呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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今回は彼女がある少女と出会います・・・

彼女とは、久々のマミさんです。








第弐拾漆話「 回 転 (参)」

 

巴 マミは自宅を飛び出してから一人、公園のベンチでボンヤリとしていた。

 

公園では子連れの家族が連れ添い、年配の男女が思い思いに過ごしている光景が視界を過るが、今の彼女にとってはどうでもよい光景でもあった・・・・・・

 

手元に自身の魂である”ソウルジェム”を手に載せて、僅かに濁った輝きはマミの心を僅かであるが苛立たせた。

 

数日前の夜に知った魔法少女の真実・・・

 

”魂”をソウルジェムに移すことで戦いに耐えうる存在へと作り変える・・・

 

願いを叶える対価として”希望”を叶える魔法少女として”呪い”の象徴たる”魔女”と戦わなければならない。

 

自分の願いは・・・どんなものであっただろうか・・・・・・

 

(・・・私はあの日、ママとパパと一緒に出掛けていて・・・)

 

久しぶりに家族で”買い物”に出かける為、車で”東京”まで行くことになっていたあの日・・・・・・

 

突然の事故だった。

 

突如として父親が運転していた車の操作が利かなくなり、そのまま横転し運転席と助手席にいた父と母は即死し、辛うじて生きていた自分は・・・・・・

 

”・・・た、助けて・・・・・・”

 

目の前に居たあの白い小動物に縋り、魔法少女となった・・・

 

自分が最も忌まわしく思う自分自身の為に”奇跡”を願った行い・・・・・・

 

とてもではないが佐倉杏子を責めることなどできない。

 

あの子は元々”父親の話”を聞いてほしいと願い、魔法少女となった。

 

自分が助かりたいが為に願った自分よりも遥かに魔法少女らしく、善人らしい。

 

ある日、自分が願った”奇跡”により家族を失い自分と袂を分かち、互いに反目するようになってしまった。

 

(佐倉さんのことをどうこう言える立場じゃないわね・・・)

 

こんな魔法少女など、何のために居るのだろうとマミは気分が落ち込み、顔を伏せるのだが・・・

 

「ねえ?お姉ちゃん、具合悪いの?」

 

顔を上げると小学校低学年程の少女が自分を心配そうに見ていたのだった・・・・・・

 

「貴女は?」

 

「ゆま♪千歳ゆま♪」

 

「ゆまちゃんね・・・私はマミ」

 

満面な笑みで自己紹介をする少女に対して、マミは先ほど沈んでいた気持ちがほんの少しだけ和らぐのだった。

 

「ゆまちゃんは、どうして私に話しかけたの?」

 

「うん。お姉ちゃんが少し前のゆまみたいだったから・・・」

 

「えっ?少し前の貴女と私が・・・・・・」

 

マミはゆまがかつて実の両親から”虐待”を受けていた事を知り、今は祖父母に引き取られていることを・・・

 

幼い彼女の話にマミは小さな子供を自身の苛立ちのはけ口にしていた顔も分からない”両親”に怒りさえ湧いた。

 

「でもね・・・ゆまはもう大丈夫。辛いことはずっと続かない。だからね、こんどはゆまがお祖母ちゃんたちみたいに辛い目に遭っている人を助ける番なんだ」

 

だからこそ自分なのだろうか?こんな幼い子が、誰よりも辛い目に遭っている子がその小さな手を誰かを助けようと手を伸ばす行為にマミは

 

「えらいわね・・・ゆまちゃんは、何だか格好悪いわね。私は・・・」

 

「大丈夫だよ。マミお姉ちゃんってアイドルみたいに綺麗だから、絶対に格好よくなれるよ」

 

苦痛は永遠ではない・・・いつかは終わる時が来る・・・

 

「ありがとう。ゆまちゃん・・・」

 

本来なら学校に行っている時間であったが、特に何も連絡がなかったのでマミは態々連絡しても、もしかしたら顔も見たくない”親戚”が来ているかもしれないと思い、そんな人達と会うよりもゆまと一緒に過ごす方が有意義であると思い、このまま学校をさぼり彼女と一緒になって公園で穏やかに過ごすのだった・・・・・・

 

二人で笑い、遊ぶ光景は傍から見て”姉妹”のようだった・・・・・・

 

 

 

 

 

夕暮れ時、マミは手を振って千歳 ゆま達を見送る。

 

買い物帰りに彼女を迎えに来た祖父母と軽く話をした後、マミは夕飯の誘いを受けたが、そこまで好意を受ける訳にはいかないので理由を付けて断った。

 

ゆまは残念そうな顔をしたが、今度は一緒にお菓子を食べようと言い頭を撫でて勘弁してもらった。

 

あのような小さな子を守る為に、その傷を癒すために辛い時間を過ごした彼女にこれから楽しい時間を過ごしてもらおうと慈しむ老夫婦にマミは人間は身勝手な人ばかりではないと改めて知った。

 

もしかしたら自分は自身の”正義の味方”という幻想に振り回されていたのかもしれない。

 

自身が助かる為に”奇跡”を願い、両親を見殺しにしてしまった自分を恥じ、それでいて”魔法”を不特定多数の顔も知らない人達を”魔女”とその”使い魔”の脅威から護るという”大義名分”の名のもとに・・・

 

(私は・・・何も持っていない魔法少女だったかもしれないわね・・・)

 

”死”が怖いくせに”死の危険”と隣り合わせの、魔法少女をやっている。

 

矛盾というよりも自分は誰かを護りたいのではなく、戦って”破滅”することを心の何処かで望んでいるのではないかとも思いたくもなる・・・・・・

 

見滝原で自分と共に戦ってくれると言ってくれた”暁美ほむら”も幼馴染の傷を治す為に祈った”美樹さやか”も”佐倉杏子”もひとりよがりかもしれないが、誰かを護りたい、助けたいと願って”奇跡”の対価を払った。

 

その”願い”の名のもとに戦う。

 

”希望”を守る為に・・・・・・

 

自分に人生を投げ出してまでも”助けたい”と願った人が居ただろうか?

 

居ない・・・もう両親も居ない”天涯孤独”の身の上なのだ・・・・・・

 

そんな”守る者”も”願い”すらも持たない自分に差し伸べられた小さな手の温もりをマミは何よりも愛おしく思えた。

 

あの小さな温もりがこれから先、大きな温かさに変わり、何処にでもある人としてのあるべき幸せを掴むのならば自分が魔法少女として戦うことに意味があるのではと・・・・・・

 

「・・・・・・今度、ゆまちゃんに美味しいお菓子を持って行かなくちゃね」

 

ゆまは、見てくれこそは小学生低学年であるが11歳なのだ。

 

実の親の虐待とネグレクトによる影響で他の子よりも発育が遅れている為である。

 

その身勝手な両親は”不可解な事故”で亡くなっているらしいが、ある意味居なくなってくれた方が千歳ゆまにとっては良いだろうとマミは魔法少女らしからぬ考えに内心笑った。

 

少しばかり独りよがりであるが、自分に温もりを与えてくれたあの家族が見滝原に居るのならば、このまま見滝原で魔法少女をやっていくのも悪くはないだろう・・・・・・

 

マミは、近くに魔女の結界の気配を追い、その場を後にするのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

ミュージックスクールVeriteを後にした志筑仁美はあるマンションの近くに来ていた。

 

このマンションは、一線を引退した年配の人達がセカンドライフと称して、悠々自適な生活を楽しんでいるということで”見滝原”で一度特集が組まれたことがあった。

 

此処に来たとしてもこれと言った”因果”を高められそうにないと仁美は考えていた。

 

身体の弱った年老いた人間を手に掛けるのは容易であるが、これと言った足しにはならないだろうと・・・・・・

 

「そうだねぇ~~。君の考えている通りで大体は合っていると思うよ」

 

気が付けばいつの間にか、あの白い少年が近くの街灯に寄りかかっていた。

 

鼻歌を歌っている姿に若干苛立ちを感じるが、自分に”奇跡”を叶える術を教えてくれた存在なので邪険に扱うことはできなかった。

 

「なんのようですの?そういえば・・・お名前をまだ聞いていませんでしたよね?」

 

”キュウベえ”と呼ばれているが、このような姿を取っているのでおそらくはその名前とは別の名前があるのではと仁美は考えた。

 

「君は賢い子ね。僕はある人に名付けてもらったんだ、カヲルってね」

 

中性的で何処どなく”天使”を思わせる美形である為、”キュウベえ”と呼ぶのは少し酷であるかもしれない。

 

カヲル本人は数あるインキュベーターの端末に過ぎないのだが、他の端末と違い”自我”の意識が強く、”キュウベえ”と呼ばれるのを嫌い、ましてや”インキュベーター”の名前で呼ばれるようなものならば・・・・・・

 

「カヲルさんはとても個性的なんですね。魔法少女と接している”キュウベえ”は、契約を取るだけの営業みたいですわね」

 

「それであってると思うよ。まぁ、奇跡を待つだけの存在よりも奇跡を叶える為に行動する君の方が勇敢で最も尊敬に値する。ここで君に告白したいところだけど、君には想い人が居るから、野暮だね」

 

「うふふふふ。カヲルさんはお世辞がとてもお上手ですわね。貴方のように話の分かる方とこうして会話するのはと有意義ですわ。貴方に一つだけ聞きたいのですが・・・」

 

「なんだい?僕で答えられることだったら」

 

真剣な眼差しで仁美は、人型インキュベーター カヲルにある疑問を告げる。

 

「”因果”をより効率的に高めるには、どうしたらよいでしょうか?このまま”因果”を集めても、この”ソウルジェム”を満たし、輝かせるには時間があまりにも掛かりすぎます」

 

1日で分かった事であるが、”因果”を高めることは容易ではなく、一人の命を生贄に捧げたところで微々たるもので数を重ねたとしても願いを叶えるまでには”時間”が掛かりすぎる・・・

 

このまま”生贄”を得たとしてもその行動はいずれ人の目に止まり、自身は動きが取れなくなるかもしれないのだ。

 

”鹿目まどか”を捧げようと考えたのだが、彼女の場合襲うにはリスクが高すぎた。

 

彼女の周りには”魔法少女”や”魔戒騎士”のような危険な存在も居るのだから・・・

 

仮に自分が上手く隠し通せたとしてもいずれは”真実”に辿り着き、美樹さやか同様に”奇跡”を壊されるという無様な結果になってしまうかもしれない。

 

自分が望む”願い”は、復活させた彼に素晴らしい時間を与える事なのだから・・・・・・

 

彼を支える自分が居なくては、何の意味も持たない。

 

鹿目まどかに対して、キュウベえは積極的に契約を持ち掛けていないということにたんに彼女が願い事をもたないのか、はたまた別の理由があるのかもしれない。

 

「そのことならね・・・鹿目まどかは危なすぎる。だから彼女以外を狙うことをお勧めするよ。例えばね・・・」

 

赤い瞳を爛々と輝かせながら、カヲルはその方法を仁美に告げる・・・・・・

 

「”生贄”に選別されるのは年若い清らかな乙女が好まれた・・・この意味を賢い君なら分かるよね」

 

その意味に仁美は頷いた。それが意味すること”魔法少女候補”である・・・・・・

 

「だから君にそれを教えに来たんだよ。ほら、ちょうどそこを通るよ」

 

カヲルが視線を向けるとそこには、買い物袋を抱えて帰途に就く老夫婦の間で燥ぐ小さな女の子 千歳ゆまが居た

 

 

 

 

 

 

仁美を見送った後、カヲルはこれから面白いことが見られるのではないかと考えていた。

 

「ハハハハハ、奇跡に群がる虫みたいな彼女らと違い、君は本当にすごいと思うよ」

 

カヲルは街灯に灯りに群がる蛾や小さな虫を眺めていた・・・・・・

 

さらにはそれを捕食しようと忍び寄るトカゲの姿があった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

千歳ゆまは、老夫婦の前を歩きつつ

 

「ねえ、おばあちゃん、マミお姉ちゃん。またゆまと遊んでくれるかな?」

 

「そうだね。きっとまたゆまちゃんと遊んでくれるよ」

 

祖母の言葉にゆまは嬉しそうに笑い、祖父もまたその様子を微笑ましく見ていた。

 

だがそんな家族から少し離れつつ視線を向ける人影が・・・・・・

 

志筑仁美であった。目深に被った帽子の奥より目の前の家族の中心に居る”千歳ゆま”に視線を向ける。

 

(あの娘が・・・確かに”生贄”に選ぶのなら、好条件ですわ)

 

かつては家の繁栄を願い、神の供物として育てられた”シロ”もちょうどあのような感じだったと記載されていた。

 

供物として捧げられた”シロ”は一思いに頭を石で割られたと・・・・・・

 

相手は3人であるが、家に付いたら時間を見計らって侵入し、実行しようと考えたが・・・・・・

 

(でも・・・ちょうどこの辺りはそれほど人通りも少ないですし・・・ここで”因果”を高められるのでしたら)

 

目の前にある特上の”因果”に理性が追い付かず、仁美はそのまま駆け出し、スポーツバックからナイフを取り出して最後尾の祖父の首元目掛けてナイフを突き立てるのだった・・・

 

突如として倒れた祖父を千歳ゆまは祖母と共に唖然としていた。

 

祖母が声を上げる前に仁美は行動を起こしており、そのまま祖母の胸をナイフで刺し、目を見開かせた千歳ゆまに仁美は近づくのだった。

 

志筑仁美の行動を彼女が認識できず、逆に千歳ゆまが認識できる存在が見ていた。

 

ぬいぐるみを思わせる”白い小動物”であった・・・・・・

 

「まさか・・・ここまで行うとは・・・魔法少女候補に手を出されるのは困るな・・・」

 

志筑仁美の行動は、キュウベえから見ても目に余るものだった。

 

自身の願いの為に他者の命を奪い、禁忌ともいえる”因果”を高めて”奇跡”を起こそうとする行いこそは興味があるが、それを実際に行うことに戸惑いとも嫌悪とも言えない思考に囚われていた。

 

人型の端末に過ぎない”カヲル”が、東の番犬所の神官の影響を受けてのことだが・・・

 

志筑仁美の行為は、流石に看過できずにこのまま行動を起こすことにしたのだ。

 

かなりの強硬的な手段をもって・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

孵化寸前のグリーフシードを勢いよく彼女らの前に放ち、そのまま孵化させるのだった。

 

「こ、この光景はっ!?!い、いけないっ!?!」

 

突如として孵化したグリーフシードと現れる魔女に対し仁美は焦るように直ぐに逃げ出すのだった。

 

千歳ゆまは、この光景に見覚えがあった・・・・・

 

そうあの日両親を殺害した・・・異形の・・・恐ろしい影だった・・・

 

「あっ・・・あ、ああ・・・・・・」

 

目の前には先ほど現れた怖い女によって動かなくなった”家族”が横たわっていた。そこへキュウベえが現れる。

 

「千歳ゆま・・・君の祖父母は残念ながら亡くなったよ。君はこのままだと死ぬよ」

 

祖父母が目の前で殺された事とさらには自身のトラウマである魔女の存在に千歳ゆまの思考は混乱の極みにあった。

 

「だから、僕と契約して・・・この運命を・・・・・・」

 

「その必要はないわ。キュウベえ」

 

キュウベえは聞き覚えのある声と共にリボンにより拘束され身動きが取れなくなってしまった。

 

喋らせたくないのか口元を覆うという徹底ぶりであった。

 

ゆまを安心させるようにマミははすぐ隣に降り立った。

 

「大丈夫よ・・・でも、ごめんね・・・間に合わなくて」

 

直ぐ傍で倒れている昼間親切に接してくれた老夫婦の変わり果てた姿にマミは悲痛な表情を浮かべ、千歳ゆまに詫びる。

 

「ま、マミお姉ちゃんっ!?!駄目だよ!!!あのお化けは!!!!」

 

「あのお化けの相手は私がするわ」

 

落ち着いた口調と共にマミは自身のソウルジェムを輝かせ、魔法少女へと変身を遂げる。

 

「マミお姉ちゃんもあのお姉ちゃんと同じなの?」

 

両親を殺したあの怪物を狩り、自分を救ってくれた少女もまた魔法少女だった・・・

 

現れたのはバイクの部品を組み上げたような姿をした魔女 銀の魔女であった・・・

 

「・・・・・・この魔女。確か攻撃方法は・・・」

 

見た目通りこの魔女は相手に体当たりで粉砕し、またはタイヤに当たる部分で相手をひき殺すという攻撃方法が主でありあの老夫婦が死に至った傷とは合致しない・・・

 

老夫婦は魔女に殺されたと思ったが、どうやら違っていたらしい・・・行ったのは・・・

 

「まさか・・・人間の仕業?なんてタイミングで魔女が現れたの」

 

あまりの事態にマミは、衝撃を受けると共に不幸だった千歳ゆまがようやく幸せになろうとしていた矢先にこのような身勝手な事をしてくれた”殺人犯”に怒りを感じていた。

 

犯人はおそらく、この結界に入ったときにすれ違った一目散に結界の入口へ駆け出した自分と同年代程の少女なのだろう。

 

どうせならば、あそこで顔を見ておくべきだったと今更ながら後悔するのだが、今は目の前の魔女である。

 

「ゆまちゃんの前で残酷な光景は見せたくないから、瞬殺させてもらうわよ」

 

大量のマスケット銃を召喚し、圧倒的な物量と火力をもって魔女を殲滅するのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

逃げ出した志筑仁美は、まさか魔女に遭遇するとは思わなかったのか、表情は焦り、息も絶え絶えになって人気のない場所に来ていた・・・・・・

 

「ま、まさか・・・ここで巴先輩に出会うなんて・・・あの人は、私の邪魔ばかりして・・・」

 

巴 マミ 志筑仁美にとっては美樹さやかに続く忌まわしい人物である。

 

見滝原を拠点とする現役の魔法少女であり、鹿目まどかと美樹さやかに魔法少女としての素質を見出していながら、自身には素質がないとして蔑ろにし、話も聞いてくれなかった。

 

巴マミの存在がさらに仁美を苛立たせたが、まだ人間に範疇にある魔法少女はともかく”魔女”の結界に巻き込まれたら自分はなす術もなくその餌食になってしまっただろう・・・

 

そのことが許せずに仁美は自身の苛立ちを解消すべく近くのフェンスを勢いよく蹴る。

 

志筑家のお嬢様らしからぬ行為ではあったが、今の彼女にそんなことを気にする余裕などなかったのだが・・・

 

『ほっほぉ~~。貴女は随分と変わったことをされていますね』

 

不意に何かが自分の真上に現れたのだ。奇妙な影が自分を覆っていた・・・

 

見上げるとそこには両腕を水平にした”玉乗りをする女道化師”の姿をしていた・・・・・・

 

尖がり帽子を被り、衣装は全体的に鋭利な針を思わせ、両耳には針をそのまま刺した装飾をしている。

 

口調は棒読みに近く、顔は生物と言う感じではなくまるで無機質で感情が抜け落ちたかのようだった・・・

 

左右それぞれに浮かぶ金色の目が自分を見下ろしているのだ。

 

長い髪は風に靡かず・・・細かい金属が互いに当たるような音が僅かであるが響いていた・・・・・・

 

「か、からだが・・・、ま、まさか全て”針”で編まれているのですかっ!?!」

 

自分を見下ろす”女道化師”の身体は小さな針が互いに組み合わさってできていたのだ。

 

これは一体、何なんだと仁美は内心恐怖を感じるが・・・・・・

 

魔法少女が敵対する”魔女”ではない・・・もっと恐ろしい何かとしか思えなかった・・・

 

『そっお~~だぁよ。ワタスは針を使うのさ』

 

関節がないのか組み合わさった針同士を軋ませながら”女道化師”の身体が捩れるというよりも人で不可能な”曲芸”を始めた。

 

乗っている球を身体と共に360度回転させながら、自身の上半身と下半身をそれぞれ稼働し、首もまた回る、回る・・・回る・・・回る・・・

 

あまりの光景に仁美は、先ほどの魔女よりも恐ろしい何かに遭遇してしまったのではと考えた。

 

「あ、アナタは・・・一体っ!?!」

 

無表情な女道化師が笑い顔を作る。その顔は大きな三日月を思わせる空洞のような裂け目のような笑いであった。

 

あまりにも恐ろしい笑みと共に”女道化師”は自身の名を仁美に告げた・・・・・・

 

『ワタスはぁ、みぃんなかぁら、こう呼ばれてるよ・・・魔針ホラー ニドル って』

 

ホラー ・・・改めて仁美は思い出したのだ。上条恭介が破滅する直接的原因である”魔獣”の事を・・・

 

魔女よりも恐ろしい存在であることは間違いなかった・・・・・・

 

『きぃみぃはぁ~面白いかぁら、ちょっとだけ特別扱いしてあげるよ』

 

二ドルは仁美の左目に視線を合わせたと同時に黄金の目より特大の針を勢いよく飛ばした。

 

「きゃ、きゃあああああああああああっ!!?!」

 

突如として破裂した左目の痛みを感じ、仁美の絶叫が人知れず響いた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

マミは千歳 ゆまと出会いました。

僅かではありますが、マミにも変化が訪れようとしています。

マミさんは他の魔法少女と違い”誰か”の為に願ったのではない為、心から護りたいと願う人や想いがなかったかもしれないという考察が少し入っています。

そんな彼女が護ることに意味があるのならばと気づかせてくれた千歳ゆまとその家族。

理不尽にも因果を高める過程で犠牲になりました・・・・・・

こんな風に書くとマミさんが炎の刻印のレオンっぽく見えてきました(笑)

カヲルとキュウベえは、本来なら端末同士なのに別個体のように振舞い、互いに互いにとんでもない行動を行っています。

キュウベえは、魔法少女候補を害させるわけには行かないと思い、仁美の排除に乗り出しました。
排除したついでにゆまを魔法少女にしようともしていましたがマミさんに邪魔されました。

そして仁美は、因果を高めようと行動していたところをあの最後の使徒もどきこと人型インキュベーター カヲルも予想だにしない存在に遭遇・・・

まさかの魔針ホラー 二ドル。

このホラーは牙狼本編未登場ですが、能力はバグギ程ではありませんが相当厄介です。

今作の仁美の行いに興味を持って近づいてきました。

仁美ちゃんの”因果”ならぬ”陰我”が”カヲル、キュウベえ、魔女、使徒ホラーと言った災厄を引き寄せてるようなので完全に負の沼に沈んでいるような気がします。

次回もマミさんがメインの予定です。風雲騎士一家の話に当てようかとも考えています。

仁美は次回も出る予定。全編に渡ってでます(汗)

まどかを襲うのはリスクが高すぎます。仮にまどかを襲ったら、仁美は知らないけどほむらが当然動くし、彼女に入れ込んでいる暗黒騎士や暗黒魔戒導師も動く為、見滝原の魔法少女、魔戒騎士らの全勢力を敵に回します。




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