始まりは欲望の街   作:ロピア

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第4話

 

どうすればいいのかわからなくて、ボールをエーフィに恐る恐る近付けると、こちらの意図を理解してくれたのだろう、エーフィは可愛らしく一声鳴いた後、こつんとスイッチ部分に鼻先を押し当て、出てきた赤い光線によりみるみる小さくなっていった。

何も言わないけどさ!声には出さないけど!!改めて見ると、これはなかなか感動する!

今まで横にいたちょっと大きい猫が、手のひらに収まるボールの中に小さくなって入っているなんて!

確かに「ポケット」モンスターだけど。実感して、初めてどちらの意味も理解できた気がする。

 

と、少し先で待っていてくれたケンさんをこれ以上待たせるのも悪いので、駆け足で近付いた。

 

「さて、ここだ」

 

言いながら歩み寄る先には、アレ。あの石とか欠片とか売ってるブラックシティの中央に堂々と鎮座する大きな建物、の奥にあるビルだ。ゲームでは入り口の無かった、あの。

ブラックシティは子供用ゲームにしてはぎりぎりなセリフが多かったが(金があればなんでも手に入る、なんてもうアウトだろう)、表に出ているだけマシだったのかもしれない。すごく…こわいです。

 

「そうだな…手続きは簡単なものだ。コウジくんは外で待っているかい?」

 

「あ、いえ……出来ることはないかもしれませんが、自分のことなんですから、何もかもまかせっきりにするのも…」

 

「よし、わかった。まあ本当に簡単なものだがね」

 

真っ黒で窓の中さえ覗けない建物に近付くにつれて、心臓が激しく動くのを感じていた。

 

 

そして、5分後。はい、確かに俺がすることは何にもありませんでした。で、今俺の手の中に、俺の全身写真つきのカードがちゃっかりあったりします。……なんかもう色々驚きすぎて逆に落ち着いてきた。

まあ流れを簡単に言うと、

①ケンさんとともに建物に入る

②さっと用意されたカードと突然撮られる写真

③「出身はブラックシティ…はまずいか、カナワタウンにするか、それとも他の地方にしておくかい?」「あ、じゃあジョウト地方のエンジュシティでお願いします」

④「はい、どうぞ」カードを渡されて受け取る俺と、さっと懐から取り出したカードで支払うケンさん

でビルを出て、今に至る。何故入った瞬間からこちらの目的がわかってたんだとか(トレーナーカードをここで作る人は滅多にいないそうだ)、ケンさんが機械にカードをかざした瞬間に飛び込んできた数字とか。言いたいことはいろいろあるけど、取り敢えず。

 

「ケンさん、ありがとうございます。絶対この恩はお返ししますから」

 

「私はいつでもブラックシティのサザナミ側のゲート近くにいるからね、ポケモン勝負ならいつでも歓迎するよ」

 

このバトルジャンキーがっっ!!!!

…それで恩返しになるなら幾らでも勝負しにいこうと思います。はい。…だって50万…。俺がポケモン育成のためにブラックシティとかライモンのドームでおまもりこばん無双しなきゃ、普通100万なんて手に入らない。結構ストーリーが進んで強いポケモンを連れてる人でも賞金2000以下もいたし。ケンさんは賞金が多めだったはずだから、まだ裕福だったとしても。

……以前との金銭感覚の違い。結構大きいと思う。まだ食費が分かってないから明確なことは言えないけど。

 

 

「さて、ではトレーナーカードについて、説明してもいいかい?」

 

「あっ!はい、お願いします!」

 

 

長くなるけどしっかり聞いてくれ。そんな前置きの話は、要約するとこうだった。

 

トレーナーカードが必要になる最たる例はポケモンセンターの利用だ。宿泊施設、ポケモンの回復としての利用がほぼ無料になる。(食費は安くなる)

ポケモンセンターにあるパソコンではポケモンの預け引き出しが出来るが、利用にはカードを機械に挿入する必要がある。カードにより、その人個人のボックスを自由に利用できる。パソコンの使い方によっては外聞が悪くなることがあるので注意するように。

また、モンスターボールの所持と購入にはカードが必要。購入時にカードをレジに通すわけだから当然とも言えるが。

このボールを買う際にレジにカードを通すことで、ボールにその人のIDを記録するそうだ。他の人から貰ったポケモンは云々の時や、ポケモンくじでお世話になるIDはいつ登録されているのかと疑問に思っていたが、なるほど。

施設の利用については大体こんな感じ。そして、俺にとって凄くよかったのが以下の点。

 

トレーナーカードを操作すると所持ポケモンの簡易グラフィックと大体のレベル、性別、覚えている技が表示される、というもの。

これは本当に嬉しい。ゲームの画面が簡略化されて見れる感じ。ちなみにこの時、ケンさんが「覚えている技と使える技は別物だが」と呟くのが聞き取れた。ふむ。

 

でまあ早速カードを使って見よう、と操作し、手持ちの先頭にいたエーフィを確認してオスだったことを知り少し残念に思った。そしてレベルが約82だったことに恐怖を感じた。え、えーふぃさん……。

そして、2番目以降の手持ちが???と表示されていた。ケンさんに聞くと、カードにまだ登録されていないから表示できないんだとか。エーフィは一度俺が使用し、ボールの反応がまだ残っていたから登録されているそうだ。

と、いうわけで何故か俺の腰についていたモンスターボールたちの中身を確認することに。

 

「エーフィという例があるからな。きっと、他のポケモンも生半可ではないのだろうな」

 

とわくわくしたように少し離れたところから眺めるケンさんに居心地悪く思いながら、エーフィより少し取り辛い位置にあるボールを手に取る。…正直、かなり緊張してるが、さすがに一度も開いたことの無いモンスターボールを持っているとは言えず、余裕そうに見えるように背筋を伸ばしてボールを、宙へっ!

 

 

「キョウウゥン」

 

ポン、と現れたのは薄紫の綺麗な狐さん――コジョンドだった。

ここで、もしや、とある仮定が生まれた。ざっと確認すると、コジョンドさんはメス、レベルは約78、覚えている技は…「とんぼがえり」「ねこだまし」「ストーンエッジ」「とびひざげり」

 

次のボールを手に取り、投げる。青い炎が美しいシャンデラ。

次は黒っぽいつやつやした体に電気を纏わせてシビルドン。

オリーブ色の硬い体に赤い斧のような牙を持ったオノノクス。

そして、薄紅の触覚と不思議な鱗を持ち、何よりも美しい…――ミロカロス。

 

「…は、っはは……マジかよ」

 

嬉しそうに、愛おしそうにこちらを見つめる彼らは――俺のしていたゲーム、ブラックの、手持ちだった。

 

それも、寝る前に日課でしているブラックシティ10人抜き+ご褒美の1万をもらって、セーブをした、「ここに来る直前の」ゲームの。

 

 




独自解釈②トレーナーカードの使用法
ポケモンを捕まえた瞬間からその人のIDが登録されるには、ボールにIDが登録されている必要があるかな、と。解釈①前提ですが。外聞が云々は後々詳しく出てくる予定です。

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