呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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11月に上げたかったのですが、色々あり12月になってしまいました。

次回より、募集したキャラを出す予定です。

この場をお借りしまして、唐揚ちきんさん、ありがとうございます!!!





第弐拾捌話「 転 廻 (参)」

「ほんとうに・・・アタシって馬鹿だな・・・こんな誰も望まない事になるなんてを考えもしなかったんだから・・・」

 

さやかの話にほむらは、言いようのない”哀しみ”を感じていた。

 

上条恭介の為に奇跡を願い、それを第三者に・・・魔女でもないただの人間に踏みにじられ、魔法少女にあるまじき行為に及んだこと・・・

 

自身の暗い怒りの感情の赴くままに”奇跡”を台無しにしてくれた”青年”を手に掛けたこと・・・

 

そして、自身の願った奇跡は上条恭介に絶望を齎し、彼に”甘美”な奇跡の味の虜にしてしまったことにより、魔獣 ホラーに憑依されてしまった・・・

 

思えば、自分の彼の為にと願った”奇跡”は本当に上条恭介の為になったのだろうか?

 

いや、上条恭介の不幸は世の中で一番の不幸ではなかった。

 

誰にでも起こりうるものであり、彼自身がそのような目に遭ったのは特別な事ではなかった・・・

 

それをさやかは・・・日常を平凡に生きていた彼女は上条恭介を悲劇の物語の登場人物としてみていた・・・

 

悲劇を何とかする為に”魔法”という後戻りできない”禁断の手段”に手を伸ばしてしまった・・・

 

上条恭介は、魔法で何とかしてあげなければならないほど駄目な少年だったのだろうか?

 

彼を甘やかし、取り返しのつかない結末に導いてしまったのは、美樹さやかの無知と傲慢な・・・身勝手な彼への想いだった・・・

 

上条恭介を”陰我”に堕としてしまった自分は、これ以上彼を不幸にさせない為に、ホラーとして”討滅”を友人の伯父である魔戒騎士に願わなければならないほど不甲斐なかった・・・

 

それなりに折り合いこそ付けられたが、彼女の行為を”断罪”するかのように”志筑仁美”が”陰我”の道を歩み始めたのだった・・・

 

誰にでも優しく、いつも隣で笑い合っていた彼女が、実の親ですら手に掛け、さらには幼い子供の命をも手に掛けようとするほど残忍な姿に変わってしまった・・・

 

心に再び暗い影が差す。ソラは、そんなさやかに言葉を掛けようとするが・・・

 

「美樹さん・・・私は正直言って自分を立派とは言えない人間だけど、これだけは言えるわ」

 

気が付くとほむらがさやかに目線を合わすように目の前で屈んでいた。

 

「取り返しのつかない事をしてしまったからと言って必要以上に自分を責めては駄目よ。結果は望むものではなかったけど、貴方が上条恭介を救いたいと願った事に間違いはなかったわ。ただ、あまりにも間が悪かったのよ」

 

話を聞けば、柾尾優太という青年が土足で踏み込んでこなければ、このような事にはならなかったとほむらは思っていた。

 

奇跡を受け取った”上条恭介”には思うところはあるが、ここで言う必要もないだろう。

 

ましてや居なくなった人間に厳しい言葉を掛けても意味などないのだから・・・

 

「でもさ・・・ほむら。仁美とアタシがこんな風になっちゃったのは、アタシが安易に奇跡を願ったから」

 

「志筑さんの件は、美樹さんに責任はないわ。魔法少女の素質がないにも関わらず、奇跡を強く望んだ彼女が自分自身で決めたことのよ。忠告をしてくれた人の話も聞かずに・・・」

 

上条恭介の件については、様々な不幸が重なり合っただけだが、志筑仁美の場合は、彼女自身が望んで行っているのだ。

 

彼女自身が選んだのだから、美樹さやかがそれに対して責任を感じる必要はないとほむらは応える。

 

「美樹さんは、上条くんの最期をしっかりと見届けたわ。貴女は、自分自身の過ちに向き合い、精一杯の貴女自身の誠意をもってケジメを付けたわ」

 

「ほ、ほむら・・・」

 

「さやか、以前にも話しましたが、彼を救いたいと願ったあなたの気持ちに間違いなんてありません。私達の望む結果ではありませんでしたが、上条恭介にこれ以上の苦しみを・・・罪を犯させないためにあの夜、私達は、彼を”もう一人の貴女”と一緒に行かせたのでしょう・・・」

 

「二人とも・・・・・・」

 

ほむらとさやかは、責めるわけでもなく励ましているわけでもないが、さやか自身の在り方を肯定していた。

 

「美樹さん・・・貴女がもしも上条恭介のことを今も想うのなら、彼の事をずっと忘れずに居てあげることは貴方にしかできない事だと思うわ」

 

「そうです。ですから気持ちをもっと強く持たなければなりませんね。あの時付け損ねたこれを・・・」

 

ソラは、さやかの髪にフォルテッシモ ffの髪飾りを付ける。

 

その意味は極めて強く。

 

譜面における音の強弱記号であり、劇的な場面において強く奏でよという意味である。

 

「そうだね・・・ここで暗くなっちゃいけないね。仁美を探して、馬鹿な事を辞めさせるまで、止まるわけにはいかないんだから」

 

自身を鼓舞するさやかの様子にほむらは、彼女は根本的に自分等よりもずっと”まっすぐで強い人”であると改めて思うのだった。

 

子供だった頃の自分は、そんな彼女の真っ直ぐな所を素直に認められなかったが、今はそんな感情はなく、純粋に今は、美樹さやかの手助けがしたかった・・・

 

「志筑さんの件もそうだけど、今、見滝原に大きな”陰我”が現れている事をこの場で伝えておくわ。それに志筑さんも深くかかわっていることも・・・」

 

ほむらは、志筑仁美の件と見滝原に現れた”使徒ホラー 二ドル”が深くかかわっている事を告げるのだった。

 

今夜、佐倉杏子とその伯父である風雲騎士と見滝原の魔法少女である 巴マミと合流する為、ほむらは自身の使い魔である”蝶”を見滝原の空に舞わせるのだった・・・

 

「大きな”陰我”って・・・ホラーよりも?」

 

志筑仁美の邸宅で見た奇妙な針で操られた人達に関わりのあるものではないかとさやかは考えるが、ほむらの言葉に事態が自身の想像以上に恐ろしいことになっていることを知るのだった・・・

 

「ただのホラーじゃないわ、最凶と名高い使徒ホラーの一体よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

志筑仁美は、自身の拠点である船の一室より水平線の奥に見える見滝原を眺めていた。

 

左目は眼帯をしており、彼女の手元には僅かな”因果”に満たされた空の”ソウルジェム”があった。

 

自身の願いを完全な形で叶える為に必要な”計画”は実行するのみまで来ていた・・・

 

”邪魔者”を早急に排除こそはできなかったが、排除するための”刺客”は既に配置させてある。

 

「ここまで来たのですから、後には引きませんわ。素質があるからこそ夢見た貴女達とは違い、わたくしは現実を・・・辛酸を舐め、這いつくばりながらここまで来ました」

 

不幸により悲劇的な最期を遂げた”彼”に人生をもう一度与えるという”奇跡”を起こす為に彼女は明日、それを決行するつもりで居た・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽が沈んだ閑静な住宅街の屋根を飛び越えてほむらは、さやかとソラの二人をある屋敷へと案内していた。

 

それは今や無人となった美国織莉子の住居跡だった・・・

 

現在は無人の為、荒れているかと思いきや、意外と外見や庭には手入れが行き届いていた。

 

この住居を含む土地を管理しているほむらの父 暁美 シンジによるものであることを彼女は知らない。

 

かつて父と美国織莉子の父が旧知の間柄であった”時間軸”も存在していたが、今回も同じなのであろう。

 

「ほむら・・・ここは・・・」

 

無人となった屋敷の庭に入ることに戸惑いながら、ここがどういう場所なのかさやかは尋ねた。

 

「少し前に見送った人が住んでいたところよ。ここなら志筑さんも考えつかないでしょう・・・」

 

”見送った”という言葉にさやかは、かつてここに居た人物は、既に亡くなっており、その最後を看取ったのがほむらであることを察するのだった。

 

ソラは、この邸宅に覚えがあった。

 

自身の情報として記憶されている蓬莱暁美の協力者であった”美国光一”の自宅であることを・・・

 

生み出された時には、健在であったが、”過去”に色々とやらかしてくれた魔法少女と彼女を唆したとある少年によって、”汚職議員”に貶められ、そのまま謎の自殺を遂げたとのこと・・・

 

その謎の自殺については、”怪異”が関わっているのだが、ここで語るようなものではない。

 

ほむらがさやからをこの場所に案内したのは、この邸宅にはまだエルダに師事し、習いたてではあったが”陰我”のゲートとなるオブジェを徹底的に封印したこともあり、ホラーや魔女のような怪異が現れることがないからだ・・・

 

ここで眠っているであろう”彼女”達には、断りを入れておかなければならない。

 

「織莉子・・・今晩少しだけこの場を貸してほしい。突然、押しかけて来たのは悪いと思っているわ」

 

途中で購入したケーキとさらにはCDを庭のガーデンテーブルに供える。

 

「意外だよね。ほむらがそういうのを聞くなんて・・・」

 

さやかは、途中で立ち寄ったレコード店でほむらが真っ先に向かったコーナーが”ロック”であったことを素直に驚いていた。

 

レコード店に入る際に”上条恭介”の事を思い出したが、いつまでも引きずるわけにはいかないと思い切って足を踏み入れた。

 

クラシック、姉の影響でJAZZ等、それなりに聞いているさやかだったが、ロックに関しては未知の世界だった。

 

ほむらが手に取ったのは、7人の青年達によるグループ”ワイルド セブン”のニューシングルだった。

 

「私は、KAWADAが押しなんだけど、織莉子はシュウヤさん押しなのよね」

 

ほむらが推すドラム担当のKAWADAは、レスラーのような体系の髪を短く切り込んだ厳つい男であった。

 

織莉子押しのシュウヤは、アイドルと言っても良い程ルックスが整っており、心の底から”音楽”を楽しんでいる表情をしていた。まるでかつての”上条恭介”のように・・・

 

「アタシもさぁ~、KAWADAはないと思うよ。シュウヤくんも良いけど、アタシはこっちのヒロキかな」

 

渋みを感じさせる長身のベース担当のヒロキをさやかは押す。

 

「ヒロキね。彼って寡黙でシャイなんだけど、実は物凄く熱いハートを胸に秘めているわ」

 

「あれぇ?ほむら、この人達と会ったことあるの?知っているような口ぶりだけど・・・」

 

「えぇ、少し前に”ライブ”に連れて行ってもらったのよ。彼女は魔法少女になりそうだったんだけど、シュウヤさん達、”ワイルド セブン”の曲を偶然聞いて、思い止まったそうよ」

 

魔法少女の契約をまさか歌を聞いて辞めたという事実にさやかは、

 

「なにそれぇ?確かにワイルドセブンの曲って聞いてて、気分が良くなるのは分かるけど・・・」

 

実際にほむらに勧められて聞いてみると、激しいイメージの”ロック”のようでもあるが、何かこう真っ直ぐに生きようと訴えるものがあった。

 

さやかが聞いたのは大切な幼馴染を亡くしたものの、カッコいい幼馴染に恥じないように生きようと歌ったヒロキメインの曲だった。

 

とてもではないが、他人事とは思えない歌詞の内容とそれを必死でシュウヤと共に歌うヒロキに思わず胸を熱くした。CDこそは買わなかったが、スマホでダウンロードしたのは当然の事だった。

 

「シュウヤさんのお父さんなんだけど、汚職弁護士として世間では叩かれていて、それでも自分は自分であると歌って真っ直ぐに生きようとするエネルギーを感じたとか言ってたわね。彼は、そんな感じの人で裏表なんてまるでなかったわね」

 

かつて”予知の魔法”を武器とした彼女は、魔法ではなく”ギター”を手に取ったのだ・・・

 

”ほむらちゃん、私もシュウヤさんみたいに強く生きたい!!!”

 

偶然気まぐれに付けたラジオで聞き、そのままライブまで行き、美国織莉子の素性を知りながらも”応援”していると言葉を貰い、彼女は”ロック”に目覚めたという・・・

 

織莉子の”ロック”によりあの時間軸でどれだけ迷惑を被られただろう・・・

 

それも過ぎてしまえば、意外と充実していたと思えた・・・

 

「・・・恭介にも聞かせてあげたほうが良かったかな・・・」

 

クラシック音楽を専ら演奏していた上条恭介であったが、ワイルドセブンの曲を聞かせたとしたら、どんな風に変わったのだろうか?CDを上げたモノのそのまま聞かなかったかもしれない・・・

 

上条恭介がなついていた姉 蓬莱暁美 お気に入りのJAZZすら手を付けなかったのだから・・・

 

「無理にでも聞いてみると聞いてみてよかったって思えるわよ、私がそうだったから・・・」

 

あの病院へ上条恭介の病室に訪れた時、拗ねてベットに蹲った彼の姿には呆れしかなかったが、CDの山の中に”ワイルドセブン”のアルバムCDを入れておいたのだが、聞かなかった事は間違いないだろう。

 

「彼女にはいろいろと振り回されて、いつの間にか私もおっかけになっちゃったのよね」

 

面白そうにほむらは笑った。

 

あの時間軸での”思い出”は今も息づいていて、思い出す度に温かさを与えてくれる。

 

ジャンルは違うが、音楽好きの知人に振り回されていたほむらに親近感を抱いたのか、さやかは

 

「ほむらはさ・・・その人とはもう会ってないの?」

 

自分とは違い、その人は今も居るのならば、会いに行ってあげればよいのにとさやかは思った。

 

もう会えない自分と違って、会いに行けるのならば、それはそれで幸福なことなのだから・・・

 

「・・・・・・色々あって別れなければならなかったわ・・・こんな可能性がある事を知りながら、この時間軸での彼女を助けることが出来なかった」

 

美国織莉子を魔法少女にしない為に、彼女には”ワイルドセブン”の存在を教えるのがベストであると知り、彼女の存在を確認した際には必ず、自分が布教しようと思っていた。

 

だが、この時間軸に存在する”ホラー”によって、彼女はその爪と牙に掛けられてしまった・・・

 

「”この時間軸”?」

 

ほむらの”時間軸”という言葉にソラは思わず聞き返してしまった。この言葉の意味・・・

 

可能性の世界に想定される”存在”。もしも、魔法少女の願いに”過去改変”を望む者が居たら・・・

 

最も考えられる”願い”でありながら、それを願った魔法少女を確認することは叶わなかった・・・

 

何故なら、彼女らは既に”旅立って”しまったのだから・・・

 

「ほむらさん・・・まさか貴女が別れた彼女というのは、この時間軸に存在していた美国織莉子の可能性の一つなのですか?」

 

「ちょっと、ソラ。じゃあ、今ほむらが話していた人って・・・この世界だともう死んでいるってこと?」

 

さやかもほむらの過去の話に色々思うところはあったが、まさかの展開に思わず声を上げてしまった。

 

彼女の過去は、自分達にとっては先の未来のことなのだ・・・・・・

 

「ここって、あの美国光一議員が住んでたところなんだ。何処かで見たような気がしたけど・・・」

 

数週間前のニュースで見たのだが、僅か数日で記憶の片隅に追いやられていた。

 

魔法少女にならなかった美国織莉子の未来を知っている暁美 ほむらの素性は・・・・・・

 

「じゃあ・・・ほむらは・・・未来から来たの?」

 

人魚の魔女がもしも魔女になってしまった”未来の自分”の可能性だとすれば・・・

 

未来から過去に迷い込んだのが魔女だけではなく、魔法少女もいるのなら・・・

 

「えぇ、私は一か月後の未来から過去へ戻ってきたわ」

 

真っ直ぐにさやかを見据えてほむらは応えた。

 

誰も信じられなかったのに、まどかでさえも死に際にようやく認めてくれた自分の真実をさやかは、否定することなく受け入れた。

 

「じゃあさ、ほむら・・・言わなくても分かってくれると思うけど、アタシは・・・さやかちゃんって、凄く迷惑というか、みんなを振り回しちゃったよね」

 

”魔法少女の真実”を知り、知らせてくれたであろう彼女に対し、おそらく自分はろくなことをしていないとさやかは察し、ほむらの真実を受け入れると同時にどうしようもないほどの罪悪感を覚えてしまった。

 

「そうね・・・色々とやってくれたけど、少なくとも今の美樹さんは、私が見てきた美樹さやかとはまるで違うわ。というよりもこの時間軸そのものが今までとは勝手が違うのよ」

 

自分がこのような姿になったのも、この時間軸が初めてであった・・・

 

魔女以外の”怪異”、魔獣ホラー、魔戒騎士、暗黒魔戒騎士、プレイアデス聖団、魔法少女喰い真須美 巴、使徒ホラー バグギ等、これまでに考えられない存在が多数存在していた・・・

 

ほむらの言葉にさやかも、もしかしたらの可能性を察した。

 

別の時間軸の自分には、今隣りに居るソラは居らず、さらには姉であった蓬莱暁美も居なかったかもしれないと・・・

 

「じゃあ、この先どうなるか分からないってことだよね・・・一つだけ未来を知っているほむらに聞いても良いかな?」

 

さやかは、今自身が最も気になっていることをほむらに問いかけるのだった・・・

 

「今までに・・・仁美が人を殺したことってあった?」

 

さやかの問いにほむらは首を横に振るのだった。

 

彼女は魔法少女の事も知ることはなかったし、関わることもなかった。

 

この先、何がどうなるか分からない・・・それだけは確かであった・・・・・・

 

「よぉ!!先に来ていたか、ほむら、さやかにソラ!!!」

 

気が付くと黒いコートを靡かせた佐倉杏子が伯父である風雲騎士 バドを伴ってこちらに近づいてくるのだった。

 

『フン、ようやく来たか風雲騎士達』

 

『そう言うなよ、ギュテク。ME達は、この辺りにはまだ足を運んでいなかったしね』

 

ほむらの契約魔導輪 ギュテクが風雲騎士が契約する魔導輪 ナダサに慇懃無礼な態度で迎える。

 

『気やすく呼ぶではない。お前達に我らが手を貸すことをありがたく思うんだな』

 

元使徒ホラーの一体である為か複製とはいえ、魔戒騎士に対してその態度は頑なであった。

 

ほむらと話している時は、魔導輪らしく、さやかやソラともそれなりに話せているのだが、風雲騎士 バドと杏子に対しては、このような態度を取る。

 

「ほむら、ほんとにその魔導輪、大丈夫かよ?聞けばホラーの中でも一番性質の悪い奴の一体でアスナロ市で散々悪さした奴だろ?」

 

ナダサと比べたら、変な言葉遣いをしない分マシではあるが、元が凶悪な使徒ホラーであるからか、佐倉杏子も一抹の不安を抱くのだった。

 

何時か裏切るのではないかと・・・

 

『杏子、そう心配することじゃないさ。バグギも最凶のホラーに違いないが他の使徒ホラーと比べたら、まだましな方さ。愉快犯の二ドルと比べたらね』

 

「ナダサの言葉の通り信じよう杏子ちゃん。奴は、奴なりに自分の吟味に従っている。そうだろう、ギュテク、お前のホラーとしての誇りを自身で穢すようなことはしないんだろう」

 

風雲騎士 バドがほむらの手首に存在するギュテクに視線を向ける。

 

『フン・・・言われなくともな。お前達に言っておこう、ここ見滝原に”使徒ホラー”が現れた、ナダサよ。お前に同意するのは不本意だが、奴の破綻した性格は敵に回すと相当厄介だ』

 

使徒ホラー 二ドル・・・その名は、恐るべき脅威の襲来であった・・・・・・

 

「・・・ほむら。使徒ホラーも今まで居なかったんだよね。じゃあ、一か月後には何が来るの?」

 

今の状況でさえも恐ろしいのに、一か月後にはそれに等しい脅威が襲来するという・・・

 

「街一つを破壊する威力を持った最大の魔女”ワルプルギスの夜”よ・・・」

 

さやかの問いにほむらは、その脅威である大物魔女の名を告げた。

 

隣りのソラは、ここ最近観測されているスーパーセルの件が”ワルプルギスの夜”出現の前兆であることを知っていたが、見滝原に一か月後に襲来することに頭を痛めるのだった・・・

 

(まさか・・・ワルプルギスの夜まで・・・使徒ホラーの脅威と同等の存在・・・)

 

使徒ホラー達の能力も厄介だが、純粋は破壊の力ならば、それらと十分に張り合えるのが”ワルプルギスの夜”である・・・・・・

 

「やっぱり来るのかよ。ワルプルギスの夜も相当厄介だけど、使徒ホラーっていうと、一体倒すだけでも相当な犠牲が出たって話の奴だろ」

 

杏子曰く、RPGのゲームでラスボスが ”ワルプルギスの夜”だとすれば、使徒ホラーはある条件を満たしたら出現する”隠しボス”と言ったところだろう・・・

 

「そんでもって・・・ほむら。お前さぁ・・・ちょっと聞きたいことが・・・」

 

杏子は、ここでほむらと腹を割って話すつもりで居た。伯父と一緒に彼女が”時間遡行者”であることを前提に話し合おうと考えていたのだった・・・・・・

 

「お前さぁ・・・アイツ・・・あれっ?」

 

「伯父さん、アタシ達、ほむらの事を誰かから聞いたっけ?」

 

「俺は杏子ちゃんから聞いていたんだが、その子の名前は確かに聞いた、なんだ・・・思い出せない?」

 

二人の様子にほむらは怪訝な表情を浮かべ、さやかもソラもいつもと違う歯切れの悪い二人に困惑した表情を浮かべていた。

 

杏子は、ある人物から”暁美ほむらの真実”を聞いていたのだが、その人物の事が思い出せないで居た。

 

”今度、ほむらに会ったら腕を掴んででも×××の元に連れてくるからさ”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ティヒヒヒヒヒ・・・駄目だよ、杏子ちゃん。勝手にネタバレしたら、盛り上がらなくなるから、話しちゃだめだよ」

 

美国織莉子の邸宅の庭を見下ろすように彼女は、雲の陰に隠れて居た。

 

黄金の瞳は、大人の姿になった”暁美ほむら”に視線を向けると喜色の色を浮かべた・・・

 

「やっとみつけたよ・・・ほむらちゃん。でも・・・ずるいなぁ」

 

喜色の色を浮かべた黄金の瞳に嫉妬と僅かな怒りの色が刺した・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「一人だけ大人になるなんて・・・ずるいよ・・・ほむらちゃん・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

今作でのさやかと仁美ですが、かなり対照的です。

本当の意味で幼いながらも恭介くんの事を見ていたのはさやかであり、自身の願いに振り回してしまったことのケジメは付けています。

ですが仁美に至っては、自身が手にすることのできない”魔法”と”奇跡”への憧れが強すぎて何も見えずに暴走している有様です。

自身を省みたさやかと違い、何も見えておりません。彼女の行く末は・・・

話を少し逸らしまして、ほむらがファンのロックグループ ワイルドセブン

シュウヤ、KAWADA、ヒロキ、シン、ユタカ、クニヨシ、keita の7人からなるグループです。元ネタは”バトルロワイアル”です。

布教と言う名の洗脳をほむらに施したのは、とある時間軸の”三國織莉子”

ライブハウスで腕を上げて燥ぐ彼女の姿に、ほむらはかつての三國織莉子とは全く違うことに困惑していました(笑)

仁美&二ドルとは別に何者かが暗躍し始めており、その存在に誰も気づいておりません。

仁美は、いよいよ後戻りできない行動に出ようとしており、見滝原には既に”刺客”が入り込んでいるようです・・・

ほむらの押しはどういう訳か、厳つい顔のマッチョマンです(笑)


できれば、今月中には話を進めたいところです。



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