呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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見滝原中学校襲撃編がいよいよ開始です。

志筑仁美の現在のスタイルですが、左目が二ドルに潰され、眼帯をしています。

今更ではありますが・・・・・・

左目は二ドルの居住スペースです。






第弐拾玖話「 監 獄 (序)」

見滝原中学校の屋上より上がった爆炎と轟音は、その一撃を持って”日常”を破壊した。

 

爆発により屋上の一部が倒壊し、それらの残骸が校庭に降り注ぎ、窓ガラスを割り、多くの生徒達の悲鳴と混乱の声が学園全体に広がる。

 

今回、志筑仁美が使った爆薬は、たった一握りで大型航空機を破壊することが出来る代物である。

 

それを女生徒の身体中に大量に巻き付けることによりその威力は凶悪なモノに変化し、

 

その威力は学園の屋上を破壊するに至った。

 

教師らも突然の事態にパニックを起こし、ある者は我先にと逃げ出し、またある者は生徒の身を案じて落ち着かせようと声上げる。

 

校門から逃げようと多くの生徒達が駆けていくが、入り口を中心に奇妙な模様が浮かび上がり学校全体を覆っていく。

 

それは”結界”であり、生徒たちは、学園の中に閉じ込められてしまい、見えない壁に殺到するが一部の生徒がパニックを起こした者達により転倒し、踏みつけられ、圧死してしまった。

 

結界が張られる前に学園にいつの間に来ていた志筑仁美はその様子を嘲笑った。

 

彼女が居るのは、野球部のベンチであり、そこで無様に悲鳴を上げる生徒達に対し・・・

 

「ふふふふふふふ・・・無様です・・・・・・ちょっとしたことで、慌てふためくなんて・・・もう少し落ち着いたらどうなんでしょうか?」

 

遠目から見ると、普段は周りよりも身体が大きく運動ができるということで威張り散らしていた生徒もいたが、この状況に涙目になって怯えていた。

 

首から下げている”空のソウルジェム”に”因果”が満ち、輝きが強くなっていく・・・

 

「ふふふふふふ。皆さん、盛大にやっちゃってください」

 

人間味を無くした狂気の色を浮かべた笑みと単眼となった瞳を学園の責任者が居るであろう”校長室”へ足を進める。

 

彼女は、誰一人としてこの学園に存在するモノを生かしておくつもりはなかった・・・

 

全てが”憎悪”の対象であり、自身を”絶望”の淵に堕としてくれた・・・・・・

 

彼を利用するだけ利用し、価値がなくなったら容赦なく捨てたこの”見滝原中学校”も絶望を彼に見せた。

 

故に彼女は、この学園そのものを”生贄”として捧げる・・・

 

一方的で唐突な通告であった・・・

 

突然の一個人の”狂気”により、この場に居る多くの命が犠牲となっていく・・・

 

『仁美ちゃぁん。ワタスも遊んでいいかなぁ~~』

 

眼帯の奥に存在する使徒ホラー 二ドルがこれまでにない喜色の表情を浮かべていた。

 

この惨状を”遊び”と発言する二ドルの神経は人から見ても・・・ホラーからしても異常なモノであった。

 

「いいですよ・・・佐倉杏子が死んでいなくても直ぐには動けませんわ」

 

二ドルの力を借りるまでもなく、香蘭より譲り受けた幾つもの”魔導具”もあり、護衛としての人型魔導具もこの瞬間に侍らせている。

 

二ドルは、このまま遊ばせても良いだろうと判断し、自由行動を仁美は了承する・・・

 

学園全体を”檻”にすることができたのは、二ドルの能力の賜物であるため、褒美は与えるという考えからであった・・・

 

志筑仁美の意図を内心笑いながら、二ドルは玉に乗った女道化師の姿となって学園の校門へと降り立った。

 

現れた奇怪な道化師に青ざめる生徒達だったが、彼らの事を意に介することなく二ドルは・・・

 

『いただきまぁ~~す♪』

 

一筋の光すら差さない黒い穴が開くと同時に十数人いた生徒たちの姿が一瞬にして消え去ってしまった。

 

咀嚼し、軽くゲップをした後、二ドルは満足そうに再び笑う・・・・・・

 

『ほほほほほほほほほほほほ♪もっと、もっと・・・楽しくなりそうだね。やっぱり、人間界は楽しくて飽きないんだな、楽しくなりそうじゃなくて、楽しいんだな。本当に・・・』

 

使徒ホラーに数えられる二ドルではあるが、二ドル自身は”使徒ホラー”の名に興味も誇りもなく、自分が他のホラーよりも強いのは、元々である故に、それを特別だとも思ったことはなかった。

 

昼間ではあるが、結界を作り上げることにより”夜”と同じように本来の力が発揮できる。

 

『仁美ちゃんの助っ人だけじゃ、少し手が足りないかもねぇ~。ワタスも助っ人を呼んじゃおう』

 

二ドルは、魔針の能力を発動させると同時に”陰我”のゲートを幾つも開くと同時に魔界より素体ホラーを召喚したと同時にそれらに”魔針”を撃ち込むことにより、完全に自身の手中に収めた。

 

『き、貴様っ!?!二ドル!?!』

 

『奴の開いたゲートだったのか!?!じょ、冗談じゃない!?!』

 

素体ホラー達は二ドルの姿を確認するやいなや、先ほどの生徒らのように逃げ出そうとするが、二ドルの”魔針”を撃ち込まれたことにより、激痛と共にその意志を消され、二ドルの忠実な操り人形となる。

 

『そこまで嫌わなくても良いのに・・・ワタスの話を聞いてくれたら・・・人間を沢山食べさせてあげるよ』

 

二ドルの魔針から逃れた数体の素体ホラー達は”ホラー喰い”とも呼ばれる”二ドル”に従う事がこの場でできる最善の判断であると察するのだった。

 

仮に”適合”する”陰我”があり、憑依したとしても二ドルに”力”で勝つこと等できないのだから・・・

 

満足そうに笑う女道化師の声が学園の校庭に響き渡る・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・まるで監獄だ・・・・・・」

 

つい先ほど爆炎と轟音が響いたが、見滝原中学校の光景は”いつも”の日常であった。

 

一瞬だけ”非日常”の光景が映るのだが、すぐに”二ドル”の結界により、覆いつくされ誰もが普通と思う”日常”の光景を映し出している。

 

この”結界”は非常に面白い性質をしている。

 

外からならば誰でも入ることが出来るのだが、中からは決して出られないというモノである。

 

中からは外の様子が見られるが、外側からは中の様子は見えず、いつも通りの日常として認識されるというモノ・・・

 

過去にここではないが、自分も学校に通っていた頃があったと回想するが、決して懐かしくも思わず、ただ単に記憶を思い起こしただけであった・・・

 

あの頃の”植原 牙樹丸”にとって、学校は監獄以外の何物でもなかった・・・

 

”義務教育”の過程で過ごした少年時代は決して輝かしいモノではなく、”日陰者”として過ごしていた。

 

「・・・・・・お祖父ちゃんは、戦場カメラマンだったんだよな・・・・・・」

 

カメラを構える仕草をし、植原 牙樹丸はシャッターを切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

”どうして祖父ちゃんの写真っていつも、祖父ちゃんがビビってるのばっかり写ってんの?”

 

”あぁ、それはな。祖父ちゃんにとって、怖い場所だからだよ”

 

笑いながら、建物の影に隠れ小さくする姿だった。

 

”怖いのにそんなところに行ったんだよ?怖かったら行かなきゃいいじゃん”

 

”ハハハ。お前の言うとおりだな。こういう怖いところだってことを伝える人が居ないと、何も知らないままで変わることなんてありえない”

 

戦場カメラマンとして、紛争地の現状を伝える為に赴き、その凄惨を語るなど講演活動をしていた。

 

”お前にだけ言うけど、祖父ちゃんはな・・・人の死を覗くことが好きでな。伝えなければならない使命感もあるが、一番の理由はそれだ”

 

祖父は、かつて”第二次世界大戦”を幼い頃に経験し、その時の光景が今も忘れられなかった。

 

恐ろしい光景ではあったが、それと同時にこれ以上にない”スぺクタル”を後になって感じたと聞かされた

 

”恐ろしいところで勇ましくできるなんて、誰も出来やしないさ。わたしのように人の死を覗くの好きであると同時に人よりも臆病であるからね”

 

そんな恐ろしい場所で使命感に燃えて”英雄的”な働きをできる人が居るのならば、いかれた狂人以外の何者でもない。

 

植原 牙樹丸は、祖父という人間が好きだったし、何よりも正直にありのままを伝えようとする姿勢を尊敬していた。

 

歴史の学校で過去の”独裁者”を本人が居ないということを前提に”度を越えた悪口”を並び立て、叫ぶ品のない教師やそれに同調して、心無い言葉を”感想”として書き出し、それを”教育”とする行いを心底彼は嫌い、人間と言うモノに嫌悪感を抱くようになった・・・

 

育った環境、国によって人の考え方は違い、一つの価値観で裁くことは一方的な押し付けであると穏やかに語ってくれた。

 

そんな祖父がある日、戦場で亡くなったと聞かされた・・・

 

悲しみに暮れる中、彼が嫌悪する教師は”自業自得の死”であると罵り、臆病者の癖に不相応な事をした馬鹿な爺と大勢の生徒達の前で語り出した・・・

 

”臆病者の癖によくやったもんだよ。この祖父さんは、本当に馬鹿な祖父さんと言うのはこういうのを言うんだぞ、お前達”

 

あまりの言い草に植原 牙樹丸はその教師に飛び掛かり、殴りつけたが、大人の腕力に叶わず、結局彼は問題児として白い目で見られ、日陰者として過ごすこととなった・・・

 

”祖父も祖父なら、アレもアレですね”

 

”臆病者の身内だ!!怯えろよ、お前の爺みたいによ!!”

 

あそこは、まるで”監獄”のような・・・というよりも人間とは名ばかりの喋る礼儀も何もない”猿”を閉じ込めておく檻だった・・・

 

そんな喋る猿が卒業し、真面目な一般人らしく振舞う光景に反吐が出た。

 

酒が入れば暴れ、子供の方がまだマシと思えるぐらい騒ぎ立てる。

 

だからこそ”この国”が嫌になり、海外へ、まるで祖父の足跡を辿るかのように海外での支援活動をボランティア活動を行うようになった。その過程で、講演活動も必要ならばこなした。

 

かつて自分を、祖父を侮辱した教師らはそのことを忘れており、恥知らずにも”立派な卒業生”として講演を依頼されたが、当時の事を覚えているかと問いかけた時、青ざめた表情をしたときは良い気味だと内心笑った・・・

 

去り際に・・・

 

”君に言ったことは、謝りたい・・・だから、水に流してもらえないか?”

 

自分の・・・学校の品位を傷つけたくないから、歩み寄ろうとしており謝罪も形だけであった。

 

祖父の死を笑いものにしたことを謝罪をしておらず、そのことを覚えてすらいなかった・・・

 

まだ”猿”の方がマシだと思う程だった・・・人間とは”猿以下”の獣だと考えるようになった・・・

 

彼は増々、”人間”が嫌いに・・・憎悪と嫌悪を抱くようになる・・・

 

無駄に数だけが多く世界中どこにでもいる人間は、共通して身勝手であり、自分の為ならば、獣の方がマシとも思える下劣な行為に及ぶ・・・・・・

 

そして、彼はとある国での紛争に巻き込まれ、死の狭間である存在に助けられた・・・

 

木々が騒めくように、そして笑う女の嘲笑に似た声で語りかけてきた・・・

 

『ワタシ、ニンゲンヲ・・・タベタイ・・・テダスケヲシテホシイ』

 

それは、人を捕食する”上位”の存在だった・・・

 

無駄に数が多く、抑制する存在が居ないだけにやりたい放題な嫌悪すべき人間を抑止する”魔界樹”の存在を受け入れ、その手伝いができることを彼、植原 牙樹丸は今までの人生で感じたことのない幸福感を得た。

 

魔界樹をその身体に宿し、”彼女”に奉仕することこそが、最も尊い行為であると・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ここに居るのも礼儀も何もない喚くだけの喋る猿だけか・・・」

 

志筑仁美のいうように、この先無駄に生きてただ息をするだけの何の価値もない存在・・・

 

植原 牙樹丸は、大いに彼女の”考え”に同意する。

 

現に今も聞くに堪えない悲鳴だけが聞こえ、とてもではないが人の叫びとは思いたくはなかった・・・

 

目の前に生徒を放り出して逃げ出そうとしている教師が目の前に駆け込んできた。

 

「よ、よかった!!!た、助けてくれ!!!」

 

植原 牙樹丸は裏口から学校へと侵入すると同時に飛び出してきた教職員に対し、腕を鞭に変えてそのまま締め上げるように、息の根を断つのだった・・・

 

締め上げとと同時に教職員の身体が持ち上がり、徐々にその姿がひび割れ、干からびていく・・・・・・

 

植原 牙樹丸より笑う女の様な木々の騒めきにも似た声が辺りに響き渡るのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

校内に入り込んだ志筑仁美は、足元に転がるジャージ姿の教員の姿を視界に映した。

 

教員は既に息絶えており、何か恐ろしいモノに出会ったのか顔は恐怖で引き攣っている。

 

至る所が鋭い何かで切り裂かれており、足元には血だまりが広がっており、子供が水溜で水遊びをするように彼女は少しだけ、燥ぐようにステップを踏む。

 

匂いは少々刺激的ではあるが、血が弾ける光景は、ここ最近の彼女にとっては楽しみとなっていた・・・

 

「あはははははははは。こんなにも楽しいなんて!!!!今までのわたくしは何を遠慮していたのでしょうか!!!!」

 

狂ったように笑い、志筑仁美は今の自分自身を心地よく感じていた。

 

名士の出であるが故に人目を気にしていたこれまでの自分はなんと滑稽だったのだろうと・・・

 

実の父親をその手に掛けた時のあの凶器が肉の身体に沈む感触が忘れられない・・・・・・

 

母に関しては”絞殺”で手に掛けたが、物足りなさを感じた・・・

 

”因果”を直接集めるのならば、この手で・・・

 

ここ最近手に馴染んできた”ナイフ”を取り、ゆっくりと進む。

 

「今のわたくしでは、一般人程度でしかありません。因果を高め、このソウルジェムに輝きを満たした時が本当に楽しみですわ」

 

彼の復活もそうだが、自身が”力”を得ることにもまた心を昂らせる。

 

「わたくしを止めたいと願う愚かな美樹さやかをこの手で絶望させるのも悪くないですわ」

 

未だに自分の事を友達だと言っている愚か者には現実を見せると志筑仁美は歪んだ願望を抱く・・・

 

持ってきた蠍と髑髏を掛け合わせた魔導具が反応する。

 

「あの正義も味方さんも仕事をしてくれてますわね・・・」

 

頭上を巨大な蟲を思わせる何かが過った。それは、先日の”鋼殻装甲”と酷似した異形であった・・・

 

 

 

 

 

 

 

『オレは・・・オレは・・・この力で、彼女をカナシマセタこの場所をコワスンダ!!!』

 

校内で遭遇した生徒らを無差別に攻撃する異形は人の顔の内側から、蠍を思わせる生き物が飛び出したかのようなグロテスクな容貌をしており、上半身は人、下半身は蠍の思わせる胴体と8本の脚を忙しなく動かしていた・・・

 

かつて、身を滅ぼされたがその魂は”魔導具 鋼殻装甲”に取り込まれ、望まぬ生に縛られていた。

 

だが、彼の不幸はさらに苛烈を極め、志筑仁美と二ドルによりその意識を都合の良い様に改変され、支離滅裂な発言を繰り返す”操り人形”に仕立てられた・・・

 

彼の思考は既に改変させられ、志筑仁美と言う悲劇のヒロインを悲しませた悪の拠点に攻め込む正義の味方と思い・・・思いこまされていた・・・

 

校内を徘徊する”正義の味方”を名乗る怪物に、見滝原中学校は悲鳴がまた響き渡るのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

遅くに登校した巴マミは、門を潜ると同時に先ほどまで見えていた光景とは違う惨状を目の当たりにした。

 

「・・・・・・これは一体、何があったというの・・・・・・」

 

目の前に広がる惨状に巴マミは目を見開いた・・・

 

半壊した校舎と施設、むせ返るような血の匂いが至る所から発せられている・・・

 

口元を抑えつつ、校門の周りには奇妙な角度で倒れている数人の生徒達に近づき、その首元に手を当てる。

 

「!?!亡くなってる・・・これは、魔女や使い魔の仕業じゃない・・・」

 

白、ベージュを基調とした生徒らの制服には無数の踏みつけられた跡があった・・・

 

「まさか・・・ここから逃げようとして・・・」

 

マミは確認するように学園の外から出ようと門を潜るが、見えない壁に当たり、外に出ることが出来なかった。

 

魔女の結界と違い、学園全体を覆った結界は一度は行ったら、二度と出られない仕様であると・・・

 

パニックに陥った生徒達は、押し寄せたが逃げることは叶わず・・・

 

何人かの生徒らは転倒し、混乱する生徒らにより踏みつけられ、そのまま命を落としてしまった・・・

 

「この結界は魔法少女のものじゃない・・・一体なにが・・・」

 

魔女以上に性質の悪い・・・それ以上に強大な力を持った恐ろしい存在が現れたと察する・・・

 

「アスナロ市に”雷獣”が出たって話があったけど、見滝原にも似たような何かが出たというの?」

 

数日前にアスナロ市を襲った未曽有の大災害は、公式では違法な兵器を持ち込まれたことによる事件であったと公表されているが、人の口に戸は立てられず・・・

 

雷雲と共に恐ろしい声を聴いたという話が伝えられている・・・

 

マミもネットのニュースなどでも見たが、違法な兵器の暴走による事件とは思えなかった。

 

アスナロ市に出向いた暁美ほむらが厄介な存在が現れたと語っていたことから、”伝説の雷獣”が実在し、それが猛威を振るったと・・・

 

「なんてことなの・・・ワルプルギスの夜が来る前にこんな事になるなんて・・・」

 

あまりの状況にマミは声を上げるが、すぐにこの状況を把握しなければと魔法少女としてテレパシーを送る。

 

『佐倉さん。聞こえる、今、何処に居るの?』

 

先に来ているであろう佐倉杏子へマミはテレパシーを飛ばす。

 

かつては、魔法少女としての在り方を巡って対立し、敵対すらしたのだが、今はそのような事に囚われている場合ではないと・・・

 

すでにマミには、佐倉杏子を拒絶する理由はなかった・・・

 

『・・・・・・その声、マミか・・・学校に今更来やがって・・・来ない方が良かったんじゃねえのか』

 

苦しそうにしている佐倉杏子の声にマミは

 

『そうかもね。でも、すぐに合流するから今、何処に居るの?』

 

『屋上だ。あぃててて・・・・』

 

屋上に視線を向けると僅かに炎が上がり、特徴的なオブジェのほとんどが半壊しているという有様だった。

 

『そこね。すぐに行く』

 

マミは魔法少女に姿を変えると同時にその脚力を持って屋上へ向かうのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上

 

『杏子・・・大丈夫かい?』

 

ナダサの声に杏子は、

 

「あぁ、ちょっと身体が痛いけど・・・」

 

後頭部にコブがあるのを確認しする。

 

「ひどいな・・・あの野郎、どんな爆薬を使ったんだ」

 

目の前の惨状に杏子は、流石にあれの爆発を近くで受けてしまったら無事では済まないと考えるが・・・

 

「なぁ、ナダサ・・・お前が守ってくれたのか?」

 

『咄嗟にね・・・突然だったけど、杏子をPROTECTするのが精一杯さ』

 

ナダサの一部が僅かであるが、皹が入っていた。許容量を超える力を発揮した為であった・・・

 

「お前なぁ・・・そういう喋りはこんな時は自重しろよ」

 

自分の身体は後方の壁に打ち付けられて痛むが、目立った傷がないのは魔導輪 ナダサが守ってくれたからである・・・

 

「それにしても・・・志筑仁美の奴・・・ここまでやるのかよ」

 

あまりの所業に杏子は怒りの声を上げる。

 

「さやかがお前の事をどんなに心配しているのか分かっているのかよ・・・お前は、さやかがどんな思いで探して、止めようとしていたのに・・・」

 

もはや、さやかの事をどんなに思っているのかさえ分からないほど、変わってしまった志筑仁美に対し、杏子は・・・・

 

「少し前までは・・・普通にアタシ達、クラスメイトで友達だったのに・・・・・・」

 

脳裏に転校したばかりの志筑仁美の様子が浮かぶ・・・

 

少し変わっていたが、気遣いができ、心優しい少女だった彼女が今や残忍極まりないホラーと変わらない存在となっていた・・・

 

「佐倉さん、無事と言ってよいのかしら?この状況・・・」

 

「そうだな・・・この有り様には、不謹慎かもしれねえ」

 

魔法少女姿のマミを一瞥した後、杏子は屋上から見える惨状に更に表情を歪めた・・・・・・

 

続くようにマミも

 

「佐倉さん。これは一体、何があったの?」

 

「あぁ、ヤバいホラーが出てきたんだが、もっとヤバい奴が学園の中に居る・・・」

 

苦々しい表情で杏子は・・・

 

「ったく、魔女やホラーよりも一番、性質が悪い奴が何の特別な力もない人間だって言ったら、マミはどう思う?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園長室

 

血飛沫が舞い、勢いよく振り下ろしたナイフを引き抜き志筑仁美は笑った・・・

 

「酷い匂いですわ・・・やはり貪るだけの害虫とはこんなにも醜いものですのね」

 

足元の教頭の遺体を横切り、志筑仁美は部屋を後にするのだった。

 

遺されたのは、胸元を血で染めた見滝原中学校の学園長の姿であった・・・・・・

 

「もうすぐですわ・・・もうすぐでわたくしの望みが叶う時が来ます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさにその通りだと思うわ。佐倉さん。実際に私も魔女の様な怪異よりも恐ろしいのは、人間だってことをここ最近で思い知らされたのだから・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

見滝原中学校を襲撃したメンバー 


志筑仁美

使徒ホラー 二ドル

植原 牙樹丸

正義の味方(再生怪人)

無数の素体ホラー

人型魔導具数体


といった具合です。学園に張られている結界は誰であろうが自由に入ることが出来ますが、出ることはできないというモノ・・・使徒ホラー二ドルを倒さない限り・・・

二ドルの能力ですが、特殊な針を使い生物を操るというモノが公式に記載されています。

この作品では、様々な特殊な能力を持っており、針を使い結界を作ったり、さらには陰我のゲートを開くことが可能です。人間だけではなく、ホラーすらも針を使い、操ることが可能です。

素体ホラーを同じ使徒ホラーである ベビルが使役していたので、こちらは非常食兼下僕とありました。

使徒ホラーは他のホラーを力づくで従わせることがあるので、特殊能力で操るというのもありえると思います。

性格も快楽主義で己の楽しみの為ならば、あらゆることを行うという非常に悪質であり厄介なモノです。

牙樹丸の過去を少し掘り下げて描いてみました。何故、発展途上国、戦地に近い場所に行ったことと人間を嫌悪するようになったかを・・・

そして・・・再生怪人として、正義の味方さんが再び・・・

意識は二ドルと志筑仁美によって、狂わされています・・・



マミさんと杏子が中心に学園で動きます。

周りは素体ホラーが多く、杏子が魔戒法師兼魔法少女ですので、協力すれば二ドル以外は何とかできる可能性も・・・





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