始まりは欲望の街   作:ロピア

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第18話

 

ふむぅ。前回の仮説は、まあ何と言うか。ある意味あっていた、というか。

森に挟まれた道を行って少しして、ちょっと前に考えていた段差が視界に入った。段差、と言うだけあった、というのが正直な感想。なんて言ったらいいのか。

ゲームで線の様に描かれていた部分が、周囲より一際高くなっていた。しかしそれだけではなく、段差の前と後(便宜的に、飛べる方向を前→後と記すと)では高さが異なっていた。前の方が高く、後の方が低い。そんな前より高い線。うまく言葉に出来ないので、下図を参考にしてもらえたら、と思う。なお、想像より段差は激しいだろうと補足しておこう。

 

前―― ̄__後

 

1方向からしか行けないのはこのためだ。後から前の所に行くには段が高すぎて通れないのだ。

因みに、前の方が後より高くなっているが、この高低差は道がやや上り坂になっていることで解消しているようだ。俺が見かけた段差の右隣には草むらがあり、そこを通りながら自転車を押す感触で確認したから、恐らく間違っていない。段差の向こう側にはアイテムがあるものだが、今回もあったのだろうか。

と、草むらを歩くのだから必然的にエンカウント。

 

あっ!野生のオオスバメが飛びだしてきた!

 

そんなテロップが入ったように感じながら、エーフィにすかさず指示を飛ばす。

 

「エーフィ!サイコキネシス!!」

 

自前の翼を羽ばたかせて宙へ浮くのとともに風を起こそうとしたのだろうが、こちらの方が早い!たんったん、と俺の体を駆け上がり、肩から飛び出したエーフィは、相手より高い位置から強烈な紫色の光を放った。バサッと大きめの鳥が地に伏す音がして、次に視界が戻る。飛び上がれはしないが、意識はあるようでちらとエーフィに視線を向けた瞬間にぴゃっと逃げてしまった。

ふむ。こんな状況でひどい話だとは思うが、ひんしだろうポケモンが捕まえられない理由がわかった気がする。恐らく、生きるために何より逃げることを優先するのだろう。そして、相手がボールを出す、などの「視線を外す」行為をした瞬間の隙を狙い、逃げる。

ポケモンの世界では確かに「死」という概念が存在する。なのに普通は「ひんし」であるのは、それをポケモン同士が理解しており、力加減をしているからではないだろうか。ポケモンは力を持ち、そして賢い生き物だ。有り得なくはないんじゃないか、と思う。

勝手に足場にしたことを謝るように、怒っていないか窺うように、鳴き声を上げて見上げるエーフィによくやったとお礼を言って、歩き出す。

 

大きな木々があるためやや蛇行しながら、途中で他よりも小さめの木(恐らくいあいぎりできる木だろう)を横目で見ながら、なんとか草むらを抜けた。途中のモンジャラは足が遅いので、さっさと逃げてたり。……あんまり、傷付けたくないし、ね。

と、草を抜けて直ぐに女性が見えた。きょろきょろと見ているが、草むら側には目を向けないので、ゆっくりタイミングを合わせて、……よし、抜けた!

 

少し先に看板が見えて、ほっとする。近くには木々に挟まれた大きな岩があって、あ、これ確かジャイアントホール行くためのだよな、と思い出す。ジャイアントホールは未開通、と。これでもまだ時期がはっきりしないな。

看板に書かれた「13番道路」によし、と気合いを入れて左に曲がる。何かの鳥の鳴き声や風の音くらいしか聞こえない森と違って、どことなく賑わった空気が近くなってきた。人のざわめきが、ブラックシティやサザナミタウンでは無かったそれが、ほっとさせてくれる。草原から、石畳に変わる足元。パッと開ける視界と空。

 

「お、……おぉぉ」

 

自分の昔住んでたような木造家屋ではないけれど、コンクリートや石畳で整然とした町並み、白を基調とし、水色の手すりなどが見える高台。長閑な空気。

入って右手に見える看板の文字をゆっくりと息を吐きながら眺める。

 

『ここは カゴメタウン

カゴメは 編んでできた 三角形』

 

「来た。着いた。……っカゴメタウン!!」

 

無性に嬉しくなって、エーフィを抱き上げた。ぎゅーっと潰しかねない勢いで抱き締めるのに、エーフィは嬉しそうに鳴く。カタカタ、と腰で揺れるコジョンドを出すと、物珍しそうにキョロキョロと辺りを見回し、俺と俺が抱き締めるエーフィを見てムッとしたように見えた。そんなコジョンドも抱き締めて、破顔する。

 

「みんな、ありがとな!!」

「………」

 

そっぽを向かれるが、さっきまで吊り上がっていた目が優しく緩んでいたように見えたのは、きっと勘違いじゃないはず。

 

この町は結構広かった上にちょっとした迷路のようだった覚えがあるので、まずはポケモンセンターを目指すことに。町に入って直ぐの高台への階段の向こう側に、赤…って言うよりオレンジだな、の屋根が見えた気がするので、入り口から見て左、地図から見て下の方に歩く。人の姿は見えないが、植物の植わった花壇や、水色の建物には人の気配が存分に感じられるから、構わない。町中だからと戻ってもらった2匹も、ほかの4匹も、ほっとしてるように感じた。

 

真っ直ぐ下に進めば石畳はなくなり、森にぶち当たるしかないので右に曲がる。と、右手に大きな階段が見えた。水色の手すりに、これがさっき見えた高台への階段だな、と認識する。すぐ横に見えたオレンジにも、ふっと笑顔が洩れた。

モンスターボールの模様が入った入り口のドアに、二階の窓。オレンジの屋根に丸っこいフォルム。近付けば自動で開くドアと、中からかけられる温かい言葉。桃色の髪の女医さんに、右手に見える青いカウンターと2人の店員。さっき出発したはずなのに、酷く懐かしく感じた、ポケモンセンターがそこにはあった。

あなたのポケモンを休ませてあげますか?という言葉にお願いします、と返して、そのまま今日の宿もとる。それではお預かりいたします!しばらくお待ちください、と言われ、近くにいた人に声をかけることにした。

 

「こんにちは」

「こんにちは。ねえ、あなたトレーナーでしょ?グラシデアのはな、知ってる?」

 

「まあ、はい」

「昔からね、シンオウ地方ではあいがとうって気持ちを伝えるときに、グラシデアのはなをブーケにしてあげていたのよ」

 

そこで終わった会話に、どうも、とお辞儀をして離れながら考える。あれ、これもイベントだっけ?何か、シェイミを連れてたらグラシデアのはながもらえるイベントあったような、とうろ覚えの記憶を探る。まだシェイミはダイヤモンドから移していないから、それが何処であったイベントなのかわからない。でもわざわざそんな話振るんだから、可能性としてはあり得るよな。

 

他にもう1人いた、ポケモンセンターの利用客に話しかけて、首を振られた後の言葉が印象的だった。

「あなたはジムバッジを持っていない。しかし、ジムバッジにこめられた想い……あなたと一緒に戦ったポケモンの残滓が、残っている。……あなたのジムバッジを見ることができないのは、とても残念に思います」

 

そのジムバッジを手にした時の手持ちを教えてくれるサイキッカー。今は無い俺のジムバッジと、今はいない旅を供にしたポケモンたち。

あの子達がいないのを、今傍にいるのがあの子達ではないことを、そして、今後会える見込みはないことを。締め付けられるような思いとともに、理解したのだった。




伝説幻系のイベントに手を付けていないのは自分です。…いや、一回こっきりのイベントって、なんだかすごく勿体無い気がして、ついつい引き伸ばしてしまい。ゾロアやシェイミどころか、HGでセレビィさえまだやってないという。
あ、あと、やっとホワイト2買いました!ブラックをやっていた身としてはブラック2が欲しかったのですが、兄弟が先にブラック2を買っていたのでホワイト2に。ポケモンセンターでゲーム始める前にデオキシス貰いました。…ゲームを一切進めずともポケモン配信は受け取れると把握していれば、もっと早くに買ったのに…ゲノセクトのストーリーが…見れない…。P2ラボ…。
忙しいので、ゲームを進めることはないと思いますが、ね。ストーリーには一切ブラック2、ホワイト2の知識が入ってないことを宣言しておきます。

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