呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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志筑仁美は、とうとう来るところまで突き進みました・・・


第弐拾捌話「 転 廻 (伍)」

夜の色が残った空に明るい太陽の色が混じり、紫とも青とも言えない光景が頭上に続いている。

 

ほんの僅かな時間ではあるが、星や月すらもはっきりと肉眼で確認ができる。

 

空気は冷たく、肌寒く見滝原の中心部の湖にから志筑仁美は空を見上げていた。

 

その表情は何かを決意した表情にも見えるが、薄く笑い、彼女の仁美はこれ以上にない”狂気”の色を映していた。

 

首元に下げた”空のソウルジェム”も僅かに溜まった”因果”を揺らめかせ輝く・・・

 

未だに十分な量ではないが、これを満たすことが彼女の望みであった・・・

 

数日の間に様々な出来事が脳裏によぎったが、あのまま泣き寝入りし、無様に何も出来ずにこの先を生きていく事と比べれば今の自分はこれ以上にないぐらい充実していると志筑仁美は思うのだった・・・

 

「仁美ちゃん、随分早起きだね。今日が決行するんだったよね」

 

仁美の背後より、アスナロ市より”助っ人”として協力してくれる”明良 二樹”が声を掛けてきた。

 

「えぇ・・・行動は迅速ですわ。効率的に・・・」

 

彼女の言動は、真面な思考とは思えなかった。自分の様な”悪”とは違い”正義”であると信じ、死んだ人間を救おうと突き進む純然たる”狂気”がそこにあった・・・

 

彼からしてみれば、志筑仁美は少なくとも人並みの情緒を持ち合わせていると察しているが、彼女は自身の”正義”の為に思考を停止しているとしか思えなかった・・・

 

現実に合法的に罪人を裁く”警察”もまた、自身の正義を行う為に思考を鈍くしていると何処かで聞いたことがあるがまさにその通りであると・・・・・・

 

「そうかい、じゃあ僕達はここで待機しているけど、”香蘭”の武器を渡しておくよ。何かと役に立つかもしれないから」

 

大きめのスポーツバックを手渡し、明良 二樹は手を振って、志筑仁美から離れた。その表情は呆れにも似たなんと言えないものであった。

 

(傍で見る分には面白いけど、アレは・・・正直言って、僕の事をついでに消そうなんて考えているみたいだけど・・・火車の言うとおりだったね)

 

アスナロ市に控えている”火車”曰く、志筑仁美は確実にこちらを裏切るとのこと、もしくは邪魔者として混乱に紛れて何か仕掛けてくると・・・

 

裏切りならば、香蘭辺りも油断ならないが、あちらはあちらで時期を見据えているが、志筑仁美は根拠もなく自分達を始末できると考えている・・・

 

見滝原に姿を現さないのも自身の身の安全の為であった。

 

志筑仁美は狂気に身を任せているが、その実単なる”子供”でしかないと改めて思うと不謹慎であるが笑いが込み上げてくるのだった・・・

 

「依頼された仕事はきっちりとやるよ。そっちがその気なら、こっちも容赦はしない」

 

明良 二樹の正面には二体の”魔号機人”が控えており、彼の”悪意”に呼応するようにその目を赤く輝かせるのだった・・・

 

純然たる狂気・・・自身の願いの為ならば、親を、他人を・・・友人も・・・さらには自身の住まう街にすら火を放つことを厭わない少女の行く末は・・・

 

「僕みたいな悪人は、生前と変わらぬ日々を”地獄”で過ごすんだろうけど、彼女は何処に行くんだろうね」

 

何時かは行くであろう”地獄”という楽しみを先に満喫しているであろう”兄”と”遊び友達”の笑いを想像するのは容易であった・・・・・・

 

志筑仁美の後姿は既に小さくなっていた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

『仁美ちゃぁん。今日は盛大に盛り上がりそうだねぇ~』

 

左目の眼帯の奥に存在する女道化師の姿をした”二ドル”が仁美に話しかける。

 

「そうですわね。二ドル、貴女の退屈も解消されますわ」

 

二ドルもまた、志筑仁美に協力しており、彼女の指示に従う方が面白いと考え、自身も能力である”魔針”を最大限に活用するつもりであった・・・

 

『そうだねぇ~~、仕込みはしっかり根付かせたから・・・彼らの動きは、良く分かるよぉ~~』

 

魔針により、見滝原には”二ドル”の情報、監視網が張られており、人間、動物等が手駒として動かしていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子をカヲルは上のデッキから見下ろしていた。

 

興味津々と言わんばかりであり、この状況を楽しんでいる。

 

「色々と面白いモノが見られるね。死者がこの世に帰ってきた時、どれほどの結果が齎されるんだろうね」

 

赤い瞳に喜色の色を浮かべて、笑うカヲルはまるで楽しみにしていた”映画”を見るかのように笑っている。

 

「君は自分のしたことがどれだけ重大な事か、分かっているのかい?」

 

カヲルのすぐ傍に白い小動物 キュウベえが現れる。口調はいつも以上に感情が感じられ、人型ではあるが同じインキュベーターを問い詰めているようにさえも見える。

 

「重大?僕はインキュベーターらしく有意義な時間の使い方をしているだけだよ。まぁ、色々とイレギュラーはあるけど危険と言う程じゃないね」

 

「有意義な時間?君は、世界の因果律を捻じ曲げ、混乱を齎そうとしいている。これは、宇宙の・・・世界の崩壊に直結しかねない」

 

これまでのカヲルの行動はキュウベえから見ても目に余るものだった。

 

感情が存在しない自身が朧気ではあるが抱くモノの正体は・・・おそらくは・・・・・・

 

(・・・これが怒りと言うモノか・・・)

 

これまでの一連の出来事を遡っていくとカヲルの行動が元凶とも言ってよい・・・

 

上条恭介の不幸を齎した柾尾 優太を唆し・・・

 

さらには、上条恭介をホラー化させる事態・・・

 

そして今は志筑仁美に”狂気”を植え付けた・・・

 

使徒ホラー 二ドルとの遭遇、さらにはアスナロ市に居た”明良 二樹”らのような無法者達・・・

 

これらの行動の根本は、この精神疾患者ともいえる目の前の存在に齎されたモノだった・・・

 

時間遡行者である”暁美ほむら”とその影響を受け”因果”が集中し、破格の素質を持つ鹿目まどかの方が許容できる。

 

こちらは、手を出さなければ・・・

 

もしくは一方的に敵視さえしなければ、お互いに歩み寄れる余地があったかもしれない。

 

しかし、美樹さやかが姉と慕う蓬莱暁美より、教わったことがあった・・・

 

自分自身の身の丈に合わないモノを得ようとしたところで何かを得るどころか、破滅以外に訪れることはないと・・・・・・

 

「ハハハハハ。大袈裟だね。別にたかだか感情に振り回される二本足の猿が喚いたところで何かが変わるわけでもないさ。大昔からそうやってきて、何かが変わったとでもいうのかい?ハッキリ言ってあげるよ。何も変わらない・・・今も、これから先もね」

 

志筑仁美に協力していたのは、あの二ドルが”退屈”を紛らわせるのとは違い、カヲルは単純に考えなしに行動をし、状況を混乱させるという最悪の結果を齎す。

 

目的もなければ、何かをなそうとする気もなく自身の手を汚さずに高みの見物と洒落こむ・・・

 

その様子にキュウベえは何も言う気がなくなり、その場をあとにするのだった・・・

 

背後から自身を嘲笑うカヲルの声が聞こえてきたが、特に何も返す気にはなれなかった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「伯父さん。行ってきます!!」

 

「あぁ、行ってらっしゃい、杏子ちゃん」

 

早朝、姪である杏子の登校を見送ったバドは、振り返る。来客が入れ違いに現れたのだ。

 

「あの子が貴方の姪ですか・・・貴女によく似ている」

 

「そういってもらえると嬉しいね。エイジ・・・久しぶりだな」

 

「貴方こそお変わりなく健在で何よりです。師父様」

 

バドを師父と呼び、一礼する青年は魔戒騎士であり、かつて彼が指導した”元老院付の魔戒騎士”である。

 

名を 毒島エイジ・・・隠密の魔戒騎士に所属している。

 

「隠密の魔戒騎士が此処に来たということは・・・やはり香蘭の件か?それとも、お前が探している例の逸れ魔戒騎士のことか?」

 

「香蘭の件は、既に潜入させている者に一任しています。彼ならば、立派に成し遂げられるでしょう。私がこの場に来たのは、師父様の察しの通り、私と肩を並べた紅蜥蜴が見滝原に現れると私に連絡を入れてきたのです」

 

「?どういうことだ・・・紅蜥蜴は・・・」

 

「はい・・・師父様の”ザルバ”であった、鋼の魔戒騎士の息子であった斬刃とは違い、紅蜥蜴は闇に堕ちている騎士ではありません。彼が私に連絡を入れたということはこの見滝原で何か大きなことがあると言う事でしょう」

 

紅蜥蜴の噂は、バドも知っており逸れ魔戒騎士ではあるが、自身の思想に沿ってホラーを斬る存在であると・・・堕ちた魔戒騎士でもない為、”闇斬師”もその対応には困惑している。

 

魔戒騎士、法師の掟の背いてでもやらなければならない汚れ仕事・・・所謂”暗殺者”の立ち位置に居るという奇妙な男である。

 

事実番犬所の神官、元老院でもその存在を半ば目を瞑って非公式ではあるが認めている。

 

エイジは、その紅蜥蜴と過去に共闘し、お互いに友人ともいえる程、気が知れている。

 

逸れ魔戒騎士でこそはあるが、彼は今も毒島エイジにとっては”ザルバ”である。

 

「使徒ホラー 二ドルも関わっている以上にか・・・」

 

バドは改めてではあるが、この見滝原にかつてない程、恐ろしいことが起きようとしていることを感じるのだった・・・

 

彼の懸念が現実化するのは、これから数時間後のことであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

学生らは朝のホームルームの時間を過ぎ、あと少しで三限目になる時間帯であるが、さやかはソラ、ほむら、彼女の師であるエルダを伴ってある場所に向かっていた。

 

その場所は見滝原中学校の裏の山にある古びた寺である。

 

昨夜、”霊刀”を受けとることをほむらに話しており、その”霊刀”を持ってくる人物の名を聞いたほむらが同行を願った。

 

持参する人物”京極 カラスキ”はアスナロ市でほむらが世話になった人物であることと自身の兄の友人であり幼少時にも面識があったと・・・

 

「まさか・・・ほむらの昔馴染みなんて・・・世の中って案外狭いんだね」

 

さやかは、ほむらの交友関係の広さに驚いているが、ほむら自身はそこまで交友関係は広くはないと内心反論した。

 

「そうね・・・カラスキさん辺りなら志筑さんを唆した怪異を探ることが出来るかもしれないし、何かしらの協力が得られれば心強いことはないわ」

 

「いや、既に心強いよ。アスナロ市に魔法少女の事を忘れない為の石碑を作ってくれたんでしょ。アタシ達って自業自得な存在だけど忘れないって言ってくれるだけでアタシ達には救いだよ」

 

ほむらより聞いたアスナロ市 京極神社 神主 京極カラスキは、本物の霊能力者であり、様々な怪異を感じることが出来る鋭い霊感を持っている。

 

使徒ホラー二ドルの件は、別行動のバラゴのギュテクと同じ説明を既に複製ギュテクより聞いていたが、志筑仁美に”因果”を高める方法を教えた存在が”怪異”、もしくはそれに近い存在であると。

 

本体のギュテクより複製ギュテクも”人型インキュベーター カヲル”の存在は知っており、カラスキもインキュベーターを見ることが出来るらしい。

 

霊感が本当にあるのならば、見ることが出来るらしい。

 

ほむらは、その話を聞き、キュウベえは宇宙人などではなく、宇宙人を語る何かの怪異ではないかと考えてしまった。

 

さやかもキュウベえことインキュベーターを得体のしれない生き物と認識しており、ソラはソラで宇宙における”ホラーのような存在”として見ていた。

 

エルダはアスナロ市における協力者に再び協力を乞うということには、ほむらと同じく賛成していた。

 

彼女を見たさやかとソラは、青白く無表情な彼女を見て”魔女”ではと思ったが、ほむらは、エルダがこう言う態度なのはいつもの事であると取りなすことで、彼女の存在も戸惑いこそはあるが受け入れられている

 

ほむらとエルダの間には何かしらの繋がりがあり、お互いに認め合っている雰囲気が存在していた。

 

やはり彼女は、この場に来てから何も喋ることはなく、終始無言であった・・・

 

(ほむらの師匠って、変わってるなぁ~)

 

(普通の魔戒導師ではなさそうですね。暁美ほむら・・・彼女の背後には、恐ろしい何かが控えているかもしれません)

 

暁美ほむらの異端さは、警戒すべきではあったがさやかに危害を加える雰囲気はなく、むしろ歩み寄ってきている為、彼女の背後に居る恐ろしい何かは、暁美ほむらに危害が及ばなければ大人しくしていると推測した。

 

ソラが暁美ほむらについて考えている間にも目的地に既に来ており、古びた寺の前には、京極カラスキと魔法少女 ユウリが来ていた。

 

「あら、随分と早い再会になったな。こりゃあ」

 

「あの黒い髪の女の人・・・本当にあの時の魔法少女なんだよな?」

 

ほむらの姿を見て、カラスキは数日前の事を懐かしく思い、ユウリはあの夜、真須美 巴と一緒になって”プレイアデス聖団”を攻撃した時に介入してきた魔法少女の大きく変化した様に驚きの声を上げていた

 

アスナロ市での件とユウリは、魔法少女達を悼む石碑を作る切っ掛けを作ってくれたほむらに感謝の言葉を告げた。

 

「作ったのは、カラスキさんであって私ではないわ」

 

「でも神主さんは、アンタが来なかったら作ることはなかったって言ってた。だから、アンタのお陰でアタシ達は”救い”が出来たんだ。ありがとう」

 

少女達の祈りの石碑は、彼女達がこの世界に居たことを忘れないで居る為の残された人達の精一杯の供養であった・・・

 

(そうだよね・・・恭介の事を忘れないで居ることがアタシにできる精一杯のことなんだ・・・)

 

失われた命は二度と戻らない・・・故に戻らない人達にできることは、彼らの事を忘れずにいることであると・・・故に、失われた命を取り戻すために、かけがえのない人々の命を脅かし、手に掛ける志筑仁美を止めなければならなかった・・・

 

ほむらから現在の状況を聞き、その上で手助けをしてほしいと乞われた。

 

「こっちでも厄介な使徒ホラーがでやがったか・・・まぁ、これも何かの縁だ。おいらにできることは、あまりないかもしれないけどな」

 

魔雷ホラーが魔導輪にされてしまった事にも驚いたが、ここは友人の家族が住まう街である。

 

直接戦闘に役立つわけではないが、自分のできることがあるのならばと・・・

 

カラスキはユウリに向かって振り返り

 

「と言う訳で、おいらは少しだけ見滝原でほむら達のことを手伝おうと思うんだが、その間おいらの護衛もだけど、ほむら達の助けになってくれないか?」

 

「・・・そんなこと言われなくてもそうするよ。アタシの力が必要なら、遠慮なく手を貸すぜ」

 

勝気な笑みを浮かべるユウリに、さやかは思いがけない味方を得ることが出来た。

 

この場にもし、ほむら達が来ていなかったら・・・協力を取り付けることはできなかったかもしれない。

 

話が逸れてしまったが、カラスキは見滝原にやってきた目的を果たすべく、さやかと向き合う。

 

「気を悪くしたらしたで構わない。これを受け取ることだけじゃなくて・・・人ならざる力を得ることについて、おいらはこの言葉を必ず言うよ」

 

カラスキは紫の布を解き、木箱の蓋に手を当てた。

 

「それは?」

 

かつてほむらもアスナロ市でカラスキより聞かされた言葉であり、それが改めてここ見滝原で聞かされることとなった。

 

「どんな理由があるにせよ人ならざる力に手を出した時点で、これから先、人並みの幸せを得ることはできない・・・」

 

希望を見て奇跡を魔法を得た魔法少女からしてみれば、耳の痛い言葉ではあるが・・・さやかは・・・

 

「・・・・・・神主さん。アタシはもう決めてるんだ、どうしようもない魔法少女はアタシ一人で良いって・・・だからアタシはアタシ自身の不幸を嘆くことはしない」

 

さやかは、京極カラスキより木箱が開けられ”霊刀”がその姿を現す・・・・・・

 

赤い鞘に納められた一振りの刀を・・・さやかはその手に取るのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

見滝原中学校 二年教室

 

時刻は三限目の授業が終わり、各々が休み時間を過ごしている。

 

(マミの奴はまだ来てないか・・・)

 

杏子は登校と同時に早速、マミと話をすべく三年生の教室に向かったが彼女は居らず、担任の先生に聞いてみるとマミは少し遅れてくるとのことだった・・・

 

どれぐらいになるかは分からないが昼前までには来るとのこと・・・

 

教室を見渡すといくつかの席が空いており、事情を知っている美樹さやか 志筑仁美、保志の席である。

 

意外にも何故か、本日欠席している生徒の中には、中沢 ユウキも居た。

 

「なぁ・・・なんで、アイツ、休んでんだ?」

 

近くに居るクラスメイトの女子に話しかける。

 

「さぁ、あの真面目が取り柄の中沢が無断欠席なんて・・・珍しいこともあるもんだね」

 

「ふぅ~~ん。まぁ、そういう時もあるんだろうな」

 

「そう!!その珍しい事があったんです!!!あの中沢君に彼女が居たのを見たんです!!!」

 

「えっ!?!アイツに?このクラスでか」

 

杏子は周りを見渡すが、間違っても今、行方を追っている志筑仁美ではないと思う・・・

 

「そうじゃなくて、この学校の生徒じゃないんだ!!昨日の夕方、仲が良さそうに一緒に歩いているのを」

 

隠し撮りしたと思われる画像をスマートフォンに表示する。

 

あまり褒められた行いではないが、確かにそこには中沢ユウキと紫のポニーテールの少女が仲が良さそうに歩いている姿があった・・・

 

(うん?こいつ・・・何処かで見たような・・・何処だったけ?)

 

中沢ユウキと一緒に居る少女 ”綾目 しきみ”の姿に既視感を杏子は覚えていた・・・

 

周りの女子たちは、今日の無断欠席はもしやという話題で盛大に盛り上がっていた。

 

ゴシップ好きというか、こういう男女の話は年頃の女子達にとっては興味を大きく引くモノであった。

 

杏子はそういう話題についていけないのか、静かにその場から去るのだった。

 

教室を出るとクラスメイトの女子が自分を何やら怯えるように見ていた。

 

何故かカーディガンを着ている。

 

「どうしたんだよ?」

 

「・・・・・・・・・」

 

胸元を押さえ、見ていて明らかに様子がおかしかった。

 

息は荒く、目は瞳孔が見開いており、目に分かるほど汗を掻いており髪すらも濡れている。

 

彼女は背を向けて杏子から走り去った。

 

「お、おい!?!ま、待てよ!!!」

 

彼女を追いかけて杏子も駆け出した。その様子を影より金色の瞳を輝かせた少女が見ていた・・・

 

 

 

 

 

 

屋上に辿り着いた杏子は、女生徒と向き合うように前に出た。

 

「なぁ、どうしたんだよ?なにかあったのか」

 

聞き出そうとした瞬間、彼女はカーディガンを脱ぎ自身の身体に大量に巻き付いている”爆発物”であり、その手には起爆装置と思われるものを持っていた。

 

「ふぅ・・・っ!?!ふぅ・・・っ!?!」

 

歯を鳴らしながら怯えるように自身の手元を見ており、明らかに自身の意思ではない行動に怯えの表情を浮かべていた。

 

「お、おいっ!!!やめろ!!!」

 

『杏子!!!彼女は二ドルの魔針に操られている!!!』

 

「だったら、猶更何とかするしかないだろ!!!」

 

魔導輪 ナダサが目の前の女生徒が使徒ホラー 二ドルにより操られていることを看破する。

 

杏子は一瞬にして魔法少女に変身し、彼女を抑えようと駆けだすが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”わたくしに絶望を見せた貴女達魔法少女に鉄槌を”

 

 

 

 

 

 

 

目の前の少女の口から、昨日より追っている少女 志筑仁美の声が発せられたと同時に起爆装置が押され、女生徒の身体に巻き付けられた爆発物が閃光と共に巨大な爆炎と轟音を見滝原中学校全体に・・・見滝原市に響くのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

とうとう始まった「見滝原中学校襲撃計画」。開戦の狼煙は上げられ、彼女はいよいよ後戻りのできない第一歩を踏み出しました。

彼女の計画は始まりましたが、知らないところで紅蜥蜴が行動を起こしており、監視を依頼された香蘭もどうやら仁美の思惑より離れています・・・

以前からゲスト出演を決めていた邪骨騎士こと 毒島エイジ。若き頃の太師です。

バドより指導を受け”師父様”と慕っており、紅蜥蜴とは盟友です。

この作品では、エイジはバドの弟子になります。

キャラ公募の時に斬刃を破門された弟子と言うアイディアを頂きましたが、斬刃が返り討ちにし、殺害した魔戒騎士がバドの友人と言う具合にしてみました。

さやかは、とうとう”霊刀”を手に入れました。彼女も彼女で後戻りが出来ないというよりもする気はなく、前に只管進む覚悟です。

中沢君、まさかの魔法少女となにやら関係が・・・こちらは、襲撃事件が起きた前日までに遡る予定です。

ほむらを通じてアスナロ市より”ユウリ”が参戦。魔法少女として、見滝原で奮闘の予定です。

プレイアデス聖団からももしかしたら、助っ人としてくるかもしれません。

ちなみにさやかが霊刀を受け取った学校の裏山にある古寺は、スピンオフ作品 見滝原アンチマテリアルズで五人が肝試しに行った場所です。

最後の使徒もどきこと、人型インキュベーター カヲル・・・

よくよく考えてみたら、こいつの行動がこれまでの騒動の根本的な原因だと思います。

しかも考えなしに、なんとなくやらかしてしまうので、作中では香蘭に続いてある意味最も性質の悪い存在ではないかと改めて思いました・・・

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