呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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活動報告にて募集したキャラが今回より出てきます。

ちょっと長くなりましたので壱と弐で分けました。

どなたが出てくるかは、本編にて・・・・・・


番外編「明良 二樹と言う男」(後編 壱)

 

「こういう環境団体ってさぁ~~、哺乳類とか、割とかわいい生き物は保護しようと考えているけど、カエルとか容姿が悪いと絶滅に瀕しても保護しようとは言わないんだよねぇ~~」

 

明良 二樹は、紅蜥蜴より教わった”ホラー ガマール”が蛙に似ていることに対して、カエル図鑑を開いていた。

 

様々な色鮮やかなカエルの写真は、見る人が見れば神秘的ではあるが・・・

 

「・・・そんなモノを広げないでよ」

 

カエルが苦手なカンナは、明良 二樹の話を聞きたくないと言わんばかりに表情を歪めた。

 

二人が居るのは、BARの執務室であり普段は”火車”が色々と仕事をしているが、彼は今現在、他のメンバーへの呼びかけの為、BARを出ていた。

 

スマホ等の携帯端末を持っているメンバーは、明良 二樹の呼びかけを知っているが、中にはスマホなどの連絡用の端末を持たない者の居り、所在が不明なことも多い。

 

”面白そうだから”と言う理由で、声を掛けた”メンバー”は、彼の呼びかけに応じる時もあれば応じないこともある。

 

故にメンバーがどれだけ存在しているか、正確な人数を聖 カンナは把握しかねていた。

 

メンバー間での顔を知らないか、会ったこともない者も存在する。

 

全てのメンバーの詳細を知っているのは、明良 二樹か実務をこなしている”火車”ぐらいであろう。

 

普段は、ふらふらしていて、BARのオーナーでありながら気が向いたときに仕事をする明良 二樹に対して”火車”はBARの運営やら、様々な情報を扱っている。

 

このBAR以外にも拠点は存在しており、そこも火車が管理しているとのこと・・・

 

火車の情報網は深く、所在が不特定なメンバーも正確に探し当てることができる。

 

元々、様々な犯罪組織やグループを渡り歩いていた経歴であるが、彼自身が”仲間”を裏切ったことはないとのこと・・・

 

意外ではあるが、火車自身は元々自身の将来や境遇に希望を抱かない故に誰かを裏切ってまで自身の利益を求めようとは思わないのだ。

 

ほんとんどの裏切りは彼の”優秀さ”に対する妬みであり、嵌められることがほとんどであった。

 

大抵は仕事を期待以上にこなしてくれる為、彼が所属していた”グループ”や”犯罪組織”からは覚えはよかった為、コネクションを持つことが出来た。

 

裏切りを行った者達は当然のことながら”制裁”を受けるに至っている。

 

裏社会の事なら19歳の若さでほとんどを知ることが出来、さらに上を目指せるのだが、彼はそうしようとは思わなかった。

 

目の前の現状に満足している口なので、より大きな利益を求めようとする欲求が存在しないし、湧くこともないのだ。

 

そんな彼だからこそ”明良 二樹”は仲間として、友人として接している。

 

決して裏切らない空虚な人間”火車”。十分に役立つし、その能力は誰もが欲しがるほど優秀である。

 

見た目は、半グレ然とした線の細い青年であるが、そのスタイルなのは、単純に他のスタイルにするのが面倒なだけだからそうだ・・・

 

(こいつは、いつもふらふらして遊んでばかり・・・)

 

執務室で両生類の本を無邪気に広げて眺めている明良 二樹に対し、聖カンナは厳しい視線を向けた。

 

ホラー ガマールが蛙に似ているということもあり”カエル”等の両生類に好奇心が抱いたのか、執務室を使用で使うのは彼曰く、オーナー権限だそうだ。

 

(火車に色々働かせておいて・・・火車も火車でどうしてあんな風に自分を蔑ろにするの?)

 

聖カンナ自身、火車には良くしてもらっているが彼の自身への希望の無さに対する姿勢だけは受け入れることが出来なかった。

 

 

 

 

 

明良 二樹は火車が動いている事を素直に感謝していた。

 

(本当に火車の存在はありがたいな、僕一人だと色々と面倒な事をこなさなくちゃいけなかったんだけど彼って色々とこなせるし、要領よく覚えるんだよね)

 

明良 二樹は火車の実務能力を高く買っており、自身が”遊び”をより良く楽しめるのも彼の存在があってのことだ。

 

 

 

 

 

火車は、アスナロ市の開発地区にまで足を延ばしていた。

 

ここは都市開発計画の一環で住民の大半が退去している廃屋がほとんどであるが、こんな所にではあるが人は住んでいる。

 

「相変わらずっすね~~。ここは、本来ならホームレスや不良が居るんすけど・・・あの人が”彼女”の為に動いているってことで間違いないんすよね」

 

路上生活者の痕跡が至る所に点在しているが、人の気配は存在していなかった。

 

右手にはビニールの手提げ袋を持っており、中には差し入れの弁当が入っている。

 

廃屋の中でも一際古い年代の古い日本家屋へと足を踏み入れた。

 

「牙樹丸さん。ここに居るんでしょ、とりあえず知らせたいことがあったんで来たっすよ」

 

火車の声に呼応するように奥の荒れた居間に横になっていた男が起き上がった。

 

「おおっ!!居た居た、ご飯、彼女さんは食べてて牙樹丸さんは、まだなんでしょ」

 

居間の入り口に立つ火車を牙樹丸と呼ばれた男は、片目だけが隠れた長い髪を揺らしながら顔を向けた。

 

「ああ・・・君か、火車。いつもすまないね・・・今日は機嫌が良くってね・・・彼女は・・・」

 

”彼女”という言葉に呼応するように木々が風によって騒めくような音が室内に響いてくる。

 

木々などないのにそのような音が聞こえてくるのは、明らかに不自然ではあるが、火車はその原因を知っていた。

 

「貢ぐのは男の甲斐性って奴っすから、冷めないうちにどうぞ」

 

ビニール袋から取り出されたのは保温用のBOXに入っている弁当箱と魔法瓶に入れられた味噌汁であった

 

「悪いね・・・私は人間はみな、クソくらえだと思っているけど、君は私が彼女と一緒になる前から、仲良くしてもらえたから、君だけは別だよ」

 

火車とこの廃屋の住人である植原 牙樹丸は、アスナロ市に来る前からの知り合いであった・・・

 

 

 

 

 

 

海外へのボランティア活動で出会い、お互いに意気投合したことだった。。

 

当時の植原 牙樹丸は、海外に積極的にボランティア活動に行く慈善家であったが、小悪党であった火車とは意外と話が合い、行動を共にしていた。

 

植原 牙樹丸自身は、若干人間嫌いに気があったのだが、それは自身が住まう国に居たくなかった為にボランティア活動をしているとのことだった。

 

人間は嫌いだが、何もしないよりはマシだと言うのが彼の本音であった。

 

火車に至っては、ヤバいところに出入りしていた先輩に売られたため、ここまで逃げてきたと正直に話した

 

慈善活動については、全く興味こそはなかったが、ここまで来て何もしない方が悪いと言ってボランティア活動を成り行きで火車は行っていた。

 

お互いに不純ではあるが、何もしないよりはマシだという気持ちは共通していた。

 

ある日、火車が日本へ戻ることになり、一旦別れることになった。

 

その後、別の国へ行くのだが、突如として内乱が勃発し、巻き込まれることにより瀕死の重傷を負うに至った。生死の境をさまよっていた時に彼は、奇妙な声を聴いた・・・

 

木々の騒めきの様な声を・・・まるで自分を心配するかのような雰囲気を持った声を聞いたのだった。

 

声と共にイメージが広がっていく・・・それは、黒く大きな木だった。

 

風により木の枝が騒めくように笑いながら、彼に迫ってきた。

 

不思議な夢ともつかぬ光景の後、彼はある診療所で目を覚ました。

 

一命こそは取り留める。自身が住まう国は豊かではあったが、人の心と言うモノは最悪であった。

 

誰も彼もが自身の利益を求め、他人が困っていても見て見ぬふりをし、取り返しのつかない事になったら互いに責任を押し付け合う光景に嫌悪していた。

 

故に植原 牙樹丸は、自身の生まれた国から離れたのだが、ここでも同じく人は自身の利益しか求めていなかった。

 

人と言うモノは、臭く汚いものが詰まった”クソ袋”でしかないのだと・・・

 

帰国した後、”彼女”の為に尽くしていた時に、明良 二樹と出会い、彼の一団というよりもグループに誘われたのだが、そこで”火車”と再会した時は互いに驚いてしまった。

 

 

 

 

 

「クソくらえっすか。今度もクソみたいな依頼人から依頼が来たんすっよ。彼女さんも気に入ると思うっすよ」

 

あの依頼人は火車から見ても、相当なロクデナシでしかなかった。

 

真っ当な言い訳をしているが、その実自分の欲望に忠実な所は、まだ悪いことをしていると自覚している犯罪者の方がマシだと思う程に・・・

 

火車はある企業のパンフレットを取り出した。それを見た牙樹丸は興味深そうにそれでいて心底嬉しそうに笑うのだった・・・

 

彼に呼応するように長い髪に隠れた片目から植物の枝のようなものが伸びてくる・・・

 

「俺っちは、彼女さんの為に色々と頑張るのは良いことだと思うっすよ」

 

「ははは、君の事は本当に感謝しているよ。フタツキに伝えてくれ、今晩、そちらに顔を出すとね」

 

今回の依頼は、火車曰くクソみたいな依頼人らしいものであり、今回の事実を容認した者を全て処分しろと言うモノだった・・・

 

植原 牙樹丸にとっては、自身が尽くすべき”彼女”の為に参加の意思を伝えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

アスナロ市のとある漫画喫茶にて・・・

 

今話題の少年漫画の単行本を読んでいた。

 

「いいなぁ~~、格好いいなぁ~~。でも可哀そう、苦しい記憶なのに・・・などかがこの世界に行ったら真っ先にみんなの嫌な事を忘れさせてあげるのになぁ・・・」

 

濃いマゼンタカラーの長めのツインテイルヘアーの少女 鼎 などかは、最近映画が公開され、話題になっているコミックに自身が介入するという光景をイメージしていた。

 

特に主人公である少年は、物語のラスボスにより家族を失い、さらには妹を異形の存在に変えられるという過酷な境遇であった。

 

異形に変えられた妹は人間であることを望み、人と異形との間で揺れ動いている。

 

少女が注目したのは、人と異形との間で揺れ動いている部分であり、彼女の苦悩を自身の魔法で消してあげたいと・・・

 

彼女は自分を人を苦悩から救う”魔法少女”であるからこそ思うのだった・・・

 

などかは、ここ最近不慮な事故で亡くなった少年少女が”異世界”もしくは”創作の世界”に転生するモノを愛読しており、自身が少し前に見た小説投稿サイトでみた”スター☆リン”の作品がお気に入りであった。

 

ハッキリ言えば、テンプレートそのものの内容だが、やたらと姉の死を回避するという内容に力が入っており、この作者は現実で”姉”を亡くしている嫌な記憶があるのではと察していた・・・

 

嫌な記憶を都合の良い妄想で和らげようとしている姿を想像して彼女は、そんなに嫌な記憶なら忘れさせてあげるよと実際に言ってあげたかった・・・

 

「さすがにこの世界が嫌だからと言って向こうに行かせることはできないけどね」

 

彼女の持論は、嫌な事は忘れるに限るである。事実、彼女は両親の事など覚えても居らず、また探そうともしていないことからお互いに”嫌な存在”だったからこそ忘れているのだろうと思っている。

 

実際は、彼女の”魔法”を使用したことが理由であるが、そのことを覚えてはいない。

 

言うまでもなく”忘れた”からであった・・・

 

そのことに彼女は後悔もしていないし、どうも思っていなかった。

 

数時間前に明良 二樹より誘いのラインが着ていたのだが、相手は自分の能力が通じない”ホラー”のようなので今回は見送ろうと考えていた。

 

「・・・でもお仕事は別に着ているんだよね。えぇ~~、邪魔者は消したいけど、罪の記憶は持ちたくないから記憶を何とかしてほしい?」

 

別の件で個別のラインで”火車”よりメッセージが着ていた。

 

それは、依頼人が自身の依頼に後ろめたさを感じており、それを何とかしてほしいと相談してきたのだそうだ。

 

今回の件は、依頼人がホラーを駆除し、それでいてそれを許容する人間たちの処分も含めておりその件でホラーはともかく他の人間の処分に対して今更ながら、罪悪感が湧き、かといって止めることも出来ない為、無責任に今回の件の罪悪感を消してしまおうと図々しくも依頼してきたのだ。

 

「う~~ん。めんどうくさいなぁ~~、まぁ、いいか、忘れたいことは忘れちゃっても良いよね。えへへへへへ」

 

怪しく目を輝かせ、鼎 などかは笑いながら再びコミックに手を伸ばした。

 

仕事よりも今は、漫画を読むことの方が彼女にとっては大事な事であったからだ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

メッセージが既読になったことを確認した火車は、今回の依頼人が改めて”クソ”であると思うのだった。

 

”陰我”を抱える人間は、ほとんどがロクデナシであるが今回の依頼人は輪に掛けてクソであると・・・

 

「何もかも忘れて、新しい人生って奴っすか・・・本当に何考えてるだか・・・」

 

色々考えているからこそと依頼人は反論するだろうが、そんな反論を聞く気もないので火車は、鼎 などかが居るであろう漫画喫茶の入り口の前に立っていた。

 

「ここ最近は、物騒だけど・・・などかちゃんなら、まあ何とかなるかな~~」

 

お願いをする為にとりあえず手土産を持ってなどかに会う火車であった。

 

 

 

 

 

 

BAR Heart-to- Heart

 

「やるとしたら、今夜かな・・・数は多いしホラーだから魔法少女組は今回はスルーかな」

 

奥の休憩室のソファーに横になりながら明良 二樹はスマートフォンを弄っていた。

 

此処は他の従業員等も利用するのだが、オーナーと言う地位にも関わらず、安物ではあるがそれなりに心地が良く、寛げればなんでもよいらしい。

 

「あぁ・・・そういえばあの子は参加してくれそうだね。後は・・・”斬刃”辺りかな・・・」

 

ホラーは通常一体がほとんどであるが、群れるホラーなら、彼なら喜んで参加するだろう・・・

 

明良 二樹が脳裏に浮かべた魔法少女の画像をスマホの画面に映し出す・・・

 

「ハハハハハ。似てると思ったらやっぱり母親似だよね、この子は・・・僕に近づいてきたのはそういう理由なんだろうね」

 

本名こそは名乗ってはいないが、特に聞き出したりする気もなかった・・・

 

言うまでもなくそちらの方が楽しめると明良 二樹は考えているからだ。

 

自身の身を滅ぼす要因であっても、それをギリギリのスリルで楽しむ事こそが彼の”人生”の醍醐味であるからだ。

 

「巴ちゃんもあちこちで怨みを買いつつも、それを楽しんでいた口だったしね・・・」

 

ここ最近、見かけなくなっており、何処かに行ったであろう”遊び友達 真須美 巴”の事を思いつつ、明良 二樹は今夜に供えてとりあえず一眠りすべく瞼を閉じるのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

”フタツキは地獄行って言われたらどう思うかしら?”

 

”どうだろうね~~。考えたこともないよ、行ったところで今までと変わらないともうよ”

 

”私も同じよ。むしろアッチには悪人しか居ないから、人目を気にせず色々できると思うから、むしろ楽しみね”

 

 

”へぇ~~、地獄って生前の行いの悪い人を罰するところじゃないって言いたいわけ?巴ちゃん?”

 

”キャハハ!!そうよ、私達の様な存在にとっては、最期のご褒美よ。悪人しかいないっていうことは、そういう意味なのよ。気兼ねなく死後の世界を楽しめって事よ♪”

 

 

 

 

 

 

「・・・ふふふふふ。兄さんも今頃楽しんでいるかな。もう暫く待っててよ。僕はもう少し遊んでから行くつもりだからね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

唐揚ちきんさんより頂きました植原 牙樹丸さん、魔法少女 鼎 などかちゃんが登場しました。

火車さんは、明良 二樹の参謀のような立ち位置に居ます。

頭脳面だったら、彼とほぼ同等ですが、自分の利益を求めることがないので、火車は絶対に明良 二樹を裏切ることはないのです。

ラストで募集を頂きました二人の存在が明良 二樹より語られましたが、残りのメンバーは次回にて・・・

時期としてはバラゴらがアスナロ市に来る前であり、真須美 巴はプレイアデス聖団に不意打ちにより拘束されています。

次回からは、明良 二樹達がホラーに攻撃を仕掛ける予定です。

そんでもって久々に回想ですが、真須美 巴の登場。思えば、彼女が明良 二樹をこちらの世界に連れてきたようなものです・・・

アスナロ市編では、本当によく働いてくれたと思います。





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