呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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志筑 仁美メインの話です。

ここ最近、オリキャラの話ばかり書いていましたので、仁美の話が書きたくなりました。

とはいってもこの時間軸の仁美ですが、改めて見直すとこのSSの裏の主人公かもしれません(汗)




番外編「志筑 仁美」

 

 

 

何も知らない事が幸せだった・・・

 

それは知ってはいけない事を知ってしまった事に対する後悔の言葉だ・・・

 

 

 

少し前の見滝原中学校 入学式

 

桜並木の通学路を一人の女生徒が歩いていた。そこへ二人の同じ制服を着た少女達が駆け寄ってきた。

 

”おっはよう!!仁美!!!”

 

”おはよう、仁美ちゃん”

 

小学校の頃より知り合っていた二人の友人・・・親友ともいえる二人に志筑仁美は微笑みながら

 

”おはようございます。さやかさん、まどかさん”

 

 

 

 

 

”やった!!同じクラスだよ!!仁美!!!まどか!!!”

 

”うぇひひひひ、良かったね、一緒だよ!!!”

 

二人と同じで嬉しかった。同じ教室で学び、季節を巡り、何気ない日常の中で笑い、時には喧嘩したりしてもいつもの様な平穏な日々が・・・

 

ずっと友達で居られる日々が続いていくと思っていた・・・

 

 

 

 

 

平穏の中に生きていた少女達に”異物”が紛れ込む・・・

 

それは二人の少女の関係に暗い影を落とした・・・

 

”持つ者”と”持たざる者”の関係に変えてしまった・・・・・・

 

 

 

 

 

それは”魔法”という名の”奇跡”を手にする資格・・・

 

叶えたい願いがあるのにそれを叶えることが出来ず、近しいモノがそれを叶えて事があまりにも悔しく、それでいて妬ましかった・・・

 

 

 

 

 

 

資格がないのなれば、それを手にすればよいと・・・

 

彼女は資格を手にする為に、願いを・・・奇跡を叶える為に・・・

 

平穏だった日常とかつての親友とも呼べる二人の少女達に背を向けた・・・

 

”因果”を得る為に”望み”を果たす為に”奇跡”に辿り着く為に多くの人達の”日常”を奪い、その屍で自身の進むべき道を作り始める・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

見滝原市 水上ホテル NAMIKAMI

 

夜間、停泊場につけられた巨大な豪華客船の一室で志筑仁美は寝息を立てていた。

 

少し前にアスナロ市からの協力者である”明良 二樹”らと打ち合わせをし、今現在は用意した船内の客室で過ごさせている。

 

彼女が居るのはVIPルームであり、その表情は魘されており、苦しそうにしていた。

 

今・・・彼女が見ている夢は・・・

 

 

 

 

 

(何故・・・わたくしの夢に貴女達がでてくるのですか!!!あなた達なんて、あの方の為に命を捧げてもらうだけなのに、わたくしに何かを言うなんて図々しいにもほどがありますわ!!!)

 

彼女の周りには、ここ数日の間に手を掛けた”人間”達が・・・青白く生気のない顔で迫ってくるという夢だった。

 

彼の為に・・・上条恭介の為に正しい行為をしているはずなのに何故責めなければならないのかと・・・

 

生気のない人間たち・・・亡霊たちは、憎悪のこもった視線を向ける。

 

お前の悪事を忘れない・・・お前のしたことを忘れてなるものかと・・・

 

”地獄”へ落ちろと叫んでいるようにも・・・・・・

 

あまりの不快さに意識が覚醒し、少し前に見慣れた白亜の天井が志筑仁美の視界に映った・・・

 

 

 

 

 

 

生前の行いの悪いモノは、地獄に落ち生前の悪事を清算しなければならない。

 

神に殉じたモノは死後、楽園へと魂は辿り着く。

 

古今東西様々な”死後の世界”を聞かされてきたが、今の彼女はそんなものはないと断じる。

 

”死後の世界”とは生きている人間が他者を死ぬまで絞りつくす為の方便であると・・・

 

死んだら何も意味をなさなくなるのだと・・・

 

 

 

 

 

 

『仁美ちゃぁん。随分と悩んでいるねぇ~ワタスで良ければはぁなぁしを聞くよぉ』

 

数日と経たないが自身と行動を共にする”二ドル”の声に半ば鬱陶しさを感じつつ額の汗を拭った。

 

「・・・・・・悩んでませんわ。彼を救う為なのに・・・何故、死んで当然の方たちがわたくしの夢に現れるのですか?全くもって不愉快ですわ」

 

先ほど見た”夢”は自身を罵る”両親”、”上条恭介の父”、”千歳ゆまの祖父母”の姿があった。

 

誰もが自分を恨めしそうな目で見ており、聞くに堪えない亡霊達の声が耳に今も残っている。

 

 

 

 

 

 

 

”仁美、なんてことを!!!”

 

”そんな風に貴女を育てた覚えなんてない!!!”

 

”君と恭介の仲を認めてなるものか!!!”

 

”何故、わしらを殺した!!!”

 

”恨めしぃ・・・お前が恨めしい・・・”

 

 

 

 

 

 

 

誰もが・・・両親に至っては自分が見たこともないような恐ろしい顔をしていた。

 

怨みの念を抱いた怨霊というものは、まさにあれの事をいうのだろうと・・・

 

だが彼女は、その中に”上条恭介”の姿がなかった事に笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

「彼だけは、わたくしを恨んでいない・・・わたくしの事を認めてくれていて、その時を待って・・・救いの手が差し伸べられるのを待っているのですもの」

 

自分を罵る亡霊のほとんどが無駄な意味のない生を消費するだけの”存在”でしかない。

 

そんな”存在”を生かしておいても無駄でしかないし、生きていても何の役にも立たないであろう。

 

真っ当に生きて往生するのは、何も出来ずに終わる俗物以外に何物でもない・・・

 

光悦とした表情で笑いながら、志筑仁美は自身の理想とする”奇跡”を叶える為に計画を練る・・・

 

『そうだね~、ワタスはその辺の所は疎いから何とも言えないけど、とりあえずワタスも何もしないのは悪いからちょっとした”知恵”と”仕掛け”で良かったの?』

 

「それで構いませんわ。最初は貴方の事は正直信用がならないし、邪魔だと思っていましたが、あのカヲルさんも割と抜けているみたいでしたから、今は貴方が居て良かったと思っています」

 

仁美は自身の”因果”を高め、奇跡を起こす方法を教えてくれたが、その方法で上条恭介が完全な状態で戻るかどうかが疑問であった。

 

いくら調べてもそのような方法こそ記されていても、その後の”結果”について何も残されていなかったのだ。

 

世の中には、様々な方法・・・例えば、美容、金儲けの手段を記した書籍や情報は錯乱としているが、具体的に成功したという話は意外と少ない・・・

 

それは、それだけの人が”上手くいっていない”ことの証明であるということでもあるらしい・・・

 

実際の所、自身の成功は飯のタネである為、簡単に明かすものではないのだ・・・

 

ここで仁美は考えた。

 

カヲルの言うように”因果”を高め、自身のソウルジェムの輝きを完成させた時に奇跡は自身の望むような結果をもたらすであろうかと・・・

 

その疑問についてはカヲル自身も死者を復活させることについてはあまりに情報が少ないと答えを貰ったが、それは彼自身がそのような願いを叶えられる確証を持っていなかったと察した。

 

おそらくはインキュベーターでは”死者を蘇らせる”ことは叶わないと・・・

 

自分は魔法少女のように誰かに叶えてもらうような甘い存在ではない。

 

誰かに与えられるような奇跡では、誰も救えないし、望みを果たすことはできない・・・

 

その疑問に応えたのは使徒ホラー 二ドルだった。

 

アスナロ市より戻ってから、計画の要を見直していた時から生じた疑問を・・・・・・

 

”死者の完全な復活について・・・”

 

『死者をふっかつさせるのはぁ、ホラーでも無理だと思うよぉ?カルマぁの奴も心の望みを映してそれっぼく見せていただけだしぃ~~、最近は見ていないけど、エリスの奴もそぉんな感じだったぁなぁ~~』

 

得体のしれない魔物であるが、それなりの”力”と”知識”を持っている事に素直に感心する。

 

『死者をこっちにぃ迎えるとぉ~世界の因果が崩壊して、全ての未来が消えるかもねぇ~~』

 

死者を復活させるのは大事であるらしいが、そんな事は構わなかった。

 

どうせ生きていても何の価値もない大勢の命の未来が消えたとしても”彼”が・・・

 

上条恭介が再び未来を得られるのならばそれで構わなかった・・・

 

(・・・上条さんもそれをワタクシに望んでいますわ・・・)

 

消えてしまった彼は、自身のあまりの境遇に嘆いているだろう・・・

 

それを救わなければならないと志筑仁美は使命感を抱く・・・

 

『魔界で燃やされてたメンなんとかがそんな事をやっていたぁよぉ。まぁ、ワタスも見様見真似でつくってぇ、みぃたぁけぇど・・・やったのは、メン何とかじゃなくて、ニグラ・ヴェヌスだっけぇ?』

 

二ドルは見様見真似で死者を召喚する魔導具を退屈を紛らわすために作っていたことがあり、仁美はそれを使うことを計画に組み込んだ・・・

 

実際に二ドルが”不可視の結界”を張り、湖の至る所には巨大な”魔針”が配置されていた・・・

 

その存在を知る者は、見滝原には今は居ない・・・・・・

 

やはり多くの”生贄”が必要であることと・・・

 

”幼い無垢な命”を発動の鍵として捧げなければならない。

 

本来ならば、”魔戒騎士の家系”であるのだが、そこは”因果を持つ少女”。

 

魔法少女の素質を持つ少女を代替えとして使用すればよいと・・・

 

「・・・あの時、仕留められなくて悔しい思いをしましたけど・・・今はこれでよかったと思いますわ」

 

志筑仁美はテーブルの上にある一枚の写真を手に取る。

 

写っていたのは”千歳 ゆま”であった・・・

 

「彼女のことは、あの方たち”フタツキ”さん達にお任せするとして・・・フタツキさん達もいつかは邪魔になりますわね・・・」

 

今は協力してもらっているが自身の行いに気づき、復讐しようと彼らに依頼する存在が現れるかもしれない。

 

そうなる前に復讐者から手段を取り上げなければならない・・・

 

用が済めば、明良 二樹達も処分しなければならないのだ・・・

 

あの”一団”はあまりにも危険すぎる為、この社会に存在してはならない・・・

 

「美樹さやか・・・佐倉杏子とあの魔戒騎士・・・明良 二樹さん達をぶつけて共倒れになってくれた方が理想ですわ」

 

”彼”を復活させるために志筑仁美は・・・望む未来を叶える為に不要な”現在”の存在の抹殺を望む・・・

 

「何かを得る為には相応の対価を払わなければなりません。ワタクシはその覚悟もあります。対価は今生きていてもどうしようもない方々ですわ」

 

口には出さないが、二ドルもまた不要な存在である。この魔物の処分は、魔戒騎士にやってもらおう。

 

彼女の思考こそには意識を通してはいないが、二ドルは志筑仁美は何を思っているのか、自分をどうしたいのかを把握していた。

 

”・・・・ワタスは仁美ちゃんに何も言わないよぉ~~、仁美ちゃんがそぉしたいのなら、そっちの方が面白いんだよねぇ”

 

使徒ホラー 二ドルは他のホラーが人を喰らう為に人間界に来たわけではなかった・・・

 

アスナロ市に現れた同じ使徒ホラー バグギのように力を振るう為に来たわけでも・・・

 

”人間界”に来たのは単純に言えば”退屈”だったからだった・・・

 

”魔界”に居ても”退屈な日々”だけであった為、”人間界”で面白い事があればというそんな理由だった

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワタクシは奇跡を奇跡を起こして見せますわ・・・美樹さやかでは到底叶える事のできない奇跡を!!」

 

掌に空のソウルジェムを掲げる。淡い緑色の光が輝く・・・

 

これを満たし、輝かせた時・・・彼女は・・・志筑仁美は・・・

 

 

 

 

 

 

 

「奇跡と魔法は誰かに叶えてもらうのではありません。この手で叶えてこそ価値があるのです!!」

 

 

 

 

 

 

自身の理想とする奇跡と願いの象徴・・・魔法少女へと至る為に・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





あとがき

改めてみると志筑 仁美は割と賢い娘だと思います。

こういう賢い娘は、キュウベえは案外やり辛いので手を出さなかったし、彼女には見えないようにしていたのかもと考察したりもしましたが、魔法少女の資格を持つ子にはキュウベえが見えるそうなので、見えていない為、本当に”素質”がないのが真実かもしれません。

そういう手間のかかることはキュウベえはしないと思いますし・・・

公式でも魔法少女となる展開もないので・・・この先もおそらくはないでしょうね。

明良 二樹に対しても将来的に自分に復讐しようとする輩の依頼を受けることを考えて処分しようと考えている辺り、彼女自身無意識で今の行いは”間違っている”と気がついていますが、それに目を背けています。

そういう事にも考えが行くのに、最悪な場面で発揮されています。

第二の使徒ホラー 二ドルはバグギと違い、かなり得体のしれない存在で何を考えているのか良く分からない不気味な存在です。

手先が器用なのでメンドーサの件を同じ使徒ホラー仲間であるニグラ・ヴェヌスから聞いていて、見よう見まねで作ったりしていました。

二ドルは他の使徒ホラーとは、そこそこコミュニケーションが取れるという具合にしています。カルマやベビル、ニグラ・ヴェヌス等とは話していますが、バグギは話しかけてもバグギ自身が鬱陶しがるため会話が続かない(笑)

ここは香蘭が作って提供とも考えましたが、あのような大規模な目立つ魔道具を元老院から追われてる香蘭が用意できるかと思い、二ドルが見よう見まねで作ったという具合にしました。

気力が持つのならば、後一話分を今年中に投稿したいところです。


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