呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

88 / 95
杏子とマミが中心に動いています。

今回、唐揚ちきんさんよりいただきましたあの娘も登場します。


第弐拾玖話「 監 獄 (壱)」

見滝原中学校は、使徒ホラー 二ドルの”魔針”による結界で覆われており、快晴だった空の青さは澱んでおり、敷地内全体を瘴気や邪気が蔓延していた。

 

「酷い状況ね・・・まるで紛争地帯に来てしまったとしか言えないわ」

 

マミは周囲を改めて見渡し、一部崩れた校舎、そして至る所から漂ってくる死臭と血の匂いに表情を歪める。

 

過去に報道番組や時折、雑誌などで紹介される紛争地帯の話のままの光景であった。

 

魔女の結界の方が、不気味ではあるがこの見滝原中学校の状況に比べればマシだと思う程に・・・・・・

 

「まったくだ・・・人が死ぬ光景ってのは、いつ見ても嫌なもんだな」

 

杏子はマミに同意するように爆発の中心であった場所に視線を向けた。

 

先ほどまで居た女生徒の身体は、判別がつかないほどに木っ端微塵に吹き飛んでおり、目を凝らすと若干ながら細かく飛ばされた肉片や血の跡が屋上の至る所に存在している。

 

「・・・・・・そうね。佐倉さん、早速で悪いんだけど、一体何がどうなっているの?」

 

”死”という言葉にマミは、背筋が寒くなる感覚を覚えるが、今は自身が最も恐怖する”死”よりも目の前の状況を聞かなければならない。

 

この状況を説明せねばとマミと向かい合うが、彼女と改めて向かい合うとこれまでの”険悪”ともいえる関係が脳裏を過った。

 

「あぁ・・・マミ・・・」

 

不安そうな表情を浮かべる杏子にマミは、その心情を察し・・・

 

「今までの事は、もう水に流しましょう。私が一方的な価値観で貴女を責めて、それでいて身勝手な感情で傷つけてしまった事を謝らなけらばならないのは私の方よ、佐倉さん」

 

杏子は、これまでのマミとの確執に臆していたが、マミは杏子がそのことに責任を感じることはないと笑顔で返した。

 

「いや、でも・・・マミは正しく魔法を使おうとしていたんだろ。それに引き換え、アタシは・・・」

 

自分の為だけに魔法を使おうと過去に提案し、そのことでお互いの意見が合わなくなり、別れ、互いに牽制し、会えば一触即発ともいえる関係に至った・・・

 

「正しい事ね・・・確かに皆が理想とする”都合の良い魔法少女”を私は求めていたわ・・・でも、それが本当に正しかったのかといえば、そうとは思えなくなってしまったのよね」

 

マミの意外な発言に杏子は思わず、目を丸くするが、構わずマミは続ける。

 

「元々私は、願いも持たなかった空っぽの魔法少女だったのよ。佐倉さんと美樹さんのように誰かの為に願ったのではなく、自分自身の命惜しさに両親を見殺しにして、生きながらえたわ」

 

マミの願いがどのようなものかを聞いたことがなかったのか、彼女の意外な告白に息を呑む。

 

「何もなかったからこそ、都合の良い魔法少女を理想として、誰かの為に戦う”正義の魔法少女”を心掛けてきたわ。笑顔で私に憧れを抱く視線を向けてくれる子も居たし、魔法少女であることにやりがいも感じてはいたのだけれど・・・」

 

「だけど?なんだってんだよ」

 

「いつも虚しさと空虚を胸の内に感じていたわ。理想であろうとするたびに・・・そう、私には迎えてくれる家族が居なかった・・・当り前よね・・・私が見殺しにしたのだから」

 

故に同じ志を持つ魔法少女を仲間として求めた・・・

 

だが、理想に反すれば対立し袂を分かってしまった。

 

「・・・・・・本当に今までの私は、なにも見ずにただの絵空事の都合の良い理想ばかりを見ていた」

 

佐倉杏子と美樹さやかのように奇跡を願ったモノのそれを理不尽に失って、奪われて、壊されてしまった彼女達の心情を察することができなかった・・・

 

暁美ほむらもまた彼女達と同じであっただろうと察せられる・・・

 

彼女もまた話してくれたのだ。自身もまた大切な人を亡くしたと・・・・・・

 

絵空事の現実すらも焼き尽くしてしまうあまりに救いようのない”世界”の”真実”に一時は、自暴自棄になり、誰かの為に奇跡を掲げ、怪異から人々を救うことに意味を見出せなくなってしまった・・・

 

「だけど・・・そんな救いようのない世界でも懸命に前に進もうとする子が居た。あの子の小さな手の温もりが大きくなるのならば、何もない私にもできることがあると気づいたわ」

 

マミの表情は、決意を秘めながらも何処か穏やかなものであった。

 

「マミ・・・お前、守りたいモノができたのか?」

 

「そんな大層な事を言うつもりはないわ。ただあの子・・・ゆまちゃんがいつか大きくなって、幸せになるまでは寄り添っていきたい・・・私を必要としなくなるその日までは・・・」

 

あの日、出会った小さな手の温もりを今でも忘れられない。あの手は、自分だけではなく、これから多くの人達に差し伸べられる温もりなのだから・・・

 

その時までは自分が守り抜こうと・・・

 

あの小さな手に救われた自分が千歳ゆまにできる精一杯の事なのだと・・・

 

「そうか・・・じゃあ、早くこの場を切り上げて帰らないとな・・・待ってるんだろ、マミの帰りを」

 

昨夜、マミは小さな女の子と一緒に過ごしていると聞き、その時間を邪魔してはならないとほむらとさやかが言っていた意味を杏子は改めて知るのだった・・・

 

巴 マミには”帰る場所”と”希望”が傍にあることを・・・・・・

 

「そうね・・・この事態を引き起こしてくれた存在がこれで収まるとは到底思えない」

 

マミは、既にこの見滝原中学校を襲撃した存在はいずれ、ゆまに危害を加えると考えていた。

 

その前にここで決着をつけるべきだと・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「結界に誰かが入って来たようですわ」

 

志筑仁美は、二ドルの魔針を通じて結界の状況をほぼ把握することが出来る。

 

何処に誰が居るのか、また結界の内側、外側を逐一確認することが・・・・・・

 

侵入してきた人物は、三年生の巴 マミであった。

 

彼女が把握する”魔法少女”の一人である・・・

 

「巴マミ・・・わたくしを蔑ろにした傲慢な魔法少女・・・それに佐倉杏子と・・・」

 

特別に手配した爆薬による衝撃にも拘らず、佐倉杏子が無事であったことに舌打ちを鳴らすが、さらに苛立たせる光景がそこにあった。

 

数日前までは、一触即発に似た険悪な雰囲気であった二人が互いに気遣っていることに・・・

 

互いに険悪のままであれば、巴マミの事も少しは許容しても構わないとさえ考えていたが、新鮮な”因果”を得ようとした際に邪魔をしてくれたことを改めて思い出す。

 

「わたくしの奇跡を邪魔するのであれば容赦しませんわ」

 

人間味を無くした瞳に狂気の色を浮かべ、首元にある”空のソウルジェム”は既に八割近く満たされており、緑色の輝きを鈍く放っていた。

 

「こちらも一人追加させてもらいますわ・・・鼎 などかさん・・・出番です」

 

『えぇ~~、途中参加なの~?てっきり、忘れられたかと思ったよぉ~~』

 

間延びし、やる気の無さそうな声を上げている”魔法少女”に対し志筑仁美は、協力者ではある彼女に対して、さらに苛立つのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

鼎 などかは見滝原中学校の通学路の近くに佇んでいた。視線の先には、同じ魔法少女である紫の髪の少女 綾目 しきみが居り、通りから離れたベンチに一人の少年を寝かしつけていた。

 

「しきみちゃん。本当に良いの?久しぶりに会った幼馴染なんでしょう?」

 

「良いんだ・・・ゆうちゃんとはもう一緒の世界には居られないから・・・少しだけだけど、楽しかったかな」

 

綾目 しきみが”ゆうちゃん”と呼ぶ少年 中沢 ユウキに対し、普段の彼女らしからぬ様子に鼎 などかもまた普段の彼女らしからぬ戸惑いを覚えていた。

 

普段の綾目 しきみの様子は冷酷非情をそのまま言葉にした振舞であり、目元も鋭く何かと”明良 二樹”に絡むし、お馬鹿な”不知火 リュウジ”には問答無用の蹴りを入れる。

 

逆に鼎 などかは自身の魔法である”忘却”を相手が戸惑っていても問答無用で行うのだが・・・

 

「などかは、憧れちゃうな。幼馴染でしきみちゃんの事を守ってくれたなんて、漫画でしか見たことのないというよりも漫画やアニメでしか存在しないと思っていたのに・・・実際にあるものなんだね。羨ましいぞ!!しきみちゃん!!!」

 

彼女もまた、綾目 しきみと中沢 ユウキの関係を羨ましいと思った。

 

自身の過去など既に欠片も覚えていない鼎 などかであるが、傍に誰かが居てくれたら、今とは違う人生を過ごしていたのではと考えてしまう・・・

 

「でも、勿体ないよね・・・まぁ、あのお嬢様のやることに巻き込まないようにする為にはこうする他に手はないかな~~」

 

志筑仁美発案の”見滝原中学校襲撃計画”について、鼎などかは特に何も思う事はなかったが、綾目 しきみだけは焦ったように見滝原に一足早く向かっていった。

 

そのことに少しだけではあるが気になり、見滝原で彼女と合流し、今に至っている。

 

「あのお嬢様絶対に、などか達の事を用済みになったら裏切るよ。火車さんがそう言っているから、ほぼ間違いないと思う」

 

「一般人を大勢・・・大量虐殺を企てて実行に移す人間なんてそんなものじゃないの」

 

自身の奇跡の為ならば、理不尽に他人を傷つけて・・・欲望を叶えようとする姿は・・・

 

(まるで・・・アイツだ・・・私がこの手で制裁すべきはずだった私を産んだあの女と同じだ)

 

綾目 しきみの脳裏に既に亡くなった・・・

 

用済みとばかりに理不尽に父と自分を捨てて何処かへ行き、自身の思うがままに振舞う憎むべき実の母の事を思い出していたのだった・・・

 

「しみちゃんがそれで良いのなら、などかは何も言わないよ・・・」

 

嫌な事は忘れるに限る鼎 などかであるが、綾目 しきみとは特別親しいと言うわけではないが互いに思うところがあるのか、一緒になると行動を共にする。

 

鼎 などかは良い意味でいい加減な性格をしており、人の事情を他人にアレコレ吹聴することはない。

 

その時に話してくれた綾目 しきみの母親についてだが・・・

 

(正直に言って自分勝手というかDQNなんだよね~~。しきみちゃん自身も苦労してて・・・お父さんは、DQNな母親の作った借金の返済を押し付けられて・・・その犠牲になったんだよね)

 

自身も碌な存在ではないとある程度自覚している鼎 などかも話を聞くだけで関わりたくないと思える人物だった・・・

 

なんとなくどんな母親であるか調べてみると、自身の美貌を武器に様々な男を渡り歩き、自身の欲望を叶える為に利用し、用済みとなれば捨てるというものであった・・・

 

しきみの話によると父親違いの姉妹も居るとのこと・・・

 

彼女自身は直接会ったことはないが、一人が病気であり、姉がつきっきりで看病をしており、匿名でしきみは、医療費を振り込むことで援助している。

 

様々な権力者に取り入り、甘い蜜を吸い続けた女にも因果応報が巡り、明良 二樹により”自殺”に追い込まれて、見るも無残な最期を遂げることになった。

 

綾目 しきみがその事を知ったのは、身元確認の為に警察に知らされてからのことだった・・・

 

元々、母親を憎み、何れ自分の手で始末をつけると誓ったものの誰かにそれを横から掠め取られたことに激し怒りを感じ、その誰かに”復讐”する為に、魔法少女の契約を結ぶに至った・・・

 

”魔法少女”については、過去にアスナロ市で助けられたこともあり、そういう力を得られるということを既に知っていたこともあり、幸いにも”素質”があった為に契約を結んだ。

 

そして知ることになる。”明良 二樹”の存在を・・・この男こそが自身の復讐すべき相手を掠め取り、自身が抱く怒りをぶつけるべき相手であることを・・・

 

(逆恨みっていう人も居るけど、しきみちゃんにとっては、それが全てだったんだよね。だからこそ、取り上げたフタツキの事が憎くて仕方がないんだろうね・・・殺したいほどに・・・)

 

鼎 などか自身は明良 二樹を殺したいほどの憎しみを抱いてはいない。

 

彼が居なくなったら、それはそれで寂しいとは思っていた・・・

 

『こちらも一人追加します・・・鼎 などかさん出番です』

 

今回の依頼主である志筑仁美の呼びかけに鼎 などかはこのまま忘れててほしかったと言わんばかりに、

 

「えぇ~~、途中参加なの~?てっきり、忘れられたかと思ったよぉ~~」

 

もう少し綾目 しきみとその幼馴染である中沢 ユウキの様子を見ていたかったが、呼び掛けられたのならば行かなければならなかった・・・

 

「しきみちゃん。などか、ちょっと行ってくるから、そのまま依頼を忘れてても良いよ」

 

「などか・・・」

 

自身の魔法である”忘却”を使い、綾目 しきみより今回の”依頼”を忘れさせた・・・・・・

 

「あれ?などか・・・どうしてここに居るの」

 

不思議そうに周りを見渡し、いつどこで合流したか分からない顔なじみの魔法少女に声を掛けた。

 

「なんでだろうねぇ~~。今日は、幼馴染君に久々に会いに来たんじゃないの?昨日はお楽しみだったんじゃないの?」

 

「ちょ、などか!?!」

 

何時になくおちょくる口調で話しかける鼎 などかに声を上げるが、彼女は背負向けて・・・

 

「見かけたから声を掛けただけだよ、などかは・・・などかと、この先、会うことがなければ忘れても良いからね~~」

 

手を振りながら、鼎 などかは去っていった・・・

 

その様子に綾目 しきみは自分は、昨日に幼馴染と再会し、楽しい時間を過ごし・・・何かから護ろうと考えていた・・・

 

それが何かを彼女が思い出すことはできなかった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「牙樹丸さんは、既に来ているし・・・しきみちゃんにこういう仕事をさせないのに限るかな」

 

鼎 などかは自身の濃いマゼンタカラーのソウルジェムを輝かせると同時に魔法少女に変身し、そのまま勢いよく見滝原中学校の敷地内へ飛び込むのだった・・・

 

「しきみちゃん、幼馴染くんの傍にしっかりと居てあげてね」

 

結界に飛び込むと何やら怯えている生徒の姿が視界に入り・・・

 

「えへへへへ。この状況が嫌なんだね・・・だったら、などかが忘れさせて上げるよ」

 

生徒に近づくと同時に恐怖で歪んだ生徒を視界に移すと同時にその意識に介入するのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・もう怖い思いはしないよ・・・だって、怖い事を忘れさせたからね・・・えへへへへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

校舎を進んでいくが、至る所に死の香りが立ち込めており、倒れている生徒達が疎らに存在していた。

 

その様子に先日授業で習ったかつての”ニルヴァーナ事件”を杏子は思い出し、苦々しい表情を浮かべる。

 

「佐倉さん・・・これが志筑仁美が求めているモノの為に払った犠牲だというの」

 

「あぁ・・・昨日のさやか達の話の通りだと”因果”を高めて”奇跡”を起こすつもりらしいぜ」

 

”因果”を高める方法が”生贄”を捧げるという行いであると話すほうも気分が悪いが、聞かされた巴マミは嫌悪感を露わにしていた。

 

『ん?杏子、マミちゃん。何かがこっちに近づいてくる』

 

ナダサが頭上より何かが近づいてくるのを感じ、二人に警告を促す。

 

マミはマミで”ソウルジェム”が”魔女”に似た何かが近づいている反応を示していることに気が付いていた。

 

生徒達が休み時間に利用する”レクリエーションルーム”に来ており、ここは放課後も生徒らのクラブ活動、特別授業を行う。

 

一種の体育館のような規模があり、雨の日はスポーツなどもできる。

 

そのホール天井から異形が下りてきた・・・それは・・・

 

「こいつ・・・昨日の・・・伯父さんの話のままだ・・・」

 

蠍と人を掛け合わしたかのような姿をした”異形の怪物”・・・

 

魔導具 鋼殻装甲に寄生されたとある”青年”の成れの果てである・・・

 

昨日倒された姿とは少しだけだが違っているが、指摘する程ではなかった・・・

 

「佐倉さん。この怪物は一体?」

 

魔女もグロテスクでな姿をしているが、この鋼殻装甲は”生理的嫌悪感”を抱かせるほど醜悪なモノであった。

 

「なんて言ったら良いか・・・」

 

『言いにくいならMeが説明するよ、杏子』

 

「ナダサ、お前はアタシを庇って傷ついてんだろ」

 

屋上での爆破から”力”を解放し、杏子の身を護ってくれていることにマミは、少しだけ不謹慎ではあるが表情を穏やかにする。

 

『NO Problem。説明だけなら、特に力まなくても良いからね』

 

一部が欠けているナダサは、少しでも緊張を和らげるべく声色は非常に優しいモノだった。

 

(良い相棒が居るのね。少し妬けちゃうわ)

 

ナダサの事は、道中自己紹介もあり、マミも驚いたが、しっかりと杏子の事を気遣っている事に僅かではあるが羨望を抱いた。

 

かつては友達とも思っていたキュウベえにナダサと同じ感情を抱いていたが・・・

 

今では、見かければ嫌悪感を抱いている。思えば、自分が危機に陥った時に助けてくれたことなど一度もなかった。

 

例え非力でも大切な仲間であるのならば、精一杯の意思で危機に立ち向かうだろう・・・

 

キュウベえにはその意思はなく、ただ契約ができれば、それで良いという腹立たしいことこの上ないものである。

 

魔法少女候補を傷つけられたくないという理由で千歳 ゆまを助けたが、善意ではなく外敵を排除したうえで上で契約に持ち込もうとしていたのだったから、悪質なことこの上なかった。

 

(今はキュウベえ・・・あのロクデナシよりも目の前のこいつね)

 

この異常事態にキュウベえは、何をしているのだろうかと考えが過るが、学校内の魔法少女候補に契約を迫っているかもしれない。

 

もしくは・・・この状況に巻き込まれて何処かに隠れていて、嵐が過ぎるのを待っているのだろうか?

 

『魔導具 鋼殻装甲に寄生された人間のなれの果て・・・ああなってしまったらホラーと大差ない呪いを振りまき、災いを齎す』

 

「まるで・・・魔女ね。こんなモノがこの世界に存在していたなんて・・・知らないことがあまりにも多すぎるわ」

 

魔法少女が倒すべき相手である”魔女”を思わせる、元が人間であったことも・・・・・・

 

(そういえば・・・佐倉さんは魔女が元魔法少女だってことを知っているのかしら?)

 

今の状況でこのことを言うべきではないと判断し、思考を切り替える。

 

昨夜、アスナロ市から来たメイ・リオンは、元魔法少女候補であったが契約をしなかった身の内をマミは、彼女から聞かされていた。魔法少女が認められない”残酷な真実を”

 

数日前のアスナロ市での騒動とそこで出会った暁美ほむらとの出会いも・・・・・・

 

魔法少女が絶望し、呪いを振りまく時、ソウルジェムはグリーフシードへと変化する話を聞いたときは軽く眩暈を起こしたが、今はまだ自分は絶望をしていない事と自分を慕ってくれる千歳ゆまと気にかけてくれるメイ・リオンの存在に巴マミは・・・・・・

 

(私は絶対に生き抜く。ゆまちゃん達を守り抜くために・・・どんなことがあってもね)

 

もしも千歳ゆまと出会わなければ、人知れず”絶望”し、”呪い”を振りまいていたかもしれない。

 

「・・・・・・性質の悪いモノがこの世にはあるのね・・・これも志筑仁美が用意したのかしら?」

 

「さやかの話だと・・・人型魔導具まで使って襲われたってよ」

 

ゆまの祖父母を殺害したのは、志筑仁美であるとマミは確信していた。

 

故に魔法少女に憧れ、その奇跡を手にすべく様々なモノを生贄に捧げる姿に・・・

 

「まったく絵空事ばかりみて・・・何を思って奇跡に縋るのかしら」

 

魔法少女の事を知りたいと懇願してきたのを覚えているが、魔法少女の素質がないのならば、危険な事に関わるべきではないと厳しく接した。

 

あの時の彼女への対応は傍から見れば冷たいモノに見えたかもしれないが、魔法少女は命懸けであり、安易になって良いモノではないという考えと経験からのモノであった・・・

 

鹿目まどかと一時的に行動をしていた頃は、素質のある子には積極的に勧誘するという矛盾した自身の行動を省みると呆れるしかなかった。

 

志筑仁美から見て巴マミは、傲慢な魔法少女に写っているだろう・・・

 

「さて・・・どうするよ。こいつ、アタシらを目の敵にしているぜ」

 

鋼殻装甲の頭部は人の目と蠍の目がそれぞれ存在しており、杏子とマミの姿を映し出した。

 

『うわぁあああああああっ!!!!』

 

尾節を大きく振り上げ、蠍の尾の毒針を思わせる針を二人の間に勢いよく振り下ろした。

 

攻撃力は意外と強く床を破壊し、細かい破片が飛び散るが二人は勢いよく回避する。

 

「ったく、こいつ、昨日よりも化け物っぽくなってるぞ。吹っ切れたのか?」

 

『そこは、分からないね。鋼殻装甲に囚われた魂は、核を破壊されない限り、魂を削り再生される。しかも魂は補修はされずに削られ、細かくなっていく』

 

「って・・・アイツは昨日の奴と違い色々と削られているのか?」

 

『他にも理由はありそうだけど・・・鋼殻装甲に囚われた魂は最終的には、さらに細かく削られ最終的には原始的な本能だけの存在になる』

 

「原始的な本能?ナダサさん・・・それは一体?」

 

『人間を捕食し始めるんだよ・・・生物の原始的な本能にして行動、”捕食活動”だよ』

 

あまりの残酷な真実に最終的には、人としての尊厳もなくただの怪物に・・・それも蟲の様な存在として永遠に存在し続ける・・・魔導具の核を破壊されない限り・・・・・

 

仮に破壊してもその魂は破損しており、鋼殻装甲が破壊されると同時に消滅する。

 

あまりにも救いのない結末である。かつては、親より体と命を名前を貰ったのに、今のその悍ましい姿は何だ巴 マミは目の前の”異形”に問う。

 

(貴方も私と同じく人として生まれたのに・・・その様はなんなの?)

 

異形は答えることはできないだろう・・・

 

いうまでもなく、人としての生を捨て、”力”を求め、なるべくしてなったのだから・・・

 

「そういうことならば、私たちのやるべきことは、この人をここで倒して人として眠りにつかせてあげることね」

 

「マミ・・・ここは、アタシ達が・・・」

 

元が人である存在を討滅する業にマミを巻き込みたくはなかったが・・・

 

「何を言っているの・・・お互いに協力をしないといけない状況よ。前の私みたいにそっちの価値観で私を除け者するなんてなしよ。佐倉さん」

 

マスケット銃を構え、笑みを浮かべるマミに杏子は

 

「ったく・・・前は危なっかしかったのに、見ないうちにすっかり逞しくなりやがって」

 

見た目も変わったほむらもそうだが、マミも会わない間にその内面は大きく変わっていた。

 

「久しぶりね。二人で戦うなんて・・・」

 

まさかこのような日が再び来るとは思わなかった。

 

「あぁ、逞しくなったな。マミ。そんじゃ、よろしく頼むぜ」

 

槍を構えマミのマスケット銃と交差させ、互いの”意思”を汲む。

 

「じゃあ、行くぞ!!マミ!!!」

 

「ええ!!!佐倉さん!!!!」

 

二人は互いに駆け出し、杏子も槍を構えて向かっていき、マミはマスケット銃を後方に展開させ、それらを一斉に”鋼殻装甲”へと放った。

 

甲殻類を思わせる外骨格で巴マミの砲撃を抑えるが、一斉に放たれた衝撃を抑えることは難しく、僅かに体制を崩してしまった・・・

 

『!?!うぅわああああ!!!!』

 

蠍を思わせる口部より赤い溶解液をマミに向って放つ。

 

「あまり良い見た目の攻撃手段ではないわね。でも、時間をかけられないから一気に行かせてもらうわよ」

 

マミはリボンを収束させて最高火力を持って鋼殻装甲の攻撃を防ぐとともに、強烈な一撃を加える。

 

「ティロ・フィナーレ!!!!」

 

最大火力を持った放たれた一撃は開かれた口部に真っすぐ向かい、衝撃とともに頭部を含んだ胸から上を吹き飛ばしてしまった。

 

「相変わらずの威力・・・前よりもパワーアップしていないかマミ?」

 

以前にコンビを組んでいた時も巴マミの必殺技である”ティロ・フィナーレ”の威力は良く知っているが、今までに見た中での最大の一撃であった。

 

『鋼殻装甲はホラーではないから、ダメージは十分に通るみたいだね。だけど、再生能力は健在のようだね』

 

失った上半身を再生させようと蠢いているが、これを逃すつもりはなく佐倉杏子は魔導筆を持って再生途中のその体に術を持って魔導力を打ち込むことで内側より崩壊していった・・・

 

昨日叔父より対処方法を聞かされており、鋼殻装甲の強さは寄生された人間の素質に大きく依存され、また魔導具が依り代になる人間を作り替え、操るため、魔戒法師の術の心得があれば十分に対処ができるし、また一般人であっても、チャンスがあれば十分に撃退が可能であることも・・・

 

「魔法少女よりも今のアタシは、こっちのほうが好きかな」

 

魔導筆を構えて、誇らしげに笑う佐倉杏子であった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

巴マミ覚醒。というよりも完全に覚悟を決めました。

カットしたんですが、アスナロ市よりやってきた元魔法少女候補 メイ・リオンより、色々と話しを聞き、彼女より魔法少女のことを聞かされて、ゆまと一緒に”家族”になろうと提案されています。

メイ・リオンも天涯孤独の身の上であり、マミとゆまの事を放っておけないという少し一人よがりではありますが、二人に手を差し伸べ、受け入れるということがありました

そして、最後に綾目しきみが登場。まさかの中沢君と・・・・

お楽しみでした(笑)今回、見滝原にやってきたのは”彼”を志筑仁美の凶行から遠ざけるためでした。

明良 二樹に恨みを抱き、制裁する機会をうかがっています。結構屈折したキャラになってしまいましたが、こういう感じでよろしかったでしょうか?

なのかとは、割とよく話しますし、なのかもなのかでしきみに対しては、割りと優しいです。

遊びの設定として、環 いろはの父親違いの姉というモノがあります。

公式での両親もいるんですが、この時間軸では綾目 しきみの母親がとんでもない女ですので、いろはは、父親が再婚して、今の過程に至ったという具合です。

しきみの容姿は忌み嫌う母親と容姿が瓜二つなので環 いろはの前には現れず、妹であるういの治療費を援助しています。

いろはもいろはで、実の母親を嫌っています。もしかしたら、二人はどこか出会うかもしれません・・・・・・


改めて、唐揚ちきんさん、ありがとうございました!!!



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。