呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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今回は、フタツキ達の様子を少しと見滝原中学校での出来事・・・




第弐拾漆話「 回 転 (捌)」

見滝原中学校

 

「おっす、まどか!!」

 

昇降口でまどかと杏子の二人にさやかは手を上げて挨拶を行った。

 

「えっ!?さ、さやかちゃんっ!?お、おはよう・・・」

 

ここ三日程姿を見ていなかった幼馴染の姿にまどかは、驚きの声をあげた。

 

それでも戸惑いがちに挨拶を返したが・・・

 

「?まどか・・・アタシ、何かまどかにした?まるで幽霊を見たかのようにアタシを見て・・・」

 

不思議そうにまどかを見るさやかに、杏子は”まどかが知る未来”において”さやか”は・・・

 

(まぁ、幽霊を見たっていうのも遠からずなんだよな・・・)

 

杏子は、魔法少女になったさやかは、最終的に破滅する”未来”にあるとまどかから知らされていた。

 

ただ、どのようにして”破滅”するかまでは聞いてはおらず、まどかも”魔法少女の破滅”については、話すことができない。

 

口に出すのもおぞましい最期であることには間違いないであろう・・・

 

それを知るであろう”暁美ほむら”に”魔法少女”の”真実”を聞ければよかったのだが、昨日の彼女の変貌があまりにも衝撃的だったために何も聞くことはできなかった・・・

 

「な、なんでもないよ・・・さやかちゃん。ここずっと学校に来ていなかったけど・・・」

 

彼女の指に嵌る指輪となった”ソウルジェム”にまどかは視線を向ける。

 

「・・・まあね。色々あったんだ・・・さぁ、早く教室へ行こうよ。まどか、姐さん!!!」

 

いつものように元気に声を上げるが、傍目で見ている生徒ならばいつもの”美樹さやか”のように映るであろう・・・

 

だが、彼女と付き合いの深い、まどかと杏子はどこか無理をしているようにも見えたのだった。

 

佐倉杏子はその理由を察しており、”幼馴染の少年”が”陰我”に堕ちてしまったことにより、この世から去ってしまったことを・・・・・・

 

三人の背中をクラス委員長である中沢 ゆうきは、少し複雑そうな表情で見ていた。

 

今は関係者以外、誰一人として知らないが”上条恭介が突然死”したということを彼は知っていた・・・

 

(美樹さん無茶をしてるな・・・志筑さんが来なかったのはそういうことだったのか・・・)

 

体調不良でここ数日欠席している志筑仁美は、彼の死にショックを受けて体調を崩したのかもしれない。

 

「おいっ!!ゆうき!!!今日は、どうしたっ!!!朝から表情が暗いぞ!!!」

 

自分の憂鬱な気持ちを敢えて無視しているのか、友人の保志が挨拶もなしに遠慮のないいつもの態度で話しかけてきた。

 

「ああ・・・今日はちょっとクラスで暗い話があるかもと思ってな・・・」

 

ゆうきの言葉に保志は、何となくではあるが”上条恭介”の事ではないかと察したが、それ以上に恐ろしい事にも気が付いていた。

 

というよりも、もう少しで目の前の友人が居なくなってしまうかもしれない現場に遭遇してしまったのだ。

 

「もしかして・・・志筑さんのことかな・・・まだ何も言ってないよな・・・」

 

「うん?なんで、そこで志筑さんがでるんだ?保志・・・確かに彼女の具合も・・・」

 

「・・・ゆうき、お前まさか気が付いていなかったのか?あの時の志筑さん普通じゃなかったぞ」

 

あの日、付き添いで欠席していた志筑仁美の家に行った時に見てしまったのだ。

 

志筑仁美の目を・・・表情こそはいつものようににこやかであったが、目が笑っておらず、何か恐ろしい事をしようとしている、いや、既にしていたのかもしれない・・・・・

 

「それ・・・考えすぎだろ。確かに昨日、通り魔で死んだ人が居たって朝のニュースで・・・・・・」

 

まさかと思うが、保志は突拍子のないことを考えているのではと中沢ゆうきは思うが、彼はいつものようなお調子者ではなく真剣な表情で・・・

 

「志筑さんと同じ目をした奴を昔見たことがあるんだ。そいつも実際にとんでもないことをしでかしていた」

 

保志のいう同じ目をした人間と言うのは、あの”ニルヴァーナ事件”を起こした者達であろう・・・

 

”ニルヴァーナ”の名前を口に出せないのは、今も彼が心に深い傷を負っているからである。

 

そんな彼が”志筑仁美”の異常に気が付き、声を上げて呼び止めたことで中沢ゆうきは事なきを得たのだ。

 

保志自身ももしかしたら考えすぎと今朝までは考えていたが、上条恭介の父が経営する音楽教室、その近くで老夫婦が通り魔により殺害されたことに・・・

 

あの時の志筑仁美が行動を起こしたからではと考えていた・・・・・・

 

「・・・俺のいつもみたいにイタイ妄想だったら笑ってほしいな・・・その時は・・・」

 

「あぁ、その時は思いっきり笑ってやるよ」

 

二人は、軽く雑談をしながら教室へと向かっていく・・・

 

そんな生徒達を遠目から教員 早乙女 和子は眺めていた。

 

普段の彼女と違い、今日はどことなく気が重いのかその表情は憂鬱であった・・・・・・

 

瞳に一瞬であるが、”魔戒文字”が浮かび上がった・・・・・・

 

「・・・・・・上条君がこんな事になったのはある意味私達のせいだったかも知れないわね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

各々がそれぞれのグループに分かれて雑談をしている中、始業を告げるチャイムが鳴る。

 

それを合図に生徒達は、席に着き担任の到着を待つ。

 

普段のように過ごす生徒達の中で何人かは普段と様子が違っていたが、それを気にする者は居ない。

 

担任である 早乙女 和子が教室の扉を開けて教壇に立ち、普段と違い暗い表情で話し始めた。

 

佐倉杏子は、担任が普段と違うのではと若干ながら睨むような視線を向けていた。

 

「皆さん・・・おはようございます。今日は、皆さんに悲しい事を伝えなければなりません」

 

早乙女先生の様子に生徒達は、いつものように”恋人”に振られたのかと思うのだが・・・・・・

 

「二日前に・・・上条君が亡くなりました。突然のことだったそうです」

 

クラス全体で息を呑む音がした。

 

初めて聞いた生徒は純粋に驚き、既に事情を知っている生徒は改めて事実であったと思い知らされる。

 

「せ、先生・・・ど、どうして上条君が・・・」

 

意外にも声を上げたのは、鹿目まどかだった。

 

特に彼とは親しい訳ではなかったが、このような事は今までになかったはずなのだ・・・・・・

 

純粋に今までになかった事に”動揺”していたのだった・・・・・・

 

「はい。詳しい事情は分かりかねますが、事件に会ってその後、精神的なショックを受けて亡くなったそうです」

 

学校へ彼が亡くなった事を父親はそのように伝えていたが、その”父親”も昨日亡くなっていた。

 

上条恭介に起こった”奇跡”とそこからの”不幸”にクラス全体がショックを受け、全員がなんと言えばよいのか分からなかった・・・

 

そんな中、さやかは沈黙するクラスの中では、彼の”最期”を見たこともあり、思考は冷静であった。

 

もう座ることのない”上条恭介”の席、今は何処で何をしているのか分からない”志筑仁美”の席に視線を向けていた。

 

落ち着いているさやかの様子に中沢ゆうきは疑問を感じていた。

 

何故、彼女は何も言わないのだろうと・・・・・・

 

上条恭介の事を好いており、彼に献身的に見舞いに行き、支えようとしていた彼女が何故と・・・・・・

 

彼の視線を感じたのか、さやかは中沢ゆうきに振り返り、口を動かした・・・

 

”・・・何も聞かないで・・・”と

 

視線もまた放っておいてくれと言わんばかりの視線であり、中沢ゆうきは何も言えなくなってしまった。

 

その後はとてもではないが授業をする気にもなれず、”自習”が指示されたが、突然死した”上条恭介”のことを思うとそれぞれが暗い気持ちのまま、ただ開いた教科書を眺めていただけだった・・・

 

普段騒がしい保志もまた何もする気にはなれず、無断ではあるがそのまま”早退する”と言って教室から出て行ってしまった・・・・・・

 

彼に続くようにさやかも荷物を纏めて教室から出ていこうとしていた。

 

”おい・・・さやか。何処へ行くんだ?”

 

テレパシーで杏子がさやかに話しかける。

 

”姐さん。こんな雰囲気だと気が滅入るから、アタシはちょっとソラの所に帰ります”

 

”そうかい・・・色々とあったからな。ここ最近は・・・後でアタシんとこに来なよ”

 

”話が早いですね・・・放課後にまた・・・・・・”

 

杏子に軽く会釈をした後に、さやかはそのまま教室を後にするが、まどかが彼女を追いかけるように

 

「さ、さやかちゃん!!!待って!!!」

 

そのまま教室を飛び出して行ってしまった。

 

「アタシは別に勉強をしなくても困らないんだけど、しっかり授業は受けておいた方がいいよ。まどか」

 

「そうじゃなくて・・・一体何があったの?上条君が・・・・・・」

 

「恭介の事もだけど、聞いておきたいことがあるけどいいかな?」

 

何を自分に聞こうと言うのかと、まどかは疑問に思う。

 

「まどかはさ・・・魔法少女になりたいって、今でも思ってたりする?」

 

さやかの視線が少しだけ厳しくなる。今までにない”親友”の視線に少しだけ怯えを感じる。

 

「・・・良く分からないよ。叶えたい願いがあるわけでもないし、魔法少女になったら、少しは格好よくなれるかなと思ったこともあったけど、そうなることはないんじゃないかって今は思うんだ」

 

魔法が使えることに自信を得たとしてもそれは結局のところ、調子に乗っただけなのかもしれない・・・

 

「奇跡を願う前にやれることを考えた方がずっと良いよ。奇跡を願い、希望を謳う魔法少女になるよりもずっと健全だよ・・・そっちの方が・・・・・・」

 

さやかは、まどかの肩に手を置き・・・

 

「まどか・・・アンタが今の生活と家族、友達が大切なら、絶対に”奇跡”なんかに手を出しちゃいけない。そうなったら、もう戻ることもできないし、何もかも失ってしまうんだから・・・」

 

「さ・・・さやかちゃん・・・」

 

まるで”暁美ほむら”のように話すさやかにまどかは、彼女の変わりように戸惑う。

 

「誰のせいにもできない。自業自得な後悔だけは、もう誰にもさせたくないんだ」

 

さやかの意思は、まどかに魔法少女になるなと告げていた。自分は”沢山のモノ”を失ってしまった・・・

 

この親友にだけは、そんな選択を・・・過酷な運命に足を踏み入れてほしくなかった・・・

 

一人の親友は、”陰我”の道を歩みだし、自分自身が決着を付けなくてはならないかもしれない・・・

 

志筑仁美を自身の手で止めなくてはならない・・・

 

そうなれば、自分は鹿目まどかとはもう”親友”ではいられないだろう・・・

 

「そう言えば、仁美ちゃんは?仁美ちゃんはどうしたの?」

 

「・・・・・・仁美の事はアタシが何とかする・・・だけど、もしもアタシだけが帰ってきたら、まどかはアタシを絶対に許さないかもね」

 

さやかの口振りから、志筑仁美が何か恐ろしい事になっていることを察するが、さやかはそれ以上の事は言わずに背を向けて去っていった・・・・・・

 

「例え誰にも理解されなくても・・・恨まれても・・・こんな思いをするのはアタシだけで終わらせる。他の誰にもこんな思いはさせない」

 

ましてや、親友のまどかに自分のような想いをしてほしくなかった・・・

 

追いかけるべきなのかもしれないが・・・

 

まどかは、去っていくさやかの背中を追いかけることが出来なかった・・・

 

自分の知らない間に手を伸ばしても届かない場所へと言ってしまった彼女を・・・・

 

「・・・・・・こっちのさやかちゃんは、凄いな。私の所の”鞄持ち”だったさやかちゃんは、何もかも耐えられずに絶望したのに・・・・・・そうだよね。どうして、私はあんなことを願ったのかな?」

 

去っていくさやかを見送るまどかの目は、金色の瞳に変わっていた・・・・・・

 

「・・・奇跡を願う魔法少女に絶望したんだ。だから、あんなことを願ったんだね。さやかちゃん、仁美ちゃんはもう止まらないよ・・・」

 

金色の瞳が僅かに笑ったと同時に一瞬であるが、彼女の背後に”異形”の何かが重なった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所を変えて、見滝原から離れた都市 アスナロ市・・・・・・

 

BAR ”Heart- to- Heart ”

 

内装はおしゃれな”JAZZ BAR”であり、青い革張りのソファーがいくつかと床には赤いカーペットが敷き詰められていた。

 

中央には”ステージ”があり、間接照明により演出された雰囲気に志筑仁美は、これが大人の嗜みなのだろうと少しだけ察するのだった・・・

 

カウンター席の奥から人当たりの良さそうな青年 明良 二樹が志筑仁美とカヲルの正面のソファーに座る

 

「見滝原からよく来たね。志筑仁美ちゃんにカヲル君・・・ここを知っているからには、何かをお願いが、晴らしたい”陰我”があるのかな?」

 

「”陰我”を晴らすというのはある意味正解ですが、わたくしは”因果”を高めて、”奇跡”を起こしたいのです。その”奇跡”はあまりに儚く、誰かの邪魔が入れば脆くも崩れてしまいます」

 

”因果”を高めるという言葉にBARに居る”紅蜥蜴”といつの間にか来ていた魔法少女 聖カンナが反応する。

 

二人に対して、香蘭は良いことを聞いたと言わんばかりに笑う。

 

「・・・ねえ、紅蜥蜴さん。なんで香蘭は笑っているんですか?」

 

「・・・アイツが笑うと大抵ろくでもない事を思いついたのだろうよ。こういう時は、離れるのが一番なんだが・・・・・・」

 

ドレッドヘアーの大男 紅蜥蜴は、魔戒法師 香蘭が何やらロクでもないことを思いついたのではないかと察するが、この場に”強大な力”をもつホラーを志筑仁美が引きつれており、明良 二樹から離れるわけにはいかなかった・・・

 

とは言っても、最高戦力の一つである”魔号機人 凱”が傍に控えている為、不測の事態には対処できるだろうが、魔号機人 凱が守るのは明良 二樹だけであり、この場に居る聖 カンナに危険が及んだ場合、護れるのは自分だけなのだ・・・

 

さらには・・・

 

「紅蜥蜴さんにカンナちゃん。モーニングコーヒー飲みます?」

 

奥の厨房から、線の細い”半ぐれ”然とした容姿の青年がエプロンのままコーヒーを運んできた。

 

「ああ・・・貰っておく。それと火車・・・カンナを連れて少しだけ外に出ていろ。何も言わずにな」

 

”半ぐれ”然とした青年の名は”火車”という。

 

「そうっすか?フタツキさんから、来客用のジュースを持ってくるようにって・・・」

 

「それは俺が持っていく。お前達はあの小娘が此処から出ていくまでの間、少しでも遠くに居ろ。それが一番安全だ」

 

聖 カンナにもこの場から出ていくように促す。

 

カンナも”紅蜥蜴”がこのように言うのだから、相手は余程恐ろしい事情を持っていると察し、言われるように一杯コーヒーを飲み、そのまま裏口から出ていった。

 

”紅蜥蜴”は柄ではないが、来客用のジュースをトレイに載せて明良 二樹らの席へと向かうのだが

 

「紅蜥蜴くん・・・なに、似合わないことしちゃってんの?二人を逃がしといて、香蘭ちゃんは、助けてくれないの?」

 

「・・・お前は不幸な事故で消えてもらった方が世の為、人の為だ・・・俺はここでお前に不幸が起こることを願っている」

 

「紅蜥蜴くん・・・冷たい。香蘭ちゃん、悲しくなっちゃう・・・」

 

ワザとらしい泣きまねをする香蘭に紅蜥蜴の視線は冷ややかであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕達の”力”借りたいのならば、それなりの報酬は払ってもらうけど、僕達には一つだけ絶対に守ってもらいたいルールがあるんだ。それだけは、しっかりと守ってもらうよ」

 

明良 二樹はにこやかな笑みを辞め、真剣な眼差しで二人を見据えた。

 

それは、まさしく”闇の世界”に生きる住人のもつそれであった・・・・・・

 

「僕達は特定の顧客は持たない。仕事は基本的に一回だけしか受けない。二回目はない」

 

特定の顧客を持った方がよほど利益になるのではと、仁美は声を上げようとするが・・・

 

「普通に考えたら、そう思う方が得なんだけど。僕達は単なる金儲けをしたいわけじゃない。それに魔法少女の契約、ホラーに憑依される事は人生で一回きりで二度目はない・・・それらの力を貸すのも当然のことだけど”一回きり”なんだ・・・」

 

明良 二樹は自身の持つ”力”の”価値”を深く理解していた。

 

この”力”で遊び、人生を楽しむ事こそが最大の目的ではあるが、この”力”で”仕事”を行うのならばそれ相応の”価値”を”顧客”に理解してもらわなければならないのだ・・・

 

「・・・そうですか。チャンスは一度きり・・・確かに貴方達がそのようなルールを課すのは当然ですわ。ですから、わたくしは一度きりの”依頼”をお願いします」

 

志筑仁美は自身の”願い”を叶えるに達する”因果”を溜めた後におそらくはそれを壊しに来るであろう”邪魔者”から護ってくれるように依頼する。

 

詳しい”商談”に入るのだが、その合間に紅蜥蜴は来客用のジュースをテーブルに置き、すぐ近くのソファーに座り、事の成り行きを見守るのだった・・・

 

そんな中、香蘭だけは興味深そうに見ており、彼女が”ホラー”の力を借りて行おうとしている事に・・・

 

「フタツキー!!仕事とは別で香蘭ちゃんが個人的に”力”を貸すのはあり?」

 

「うん?別に構わないよ・・・僕らに関わるのは一度きりのルールだけど、一人だけというのはルールにはないからね」

 

「やったーっ!!香蘭ちゃんはね、見滝原に”正義の味方”を派遣したいと思います!!!」

 

「最近、香蘭が力を貸した”アレ”か・・・まぁ、最近はチンピラ相手にくすぶってたから、ちょうど良いかもね」

 

二樹の脳裏に先日、殴り飛ばした”名もなき青年”の姿が過った。

 

あの後、香蘭に”陰我”を問われ、付け込まれて、”正義の味方”に至っている。

 

仁美は、まさかの突然の申し出に頬が緩んでしまった。

 

これで、”因果”を高める効率は、上がるであろう。

 

不安を感じていた”戦力”が手に入ったのだから・・・・・・

 

仁美の横でカヲルは、二人の言う”正義の味方”とは一体、何者なのだろうと疑問を浮かべる。

 

”紅蜥蜴”の表情が若干、ゲンナリしている様子を見るに”ロクでもない”ことには違いないだろうと察するのだった・・・

 

商談を終えた後、仁美達はそのまま見滝原へと戻っていった・・・

 

「さぁ~て、今回はそれなりに人手が必要になるな」

 

明良 二樹は、自身の”仲間”達に召集を掛けるべく動き出す。

 

「楽しくなりそうだね~フタツキ~~~」

 

香蘭もまた愉快そうに笑うのだった・・・・・・

 

”紅蜥蜴”はその様子に頭痛を感じるも、外に出てもらった火車と聖カンナを呼びに出ていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

上条恭介が亡くなったことをクラスに伝え、昼休みに人気のないところへ行く早乙女先生。

 

午前中も色々あり、精神的に気を張っていた為に疲労感を感じていたのだった。

 

昨夜の”出来事”から、明るい場所よりも暗い場所の方が落ち着くのでそちらに足を運んでいたのだ。

 

「昨日・・・夢でも見たのかしら、悪魔のような黒い影が私に入ってきたような・・・」

 

職場のストレスから、深夜に自棄酒を煽っていた時に黒い悪魔のような何かが自分に話しかけ、重なったのを覚えているが、悪魔にまで欲求不満を感じているのなら自分は、相当疲れているかもしれないと・・・

 

「先生・・・こんなところでなにをしてるんだ?」

 

振り返るといつの間にか生徒である 佐倉杏子が居たのだ。

 

手元には校則で引っ掛かりそうな”独特なデザイン”のアクセサリーが付けられていた。

 

魔導輪 ナダサを鳴らすと同時に早乙女和子の目に”魔戒文字”が浮かび上がった・・・・・・

 

「先生・・・アンタ・・・ホラーだろ」

 

「?佐倉さん?私は、私ですけど・・・ホラーってなに?」

 

「ホラーっていつもながら、こういう見え透いた誤魔化しをするから厄介なんだよな」

 

杏子は手元の”魔道筆”をいつでも振れるように力を込めるが・・・

 

『うん?杏子、ホラーは憑依しているけど、その意志は彼女からは感じられない』

 

「はっ?どういうことだよ」

 

「ええぇっ!!?!さ、佐倉さん、あなた、何ですか、そ、それは!?!喋ってる!?!」

 

アクセサリーが意志をもって喋り出した光景に早乙女和子は腰を抜かしていた・・・・・・

 

「なぁ、これって・・・ホラーの演技とかそういうのじゃないよな・・・」

 

『時々、居るんだよね・・・ホラーに憑依されたもののホラーが弱すぎるのか、偶にいる”我”の強い人間にそのまま取り込まれてしまう現象がね・・・』

 

とりあえず事情は説明すべきだろうとナダサは杏子に話し出した。

 

杏子はホラーが憑依しているのならば、討滅すべきではと考えるが・・・

 

『人間を害さないのならば、それなりに共存できる方法はあるさ。Meだって、ホラーだしね。実際に杏子とは上手くやっていると思うよ』

 

自分もまたホラーである為、ここは穏便に済ませようと話すナダサに杏子は、内心”普通に喋れる”と憤りを感じつつも、例え相手に悪意がなければホラーであっても穏便に事を修めようとする姿勢に少しだけであるが表情を柔らかくしていた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見滝原中学校の人気のない屋上から、空を見上げる少女が一人・・・・・・

 

鹿目まどかであった。彼女の目は”金色の瞳”となっており、

 

なにかを想うところがあるのか、笑っていた・・・・・・

 

「さやかちゃん、杏子ちゃん、マミさん、ゆまちゃんの事は直ぐに分かったのに、ほむらちゃんの事だけはどうしてもすぐに分からないんだよね・・・どうしてかな・・・」

 

自分に分からないことがあることにまどかは、何処となく嬉しく思っていた・・・

 

「後で杏子ちゃんに話を聞いちゃおうかな・・・うん・・・それがいいよね・・・」

 

空に手を伸ばし、何かを回すようなしぐさを始める・・・・・・

 

くるくると回す・・・

 

くるくると・・・クルクルと・・・・・・くるくると・・・クルクルと・・・狂々狂々と・・・・・・

 

全てを巻き込むかのように”運命”が回り始める・・・・・・

 

”オワリノハジマリ”へと至る・・・・・・

 

 

 

 

 

 




あとがき

魔戒騎士くずれの紅蜥蜴さん・・・ドレッドヘアーの見た目明らかにヤバいのに、普通に見えるフタツキと香蘭の方がぶっ飛んでいる為、一団の苦労人(笑)

魔法少女のメンバーに聖 カンナが居ます。そして、一般人の方までと・・・

本編の前に番外編を入れるつもりです。

ナダサは普通に喋れます(笑)

早乙女先生はなんだか、とんでもないことになってしまいました・・・・・・

まさかの”妖刀”の侍のような展開に・・・・・・

早乙女先生は、かなり我が強いのでホラーも取り込んでしまうのかもしれません。

お付き合いした方々が逃げるのは彼女の”我の強さ”が原因だったりとか(汗)





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