呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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四か月ぶりの投稿です。ここ最近、色々ありました。

モチベーションを上げつつ、ちょくちょく上げていきたいと思います。




第弐拾玖話「 監 獄 (惨)」

見滝原中学校 校舎内

 

「えへへへへへへ。みんな、この状況が嫌なのかな?だったら、早く終わらせないといけないよ」

 

鼎 などかは、怯えている一人の生徒の頭を掴みその記憶に干渉する・・・

 

「嫌なことを終わらせる方法を教えてあげる。志筑仁美の邪魔をする二人を排除してほしいんだよ・・・二人は正義の魔法少女だから、あなた達を攻撃なんてできない」

 

虚ろな目で見上げる生徒になどかは、満足そうに笑みを浮かべた。

 

「こうやって見ると結構すごい光景だよね・・・これは・・・・・・」

 

現在 鼎 などかが居る場所は校舎の三階であり、学園全体が大きな瘴気に覆われ校庭には黒い西洋の悪魔を思わせる素体ホラーが無数に存在している。

 

魔女の結界を思わせる瘴気と邪気が蔓延し、至る所から濃い死の気配が漂っている。

 

「アニメだと、こういう光景は最終決戦間近の回だよね」

 

自身はラスボスの前に主人公の前に立つ幹部なのではとも考えたが、それでは普通に倒される嫌な役目だと思い大きく首を振るのだった。

 

「じゃあ、みんな。そろそろ行こうか・・・」

 

などかの声に応えるように十数人の生徒たちが立ち上がる。

 

「よーし!!!じゃあ、魔法少女がなんぼのもんじゃい!!!みんなで戦えば怖くなんかない!!!」

 

などかの指示に従い覚束ない足取りで生徒らは歩き出すのだった・・・・・・

 

「あっ・・・でもこれって、志筑仁美と一緒にいる二ドルって奴にもできることだよね・・・あっちと違って、頭を直接いじってるからなどかのほうがすごいよね♪」

 

などかの魔法は相手の意識に触れ、その特定の記憶に干渉するというものである。

 

応用すれば相手の自我意識そのものを破壊し、自身の思うままに操ることさえもできる。

 

一番嫌いな存在を”自身”だと思い込ませれば、単なる生きた屍となる。

 

彼女の使うそれは、完全に自我を破壊する為、二度と”元の人格”を取り戻すことはない。

 

「あ・・・あ・・・あ・・・あ・・・」

 

虚ろな目で自身が何者かも分からなくなった生徒達は鼎 などかの場違いな明るい声に従うのだった。

 

その様子を近くに隠れていた数人の女生徒が見ていた。

 

「な、なんなのよ。あの子は・・・いったい何が起こっているの?」

 

震える声でこの状況を理解しようと努めるが内側から湧き上がる恐怖によりままならなかった。

 

「分からないよ。何かが私達の学校に攻めてきたのは間違いない。誰よ、私達をこんなことに巻き込んだのは・・・」

 

「じゃあ最近の見滝原の噂は本当だったてこと?人を襲う怪物が出るって話が?」

 

「そうとしか考えられないよ。さっきの子は此処に襲撃してきた側だよ」

 

「ちょっと待ってよ。あの女の子は怪物を倒す側じゃないの?」

 

校舎を徘徊していた人と蠍を合わせたかのような化け物、さらには黒い西洋の悪魔の群れは明らかに人間を害する存在である。

 

事実、蠍の怪物に大勢の生徒、教師たちが切り裂かれ、命を奪われていた。

 

「・・・もしかしたらあの女の子は見た目は人間だけど正体はあいつらと同じ怪物かもしれない」

 

「じゃあ、怪物と戦う正義の味方はどうしてるのよ!!!私達をこんなことに巻き込むなんて!!!」

 

「私に怒らないでよ!!!どっちもどっちよ!!!正義の味方も怪物も!!!」

 

互いに罵り合い始めた二人に対し、数人の内”ニドル”が仕込んでいた魔針がその光景を志筑仁美に伝えていた。

 

 

 

 

 

 

『いい感じに盛り上がっているよ。仁美ちゃぁん』

 

「・・・そうですわね。巻き込まれた側にとっては、たまったものではありませんわ」

 

感情のこもらない声で志筑仁美は彼女たちの心情を察した。

 

「上条さんの不幸は美樹さやかの身勝手な願いから始まりました。魔法なんていう不確かなものを彼に押し付けた結果が取り返しに付かないことに・・・」

 

思い返すたびに自身の中の”憎悪”が強く燃え上がる。絶対に忘れるなと・・・

 

彼を不幸に突き落とした”魔法少女”を許すなと・・・

 

「思えば、巴先輩が美樹さやかに素質があると言って関わってきたから愚かな美樹さやかは、縋ってしまった」

 

魔法少女の世界は、本来ならば関わってはならないものかもしれない。巴マミが二人を勧誘しに来た時、佐倉杏子は反対の意思を示していた。

 

巴マミもまた”上条恭介の不幸”の遠因だった・・・

 

関わってはいけない”地獄”に誘ってきた彼女も自身の手で始末をつけなければならない。

 

魔法少女を希望の象徴と驕る彼女には、これ以上にない絶望と身の程をわきまえるよう思い知らせる必要があるだろう。

 

「資格があるから?魔法少女だから守る?誰もそんなことを頼んでもいませんし、望んでもいませんわ」

 

志筑仁美は、巴マミを追い詰めるために一手を打つ。これは希望の象徴である魔法少女にとってはこれ以上にない苦痛であろうと・・・

 

希望が絶望に歪む光景を想像し彼女は、禍々しい邪悪な笑みを浮かべるのだった・・・

 

かつての年端のいかない心優しい少女の面影はなかった・・・

 

 

 

 

 

巴マミと佐倉杏子の二人は、学園を探索しつつ志筑仁美を追っていた。

 

「何処にいるんだ?ナダサ、居るのは間違いないんだよな」

 

『そうだね。因果を高めるのならば自分自身も近くに居ないといけないからね』

 

「直接相手の命を奪うことで・・・なんてことを・・・」

 

マミは志筑仁美の行いにハッキリと嫌悪感を示した。

 

言うまでもなく、彼女の行いは最悪以外の何物でもなかったからだ。

 

誰かに唆された、脅されたとも思えない。仮にそうだとしてもマミは情けをかけるつもりはなかった。

 

「なぁ、マミ。仁美はさやかの友達なんだ。なるだけ手荒なことはと思うんだが・・・」

 

マミの表情を見る限りそういうわけにもいかなかった・・・

 

「・・・そうね。美樹さんのことを考えると・・・だけど今の志筑仁美に情けをかけるべきではないわ。こっちが付け入る隙を見せれば間違いなく付け込んでくる」

 

今の志築仁美は、例え泥をすする羽目になっても目的達成の為ならばいかなることもするだろう・・・

 

「前に美樹さんには嫌われたけど・・・今回も嫌われ役に徹したほうが良いもしれないわね」

 

自分は志筑仁美に手をかける。さすがにその命を奪うことまではしたくはない。

 

二度とこのようなことができない身体にさせてもらう。

 

「ったく・・・そういう風に一人で抱え込むな、マミ。とりあえずは殴って分からせてやればいいんだよ」

 

マミは一人で何もかも背負いがちである。そのことにため息をつきつつ自身も手荒なことをせざる得ないと彼女をフォローする。

 

「ふふふふ、ありがとう佐倉さん。ほんと私って駄目だな・・・」

 

「何言ってんだよ。駄目じゃなかったら、魔法少女なんかになっていないっての」

 

「それもそうね。佐倉さん」

 

この状況であるのに二人はお互いに軽口をたたきながら進んでいく。

 

先日までは会えば一触即発だったのだが、今は長い事コンビを組んでいたかのように二人の心は通じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

和やかな二人の雰囲気を断ち切るようにその知らせは唐突に学園全体に発せられた。

 

『学園の皆さんにお伝えしたいことがあります。今、この学園は恐るべき事態に面しています。

 

この場であえて説明するまでもないでしょう。

 

見たことも聞いたこともない怪物が現れました。これは、本来ならば私達の日常の外に居た世界の存在です。

 

この存在をこの学園に、私達の日常にこれらを連れ込んだ元凶、二人をこの場で告げます』

 

 

「志筑仁美?あいつ何をするつもりだ」

 

「っ!?!佐倉さん、最悪な展開よ。アレを見て」

 

頭上から響く志筑仁美の声に警戒を強める杏子。マミは、すぐ近くの学園に備え付けられている液晶掲示板に表示された画像に表情を歪めていた。

 

「なにって・・・アタシ達の顔じゃねえか!?」

 

掲示板に表示されていたのは、佐倉杏子と巴マミの二人の顔の画像であった。

 

さらに追い込みをかけるように、

 

『この学園に紛れ込んでいた異分子、佐倉杏子 巴マミ。この二人はあの怪物達と戦う為に存在する魔法少女です。二人は怪物らと戦う正義の味方にこそ見えますが、事実は違います。

本来怪物たちは、人に関わらないようにひっそりとしていました。それを自身の糧の為に狩るという野蛮な行いを人知れず行い、とうとう怪物たちの怒りを買い、彼らは強硬手段に出ました。それが今の学園の真相なのです』

 

「おいおい・・・何を言ってるんだ」

 

『不味いね・・・杏子、マミちゃん。この状況は・・・』

 

杏子とナダサは、事態の急変に声を上げる。

 

マミは周囲に息を潜めていた気配が濃くなっているのを感じる。

 

『怪物たちは自分の生活を脅かす脅威を排除したいだけなのです。彼らは自分達の平穏を取り戻すためになりふり構ってはいられないだけです。私は彼らの悲痛な声を聞き入れ、望みを叶えるために協力することにしました。そう、彼らはこの二人を排除できたならば、ここから撤退します』

 

志筑仁美の訴えに呼応するかのように息を潜めていた人達の敵意のようなものが強く濃くなっていく。

 

『私達のすべきことはただ一つ、魔法少女を語る二人の異端をこの手で制裁することです。私達の中から出てしまった膿は私たち自身の手で解決しなければならないのです!!!

 

さあ、みなさん!!!立ち上がってください!!!皆さんの平穏を奪った二人をその手で打ち倒すのです!!!!』

 

志筑仁美の訴えに呼応するかのように息を潜めていた生徒達、教師たちは各々武器になるものを携えて液晶掲示板が示す二人の場所へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

放送室を二ドルの助力を得て操作し、二人を追い込むために行った自身の一世一代の演説に満足したのか穏やかな笑みを浮かべた。

 

「本当に自分のことしか考えていないのですね。やはり無駄に貴重な生を消費するだけで何も生み出さない無駄な存在でしかありませんわね」

 

上条恭介を利用するだけ利用して、絶望の淵に居た彼を切り捨てたこの見滝原中学校の実態は、まったくもって愚か者の集まりでしかなかった

 

「君の言うとおりだよ。人間は無駄に数が多いだけの愚かな存在だ」

 

仁美の目の前に協力者である植原 牙樹丸が立っていた。

 

「植原さん、どうですか?調子は」

 

「・・・あぁ、楽しませてもらったよ。久々に沢山食べられてご満悦だ、若く新鮮な肉体は滅多に口にできないからね」

 

普段の陰鬱とした表情とは打って変わって晴れ晴れとした表情で植原 牙樹丸は志筑仁美に応えた。

 

その様子に志筑仁美も微笑み返す。

 

「それは誘った甲斐がありましたわ。お礼は弾ませなければなりませんね。わたくしも・・・」

 

気分が良いのか志筑仁美も自身の”因果”を収めるソウルジェムを見せる。

 

緑色の光にを放ち、これまでの行為により因果が彼女の”ソウルジェム”を満たし、あと少しで”奇跡”を叶えるところまで来ていたのだ。

 

「いいよ。ここまでしてくれたんだから、俺も”彼女”もこれ以上は望まないよ」

 

植原 牙樹丸の言葉に志筑仁美は穏やかに微笑む。

 

「腹ごなしに運動をしないといけないな・・・彼女も体型を気にしているからさ」

 

気味の悪い笑みを浮かべ、植原 牙樹丸はこの結界の中の敵対者へと向かう。

 

「食後の運動は結構ですが、もう少し後にした方がよろしいのでは?急激な運動は体に毒ですわ。その前に

 

志筑仁美は怪しく笑う。

 

「二人の魔法少女がどうこの状況を切り抜けるのかを見届けた後にしてもよろしいのではないでしょうか」

 

「そうだね・・・魔法少女は意外と厄介だから確実に倒せるようにしないと」

 

植原 牙樹丸も笑い返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

校舎内では多くの生徒や教師たちがそれぞれ得物を持ってある場所へ殺到していた。

 

この事態を終わらせるために、二人の少女を手にかける気でいる。

 

「お前たちのせいで!!!僕たちは!!!」

 

「私達を巻き込まないでよ!!!!」

 

「あの子が死んだ!!!あんた達が殺したんだ!!!!」

 

負の感情を露わにし、暴徒と化した彼らが罵っているのは、佐倉杏子と巴マミだった。

 

「この魔女め!!!人間のふりしてとんでもない事をしてくれたな!!!」

 

身長の高い男子生徒が血走った目で部活で使う金属製のバットを大きく振りかぶる。

 

「ちっ、待てよ!!あたし達は・・・」

 

この光景が妙に杏子には辛く感じられた。

 

言うまでもなくかつての自分に対して、決別の意思を示し、家族と一家心中をした父親と皆が同じ顔をしていたのだ。

 

「佐倉さん・・・こうなってしまった以上、説得はできないわ。生き残るために目の前のことしか見えていない。人間は死を間近にすれば周りのことなんか見えなくなるのよ」

 

かつて交通事故に遭った自身もまた死を強く感じ、助かりたいがために救いを求めて、キュウベえと契約を結んでしまった。

 

今の暴徒たちの心情もそれと同じなのだろうと察した。

 

「ったく、気分のいいもんじゃないな。古傷を抉られるみたいで・・・」

 

「彼女が私達の事情を知っててやっているのか、それとも私達が精神的に追い詰められると考えてやっているのか分からないけど・・・今の彼女は相当性質が悪いわよ」

 

杏子とマミは内心、この場に”時間停止”の魔法を持つ暁美ほむらの助力を強く願った。彼女もおそらくはこの事態に気づき、駆け付けてくれることを・・・

 

「マミ・・・随分と冷静じゃないか。こういう場面は精神的にくるんじゃないのか?」

 

「そうね・・・少し前の私ならこの状況に動揺し、錯乱していたのかもしれない。今は、何が何でも生き抜いてゆまちゃんとメイさんのところに帰らなくちゃいけない。それが私の望みよ」

 

「おいおい・・・正義の味方のマミさんはどうした?自分の願望の為かよ」

 

「ふふふ、そうね。それが意外と周りにもほんの少しだけ良い影響になっているかもしれないわよ、佐倉さん」

 

 

 

 

「さっきから何を言っているんだ!!!魔女たちめ!!!!!」

 

「うわああああああっ!!!!!!」

 

 

 

生き残るために必死なのか、目の前の二人を制裁すべく取り囲んだ暴徒達は荒波のように押し寄せてきた。

 

皆が皆、人が助かりたい一心で自身の感情を暴発させていく。統率はなくただ只管向かっていくだけだった

 

 

 

 

 

 

 

「佐倉さん!!!一般人だからと言って気を緩めないで!!!」

 

「分かってるよ!!!ったく、仁美の奴、あいつホラーに取りつかれてるんじゃないのかっての!!!」

 

荒波のように押し寄せてくる暴徒達を背中合わせに二人は見据えていた。

 

 

 

 

 

 

「もぉ~~~。こういうのは、などかの役目なのに、どうしてこういうことするのかな~~」

 

暴徒達が去った後、液晶掲示板に表示された二人の画像を横目に天井のスピーカーを鼎 などかは睨みつけるように見上げた。

 

「お嬢様もやるな~~~、よぉ~~し。滅茶苦茶な人達よりもみんなの方がずっと優秀だよ、なんだって、などかの魔法がかかっているんだからね♪」

 

虚ろな表情で続く集団の先頭に軽くステップを踏んで立った・・・

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

改めてみますと志筑仁美がここまで出張るまどマギSSも珍しいのではと思います(汗

臨機応変に対応しており、作中の敵役の中でも割とかなり厄介な存在と化しています。

現存する敵対勢力では、明良 二樹は依頼を受けて行動するが、話せば味方にできなくもない。

フェイスレスは、本能のままに動く獣にそのもの・・・

改めてみますと、明確に自身の野望を果たそうと行動している彼女は最も黒い存在になってしまいました。

こういう行動を起こせるのならば、何故上条君の時にと思わなくもないのですが。

杏子とマミさんは、ホラーや魔女ではなく暴徒と化した生徒や教師を相手にしなければならなくなりました。

志筑仁美の手に踊らされており、学園全体が敵に回ってしまいました。

増援は彼女らですが、どのタイミングで現れるのか?






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