呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝) 作:navaho
今回はある魔法少女が久しぶりに登場。
彼女の事は、個人的には気に入って居るんですけど・・・
アスナロ市の何処か・・・・・・
とある施設の中にある部屋らしいのだが、そこは既にかつての管理している者の手から離れており、誰も居るはずのない場所であった・・・
その誰も居るはずのない場所に”彼女”、香蘭は居た。
黄色い魔導火を証明として照らされた空間は、香蘭の心情、精神をよく表していた・・・・
一言で言うならば”混沌”。
魔戒法師らが使う魔導具や古い書物は、魔戒法師の工房を思わせるが、それらとは正反対の現代の最新技術を注ぎ込んだPC機器を始めとしたタブレット端末等がデスクに置かれており、さらには座り心地の良い”ゲーミングチェアー”に香蘭は座っていた。
全く正反対の価値あるものが混在しているが、それらの不釣り合いは不思議と調和し融合している。
矛盾だらけの部屋の主、香蘭は魔戒法師に似つかわしくないスマートフォンのメッセージに目を通していた。
心地よい”ゲーミングチェアー”に背を預けながら、香蘭は笑みを浮かべた。
「フタツキも色々と探してくれて、香蘭ちゃんは退屈しないから毎日が楽しいな~」
陽気に笑うが、彼女の”本性”を知る人間からすれば、もしもフタツキがこのように誘いのメッセージを飛ばさなかったら、確実に彼、明良 二樹を裏切ると考えられている。
事実、香蘭も明良 二樹と一緒に居るうちは楽しめる事を評価しており、楽しめなくなれば”用済み”と彼女は考えている。
しかしながら、明良 二樹との繋がりは彼女にとっても色々とメリットがある。
”魔号機人”を始めとする”赤い仮面の男”との繋がりである。
彼女としては、一度は会ってみたいのだが、相手側が拒否しているらしいのだ。
おそらくは自身の事を元老院などから聞いているのだろうと察していた。
元老院に追われている自分と接触することで何かしらの不都合があると考えているのだろう。
「あ~あ、せっかくだから、この間作ったアレを試してみようかなぁ~~、香蘭ちゃんも偶には身体を動かさないと」
にこやかに笑いながら部屋の中央にある螺旋階段の下の部屋に足を進めていく。
そこには、彼女が制作した”魔導具”が大量に保管されており、”鋼殻装甲”がガラスケースに大量に存在しており、さらには素体ホラーを閉じ込め、それを標本のように保存されたカプセルもいくつか点在していた。
「ちょっと嵩張るけど、これにしようかなぁ~~」
彼女が手に取ったのは、小型携帯火器の一つである”スティンガー”を思わせる筒状のモノであった。
その魔導具の名が”飛頭砲(ひとうほう)”。アルものを弾として直接ホラーを攻撃する武器である。
「大量に殺されたってことだから、あちこちに残留思念か、成仏できない魂だらけらしいから、これを使っちゃおうかな♪」
その魔導具は、人の魂を取り込み、それを弾として攻撃する代物であった。
直接殺しても構わないし、そこが”怨念”が渦巻く曰く付きの場所ならば、それらは無限の弾数として機能させることが出来る。
「でも・・・弾が不足するかもしれないから調子に乗るのは良くないよね。命は大事に使いに限るね。う~~~~ん、香蘭ちゃん、えらい!!!」
自身の言葉を自画自賛しているが、やっていることは限りなく人の尊厳、命を冒涜しているのだが、彼女にとってはそのような事は些細なことでしかなかった。
魔戒法師 香蘭にとって自身や興味の対象ではない”命”など、単なる消耗品でしかない。
絶えず需要と供給を繰り返す自身の興味の範囲外で生産されるものでしかなかった・・・
「フタツキは本当に香蘭ちゃんを楽しませてくれるなぁ~。楽しませてくれると言えば、香蘭ちゃんに声を掛けてくれたアイツもそれなりに楽しませてくれてるよね」
香蘭は街中を歩いて際に自身に声を掛けてきた逸れ魔戒騎士の姿を思い浮かべた。
普段は意識などしないのだが、今日に限って機嫌が良いのか彼女はその日の事を思い出すのだった・・・
その逸れ魔戒騎士の名は 不知火 リュウジ・・・
香蘭はその日、気分が良かったのか街に繰り出して遊んでいた。
魔戒法師である彼女は法衣があるのだが、その法衣を身に着けておらず俗世の若い女性が好む派手な格好をしていた。
彼女は茶髪にショートカットの可愛らしい顔立ちをしており、男女ともに親しみやすい容姿をしている。
書店に赴いて彼女は、いくつかの書籍を購入しブックカフェでお気に入りの紅茶を飲みながら、専門書に目を通していた。
彼女が読んでいるのは”生物学”から”宗教学”と様々な分野の書籍であり、ここ最近の論文や発見を記したモノであった。
魔戒法師としてもそうだが、生来の気質なのか香蘭の好奇心は強く様々なモノを知りたがる。
魔導具やホラー、ここ最近では現代社会の学問にさえ興味を抱いている。
元老院や番犬所を始めとする組織は、国家とはそれなりに繋がっているのだが文化や伝統を重んじているところは中世の頃から何も変わっていない。
法師ならば、それぞれの技術の継承や魔戒騎士ならば鎧や称号の継承等と伝統に重きを置いていて、現代社会には興味すら抱かない。
かの天才魔戒法師でさえも文明の機器に興味を抱くどころか、魔導具よりもその価値を低く見ていた。
彼女はそれは”傲慢”であると考えている。ホラーの”陰我”は、古の時代から現代に至るまで変化を続けており、いつかは魔戒騎士ですら太刀打ちが出来なくなる可能性すら考えられる。
その為にはより強力な武器を製作せねばならないし、何よりも時代の流れを見なくてはならない。
時代の流れを無視した結果如何に強かろうともいつかは”淘汰”され、ホラーとの生存競争に敗れるかもしれない。もしくは新たに現れた”ホラー”と敵対する競合相手に後れを取るということもあり得るのだ。
香蘭のお気に入りは”生物学”であり、自然淘汰の理屈は面白く、生物多様性による種の繁栄については興味深い考察が多い。
過去の生物を研究する”古生物学”についても、過去に存在したであろう強力な捕食者ですらも時代の流れの変化に対応できずに滅び、対応できた種が繁栄した。
その後の頂点捕食者の”ニッチ”を埋めるように機会を逃さなかった”種”が頂点に立った。
自然淘汰の理屈、種の繁栄について香蘭はある”存在”を思い出したのか、バックより神浜市で数日後に開催されるイベント”ヴァリアンテ国 サンタ・バルド展”のチラシを取り出した。
欧州に存在した国であり、御伽噺である”光の騎士の伝説”を追うドキュメンタリーでもあった。
中世欧州の暗黒時代の中で平和を謳歌した”王国”に伝わる”伝説”と真実の歴史・・・
この国は、かつて強大なホラーアニマを番犬所の礎を築いた魔戒騎士や法師達が封印した地である。
そして魔戒法師 メンドーサによる反乱とその顛末を知る者はほとんど存在しないだろう・・・
魔戒法師 メンドーサ
その優れた才覚に溺れ、”元老院”より追放され、”堕落者の烙印”を押され、自身の行為を省みずに魔戒騎士、法師に憎悪を燃やし、己の為だけに様々人達を死に追いやった人外に堕ちた存在・・・
香蘭もメンドーサの事は知っていた。魔戒騎士、法師の間では、もはや風化した存在でしかない・・・
「この人の失敗って、母と子の繋がりを侮ったからなんだよね・・・今も魔戒で燃やされていたりするのかな~~。助けてあげても良いけど、香蘭ちゃんに何かしそうだし、辞めておいた方が良いよね」
自身の興味対象外の”命”を消耗品としてしか見ていないのに矛盾している言動ではあるが、彼女は大真面目であった。
メンドーサについては、その執念こそは尊敬するが、結局のところ彼は自身の高すぎる自尊心を満たすことが全てであり彼自身が見下していた”俗物”と何ら変わりはないというのが彼女の彼に対する評価であった。
”堕落の烙印”が子に受け継がれたことで我が子を手に掛けるような男を助けたところで”恩を仇で返す”という行動以外にでることはないだろう。
彼女自身にも目的があり、それをなす為ならば”如何なる犠牲”を払うことに戸惑いはなかった。
香蘭が何を目指しているのかは、ここで語られることはないが、いずれ明らかになるであろう。
何時かは叶えるであろう自身の目的を想像し、良い気分に浸っているときだった・・・
「ねえ、そこの彼女ぉ~~、そんなところで難しそうな本なんか読んじゃって、俺にもちょっと教えてくれない?」
良い気分で居たところを邪魔されたのか、香蘭は聞こえないように舌打ちをし自身の至福の時間に土足で上がり込んできた邪魔者に視線を向ける。
「だったら読めばいいんじゃないの?本の感想は人それぞれだし」
にこやかに笑う香蘭と彼女に声を掛けてきた男 不知火 リュウジの二人を偶然見ていた男が居た。
「ば、馬鹿かアイツは・・・よりによってあの女に声を掛けるなんて、どういう神経してんだ?」
顔に三本の傷が走る長身の男は、香蘭の様子に柄ではない冷や汗をかいていた。
本来ならば自身はそういう”性格”ではないのだが、あの男は明らかにヤバい女に声を掛けている。
長い付き合いではないが、あの笑いを浮かべている香蘭は明らかに怒っている。
笑顔は、本来”攻撃的な意思”を示すと何処かで聞いたことがあるが、香蘭のそれは攻撃の意思と呼ぶには、生温い・・・”殺意”を持っている。
本来ならばあの頭の悪そうな茶髪のナンパ男を殴ってやってもよいのだが、機嫌の悪い香蘭のとばっちりに巻き込まれるため、彼は何でこんな所に出くわしてしまったのだと今更ながら後悔していた。
「ったくあのドレッドヘアー、なんでこんな所に来てたんだよ」
そして似合わないのに書店にやってきた”紅蜥蜴”の事を激しく罵ったのであった。
長身の男 斬刃もまた魔戒騎士の逸れモノである・・・
彼が”紅蜥蜴”の後を付けたのは、彼と戦う為であった・・・
斬刃が追っていた男 紅蜥蜴は彼が所属する”グループ”のメンバーであるが、このグループは特別な仲良しの集まりでもなければ、一個人に奉仕する集まりでもない。
それぞれの思惑のままに集まっている。当然のことながら、仲間意識は希薄であり、時折”共食い”に似た内部でのメンバー同士の”殺し合い”すらも起こる。
紅蜥蜴という男は、斬刃よりも目線が更に高い長身であり、痩せ型の彼とは対照的に”アメフトの選手”のように筋骨隆々の逞しい体格である。
斬刃が紅蜥蜴を追っていたのは、ここ最近”退屈”していた為、”紅蜥蜴”との戦いを楽しもうと考えたからであった。
斬刃と言う男は、魔戒騎士である。
だが、彼は己の戦闘意欲に身を任せ、只管”闘争”を求めるが故に魔戒騎士の掟を破り、脱走した存在でもあった。
斬刃は、魔戒騎士の家に生を受けたが、称号持ちの家系ではなく一般のその他大勢の”魔戒騎士”の一族であった。
ホラーより人々を守る”守りし者”としての使命を師でもあった”父”より教わったのだが、彼はその教え以上に”戦うこと”に異常なまでの執着を持っていた。
幼い頃より、周りとの争いが絶えずその度に彼は自身の”闘争心”の赴くままに拳を振るった。
やがて成人し、ホラーとの戦いに身を投じることでさらにその”闘争心”は強くなり、”麻薬”のように彼の神経を冒していった。
獰猛な魔獣でありながら狡猾な知性を持った油断ならない存在との戦いは、彼にとってこれ以上にない”遊戯”であり、自身の”生”を実感できる瞬間だった。
「ハハハハ。ヒリヒリしてきたぜ・・・どっちが強いかこれで、ハッキリさせようぜ」
自身の鎧・・・一般の魔戒騎士の鎧である”鋼の鎧”を召喚し、大太刀の魔戒剣をホラーに対して構え、振り下ろすことで飛び散る黒い血潮と断末魔の声・・・
「いいじゃねえか・・・だが、まだ足りないぜ。あぁ?お前、ホラーの血を浴びたか?だったら、暫く俺に付き合え・・・」
戦いに巻き込まれた人がホラーに血を浴びたことを憂うこともなく、己の”闘争心”を満たす為だけに利用し、ホラーに最高の”餌”として喰わした後に戦いを楽しむのだった。
彼のその行動により番犬所からは魔戒騎士の鎧を剥奪されかけ、さらには師でもあった父に刃を向けられたが、これもまた斬刃の”闘争心”を刺激し、父と刃を交わし、その命を奪い、そのまま番犬所より脱走した。
この時、彼はホラーとの戦いで”闘争心”を満足させていたが、さらなる刺激を求めるようになった。
それは”魔戒騎士”との戦いであった。
自身を戒めようと剣を振るった実の父の想いは届かず、彼をさらなる魔道への一歩を踏み出させた・・・
称号持ちの魔戒騎士、もしくは脱走した魔戒騎士を処刑する存在と一戦交えたいと考えるようになる。
魔戒騎士同士の戦いは”掟”により禁じられているが、斬刃には歯牙に掛けるに値しない戯言であった。
脱走し、各地を放浪しアスナロ市で彼はある魔戒騎士と出会うに至った・・・
誰かがホラーと戦っていた・・・一つの街に魔戒騎士は二人も居ない・・・
アスナロ市に来たのは、数週間前であったがその間に魔戒騎士の存在は感じられなかった・・・
存在しなかった魔戒騎士が居るということは自分を追ってきた存在であろうと斬刃は解釈し、その存在の元へと走ったのだった。
そこにはホラーの中でも最も強固な装甲を持つホラー ハンプティが居た。
その強固な装甲は魔戒剣ですら傷つけることは難しい・・・
現れたハンプティは、一般に知られているハンプティとは様子が違っていた。
元々強固であった装甲がさらに追加されており、より高い防御力をえた”個体”であった・・・
対する魔戒騎士は、ドレッドヘアースタイルの二振りの斧を構えた斬刃よりも背が高い、筋骨隆々の逞しい男であった。
自身よりも大きく、一般の魔戒騎士でも倒すのが容易ではないハンプティに魔戒斧による強力な斬撃と持ち前の強力で振るわれた爪を弾くように押しのけ、懐にアメフト選手のような強力なタックルを魔戒斧を伴ってホラーに浴びせる。
斬刃は、その様子に思わず笑みを浮かべていた。
あの風変わりな魔戒騎士は自分を追って来たであろう称号持ちの魔戒騎士であると・・・
何故なら、彼は鎧を召喚せず、魔戒斧のみを本来の姿であろう巨大な斧に変化させてそのままハンプティを両断したのだから・・・
強固なハンプティの装甲を断ち斬るほどの剛力とその技術の高さを持つドレッドヘアーの魔戒騎士は紛れもない”強者”だと・・・
「・・・・・・ヒリヒリしてきたぜ!!!おい!!!お前!!!次は俺が相手になるぜ!!!!」
追手の魔戒騎士ならば逃げなくてはならないのだが、彼にそのような考えはなかった。
大太刀を振り上げながら、斬刃は魔戒騎士 紅蜥蜴の元へと向かっていった。
振るわれた刃を左手に持った一振りの斧でそれを受け止める。
「いいぞ!!俺の剣を片手で受け止めるのか!!!俺はお前みたいな奴と戦ってみたかったんだ!!!」
三本の傷が走る顔を歪ませながら、紅蜥蜴と刃を交えた。
「・・・誰だ?・・・番犬所もとうとう狂犬を放つようになったか」
ドレッドヘアーを揺らしながら紅蜥蜴は、獰猛な笑みを浮かべる斬刃を見ながら片手で彼の魔戒剣を持つ手を掴みそのまま勢いよく放り投げた。
目の前の戦いに異常なまでの”闘争心”を燃やす斬刃は、相手を斬ることしか見えていない為、防御がおざなりになっていた事に紅蜥蜴は気が付いていた。
故にもう片方の斧で彼の両手を斬ることも叶うのだが、それを行うのも少し手間な為、斧を手放しそのまま掴んだ。
見た目に相応しい強力な握力に痛みを感じた瞬間に宙を舞い、背中からくる衝撃の後に冷たいアスファルトの上に倒れていた。
「おいおい・・・流石は騎士様って奴か。俺みたいな逃げ出した逸れ魔戒騎士にも温情をかけてくれるのかよ」
(さっきから何を言っている?まさか、こいつも俺と同じ脱走した魔戒騎士か・・・)
紅蜥蜴は、目の前の斬刃は魔戒騎士の逸れモノであり、異常なまでの闘争心と戦闘欲を抱えた人物であると察した。
相手が強ければ強い程、喜びを感じる”バトルジャンキー”とでも言うべきかもしれない。
何をどう思って自分を真っ当な魔戒騎士と勘違いできるのだろうと紅蜥蜴は斬刃に呆れに似た感情を抱いた。
相手を殺すのは容易であるが、殺さずに制すのは容易ではない。自分はあのまま自覚のないまま斬られていたのかもしれない。
だからこそ、この魔戒騎士との戦いを楽しまなければならない・・・
生身で戦うのも良いが、相手は自分よりも強い。故に彼の本気が見たかった。
鎧を召喚し、相手にもまた鎧を召喚させ、全力の相手と戦いたかった。
斬刃はここで”鎧”を召喚しようと大太刀を掲げた時だった・・・
「そこまでだよ・・・紅蜥蜴、後は僕と魔号機人達に任せてもらえるかな?」
自分を取り囲むように金属製の骸骨人形達が突如現れた第三者の声と共に現れた。
骸骨人形 魔号機人らは魔戒法師のように黒い衣装という姿だった。
「だ、誰だ!!!法師か!!!ジャマすんじゃねえ!!!!」
戦いに水を差されたことに憤り、骸骨人形らに斬りかかる。排除しようとするが、骸骨人形達は意外なほど強く、一般の魔戒騎士と互角の力量とさらにはそれらを操っているであろう存在の巧みさにより、斬刃は次第に追い詰められていった、
「こんな人形じゃなくて、こっちで来いよ!!法師じゃ、こんな玩具に頼らないと戦えないのか!!!」
紅蜥蜴は興味がないのか第三者が居るであろう場所に視線を向けている。
そのことが余計に腹立たしく思えた。鎧を召喚し、この場を切り抜けようと考えたが・・・
「キャハハハハハハ!!!!魔戒騎士の割には短気ねぇ~~。フタツキ~♪私が拘束しちゃっても良いかしら♪」
耳障りな笑い声と共に自身の影から誰かの影が入り込み、そのまま斬刃は身動きが取れなくなってしまった
「な、なんだ?俺の影に何かが・・・どういうことだ?」
このような術は聞いたこともない。さらには、骸骨人形 魔号機人の存在もまた・・・
「巴ちゃんの”能力”と僕と魔号機人の相性は抜群のようだね」
黒髪のアイドルのように愛らしくも美しい少女と青年がいつの間にか斬刃の前に立っていた・・・
「誰だ・・・てめぇら・・・邪魔しやがって・・・」
現れた二人に対し、斬刃は怒りに視線を向ける。魔戒騎士の睨みは、一般人を震え上がらせるには十分な殺気が込められているのだが、二人はこれと言って気にしていないようだった。
「キャハハハハハ♪そう怒らないでよ。私としてはあまり騒がしくしてほしくなかったのよねぇ~~フタツキぃ~~久しぶりに魔戒騎士が獲物で掛かったけど、このままどうする?香蘭の所にでも送っておく?」
黒髪の少女 真須美 巴は笑いながら、斬刃にとっては聞き捨てならない”人物の名前”を言っていた。
「なっ!?!てめえら、何者だ!!なんで、あのヤバい女の事を知っているんだ!?!」
香蘭の噂は、斬刃も耳にしたことがあった。
元老院に迎えられながらもその危険思想と行動故に処罰されかけるも脱走した外道 魔戒法師の存在を・・
番犬所のさらに上位機関である元老院の追撃から今も逃れている危険な存在を・・・
「いやいや、巴ちゃん。香蘭の所に送ったら、それこそ地獄に逃げる方がマシな目に遭わされると思うよ、ここは・・・彼は面白そうだから誘ってみるのも良いかもね」
青年 明良 二樹は逸れ魔戒騎士 斬刃を自身のグループに誘うのだった・・・
「君ってさぁ、スリルを求めているんだよね。僕も同じさ♪」
「だったら、さっきの騎士と俺をもう一度戦わせろ」
「紅蜥蜴に、今の君じゃ正直言って勝てないと思うよ」
「そんなこと、分かっている。だからこそ、戦いたいんだ。相手が強ければそれでいい」
身動きこそは取れないが、斬刃の抱えているモノに明良 二樹は愉快だと言わんばかりに笑い、真須美 巴は珍しい玩具を手に入れたと言わんばかりに笑う。
「キャハハハハ!!!あなた、フタツキ一緒に来なさいな。もっと面白い事があるかもしれないわよ」
「誘ったからには楽しませてあげるよ。退屈だったら、紅蜥蜴に挑戦しても良いよ♪」
二人の様子に斬刃は、てっきり服従しろと要求してくるかと身構えていたが・・・一緒に来て遊ぼうと言わんばかりの誘いに戸惑ってしまった。
「お前達・・・頭、おかしいんじゃないのか?」
「ハハハハハ、それはお互い様だよ。紅蜥蜴は、割と真面だけどね。僕らと比べたらね~~」
「ねぇ~~~♪」
斬刃は、明良 二樹の誘いに応じることになった。その間、紅蜥蜴は別の用事が出来たため、その場を後にしていた・・・
彼が紅蜥蜴と話を交わし、彼もまた斬刃と同じく逸れ魔戒騎士であることを知るのだった・・・・・・
明良 二樹と関わるようになってから、様々な依頼や彼自身が見つけてきた”遊び”は斬刃の”戦闘意欲”を満足させた。
その過程で剣の腕を磨き、先日になって強くなった己の力量を思う存分に振るいたくなったのだった。
明良 二樹のグループの中で最も強いのは、彼が操る意思を持つ魔号機人 凱と紅蜥蜴である。
魔戒法師である香蘭もまた実力者であるが、魔号機人 凱と魔戒騎士である紅蜥蜴に比べると直接的な戦闘では敵わないが、頭脳面で二人に比類する強さを持っている。
強い力を振るうのならば、紅蜥蜴相手の方が存分に振るえると考え、再戦を申し込もうとしていたら自身が警戒する香蘭に絡む頭の悪そうな茶髪の青年を目撃してしまったのだ・・・
「うん?あいつ・・・あの服装は魔戒騎士の・・・・・・」
「そうだよ。彼、魔戒騎士みたいなんだけど」
気が付くといくつかの文庫本を抱えた明良 二樹が斬刃の隣りにいつの間にか立っていた。
「二樹・・・お前もなんでこんな所に居るんだよ。紅蜥蜴もなんでまた・・・」
「紅蜥蜴と戦いたい割には彼の事をあまり知らないんだね。彼の趣味は読書だよ・・・結構な読書家だよ」
噂をすれば影であり紅蜥蜴は足早に予約していた”本”を受け取り、書店を後にしていた。
途中で斬刃の存在に気づき、そのまま撒いたのだった・・・
「けっ!!俺には分からねえよ、あの男も魔戒騎士なら少しは楽しめるか・・・そうでもないか」
斬刃は、男の力量はおそらく自分以下であり、一般の魔戒騎士の力量でしかないと察した。
やる気がなくなったのか、そのまま帰ろうかと背を向けようとするのだが・・・
「まぁ、待ちなよ。ここはちょっとだけ付き合ってよ、大丈夫、香蘭のことは僕に任せてよ」
正直、香蘭に関わると碌な目に遭わないのだが、明良 二樹と一緒に居れば、厄介ごとから回避されるのでこのまま背を向けて逃げたら、後で何をされるか分からないと斬刃は考えを改めた。
今の明良 二樹はどこか楽しそうにしている。
こういう時の彼は、何か楽しいことを思いついたときなのだ。
今まで彼の誘いで外れはなかったので今回も少しは楽しめるだろうかと思いつつ、斬刃は明良 二樹に続くのだった・・・
香蘭に話しかけている茶髪の魔戒騎士こと 不知火 リュウジは軽い態度でなれなれしく彼女に話しかけていた。
「そんなに素っ気なくしないでよ、俺さぁ、結構こういう難しい事、わかんないけど興味というか好奇心が旺盛で色々と教えてくれたら、うれしいなって」
よくある軟派であり、彼女を何処かに誘おうとしているようだった・・・
「ちょっとそこの人、香蘭が困っているじゃないか」
「あっ、フタツキ・・・それに斬刃くんも・・・」
口調は若干不機嫌であり、斬刃は少し居心地が悪そうに表情を歪めるが、明良 二樹は何時ものようにさわやかな笑みを浮かべていた。
不知火リュウジは、斬刃の顔の傷に覚えがあるのか一瞬ではあるが、視線を厳しくした・・・
その一瞬を明良 二樹は見逃さなかった・・・これはまた面白いことになると考えるのだった・・・
(・・・こいつは、青の番犬所から逃亡した斬刃だ。なんで、こんな所に・・・それにこの男は一体だれだ?香蘭に仲間が居るなんて情報は・・・・・・)
彼はある思惑を胸に香蘭に近づいたのだが、彼女の周りに居る”イレギュラー”の存在を今になって知るのだった・・・
不知火 リュウジ 彼は影に属する魔戒騎士である・・・・・・
その任務は、元老院より香蘭を逮捕することであった・・・・・・
あとがき
この時間軸では、過去に”炎の刻印”の出来事があったということになっています。
さらには、神浜市もまた存在しています。
今回唐揚ちきんさんより頂きました二人の魔戒騎士が登場しました。
斬刃と不知火リュウジの二人です。
斬刃は、香蘭が苦手であり余程の事がない限り関わりたくないそうです(笑)
紅蜥蜴は、かなり強めです。
パワーファイターでありながら、戦闘技術も洗練されているといった具合です。
香蘭も警戒する仁美が連れてきた使徒ホラー 二ドルの剣でも彼女からそれなりに信頼された戦闘力を持っているのでハンプティの強化型 ハンプティマグナを鎧召喚無で倒せます。
斬刃は、強い相手とひたすら戦いたいバトルジャンキーとして描いています。
そんな相手に絡まれる紅蜥蜴さんは、色々と苦労しています。
久々の登場の真須美 巴。彼女は、明良 二樹のグループには所属せず、遊び相手として時折、顔を出していました。
彼女とフタツキのコンビの相性はばっちりであり、組んだらそれこそかなりの戦力になります。