始まりは欲望の街   作:ロピア

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第12話

 

「…ふう」

ブラックシティ以来3人目のトレーナーであるつりびとの相手を終えたところで、ようやく一息ついた。視界が悪いというのは思いのほか精神や体力を削っていた。まあ幸運にも、2人目のバックパッカー以後は道端にいるトレーナーにしては珍しく通路に背を向けており、また、いくら霧が深くとも人影は認知できたので、橋を普通に渡れば通り過ごすこともできるわけだが。

はいここ重要。普通に通れば、ね。俺はあまりの視界の悪さについ足を踏み外しましてね。まあただの平たい橋なんで手すりもなくてですね?間一髪海に落ちる所を助けていただいたお詫びにバトルしたというわけです。…霧を抜けるまではシャンデラを出しっぱなしにすることにしました。連れ歩きとかあったし、アニメでもサトシやヒロシや…まあみんなやってるからいいかなあ、と。出したのがシャンデラなのは明かりを得るためと、彼女は浮いてるので、まあまずいことにはならないかな、という考えの元だったり。(…すごく単純で誰も落ちないだろう橋に落ちかけた時点で、ポケモンを巻き込んで落ちる可能性を否定できない、なんて)

助けてくれたリョウスケさんのドジョッチは62レベルという見た目に似合わない凶悪さだ。続くヘイガニ、キバニアも62レベル。…シビルドンで瞬殺だったが、下手すればこっちが瞬殺される。外見だけで判断しないでよかった。ここらへんのトレーナーはレベルが高いポケモンを連れている可能性が高いが、進化させている可能性は低い。ゲームと違って相手のレベルがわからないので、注意する必要がある。

ちなみに、レベルはわからないが圧迫感みたいなものはある。自分が出してるポケモンより強いポケモンを相手が出した場合限定だが、レベルがわからない以上それでも十分重要な情報だ。

何故相手のポケモンのレベルがわからないか。これは簡単な話だ。トレーナーカードで見るポケモンの情報は、そのポケモンの入ったボールを使用するなどして、登録されてる必要があるのだから。相手の持つポケモンの数は分かるが、どんなポケモンかやどれほどのレベルかは全くわからない。全て???という表記になる。

さてここでゲームとの差異だ。相手のポケモンのレベルがわからない。そして今持っていない機器で関係のありそうなものは?――ポケモン図鑑だ。あらゆるポケモンの生態や生息場所を把握しているのならば、平均的な能力値も知っているだろう。――レベルとして強さを表示することもできるだろう。いうなれば、トレーナーカードはポケモン図鑑が一般に普及できないために、その劣化版の能力を備えているのではないだろうか。…まあ、ポケモン図鑑を持ってない上に、そこらの一般トレーナーは持ってないから確認のしようがないし、戯言にしか過ぎないのだけど。

 

リョウスケさんの4匹目はナマズンだった。…ちなみに62レベル。何かこだわりでもあるのか後で聞いてみたところ、全員を平均的に育てているからだそうだ。さっきから言っていたレベルも全部本人に聞いてたわけです。…俺、ダイヤモンドまでは結構偏った育て方してたから、なんか尊敬するなあ。ダイヤモンドではむしろ平均的に育てすぎて辛かったけど。主力メンバー15匹は苦いが楽しい思い出だったり。

3968円というむしろややこしそうな賞金をもらい、今度は落ちるなよーと見送られた。…はい、お手数をおかけしました。まさかこの歳になって足を踏み外して首根っこ掴まれると思わなかった。…ううう。

 

と、しばらく行った所で小高い丘とそこを上り下りする階段を発見。自転車を押しながら進むと、丘の上面は平たくなっていた。左右に草むら。看板もかろうじて見えた。書いてあるのは…と。

「14番道路」

お?と思う。道路の中ほどに道路の番号記した看板って立てないよな?むしろ入り口と出口に立てるものだよな?ちょっと期待しながら丘をまっすぐ進むと、いきなりがくんと落ちた。うわっ思わず声を上げるのとシャンデラが鳴き声を上げるのが同時。ぷわわん、と軽くなった自転車が無事丘の上に戻った。よく見るとすぐ先に下りる階段が見えて、背筋が冷たくなった。

「ありがと、シャンデラ。…小さくても丘だし、階段を自転車ごと踏み外すって…ほんとに危なかったよ」

「シャラン」

ぽっと強くなった光に照れてるのかな、と頭?を撫でた。ひかえめな性格だけあって、ぶんぶん体を振って否定していたけど。

 

今度は注意しながらゆっくり自転車のブレーキをかけながら押して下りた。ちょっと離れ右手側にごつい岩があって、左手側には何も無いから、右の壁伝いにゆっくり歩くことに。と、唐突に視界が晴れるのと足元に冷たい感触がするのは同時だった。ちなみに、今の俺の格好は冬物のスーツ。季節は恐らく秋か初冬かといった肌寒さ。…まあ言いたいのはとんでもなく冷たい水が革靴に浸入して凍えそうってことなんだけど。

そして視界に入ったのは――綺麗な浜辺に青い海。リゾート地として有名で、ある富豪一家やシンオウのチャンピオンシロナさん御用達のサザナミタウンだった。

 

「やべっ!革靴に塩水ーーっ!!」

 

まあなんとか昼過ぎに着いたことへの感動より何より、革靴が海水でぐっしょりの方が俺にとって重要だったわけですが。…サザナミに靴が売ってるとは思えないために、下手したら裸足になってしまうという恐怖が襲ってきたんだから。大きな入り江をダッシュで迂回しながら、本日1番の涙目になった出来事でした。

なお、慌てた割にしっかりと手入れしたら問題無かったのでほっとした次第です。みんな!まずは埃を取ってから水で濡らした布を軽く絞って拭くんだ!次に別の布を水に濡らし固く絞って拭くんだ!あとは完全に乾いてから通常の手入れをすれば問題ないよ!…ランニングシューズって、水辺も平気で歩けるんだぜ?知ってたか。…革靴とスーツでトレーナーって…それで山を普通に乗り越えれるって…ビジネスマンマジスゲェ。俺は運動靴でも今度買おうと思います。はい。

靴の手入れの仕方を皆大好きジョーイさんに教わってから、海辺らしく安値で売っていたビーチサンダルを入手して浜辺をうろついて、今に至る。ポケモンたちはミロカロス以外ポケモンセンターに預けて、今は潮干狩り。…に見せかけてしんじゅ拾い。サザナミのポケモンセンターの東にある絶壁をスルーして海岸を行くと、しんじゅやほしのすなを、1日1回拾うことができる。まだ鞄を持っていないが、小さなものならポケットに突っ込めばいいし、すぐに売りに行ってもいい。計1700円と侮るなかれ!…僅かでも生活費を稼ぐことができ、更にはポケモンは傷つかないのだ!なんと素晴らしいことか。ダウンジングマシンが無いために確かここらへん、と当てずっぽうになるのは仕方ないが。

 

ミロカロスちゃんと水浴びして、サザナミのポケモンセンターで眠る直前に、「あれ…なんで俺ここで普通に遊んでたんだろう」と後悔して終わるのだった。




革は水に弱いので、塩水ならもっと弱いのかなと思ったらそれほどでもなかったですね。引用はヤ○ー知恵袋さまからです。ちょっとずつ主人公がはっちゃけ始めています。読み直しながら修正していく必要がありそうですが、取り敢えず更新できる間は誤字などの訂正以外せずに突き進んでいきます。

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