呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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ちょい長くなってしまった為、分割しました。

明良 二樹の周りがどういう感じなのかを描きたかったこともあり、色々とやってみたかったというのが本音です。

次回で明良 二樹と言う男は終わる予定です。




番外編「明良 二樹と言う男」(後編 惨)

元老院

 

各地の魔戒騎士、法師らを束ねる”番犬所”を統括する最高機関。

 

その存在は、一般社会では”秘匿”とされ、限られた者でしかその存在を知る者はいない。

 

影の存在である”魔戒騎士”の更に暗部に存在する一団が存在する。

 

”影の魔戒騎士”・・・隠密の魔戒騎士なる存在である・・・

 

 

 

 

 

その”隠密の魔戒騎士”に身を置く不知火 リュウジはここ最近になって生活の一部と化した”スマートフォン”を手に発信されたメッセージを怒りに似た視線を向けていた。

 

「ホラーに憑依された奴もそうだが、依頼する奴もホラーと同じぐらい性質が悪いじゃないか」

 

今回、明良 二樹が持ってきた話は、魔戒騎士である彼からすれば腹立たしいこの上なかった。

 

彼が居るのは、アスナロ市の外れである共同墓地である。

 

多くの移民が住まう場所である為か、共同墓地なる場所が存在する。

 

彼は、元老院より”魔戒法師 香蘭の逮捕”を命じられ、ここアスナロ市に来ていた。

 

色々あって、明良 二樹と関わっているがあの”外道”には、憤りしか感じられず、何故このような存在がホラーに憑依されることなく”悪事”を堂々と行っていることに納得がいかなかった・・・

 

「・・・・・・お前が納得がいかないのは、まだまだお前が人の業の深さを陰我の深淵を見たことがないからだ」

 

振り返るとそこには、ドレッドヘアーの大男 紅蜥蜴が不知火 リュウジを見ていた。

 

「・・・紅蜥蜴。あんた、今日もここで・・・・・・」

 

「あぁ、俺が犯した”罪”と向き合う為に此処に来た・・・また此処で罪を犯すことを告白しにな・・・」

 

不知火 リュウジには、もう一つだけ納得が出来ないことがあった。

 

それは、目の前の魔戒騎士があの外道ら、明良 二樹、香蘭、斬刃と肩を並べていることだった・・・

 

 

 

 

 

彼が明良 二樹らと関わり始めたのは、香蘭逮捕の為に彼女に近づいたのは数週間前の事である・・・

 

 

 

 

 

呆れたように不知火リュウジを見る斬刃であるが、不知火リュウジは内心、逸れモノである斬刃に対し厳しい視線一瞬だけ向け、その胸の内は憤りを感じていた。

 

斬刃・・・元青の管轄の魔戒騎士であり、ホラーと戦うことに異常な執着をし、助ける人々を助けず、むしろホラーへ生贄として喜んで差し出したという魔戒騎士にあるまじき逸れモノ。

 

自らの”闘争心”を増長させ、師であり父親をも斬り、さらなる”血生臭い戦闘”を好むようになった。

 

その噂は、影の魔戒騎士達の間では、各地を転々としては他の魔戒騎士に勝負を仕掛け、そのまま斬るという通り魔のような行為を繰り返しているというモノ・・・

 

だが近頃になって、その消息が途絶えていた。おそらくは強い大物ホラーに遭遇し、そのまま喰われたのではないかと噂が囁かれていたが・・・

 

元老院の”斬刃”の評価は、常軌を逸した”闘争心と戦闘欲”を持った人物である。剣の腕こそは平均的な魔戒騎士を上回ってこそはいるが、称号を得た魔戒騎士らと比べると二歩も三歩の遅れているというものであった。

 

抑えの効かない存在でもある為、放っておいても自らの力以上の存在に手を出し返り討ちにあってそのまま命を落とすであろうと元老院の神官より語られている。

 

斬刃が仮に暗黒騎士 呀と遭遇などすればその場で斬られるか、喰われてしまうかのどちらかあるいは両方かもしれない・・・

 

元老院が最も関心を寄せ、追っている存在である”魔戒法師 香蘭”と比べれば”斬刃”は放っておいてもそのまま破滅するだけの野良犬に過ぎなかった・・・

 

行方が途絶えたという話が聞こえてから、影の魔戒騎士達はそういう結末に至ったかと納得してしまい、自己完結してしまった。

 

不知火 リュウジもそのように思っていた。だが、行方不明の逸れ魔戒騎士が目の前に居り、香蘭の直ぐ近くに居る。

 

(・・・香蘭に近づいたと思ったら、斬刃まで居るとは・・・それにこいつは、ただの一般人なのか?)

 

不知火 リュウジは香蘭にまさか協力者がいるとは思わなかった。

 

居たとしても香蘭が”隠れ蓑”として利用するなどの悪辣非道な手段で無理やり協力を取りつけたとしか考えられない。

 

斬刃はともかく、明良 二樹は単なる一般人なので無視しても良いのではと考えた。

 

「あれっ!?もしかして、斬刃さんだったりします!?俺、知ってますよ!!」

 

一瞬にして馴れ馴れしい笑顔を浮かべて自身の名前を呼ぶ不知火 リュウジに対し、斬刃は戸惑いよりも不快感を抱いた。

 

「なんだ、てめぇ・・・俺の事を知ってんのかよ?」

 

斬刃自身は、この頭の悪そうな魔戒騎士は自身の追っ手かと思ったが、だとしたら期待外れも良いところだった。自身が望むのは強い”魔戒騎士”、称号持ちの魔戒騎士のような存在である。

 

見たところ自身と同じその他大勢の”鋼の鎧”の魔戒騎士であろう・・・

 

称号持ちに憧れを持たなかったわけではなかったが、自身が手に入れられたのは”鋼の鎧”であり、これを使う以外にないのが歯がゆい思いではあるが、自身の”闘争心”を満たし、刺激するのならば、自身よりも相手が強い魔戒騎士ならばそれでよかった・・・

 

「ははっ!!知ってますよ、堅苦しい番犬所から、飛び出した魔戒騎士だって、俺からしたら、そういう魔戒騎士って反抗的でまさしく戦士って感じでカッコいいって思ってますよ!!」

 

斬刃に憧れるような発言をする不知火 リュウジに対し彼は、

 

(・・・こいつ・・・やっぱり考えなしの馬鹿かよ・・・多分、人間社会に一切触れずに育った魔戒騎士の家系に育ったんだろうな・・・)

 

斬刃曰く、幼い頃から良い年齢に達するまで”閑岱”のようなある意味閉ざされた世界に居たのではないかと・・・そして、外の世界の刺激に触れて、そのまま番犬所を離れたのではと考えた。

 

魔戒騎士や法師の一部は未だに中世の頃と変わらない生活をしている者達も居るという。

 

現代でも文明社会を拒絶し昔ながらの生活を送る”村”が海外に存在するが、それと事情は同じなのかもしれない。

 

当然のことながら、外の世界に強い憧れを抱き、そのまま村を出ていこうとする者も居る。

 

彼は、そういう口なのではと斬刃は考えた。要するに単なる田舎魔戒騎士でしかないと・・・

 

「はんっ!!俺はそんな馬鹿が憧れるクソ野郎じゃねえよ!!俺を斬るつもりがないんならさっさと、目の前から失せるんだな」

 

斬刃の不快感は強く、香蘭の前であることを忘れて頭に血が上っているという有様だった。

 

その光景に香蘭は、不知火リュウジの様子に思うところはあるが、過去に自分に”守りし者”の在り方を説いたあのお坊ちゃんな魔戒法師の事を思い出す。

 

(斬刃くんも随分、気が立っているなぁ~。香蘭ちゃんは思うんだよね・・・フタツキを無視するところはやっぱり、そこらの雑魚魔戒騎士でしかないかもねぇ~~)

 

少しだけ機嫌が良くなったのか香蘭は、表情を和らげたが、至福の時間を邪魔してくれた不知火リュウジに対しての殺意はおさまっていなかった・・・

 

「斬刃くんも落ち着きなよ。ここはブックカフェだから、静かにしないといけないよ」

 

香蘭の発言に斬刃は、改めて

 

(やべえ!!この女が居るのを忘れてた!?!くそぉ、この馬鹿のせいで・・・)

 

自身の頭に血が上りやすいことと、要警戒人物を忘れていたことに冷や汗をかいていた。

 

「あっ!?!そう言えば、ここはブックカフェだった!!俺、忘れてたよ。可愛い子に声を掛けるのに夢中で」

 

気が付けば周りから冷たい視線が集まっていたが、不知火 リュウジが謝罪したことでその場は一旦事なきを得るが・・・

 

「香蘭ちゃんが可愛いのは・・・いつものことだけど・・・愛らしくて憧れる容姿をしているのは、真須美 巴ちゃんかなぁ~~。最近、またどこかに行ったのかなぁ~~」

 

香蘭の脳裏に人でありながら”限りなくホラー”に近い存在となった真須美 巴の姿を浮かべる。

 

「巴ちゃんのことなら、あまり心配はいらないと思うよ。危ない橋を渡っても何だかんだで切り抜けてしまうからね」

 

明良 二樹は真須美 巴の強運といざという時の狡猾さと機転の良さを知っている為、心配する素振りこそは見せていなかったが、内心連絡がないことに”遊び友達”が自分の知らない場所で遊んでいるのなら、自分も誘ってくれれば良いのにと少しだけではあるが寂しがっていた。

 

(・・・まぁでも、こいつは少し訳アリみたいだね。斬刃のような・・・ではないかな・・・)

 

明良 二樹は、不知火リュウジが何らかの意図をもって香蘭に近づいてきたと察していた。

 

今の彼の態度は良い感じではあるが、”演技”でしかないだろう・・・良い役者である・・・

 

この場に居ない”火車”と会わせてみて、答え合わせをしてみる方が良いだろうと考えた。

 

斬刃から聞いたが、香蘭の噂は他の魔戒騎士や法師からすればもはやホラーとしか言いようのない程、おぞましい内容で伝わっており、戦闘狂である斬刃も遭遇したくないと考えていたほどだった。

 

その香蘭を知らないで近づいてきたというのは、顔を知らなかったというのはそれなりに納得できる。

 

もしくは香蘭の事を知らないほどの下っ端の可能性も否定できない・・・・・・

 

その香蘭は機嫌を直したかのように見えるが、抱いた殺意をおさめるつもりはなかった。

 

「へぇ~~、香蘭ちゃんって言うんだ。良い名前だね」

 

不知火 リュウジの言葉に斬刃は

 

(本当に馬鹿かこいつは!?!香蘭の名前を知らないのか!!?)

 

斬刃は、魔戒騎士の間で噂になっている”最恐の魔戒法師”こと”香蘭”の事を知らない事に呆れとも言えない声を胸の内で上げた。

 

「もしかして・・・魔戒法師だったりする?俺も魔戒騎士でさぁ~」

 

(・・・おい。魔戒法師 香蘭って言ったら一人しか居ねえだろ・・・)

 

自身が魔戒騎士であることをステータスのように語る不知火 リュウジに斬刃は白い目を向ける。

 

「へぇ~~。そうなんだ・・・魔戒騎士・・・斬刃くんと同じだねぇ~~」

 

(お、おい・・・俺に話を振るなよ・・・くそぉ、あの女の腹いせに巻き込まれるの確定じゃねえか)

 

「まぁ、そうだねぇ。香蘭、最近ホラーで困ったことがあるって言ってたよね。最近になってあの廃ビルに住み着いた厄介なのが出たって・・」

 

ここで明良 二樹が話題を切り出した。その話に斬刃は初耳だと言わんばかりに視線を向ける。

 

「そうなんだよねぇ~。魔戒騎士ってすごく強いから、そこのところをお願いしても良いかな♪」

 

「さっそく、腕試しか・・・良いよ、今夜その場所に行ってホラーを倒してくるよ、香蘭ちゃん」

 

「それと斬刃さんも俺が強いってところを認めてくれますよね」

 

不知火 リュウジはいつの間にかそのホラーが現れる場所を記した廃ビルの地図を持った明良 二樹より手渡され、背を向けてその場から去るのだった・・・

 

「おい・・・フタツキ。あのバカは何処に行くんだ?」

 

ここ最近、ホラーの気配も噂も聞いていないと斬刃は声を上げたが・・・

 

「ホラーには違いないけど・・・ちょっと訳ありだったよね。香蘭・・・」

 

香蘭にホラーの事情を尋ねる明良 二樹に対し、斬刃は思わず振り返って香蘭を見た。

 

彼が見た香蘭の表情は、人の笑みと言うよりも・・・何かに満足する”獣”のそれに近かった・・・

 

「フタツキ・・・あのバカが言った場所は南にあるあの廃ビルか?」

 

「そうだよ。あそこ以外のどこでもないよ」

 

明良 二樹よりその場所を聞いた斬刃は・・・

 

(あの廃ビルは香蘭がホラーに何かしていた曰く付きの場所じゃねえか・・・)

 

香蘭が用意した悍ましい何かが潜んでいると察し、それに遭遇したら最早、命はないだろう・・・

 

「今夜は楽しみが出来た。香蘭は当然として、斬刃も来るよね」

 

「おぉ、どうせ暇だし、あのバカの最期を看取ってやるぐらいの事はしてやるか・・・」

 

香蘭が何かをしていた場所には行きたくなどなかったが、ここで行かなかったら後が怖かった・・・

 

「フタツキ~~、香蘭ちゃんは当然というのは、なしだよぉ~~」

 

「香蘭は行かないのかい?イベントとしてはそこそこ盛り上がりそうだよ」

 

「ん~~~気を遣ってくれるのは嬉しいけど、あんなのの最期を態々見に行くのもあれだから適当にその魔導具で撮影しといて、気が向いたら見るから」

 

気になるタイトルの番組をとりあえず録画をお願いするかのように話す香蘭に苦笑する明良 二樹であったが、斬刃は香蘭のあまりの関心の無さに対し薄ら寒いモノを感じていた。

 

(あのバカ・・・フタツキの事をただの一般人にしか見ていなかったから無視していやがったのか・・・まさかと思うが、こいつもこいつで香蘭と同じぐらいヤバいことに気が付かないことが不幸ってことか)

 

斬刃は、明良 二樹の”邪悪さ”さは香蘭のそれと大差ない事を知っており、魔戒騎士や法師特有の何の力もない一般人への過小評価について柄でもない溜息を付くのだった・・・

 

そして・・・・・・

 

(フタツキの奴も奴で、あの野郎に少しムカついたから、少し痛い目に遭わせたいって考えているんだろうな・・・まぁ、頑張ってくれよ、馬鹿・・・死んじまっても誰もお前の事なんか覚えちゃいねえだろうな)

 

長い付き合いというわけではないが、ふとしたきっかけで何が起こるか分からないのが、明良 二樹の周りである・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

不知火リュウジは、自身の任務である”脱走した魔戒法師 香蘭の逮捕”の事を改めて考えていた。

 

(香蘭は、いつか元老院や番犬所に反乱を企てるつもりで居るのだろうか?)

 

消息を絶っていた逸れ魔戒騎士 斬刃が居たことを見るに彼を配下かもしくは利害が一致している為、行動を共にしているのではと・・・・・・

 

”フタツキ”と言う男は、あの二人に利用されている単なる”小間使い”であろうと・・・

 

(何を考えているかは分からないが、今は香蘭の周りがどうなっているのかを調べなければ、その為には信頼を得て近づかなければ・・・)

 

他にも誰かが居るかもしれない。行方不明になった”逸れ魔戒騎士、法師”の可能性も・・・

 

「アスナロ市か・・・噂では過去に”使徒ホラー バグギ”が何度もこの地に現れたと聞いていたが、少し変わった土地のようだ・・・」

 

日々発展しているこの都市の影にある”異様な陰我”を感じつつ、不知火 リュウジは少しだけ傾いた太陽に視線を向けながら南の存在する”廃ビル”へと向かうのだった・・・

 

今まで目立った功績を上げていなかった自分に課せられた”任務”を不知火 リョウジは最大の誉れと考えていた。

 

自身が憧れる”邪骨騎士”の称号を持つ隠密の魔戒騎士のような立派な魔戒騎士に近づく為に・・・

 

 

 

 

 

 

 

その頃、斬刃が再戦を求める逸れ魔戒騎士 紅蜥蜴はとある異空間に来ていた。

 

『おぉ~~来たかぁ~~、新刊を持ってきてくれたかぁ~~』

 

豪華なソファーにだらしなく座る白い女性が緩み切った表情で”紅蜥蜴”を迎えていた。

 

「あぁ・・・約束のモノだ・・・それと浄化を願いたい」

 

『そんな堅苦しいやり取りはお前と私の間にはないだろう~~適当にやっとけばいいぞぉ~』

 

白い女性 神官 ガラムは紅蜥蜴より渡されたここ最近話題になっている文庫本のページをめくり出した。

 

「しかしお前も変わり者だな。俺の様な”狂人”を抱えるとは・・・番犬所も一枚岩ではないと言う事か」

 

『お互いに利害が一致してるだろう・・・魔戒騎士もある意味”必要悪”に近いけど、ほとんどが掟で雁字搦め・・・掟に背いてでもやらなければならないことが増えてきてるからな』

 

「それで俺を抱え込んでいるわけか。まぁいい・・・俺にとっても都合がいいし、お前にとっても都合が良いのだから、これ以上に望ましい関係はないか」

 

『そういうことだな。逃げた魔戒法師 香蘭についてだけど元老院も馬鹿な対応をしてくれたもんだよ』

 

自身の上位機関である”元老院”に無礼ともいえる発言をするが、紅蜥蜴も元老院を敬ってはいない為、咎める気もなかった。

 

「ホラーとの戦いは多くの血に塗れた忌まわしい歴史でしかない。その歴史が続く限りそういうことが続いていくことは当然のことだ」

 

『ホラーを狩る為には仕方がないと言えば仕方がないと言われてもな・・・それは魔戒騎士、法師の言い分で他の者達には関係のないことだからな』

 

紅蜥蜴と神官 ガラムは、互いに気が知れた会話を続けていた。

 

ガラムが紅蜥蜴を抱えている理由は、ホラーに憑依される前に犠牲を最小限にする為に彼を利用しているに過ぎない。それを紅蜥蜴も承知している。

 

過去の時代ならともかく今の時代は、古から続く魔戒騎士の掟では対処が難しくなってきている場面が多く、ホラーに憑依されてからだと後の祭りであることが多くなってきている。

 

騎士達に掟破りをさせるわけにもいかず、悩んでいた時に”紅蜥蜴”の存在を知り、彼と同盟を結ぶに至った。

 

とある国で膨大な陰我を抱えた権力者にホラーが憑依される前に”紅蜥蜴”は掟を破ってその権力者を斬ったのだった・・・

 

当然のことながら追手を差し向けられたが、その追手さえも斬り、独自に”陰我”を討滅する逸れ魔戒騎士として活動していた紅蜥蜴の存在は神官 ガラムにとってはあまりにも都合が良かった。

 

極秘で紅蜥蜴はこのガラムの番犬所に出入りするようになり、ガラム個人の依頼を受けつつ、自身もまた活動していた。番犬所からは、正規に活動する魔戒騎士と同じように支援も受けていた。

 

「それで今更、香蘭の事を話題に出した。言っておくが、今、あの女を斬る時期ではない」

 

紅蜥蜴の思想に沿うのならば”香蘭”は斬らねばならなかったが、斬ることは容易ではあるがその後が問題である為、手が出せなかった。

 

『それは分かっているさ。香蘭を斬ったとなれば、番犬所もあ奴の優秀な脳を利用できなくなるから色々と不味いだろう・・・だから今回、隠密の魔戒騎士が一人アスナロ市に来たようだよ』

 

「当然のことながら追手も来たか・・・隠密の魔戒騎士・・・」

 

『どうした?隠密の魔戒騎士に思う事でもあったのか?』

 

「何もない・・・今、アイツにあったら俺達は互いの立場故に斬り合うしかないと思っただけだ』

 

かつて駆け出しだった頃に共に肩を並べて戦った”邪骨騎士”の称号を持つ男の事を紅蜥蜴は思い出していた。

 

魔戒騎士の”才覚”を見出され”元老院”へ召集されて以来、会うことはなかったが・・・

 

自分の近況等、既に把握しているのは間違いないであろうと・・・そしていつか互いに対峙することも

 

アスナロ市にやってきた”隠密の魔戒騎士”はもしやと思いつつ紅蜥蜴は番犬所より背を向けて去っていった。

 

『色んな魔戒騎士を長いこと見てきたが、アイツは闇に堕ちたわけではなく、掟に疑問を抱いたが故に袂を分かった魔戒騎士・・・いや兄弟のようなものか』

 

あの男と一緒に居る時は掟の事を気にせずで居られることにガラムは気を良くするのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は既に陽が沈んでいた。

 

アスナロ市の南に存在する”廃ビル”の前に不知火 リュウジは立っていた。

 

「陰我の気配・・・にしては妙だ。何かがあるのだろうか?」

 

香蘭が手を焼いている存在が居る廃ビルへと進む。

 

その背後を気づかれないように明良 二樹と斬刃が見ていた。

 

「やっぱり此処か、おい・・・この間、香蘭がここでカクテルを作ったって言ってたが、何のカクテルか実際に見たくなかったが、そう思っても見ちまうもんだな」

 

”廃ビル”にホラーが出た情報を入手し、香蘭がそこへ行ってから奇妙な噂が立つようになったことから、その場所でホラーに何かをしたのではと斬刃は考えていた。

 

「そういうことだね・・・”カクテル”か・・・色々と考えてみるもんだけど、一番は考えたのならば実際にやってみる事なんだね」

 

明良 二樹は香蘭が行った事について何となく察したのか、気づかれないように細心の注意をするのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

改めて、唐揚ちきんさんより頂きました不知火リュウジメインでの話ですが、斬刃の方がわりと出張っているような気がしないでもないです(笑)

紅蜥蜴さんは、内緒で番犬所に出入りしています。

番犬所にとっても色々と都合がよろしい存在だったりします。

次回はもう少し早く上げられるようにしたいと思います。

紅蜥蜴はあの邪骨騎士とは、過去に何かあったようです・・・


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