呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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志筑仁美による”見滝原中学校”襲撃は、おりこ☆マギカの三国織莉子に近い行動を取っていますが、二人は似ているようで、あまり似ていません。

前書きですが、暗黒騎士異聞のほむらは、魔法少女になる前の三国織莉子とは分かり合えているという設定です。

ある時間軸では、ほむらの協力者兼相談相手として動いていたこともあります。

三国織莉子ですが、公式の外伝のみに出てくるので本編 TVアニメでは出てこないことと本編の魔法少女らが存在しない時間軸での活躍もあるので、居たり居なかったりという具合です。

居たらほむらは、織莉子のもとに行って彼女を魔法少女にしないように動きます。

こんな風に書きますとほむらが、割と良い感じのキャラになっています。これにも一応理由があり、TV本編と劇場版は似ているけど実は別の世界線の話と聞いたことがあり、暗黒騎士異聞のほむらは、廻った時間軸が先の二つとは異なっており、さらには姉 アスカ、兄 ジンの存在が居ることでそれなりにコミュニケーションが取れます。

バラゴと一緒にいることもあり知らず知らずのうちにカウンセリングも受けていました。





第弐拾玖話「 監 獄 (弐)」

鋼殻装甲が佐倉杏子と巴マミの二人により倒されたことに志筑仁美は舌打をした。

 

「相も変わらず役に立たない道具ですわ・・・」

 

せめて一人ぐらいは邪魔者を排除してほしかったが、鍛えた一般人程度に翻弄され、無様な醜態をさらす”彼”には、元々期待はせず、上手くいけばという考えが甘かった。

 

巴マミと佐倉杏子の二人の戦闘能力の高さは、自身の優位性を覆しかねないほどだった・・・

 

ホラーに対しての有効打を持つ魔戒法師兼魔法少女 佐倉杏子と見滝原を長く縄張りとしていた巴マミの魔法少女としての火力、広い魔法の応用性・・・

 

見滝原を縄張りにしていたのだから、それなりの実力を持っているとは考えていたが、自身の手駒である魔法少女らよりも強いかもしれないと・・・

 

香蘭から提供された魔導具と明良 二樹が紹介してくれたメンバーでも危うい・・・

 

自身の望みを叶える為に必要であるからこそ依頼している身だが、内心彼らは単なる烏合の衆でしかないと志筑仁美は明良 二樹を評価していた。

 

最高戦力ならば使徒ホラー 二ドルが存在するのだが、二ドルの気まぐれな性格を考えるとつまらないことをさせると機嫌を損ね、自身に危害を加える可能性もあり得るので当てにはできなかった・・・

 

「手に持っているこの魔導具の核さえあれば、彼は不滅なのですのよね」

 

蠍と髑髏を掛け合わせた不気味な腕輪型の魔導具の眼窩が輝き、口より一匹の蠍が吐き出された。

 

蠍は動画を早送りするかのように変化し、一人の少年へと姿になる・・・

 

「うわあああああああっ!!!!俺が、俺が!!!!!」

 

恐慌状態に陥り、頭を抱え絶叫する。

 

再生された彼は、先ほどの光景と記憶があり、殺された瞬間を覚えており、その時の感情が爆発していた。

 

苦しむように頭を抱えている”彼”を志筑仁美は冷たく、無機質な視線を向けていた。

 

それは道具を手にし、役に立つかを思案するかのように・・・・・・・

 

「・・・・・・一体ではどうにもならなそうですが・・・複数ならば・・・どうでしょうか?」

 

それは鋼殻装甲の実態を知っていれば、あまりにも悍ましい考えであった・・・

 

一人の人間の魂を取り込み、それを削り、倒されても再生させる”魔導具”に命じる。

 

「数を揃えなければなりませんわね・・・一匹の力が小さくても集団になれば・・・それは、それで大きな力になるでしょう」

 

海外では蝗の集団による”蝗害”もまた、数㎝ほどの蝗が集団になることで”災害”となる・・・

 

志筑仁美は、この蠍のような化け物の出来損ないを大量に発生させることでその力を大きくしようと考えたのだった。

 

戦いは数であると歴史の授業で習った。質の悪い兵器でも数さえ揃えれば、優秀な兵器が相手でも勝利することは可能であると・・・

 

見滝原中学校に派遣した戦力は、使徒ホラー 二ドル、植原 牙樹丸、魔法少女 鼎などかが中心ではあるが、二ドルがケートを開き召喚した”素体ホラー”達・・・・・・

 

ここで質こそは悪いが、鋼殻装甲を大量に発生させて、佐倉杏子と巴マミに対し、物量戦を仕掛け、消耗したところに植原 牙樹丸か素体ホラー達の餌として差し出して息の根を止めてしまえばよいと・・・

 

「二ドルが召喚したホラー・・・消費はしたくないですわね。彼らに対処するためにも・・・・・・」

 

志筑仁美は、この騒動に彼ら”魔戒騎士”が現れることを考えており、そのためにホラーを配置していた。

 

素体ホラーたちではあるが、すでに”陰我”を抱えたモノ、もしくは人間に憑依しているモノが複数・・・

 

これらは、校庭などに配置させ”二ドル”の”魔針”を駆使することで操作することが可能である。

 

恐ろしいホラーを強引に従わせる能力を持つ”二ドル”が面白がって協力してくれることに半ば不安さえも覚えていた・・・

 

その為には、二ドルを飽きさせないように”イベント”を開催しなければならない。

 

この”見滝原中学校襲撃”もイベントの一つに過ぎない・・・

 

「この先にも楽しいことはまだまだたくさんありますから・・・」

 

自身も成功に至るプロセスを確認しながら、ほくそ笑みつつも危険な・・・禁忌を犯している状況に高揚していた。

 

「ふふふふふふふふ・・・もうすぐですわ。もうすぐ助けてあげますわ・・・上条さん・・・」

 

魔導具 鋼殻装甲の核を弄びながらその内に取り込んだ”魂”を利用し、可能な限り数を出せと命じた。

 

鋼殻装甲の口より大量のサソリが吐き出されたと同時に、顔も背丈もそっくりな少年へと変わっていく。

 

悲鳴とも嘆きにも似た声が一体に響き渡るのだった・・・・・・

 

志筑仁美が背を向けた後には、同じ顔をしたサソリでもない人間でもない異形の少年たちが蠢いていた・・・

 

「「「「「「「あああああああああああああああっ」」」」」」」

 

吐き出されるたびに人間としての魂を削られ、人としての形すらも崩れていく・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはははははは・・・・・・あははははははははははは!!!!!」

 

人としての尊厳をなくし獣の・・・虫以下の下等生物・・・生き物ですらなくなった”存在”の行く末に愉悦を感じ、志筑仁美は笑った。

 

美樹さやかや暁美ほむらが知っている”彼女”の年相応なものではなく、あらゆる負の感情を弾けさせた”呪詛”にも似た禍々しいものだった・・・

 

昨晩、夢見が悪かったのか顔色は少しだけ青ざめており単眼となった瞳は揺れずに彼女の暗い”感情”に染められていた・・・

 

この世の全てを呪わずにはいられないほどの感情を秘めて・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見滝原中学校の教室では、数人の生徒らが一部の教師達と一緒に身を隠していた。

 

その生徒たちの中に鹿目 まどかの姿があった。

 

(一体・・・何があったの?まさか・・・三国織莉子・・・でも彼女は・・・)

 

ここではない別の”時間軸”の存在した未来を予知することができる白い魔法少女・・・

 

自身の生きる意味を模索し、その果てに世界に何れ”災い”を齎す”最悪の魔女”へ至る自分の抹殺を図った。

 

殺された”記憶”を見た時は、気が狂うかと思った。

 

故に彼女の存在に恐怖を覚えたがその三国織莉子は何故かこの”時間軸”ではすでに死亡していた

 

新聞のほんの小さな記事ではあったが、三国織莉子が自身を狙ってくることはないと安堵した・・・

 

原因は分からなかったが、敵対していた暁美ほむらと何かあったのではとも考えていた。

 

だが、暁美ほむらは別の時間軸での”三国織莉子”とは良い関係を築いており、それ以来、彼女が”魔法少女”にならないように事前に動くようになっていた。

 

ほとんどが、よくわからない”ロックバンド”の音楽を聞かせてファンにするという方法だった・・・

 

何かと”身の丈に合わない大きなことを成し遂げよう”と出しゃばる自分・・・

 

鹿目まどかと違って、三国織莉子は暁美ほむらの忠告を聞き入れ、彼女を悲しませることはなかった。

 

彼女は魔法少女に興味を抱くことはなかったのだ・・・

 

抱いても聡明な彼女は魔法少女の危うさを理解し、契約することはなかった・・・・・・

 

暁美ほむらと友好的になった三国織莉子は、彼女と良い関係を築くが暁美ほむらは、”鹿目まどか”を救うために別れを告げて”次の時間軸”へと去っていく。

 

三国織莉子を一人残して・・・

 

(結局私のあの言葉が・・・無責任な後悔がほむらちゃんを今も縛っているのかな)

 

自身を救うために時間遡行し、魔法少女の真実を伝えても自分を含めてほとんどの魔法少女は自身の”理想”の現実の姿を直視することが出来ずに彼女の言葉を信じなかった・・・

 

自身が身をもって知るまで・・・そして・・・あの約束を・・・呪いとして暁美ほむらにさせてしまった。

 

”わたし・・・魔女になんかなりたくない・・・だからキュウベえに騙される前の馬鹿な私を助けてくれないかな”

 

”あなたを救うためなら何度だって繰り返す!!!かならず!!!!”

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の爆発と魔女を思わせる嫌な気配が立ち込め、あっという間に学校は悲惨な現状に陥っていた。

 

先ほどまでいた杏子の姿がなかった。教室から出て行ってから、間もなくして、異変が起こったのだ・・・

 

(こんな時でも私は・・・魔法少女になろうと考え始めている)

 

もしも他の魔法少女が相手ならば、自身も力を得て立ち迎えるかもしれない。

 

その為には自分がここで立ち上がって、何とかしなければと・・・真っ先に浮かんだのが”魔法少女になる”という選択肢であった・・・

 

(でも・・・今何かをしなくちゃ・・・)

 

周りの同年代の子らは皆俯いており、表情は暗い。

 

みな怯えており、特に先ほどたどり着いた数人の生徒達の表情は酷く、大きく体を震わせていた。

 

何か恐ろしいものを見たのだが、それを口にすることができないほどの恐怖を覚えていた。

 

この状況はキュウベエにとっても契約するなら好都合ではないかとまどかは、不謹慎であると自覚しつつも考えてしまった。

 

様子を伺っているであろうキュウベエの姿を探すが、何処にもその存在を見ることはかなわなかった・・・

 

”魔法少女の契約”を真っ先に考えてしまうあたり、自分を含めて”記憶の中の鹿目まどか”は魔法少女に対し強い憧れを抱いているのだろう・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

”だからいったでしょ。どんなに頑張っても魔法少女じゃない貴女にはなにもできないって”

 

 

 

 

 

 

 

 

聞き覚えのある知らない誰かの・・・会いたくない誰かの声がはっきりと聞こえてきた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん、落ち着いて・・・きっと助けは来ます。それまで頑張って」

 

早乙女和子は異様な雰囲気に包まれている状況に不安を抱いている生徒らの緊張をほぐそうと声をかける。

 

(この状況・・・何かの事件・・・でも何のために・・・)

 

以前、カルト集団が別のカルト集団の施設に殴り込みをかけるという事件を聞いたことがあるが、この状況に得体のしれない”目的”があるのではと早乙女 和子は考えていた。

 

ここ最近の事件も一個人が起こしたにしては被害が大きく凄惨なものが多い・・・

 

学生時代、学園にテロリストが現れたらということを想像したこともあるが、実際に現れたら最悪以外の何物でもない・・・

 

今は少しでも生徒達の不安を和らげなければならない。

 

この異状な事態に強いストレスを感じ体調不良を訴える者も居る。一部の生徒は気分を悪くし吐き気すら覚えていた。

 

体育教師も居るが普段の勇ましい姿はなく、頭を抱えて蹲っていた。

 

彼もまたこの教室に逃げ込んできた者の一人であり、道中恐ろしい光景を目の当たりにしていた。

 

それは、宙に浮いた玉乗りをする奇妙な女道化師が人を喰らうという恐ろしいものだった。

 

さらには、校舎内を徘徊するサソリとも人間とも付かぬ”化け物”

 

人を絞め殺した木と人間のような怪人物など・・・

 

黒い西洋の悪魔すら徘徊していた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逃げこんできた生徒の一人に”魔針”が撃ち込まれており、それを介して志筑仁美が様子を見ていた。

 

「そこに居たのですか、まどかさん。貴女はこの状況になっても何もしないのですね」

 

”素質”を持ちながらそれを生かそうともしないかつての友人を軽蔑しながら、仁美は呟いた。

 

せめてこの状況に対して、皆の役に立つため”魔法少女”になって戦うべきではないかと鹿目まどかに厳しい意見を抱く・・・

 

自分に自信のない何処にでもいる気弱な夢見がちな少女 鹿目まどかは、何もできない意気地のない存在であり、どうせ生きていても役に立たないと評した。

 

だったら自分の願い、奇跡の為に”役立つべき”だと考え、自身の手で”生贄”に捧げる・・・

 

あの甘ったれな少女が今の自分を見てどんな風に表情を歪めるかと思うと愉快な気さえしてきた。

 

さらには、自分を救おうと考えているであろう美樹さやかに自分は、お前の知る志筑仁美ではないと知らしめる為に見せしめとして首を見せるのも悪くはないと・・・・・・

 

まどか達が隠れる教室に一歩ずつ近づく志筑仁美であったが・・・

 

「ちょっと待つのです。となぎさは言ってみるのです」

 

振り返ると見慣れない・・・この学園では、特別な行事がなければ居るはずのない小学生低学年程の少女がいつの間にか背後に立っていたのだ。

 

護衛の人型魔導具らも反応を示さなかった・・・

 

それに二ドルの結界内にこのような少女は今までいなかった。

 

「貴女は・・・いったい誰です?今まで貴女の存在はこの場にはいなかったはず」

 

警戒を強め、人型魔導具らに攻撃をいつでも行えるように指示を出す。

 

「う~~~ん。なぎさは、何でもないんですけど、まどかに手を出すのはやめてほしいと言いたいのです」

 

「・・・鹿目まどかの友人ですか?それとも・・・」

 

まさか、彼女を救いに来た存在とてもいうのだろうか?予想もしない邪魔者に舌打ちをするのだが・・・

 

「友人というよりもなぎさ達にとっては、とても大事な存在なのです。傷つけられたらとても困るのです」

 

「ますます分かりませんね。素質こそはあっても今の状況で何もしようとしない意気地なしにそんな価値があるとは・・・・・・」

 

鹿目まどかを庇う”なぎさ”という少女に対し、志筑仁美はこの得体のしれない少女に警戒心を強めた。

 

素質がずば抜けて居る為キュウベえは契約を持ち掛けるべきである。

 

だが、キュウベえはそれを行おうとはしていない。カヲルでさえも何が起こるかわからないと言っていた。

 

あんな意気地なしに大それたことができるとは思えなかった。

 

「・・・暁美ほむらの言葉を借りると”この時間軸”の鹿目まどかは、色々と都合がよかったと言います」

 

「この時間軸?暁美ほむら?・・・暁美ほむら・・・確か佐倉杏子と同じく転校してくるはずだった」

 

転校する前に入院先の病院から突如として姿を消し、今は行方不明となっている少女の名前である。

 

「なぜか、暁美ほむらがまどかの前に現れないのです。でも、すぐに会えると思うのです。二人の存在を中心に回ってきたのですから、そろそろ舞台が回ってほしいと願っています」

 

「舞台が回る?ワタクシの邪魔をするというのですか?だったら、容赦はしませんわ」

 

志筑仁美は侍らせている人型魔導具らに攻撃を行うように指示を出した。

 

それぞれの腕そのものの大剣を大きく振りかぶり、少女を叩き潰そうと迫るが・・・

 

「そんなに気を立てないでほしいのです。なぎさは、志筑仁美と戦う意思はないのですから」

 

ケラケラと笑いながら彼女の顔が少女の顔から、コミカルではあるが人ならざるモノへと変わっていくのだった。

 

赤と青のオッドアイを見開き、口を大きく開けたと同時に二体の人型魔導具に食らいつき、そのまま嚙み砕いてしまった。

 

それはかつて、現れた”お菓子の魔女”の姿に酷似していた。

 

首と頭部が別の生き物のように動く姿に志筑仁美は、こいつは一体何なんだと目を見開いた。

 

魔法少女のようだが、それにしてはあまりにも”怪物”染みたその姿を見て、自身の判断が早計過ぎたと反省するが・・・

 

「う~~ん。なんとも言えない味です。やっぱりなぎさは、チーズが食べたいのです。志筑仁美は昨日、いろんな人を招いてパーティーをやっていましたよね。なぎさも連れて行ってほしいのです」

 

元の幼い少女の姿に戻ると”チーズが食べたい”と言い出す姿に、なぎさという少女は人間ではない、ホラーでもない何か”異質な存在”であると志筑仁美は見ていた。

 

そんな異質な存在が鹿目まどかを求めている。

 

自身の楽しみもそうだが、そのために自身の望みを潰すようなことはあってはならなかった。

 

「・・・・・・わかりました。鹿目まどかには危害を加えません。ですが・・・傷つけない範囲で彼女には協力してもらいます」

 

彼女の意図を察したのか、なぎさは

 

「良いですよ。傷つけなければ・・・何かあるとせっかくのやり直しが出来なくなります」

 

「なぎさは、ありがとうというのです。”円環”の望みが果たせないとそれこそ一大事なのです」

 

自分の周りを得体のしれない何かが動いていたことに背筋を寒くするが、自身の望みを阻むことはないと考え、志筑仁美は自身から歩み寄るのだった・・・

 

「私から手を出したことは謝罪しましょう。なぎささん・・・厚かましい願いですが、わたくしに協力をしていただけますか?」

 

「なぎさはチーズが食べられるのでしたら、それでよいのですよ」

 

人ではないコミカルではあるが、人外の顔・・・魔法少女でありながら”魔女”の力を一部解放させて志筑仁美に笑いかけるのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

少しだけ時間を遡り、見滝原中学校 裏山・・・

 

「なにっ!?!今の!?!」

 

「近くで・・・すぐ傍で何かが・・・いえ、誰かが爆発させたようです」

 

驚くさやかが振り返るが、見滝原市に一瞬響いた爆発の中心地を探すがそれらしい場所はなかった。

 

ソラはそれが、事故ではなく誰かが意図的に起こしたものであると察した。

 

そして自分たちの目と鼻の先の距離でそれが起こっていることを・・・

 

「美樹さん・・・志筑さん・・・いえ、この場ではあえて志筑仁美と呼びましょう」

 

ほむらは、昨夜見滝原中学校で何かが起こることをエルダとともに占ったが、かつてのアスナロ市同様に使徒ホラーの持つ強大な邪気により先を見通すことが困難であった・・・

 

「まさか・・・仁美。アンタ、そんなことをしてまで”願い”を叶える気なの!?!」

 

見滝原中学校を志筑仁美が使徒ホラーとともに襲撃したことにさやかは、悲鳴にも似た声を上げた。

 

「恭介がそんなことを望まないってなんでわからないの!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の見滝原中学校は、普段と変わらない光景であったが、二ドルの結界が張られている為であった。

 

二ドルの能力も予め、ほむらの契約する”魔導輪 ギュテク”より聞いていた。

 

「魔法少女となった三国織莉子は・・・結果としては最悪の魔女の誕生を防いだ・・・だけど志筑仁美のこの行いは・・・」

 

見滝原中学校を襲撃するという事態にかつての白い魔法少女 三国織莉子を思わせる今回の志筑仁美の行いだが、彼女は自身の私利私欲の為に多くを生贄に捧げようとしている。

 

”上条恭介の復活”という、暁美ほむらが知る”不可能な願い”を求めて・・・

 

アスナロ市でも思い知らされた”死んだ人間”は帰ってこないことを・・・

 

”プレイアデス聖団”もまた死者の復活を願い、その願いにより生まれた”許されざる存在”。

 

見滝原でも同じことが繰り返されていることに・・・

 

人の業の深さは何処であろうとも変わらない・・・

 

三国織莉子は結果的に”世界を破滅から救う”という自身の正義に従っていたが、さらに突き詰めれば彼女は”メシア症候群”に陥っていたかもしれない。

 

魔法少女 三国 織莉子とは語らうことはなかったのでその真意は永遠に知ることはない。

 

「おいおい・・・プレイアデスのあいつ等が見たら精神的にキツイだろ・・・」

 

アスナロ市から来た魔法少女 ユウリも今でこそはアスナロ市のプレイアデス聖団のメンバーとは、和解しており、彼女達をここに誘わなくてよかったと思うのだった・・・

 

『何かを得るには何かを犠牲にしなくてならないとは言ったものだが・・・小娘の行いにしては、度が過ぎているな』

 

魔導輪 ギュテクが年端もいかない少女の行動に驚きの声を上げる。

 

魔法による奇跡は人の心を大きく変えることに・・・

 

少女達の抱える”陰我”の深さは、ホラーのそれと変わらないものであると・・・

 

『こちらもそうだが・・・バラゴのほうも何かあったようだな・・・』

 

「ギュテク。まだ、何かあるというの?」

 

『ほむらよ・・・志筑仁美は大きく動いているようだ。先日の保護した幼子にまた手を出しているようだ』

 

「まさか・・・千歳 ゆまを!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻 見滝原市 ビジネス街 屋上

 

「この太刀筋・・・何故、ただの絡繰り人形風情が・・・牙狼の太刀筋を・・・」

 

『魔号機人か・・・このタイプは我も初めて見る・・・それにこやつの太刀筋は・・・牙狼の中でも最強と言われたあの”男”のものだ』

 

バラゴの正面には牙狼の太刀筋を振るう骸骨の機械人形 魔号機人 凱の姿があった・・・

 

魔号機人 凱の振るう剣の型にバラゴもまた、この機械人形が誰を模したのかを理解したが、認めたくはなかった・・・

 

『・・・まさか先代 黄金騎士 牙狼 冴島 大河の剣を振るうとは・・・魔戒法師の技術は侮れんな。バラゴよ・・・』

 

驚愕ともバラゴへの嘲りにも似た魔導輪 ギュテクの言葉が響く・・・

 

魔号機人 凱の背後には、人型の号竜人が控えており、その脇には千歳 ゆまが抱えられていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

次回あたりでさやからが、見滝原中学校へ突入します。

メンバーは、ほむら、エルダとさらにはアスナロ市からのユウリです。

既に戦闘中のマミさんと杏子を含めれば、仁美らの戦力を上回るのですが、一番厄介な使徒ホラー 二ドルが居るので苦戦は必須です。

加えて学園内には他の勢力も来ているようです。

新劇の新キャラ 百江 なぎさが登場。志筑仁美と一時的に協力します。

同時進行でバラゴは、明良 二樹の放った魔号機人 凱と交戦しています。

魔号機人 凱は、冴島 大河のデータを用いられて制作されているという、バラゴにとっては許しがたい相手です。

バラゴに限らず鋼牙もまた魔号機人 凱は許せない存在でしょう。

魔戒騎士組ですが、バドとギルの両名もバラゴの近くにいます。

戦う相手は・・・察しの通りです。

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