魔法先生ネギま! 子供先生と機械兵士   作:残月

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ヴァルゼルドと本屋・魔力の暴走Ⅱ

 

 

ヴァルゼルドは学園長室を出ると、何時ものように見回りを開始していた。

そして思うのはネギと明日菜の事だ。

 

 

『あの様子では……明日菜殿も意固地になってしまうでありますな』

 

 

ガシャガシャと歩くヴァルゼルドは明日菜の心配をしていた。ヴァルゼルドは明日菜との付き合いもそこそこにあるので性格を把握していた。それを考えれば明日菜はネギに冷たく当たってる可能性が高い。

 

ヴァルゼルドは仕事をしながらそんな事を考えていた。

そして時刻は放課後になっていた。

 

 

「おい、コラ!ポンコツー!」

『っ!?あだっ!』

 

 

道行くヴァルゼルドの頭に鞄が投げ込まれる。

相変わらず何故か鞄如きでダメージを受けるヴァルゼルド

 

 

『ち、千雨殿?』

「お前が『楽しみにしてろ』って言ってた事はアレか?あのガキなのか!?」

 

 

鞄を投げ込んだのが千雨な事に驚くヴァルゼルドに千雨は詰め寄り叫ぶ。

 

 

『千雨殿、ネギ殿は授業は如何でありましたか?』

「……マトモもな授業にゃならなかったよ。神楽坂が妙に敵視してやがったな」

 

 

ヴァルゼルドの何処か真剣な問い掛けに千雨は今日のネギの授業風景を伝える。それを聞いたヴァルゼルドは「あちゃー」と言わんばかりに頭に手を置きリアクションを取る。

それを見た千雨はヴァルゼルドのポンコツ度を更に上げるのだった。

 

 

「ったく……お前も含めて本当に異常だよ!」

『千雨殿……流石に本人を前に言われると傷付くであります』

 

 

千雨は怒り心頭な様子で鞄を拾い上げると行ってはしまう。メンタルが多少傷付いたヴァルゼルドはその事は一先ず、置くと考えるのはネギと明日菜の事だ。

 

今朝の事があったから明日菜はネギになんかしらのアクションを起こすだろうと思っていたが千雨の話から判断すると確執は深そうだ。

 

 

『うーむ、一度様子を見に行くべき……おや?』

 

 

ヴァルゼルドの前方にはトボトボと歩くネギの姿があった。

 

 

『ネギ殿……あの様子……何か失敗でありますか?』

 

 

ヴァルゼルドはネギの様子が気になり、後を追う。前方のネギはヴァルゼルドに気づく様子もなく、広場の大きな像の前に腰を下ろす。しばらく出席簿を眺めて途方に暮れていた。

 

 

『思えば子供に先生ってのが既に無理のある話。学園長殿や高畑殿も何か思惑があるとしても少々酷でありますか』

 

 

ヴァルゼルドはネギの事情全てを知っている訳では無いが魔法の修行とは言えど、あの年頃の子供が見知らぬ土地で先生とはツラすぎる。

 

そう思うと、ヴァルゼルドはあの子供が不憫に感じてきた。ネギに視線をやるとネギが出席簿から顔を上げている。

その視線の先には、本を山積にフラフラと階段を下りる女子生徒が居た。その子はヴァルゼルドに見覚えが有った。

 

 

『アレは……本屋殿。ああ……危ないでありますな』

 

 

夕映経由で本屋の愛称を持つ生徒『宮崎のどか』を知っているヴァルゼルドは本屋の手助けをしようと動こうとしたその矢先、のどかが階段を踏み外した。

 

 

「………っ!キャァァァァァァッ!?」

『本屋殿!』

 

 

ヴァルゼルドが飛び出そうとした瞬間。ネギが落下する、のどかに向かって杖を構える。

 

 

「キャァァァァァァッァ!?」

「間に合えー!」

 

 

ネギは10歳とは思えない瞬発力で、のどかに向かって走り出す。そして不恰好ながら身を挺して、のどかを抱きとめる。

上手く受け止められずに自分はすり傷まみれになりながらも少女を守ったネギをヴァルゼルドは感動を覚えた。

 

そしてヴァルゼルドがこれなら行わなければならないのは様々なフォローだ。差し当たってはヴァルゼルド以外の目撃者だろう。

 

 

「あ……あんた…………」

「あ……いや……その……」

 

 

そう運悪く、ネギが魔法を使う所を明日菜がバッチリ見てしまったのだ。

一部始終を目撃した明日菜はネギと杖を掴み、走り去っていった。

 

 

『明日菜殿……動転しているのは判るでありますが、気絶した同級生を放置とは駄目で有ります』

 

 

ネギの事で頭がいっぱいだった明日菜は、のどかを放置してしまったのだ。ヴァルゼルドは、のどかに駆け寄りながらそんな事を考える。

直ぐさまにネギのフォローに回ろうと思ったヴァルゼルドだったがヴァルゼルドのレーダーは高畑を捉えている。後は彼がフォローを入れるだろう。

 

 

「本屋殿、大丈夫でありますか?」

「ふえ?ひゃあ!なんで私の名前……?」

 

 

ヴァルゼルドは、のどかを起こす。声を掛けられた、のどかは目の前のヴァルゼルドに脅えてしまう。

 

 

『本機は夕映殿から本屋殿の話を聞いていたであります。あの様に本を重ねて歩くのは危険であります』

「は、はい。すいません……」

 

 

ヴァルゼルドに先程の事を注意されて、しゅんとなるのどか

 

 

『それとネギ殿にも礼をしておくであります』

「ネギせんせー……にですか?」

『先程の落下はネギ殿が受け止めたであります。本機はそのフォローに来ただけでありますよ』

 

 

ヴァルゼルドはのどかに、あくまで助けたのはネギと告げると、のどかに怪我が無いかをチェックする。異常が無かった為、ヴァルゼルドは、のどかを帰らせた。

 

 

そして、ネギと明日菜がどうなったか確認する為に街道沿いの林で騒いでる二人を追うヴァルゼルド。

ヴァルゼルドが集音センサーで二人の会話を聞くと、どうやらネギが明日菜の記憶を消そうとしているようだ。

明日菜は記憶を消されると聞き、焦っておりネギは至って真面目に事後処理を済ませようとしている。

やがて呪文が完成したのかネギが明日菜に杖を向けた。

 

 

「消えろー!」

 

 

パシュゥゥゥッと音と共に魔力の風が明日菜を包み込み、全てが消えた。何故か明日菜のブレザーを残して全ての衣服が。

今朝の魔力の暴走といい、ネギは魔力の暴走や失敗で脱がす癖でもあるのだろうかとヴァルゼルドは思ってしまう。

羞恥にプルプル震える明日菜に、魔法が失敗して慌てるネギ。そして更に悲劇は続く。

 

 

「おーい、何やってるんだい?」

 

 

騒ぎを聞き付けた高畑が草むらから顔を出す。そこには裸の明日菜と慌てるネギ。流石の高畑も思考がフリーズした。

 

 

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

朝に引き続き、夕暮れの麻帆良に明日菜の絶叫が木霊した。


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