ。白眼を持つ木遁使いは史上一人。

 

「まさか、まさか……」

 

 生きていたのか。

 様々な感情が渦巻くなか、ヒザシはとりあえず後をつけることにした。向こうも白眼が使えるが、血筋的にもチャクラコントロールによっても自分の方が視界は広い。見つからない自信があった。と言っても本体は里に帰らなければならない。尾行は影分身に任せた。

 

 少女達を率いる男は、とても楽しそうだった。移動しながら狩りや採集で食事を集め、少女達に与える。それも足りなければ木遁で木の実を出す。料理を少女達にも手伝わせ、そのときどきに感謝の言葉を述べる。少女達にも述べるよう教育する。野盗や野獣との戦いでは、忍びらしい非情さも見せる。しかし徒に苦しめることはなかった。

 

 上忍の強さを持ちながら、それを金や権力のために使わず、本当に困っている人を救っていく。それを非常に楽しんでいる。

 なんてやつだ。我が父を殺しておきながら、自分はのうのうと好きなことをやって。分家の末端のクセに、日向の仕来たりを無視して。あんなに自由に、楽しそうに。人々に好かれて。

 

 ヒザシの影分身は、徐々にトグロの生き方に惹かれていった。是非、本体で会って話がしたいと思った。

 やがてトグロは、暁という若者たちと合流した。そこである女が、ヒザシの存在に気づいてしまった。ヒザシは慌てて影分身を消した。

 

 その後、暁という組織を調べ、孤児院というキーワードを得る。トグロと孤児院の両方に該当する人物として、綱手がいた。綱手はトグロを日向に連れてきた張本人であり、最近になって突然、孤児院を始めていた。これらを繋ぎ合わせ、トグロは綱手の孤児院にいるという推測をした。

 そして、それは合っていた。

 

 砂との戦いを終えたヒザシは、一目散に日向宗家に向かった。そしてヒアシに「父の仇が綱手様の部下にいる。今、火影邸でそいつも関係する部隊を編成をしているところだ」と伝えた。ヒアシは顔色を変えて火影邸に走っていった。

 

 トグロという人物。その人柄を見抜く。ヒアシはチャンスをもらった気分になっていた。ここ数年悩んできた宗家と分家の問題。それを紐解くきっかけを、トグロが与えてくれるかもしれない。

 父の仇だが、殺すつもりはなかった。いや、トグロがどうしようもない人間だったならば、里に仇なすまえに責任を持って処分するが、現時点ではその対象ではないということ。また、その可能性は非常に低いと思っている。数年前に突然弟の顔色がよくなったのも、トグロが関わっている気がする。トグロのことを話すヒザシの表情が生き生きしていたからだ。

 

 

 

 火影邸での会議を終え、ヒザシと共に隊列に並ぶ。トグロとの対面を心待ちにしながら歩いていく。

 ヒアシは第二ダムへ到達する少し前に、白眼で集落の様子を見た。トグロのチャクラは一発で分かった。木遁分身の存在にも気づいた。

 そして、トグロが予想を上回る人物だと知った。親を失った子、親友を失った子、足を失った子、視界を失った子。皆トグロを頼る。トグロに泣きつき、慰められ、おだやかになっていく。生きる力をもらい、健気に働き始める。これほどのダメージを負っていながら、集落全体に私意の空気がない。自分のためではなく、人のために働く。なんと美しいことか。

 皆のチャクラの流れが美しい。見ているだけでこちらの心が癒されるようだ。視界を失った子、いや九尾でさえ、今ではトグロよりも清々しい。

 

 なんてことだ。あやつは災厄を吸いとる聖人か?

 

 多大に過ぎた評価を持って、トグロと対面することになった。呆けていたせいで、ダンゾウに先んじられた。

 ダンゾウがいきなりトグロに蹴りかかった。一見、里抜けと九尾逃亡に関する罰に見えるが、ヒアシはあの会議にいたので知っている。ダンゾウは木遁使いであるトグロが欲しい。トグロを怒らせ、反撃させ、「やはり日向では制御できん!」などと言って自身の操り人形にするつもりだろう。ダンゾウが部下に絶対に逆らえない呪いをかけていることは知っている。やつの好きにはさせない。同じことをしている日向に言えることではないかもしれないが。

 

 口八丁でダンゾウを下がらせ、自身がトグロに相対する。

 己の肉体をもって、トグロに苦痛を与えていく。

 未熟な自身に、このようなことをする権利はない。しかしやらねばならぬ。里にため。こやつのためにも。

 

「八卦千二十四掌!」

 

 里向けに、厳しい罰を与えたというポーズのため。越えられない場所へ行ってしまった父へ、兄弟の最高の技を見せるため。宗家と分家という問題の重要さを認識させてくれた男へ、感謝の気持ちを込めて。ヒアシはトグロに打ち込んだ。負けじとヒザシも打ち込んだ。

 トグロはただただ絶叫し、ボロ雑巾のようになって崩れ落ちた。

 

「はあ、はあ、はあ」

「そやつは作戦の中核を担う一人だぞ。動けなくなるまで痛めつけてどうする。感情に突っ走るだけの愚か者に、里の重要兵器を任せるわけにはいかん。やはりわしが」

「いえ、この者は1時間もすれば目覚めますよ。今回私は経絡系を完全に破壊するのではなく、一部残して大きな痛みを発生させたのです。部分的な経絡系の傷は、ヒザシの突き見せかけた早業の治療によってすぐさま回復させました。彼は中途半端な破壊と強引な治療による二重の痛みによって絶叫していたのです。ふつうに経絡系を潰してしまうよりこちらの方が痛いのですよ。完全に精神的な拷問のための技です」

 

 ヒアシは、ダンゾウがこう来ることまで読んで、この技を選んだ。さすがというべきは、あれの一言でヒアシに合わせたヒザシか。当然、破壊よりも治療の方が難易度が高い。

 

「だ、だからと言って、やはりお前では」

「ほよー! 小鬼ちゃんがボロ雑巾みたいになっちってる! はっちゃんも寝ちってる!」

 

 ダンゾウが捨て台詞を吐こうとしたが、アラレのとぼけた声にかきけされた。

 

「あっ! アラレちゃん! 来ちゃダメだって!」

 

 豪が慌てて走っていく。しかしその前にヒザシが出た。いつの間に拾ったのか、トグロと初を両脇に抱えて。

 

「アラレちゃん。僕がトグロくんと初さんを治療室に運ぶ。案内してくれ」

「うんいいよ。でもね、小鬼ちゃんは空海って呼ばないとダメなんだって」

「そうかい。これからは気を付けるよ」

「うん!」

 

 ヒザシはアラレの後ろをかけていく。

 ダンゾウはその後ろ姿を忌々しそうに睨むだけだった。

 

 

 俺が目覚めたとき、今度はベッドの上だった。

 

「うおおっ! いたたたたっ!」

 

 全身がめちゃくちゃ痛い。あれだけ突かれたのだから当然か。しかしチャクラは練れるな。体調もそれほど悪くはない。どういうことだ? 綱手が治してくれたか?

 初に尋ねよう。俺の付近の床で、白い目の青年が二人寝ている理由についても。

 

「初よ。あれからどうなった?」

「忍び達は一部を除き睡眠に入りました。ダンゾウは夜中に奇襲をしかけるつもりです。一部の忍びは砂に抗議の文書を出しに行っています。川の領土から軍隊を引くようにと。砂が受け入れるはずがありませんから、ただの対外的なポーズですね」

「綱手さんは?」

「もうすぐ来るそうです」

「まだなのか? 誰が俺を治した?」

「私たちと、そこの日向の二人です」

 

 こいつらが俺を治した? あんだけズタボロにやられたのに、この短期間で? そんなに優秀な医療忍者だったのか?

 

「そうか。日向が俺の付近にいる理由は?」

「三人でチームになったからです」

 

 こいつらとか。俺をボコボコにした張本人。

 まあ、俺がこいつらの親父を殺したわけだから、恨み言を吐く気にはならん。それに、さっきの攻撃中、俺に対する憎しみは感じなかったしな。どこか清清しい感じさえした。

 

 しかし、チームか。宗家が俺を縛るために必要なのは分かるが、もう一人も日向とはな。どういう戦いになるんだろうな。

 ん? つーかこのチーム、滅茶苦茶強くねえか!? 体術は敵なしの日向二人と、術を吸いとりまくる俺。接近戦も遠距離もいける。全員が上忍の実力。

 おいおい、いきなり砂影と戦ってこいなんて言わないだろうな。まあ勝てそうだけど。だって日向って木の葉にて最強なんだろ!? 歴代最強の三代目火影とか、忍びの神と呼ばれる初代火影とか、いろいろ矛盾している感じがするけども!

 

 まあ、俺はそれなりに安全だと分かった。問題は他だ。

 

「お前達で戦いに向かわされるのは何人いる?」

「皆、何かしらやりますよ。私と長袖とスリミはご主人様と共に戦います。月達も後方支援はやりますよ」

「何!?」

 

 俺が応える前に、ヒアシが叫んだ。敷き布団から身を起こしながら。

 

「私は部隊編成の会議に参加していた。お主達は後方支援のみという話だったぞ。指揮権も綱手殿が持つと言っていた。あの方ならば、お主達を無理に戦場に連れ出すこともなかろう」

「どういうことです? 誰かが嘘をついている?」

 

 ふつうに考えればウソつきはダンゾウだ。しかし、昨日、初が言っていたよな。自分達も俺と共に戦うようなことを。ってことは、ヒアシがボケてるのか? それともどこかで連絡ミスがあった?

 

「初よ。お前達は戦わなくていいかもしれないぞ。本当かもしれないから、ちょっと綱手さんが来るまで粘っていろ。小南を起こしてくる。紙飛行機で連絡させる」

 

 白眼で小南を探す。予想通り、まだ九尾の耳の下で寝ている。

 俺は立ち上がり、走ろうとする。しかし初の手によってギュッとズボンを握られてしまった。

 

「ご主人様は、ここにいてください。私が向かいます」

「ん? ……ああ、そうだな。任せた」

 

 この程度は、メイドがやるべきということか? 微笑ましいことだな。

 

「トグロよ。今のやり取りはなんだ?」

 

 ヒアシが信じられないものを見たように目をあんぐり開けている。

 

「え? おかしかったですか?」

 

 メイドが、まずかったのか? でも宗家にだってお手伝いさんはいるじゃん!

 

「うむ。お主にとって仲間とは。…………いや、言うまい」

 

 何の溜めだ? 下品なら下品と言ってくれた方がこちらは楽だが。

 

「ところでヒアシさん。3人の連携は確かめなくて大丈夫ですか?」

「うむ。やろう」

 

 ヒアシはうなずき、立ち上がる。

 

「ヒザシよ。起きていることは分かっているぞ。早くせい」

「分かってますよ。ヒアシ様」

 

 ヒザシは気だるそうに立ち上がった。大きくアクビをし、ポリポリと頭をかく。

 

「これ! 人様の家でみっともないぞ!」

「はいはい。分かってますよ。すみませんね」

 

 ヒザシという男、ずいぶん想像と違うな。もっと切羽詰まった感じだと思ったが、気楽だ。逆に兄の方が神経質な感じがする。

 

「さっ。張り切って行こうか。トグロくん」

 

 ヒザシは軽く俺の肩を叩き、ウインクまでした。なんだこいつ。馴れ馴れしいな。

 

「初のやつ何を手こずっているのか。こっちが先に来てしまったぞ」

 

 俺達は三人で庭に出る。初は九尾の上で小南に何やら言っている。小声で聞こえんな。

 と、小南がこっちに気づいた。遅れて初もだ。ついでに九尾も片目を開けた。そして不満そうな表情で訴えてくる。

 

 こいつらをどうにかしてくれ。

 

「おい初! 何をトロトロやってんだ!」

「ご、ご主人様! お待ちください! もう少しで! ああっ! 待っ!」

 

 初の静止を遮って、小南がこちらに飛んでくる。というか何故初は静止させたんだ? 俺は彼女と話がしたいと言ったのに。

 

「ねえ、彼女あなたと一緒に戦いたいって言ってるわよ」

「どういう意味だ?」

 

 俺の班に入れて欲しいのかな? ダンゾウが認めるかな?

 俺としては、気持ちは嬉しいが、来てほしくないな。たぶん足手まといになるだけだ。命を無駄にすることはない。

 

「小南さん! 恨みますよ!」

「あの子、本来なら戦う必要ないのよ。昨日ナメクジから聞いたわ。綱手さんが上手くやったって。クシナも聞いたはずよ」

「なんだそれは? 初がウソをついているってことか?」

 

 俺が言うと、小南はうなずく。

 不意に、初がこっちに突っ込んできた。瞬身の術だ。これは、小南の後ろを狙っているのかな?

 

「ちょっと失礼」

「えっ、ちょっ」

 

 小南の腕を引き、こちらに抱く。小南がいた場所にもう片方の手を出し、木の根を伸ばす。

 

「えっ、あっ」

 

 根が初を受け止める。そのままからみついて拘束する。

 

「まあ、ここまできたら分かるよ。本当は綱手の交渉で、お前達は戦わなくてもいいことになった。だけど、俺と一緒に戦いたいからウソをついたんだな?」

 

 初はビクンと目を見開いた。次には悲しそうにうつむく。

 認めたな。たぶん、俺だけ危険な場所で戦うってことが我慢ならなかったんだろう。

 

「ありがたい話だけどな。また今度の機会にしてくれ。今は実力を伸ばせ。綱手さんの指示に従って動け。彼女は集落を一番に考えて動いてくれるはずだ。その彼女が信じられないのか?」

「ち、ちが、ぐぶっ」

 

 おおっと、泣き出しちゃったよ。困ったな。今から連携の確認がしたいんだけど。

 まあ、泣くのは仕方ないか。これだけ色んなものを失って、一日もせずに切り替えろと言われても、なかなかな。

 

「トグロ! ここは私に任せるってばね! あんたがいない間私がこの子達を守る! だからあんたは修行でも予行でもやってるってばね!」

 

 と、今度はクシナが走ってきた。集落の手伝いをしていたはずだが、いいタイミングで現れたな。九尾が呼んだのか?

 

 さて、連携の確認を行う。俺の体術レベルはそう高くないので。あっさりと彼等が前衛で俺が後衛と決まる。俺は敵の遠距離攻撃を防ぎ、二人の活路を開く。砂は風使いが多いが、白眼なら真空の刃も見抜けるのであまり問題ない。危険なのは砂だ。日向の柔拳では吹き飛ばしにくく、重しとなって動きを抑制されてしまう。しかし砂は俺の木遁で簡単に止められる。これらを考えると、俺達はとても効率のいいチームだと分かる。自然と3人の頬が緩んだ。

 

 やれる、俺達なら。

 

 修行の占めに、クシナ、小南、長袖、初にも手伝ってもらい、5分ほどの模擬戦を行った。互いに本気ではないが、俺達はとても強かった。

 

「今、お前は死んだぞ」

「こ、こんなの当たっても平気ってばね!」

 

 開始早々、ヒアシがクシナの喉元で指を寸止めする。

 

「爆風に紛れて逃げたつもりか? その程度の紙飛行機で白眼を欺くことはできぬ」

「私、どうして協力させられているのかしら? 平和活動のために来たはずだけれど。帰っていいかしら?」

 

 ヒザシも小南相手に寸止めする。

 

「ご、ご主人様! さすがです!」

「いたたたっ。空海さん、僕にだけ当てる気で攻撃してません?」

 

 俺も初に寸止めする。

 

 俺達はたった5分の間に、何度も何度も彼等を殺せることを確認した。もちろんこちらは無傷である。これには悟らざるを得なかった。

 倒れ伏す少年少女を前に、俺達は3人一列で並ぶ。

 

「ヒアシ様、最後の占めにあれをやりませんか?」

「ヒザシよ。前置きなどいらぬ。常識であろう」

「さすがに僕も、気づいてしまいましたよ」

 

 白眼三人、何とはなしに柔拳の構えをとる。

 大きく息を吸い、腹に力を込める。

 

「日向は木の葉にて最強!」

「日向は木の葉にて最強!」

「日向は木の葉にて最強!」

 

 太陽の下、凛と立つ木の葉の日向にて三強の忍び。山びこが、わびしく鳴り響いた。


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