始まりは欲望の街   作:ロピア

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第15話

 

さて、ようやく踏み入れることができた13番道路だが、この道路はある特徴がある。基本的に物語の序盤である1桁台の道路は、どんなに頑張ろうと確実にトレーナーと戦わなくてはならないよう、設定されている。だが、13番道路などの物語の終盤に位置する道路は、タイミングを見計らったり迂回すれば、トレーナーとの戦闘を避けられるようになっているのだ。

基本的に、ゲームでは相手トレーナーとある程度の距離があれば、目の前を通っても戦闘は起こらない。それが、実際ではどれほどの距離かはイマイチわからないが、どう行けば戦闘が起こらなかったのかは把握している。

1人目の淑女は草むらを通ればいい。2人目の紳士は普通に横を通り抜けれる。次の双子は少しややこしいが、彼女たちは時計回りにくるくる回ってるので、曲がる時さえ注意すれば見付かることはない。

 

ちょっとドキドキしながらではあったが、何の問題もなくスルーできた。今の俺に必要なのは経験値ではないので、目的地に着く方を優先する。

まあ後々考えてみれば、紳士淑女は労力に対し賞金が多いので、避けずに戦えば良かったのだが。

 

大きめの丘を上り下りして、砂浜とそこに面した巨大な崖まで辿り着いた。崖は濃い茶色の地肌を大きく見せていて、見上げても上に何があるのかは全く窺えない。

崖を左手に砂浜を歩くと、ずっと海側を見ているトレーナーと、タイミングさえあえばスルーできるトレーナーの2人がいる。これをそっと避け、崖が途切れたところですぐに左に曲がる。

少し離れた所に、スーツとサングラスの、どこの自由業の方ですかと言いたくなる男性が立っていた。ゲームでは2等身だったからわからなかったが、恐らく180はあるだろう。……こわっ!

砂浜で真っ黒のスーツとサングラスの強面長身。海を眺めてたかと思えばふらりと左へ数歩歩き、きょろきょろしてはくるりと体の向きを変え。……うーん。お目当ての人であってるんだとは思うんだけど、…如何せん話しかけにくい。が、まあ時間は有限であるわけで。

気合いを、いれましょう。

 

「あのっ!すいません!」

 

「あ゛?」

 

「失礼しました!!!」

 

この間、3秒。俺がかけた声に男性が顔を上げた瞬間にダッシュしていた。無理無理無理無理!!!何あれ!!893!?そういやなんでヤクザかって言うと、8+9+3=20はブラックジャックではクズ扱いだからだって聞いたんだが、まあ後付けなんじゃないかなってか本当に話しかけてすいませんでしたーーーっ!!!

 

「待ちなっ!!兄ちゃん!」

 

「はいぃぃ!!!」

 

男性の一喝に背筋をピンと立て足が止まる。ざくざく、と後ろからの足音に絶望的な気分になりながらゆっくり振り向くと、強面男性がずいっと右手を伸ばしてきた。

 

「さっきお宝をみつけたんだ。だがまあすでにみつけたものだったからな、兄ちゃんにゆずってやるよ」

「へ?」

 

咄嗟に出してた右手の上にポンと置かれたガラス製の白いビードロに、え?え?と男性の顔と掌の上のビードロに目を忙しなく動かす。

 

「明日もここで宝探しだ。なにかみつかるかもしれないから、ヒマなら来るといいんじゃないか?」

「へ、え、……あ、は、はいっ!!ありがとうございました!!」

 

ぽかんと呆けている間に目的は達成できたようだ。あれよあれよと進んだ感は否めないが、まあ無事に事を終えたので良しとしようか。

 

「……にしても、あの人あんな口調じゃなかったよな…?」

 

ガラス製の白いビードロ――そのまま、“白いビードロ”と称されるそれを手にしたまま、しばらく浜辺に呆然としているのだった。

 

ちなみにこの男性は毎日話しかければ何かしらの素晴らしい道具をくれる、お助けマンのような人だ。なかなか手に入らないアイテムも、どうやって入手しているのかは知らないが、この人にかかれば幾らでも手に入るお宝なのだ。俺の場合はこの人の目の前でレポートして、欲しいアイテムが出るまで粘ったりしてた。

貰えるのは、マグマブースターやアップグレード、プロテクターのようなポケモンの進化に必要なものや、ふといホネやラッキーパンチなどの特定のポケモンを強化するもの、そして俺が今回貰ったような、アイテムとしては使えないが、ある人に売ればそこそこの値段で売れるビードロ系がある。

さて、そのビードロだが、今作のビードロは「アイテムとしては使えないが」と前述したように、ゲームではもたせるやすてる、といった選択肢しかなかったが、実は以前のシリーズであるルビー、サファイア、エメラルドでは、つかうこともできたのだ。

入手するには火山灰を集めまくる必要があったが、その分強力な効果を持っていた。きいろビードロはこんらん状態を回復、あかいビードロはメロメロ状態を回復、あおいビードロはねむり状態を回復、といった具合に。しかも強力と言ったのは、これらが笛として使用するだけで得られる効果だったからだ。つまり、きのみやどうぐの消費が無い。ポケモンの状態異常を治すのに、ただ笛を吹くだけでいいのだ。

更に、今回俺が貰ったしろいビードロは「やせいポケモンとそうぐうしやすくなる」という効果を持っていた。くろいビードロは「やせいポケモンとそうぐうしにくくなる」という効果だ。これははっきり言って滅茶苦茶素晴らしい効果だと思う。スプレー系より効果は低いが、スプレー系と違い何度も使える。ポケモンとそうぐうしやすくなる、なんて、デルダマとかアレコレがあるから今でこそ不要とされそうだが、以前はそもそも有り得なかった。先頭にきよめのお札を持たせてくろいビードロを吹きまくってたのはいい思い出だ。

さあ、そんなビードロだが、前述した通り、今作では使用できなくなっている。だが、ルビーサファイアエメラルドでは使用できていたという事実があり、何より今は止める者がいない。もし旧作の効果が期待できるなら、それは選択肢が大いに広がることを意味する。

全ては、兎に角俺がビードロを吹きさえすればわかるのだ。まあ効果がわかりやすいように少し戻って草むらに向う必要はあるが。

しろいビードロだから、吹いて、やせいポケモンが直ぐに出てきてくれれば、俺の勝ち。何も変わらないor音が出ないなら、俺の負け。さあ、果たしてどう転ぶのか?

 

草むらに入り、まだポケモンが飛び出す気配がしない中、やせいのポケモンへの対策として出てきてもらったエーフィの横で、大きく息を吸った。ビードロに口をつける。そして。

 




お久し振りです。長らくお休みして申し訳ないです。
ストーリーは大量の伏線を張っていくつもりです。回収しきれるかはわかりませんが、そしてプロットを作っていないためにきっちり終われるのかも不安ですが、お付き合いくださると嬉しいです。
お気に入りして頂いてる数がそろそろ不安になってきたのですが、だ、大丈夫ですか、ね?見間違いとか夢じゃなかろうか…。感謝です。

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