呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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今回ホラーが本格的に攻撃を開始します。

前回でのプライアデス聖団ですが、すでに聖 カンナがニコと入れ変わっています。

正直、この子なら、ニコとカンナが入れ替わっていることに変則的ですが気づけたのではないかと思います。

プレイアデス聖団には既に、心が離れたメンバーがもう一人居たのです・・・・・・

今更ながら気が付いたのですが、じゅうべえが出てきていません(笑)




呀 暗黒騎士異聞 アスナロ市編 陸

 

 

宇佐木里美が彼女の存在に気づいたのは偶然だった・・・・・・

 

アスナロ市の郊外には彼女の秘密の友達が居る。それは・・・・・・

 

「シロ・・・今日は元気?」

 

顔を出したのは、カラス・・・一般的な黒いカラスではなく白いカラスだった・・・・・・

 

アルビノの個体であり、黒い姿が普通の中に居る白い”異端”・・・・・・

 

「そう・・・今日は誰かに虐められなかった?大丈夫、私が守ってあげるからね・・・」

 

シロを抱き、宇佐木里美はその場を後にするのだが・・・・・・

 

「黒い身なりが常のカラスに白の異端でござんすな」

 

「ニコちゃん・・・シロはシロだよ」

 

異端の白いカラスであっても自分の友達なのだ。神那ニコに白いカラスの友達が居ると伝えたら、見てみたいと言って時々二人で世話をしている。

 

突如、シロが神那ニコを見て騒ぎ出したのだ。初対面の人には警戒心が強いシロなのだが、彼女とは何度も顔を合わし羽の世話もする程打ち解けていたはずなのだが・・・・・・

 

「えっ、シロっ!?!どういうことなの!?!」

 

シロは彼女が神那ニコではないと叫んでいた。それも普通の人間ではない何かだと・・・・・・

 

動物は人間が失ってしまった”勘”が今も生きている。その”勘”が告げているのだと・・・・・・

 

宇佐木里美は信じられないような目で神那ニコに似た少女に問いかける。

 

「あなた・・・・・・誰?」

 

「・・・・・・・・・・・・誰だと思う?」

 

神那ニコ・・・聖 カンナは口元を歪めるようにして笑った・・・・・・

 

 

 

 

 

 

アスナロ市 

 

ミチルは目の前に居る神那ニコに問いかける。

 

「・・・・・・違うよ、ミチル。貴女と同じだよ」

 

神那ニコ 聖 カンナは静かに笑いながらミチルへと歩み寄る。

 

エルダは庇うように彼女の前に立った・・・・・・

 

「お前からは妙な気配を感じる。誰に作られた?」

 

「作られた?お前に私達の何が分かる」

 

エルダの”作られた”の言葉は、聖 カンナにとってはこれ以上にない忌まわしい言葉だった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

プレイアデス聖団の援護の為に現場に向かうほむらであったが、不意に”ホラー”の邪気を感じたのだ。

 

その前にはソウルジェムが濁り、グリーフシードへ変化する気配があった。

 

(まさか・・・魔法少女にホラーが憑依したとでもいうの!?!)

 

可能性としてはあり得たのだが、実際のにそれが具現してしまったことに、ほむらはプレイアデス聖団の行いによる行為が原因であり、”陰我”を招いたと考えた。

 

(つくづく関わり合いたくない連中ね。それも自分たちの行いを”悲劇のヒロイン”気取りで正当化しようとしているから余計に性質が悪いわ)

 

ミチルから聞いた話だと、”プレイアデス聖団”は自分を通して別の”ミチル”を見ているのだという・・・

 

ある意味プレイアデス聖団の行いには同情してしまう。

 

自身もまた”失ってしまった親友”に訪れる”絶望”の未来”を変えたいと願った・・・

 

最初の鹿目さんと以降のまどかでは、性格などが若干ながら違っていた。故にプレイアデス聖団はある意味、自分に近いものではないかと考えていた・・・・・・

 

バラゴに関しては自身の同類なので”同族嫌悪”の感情を抱いているが、それと同じぐらいに”親愛”に近い感情を抱き始めていた。

 

プレイアデス聖団の魔法少女の詳細は分からないが、”失ったものを取り戻したい”という願いを持って動いている。だけど、彼女達は知らないのだろう・・・そう・・・

 

「私があなた達よりマシだとは言わない・・・だけど、”死んだ人”は絶対に帰ってこないのよ」

 

あの時、鹿目さんを生き返らせようと願ってもそれは叶えられなかったと確信できる・・・・・・

 

「そんなあなた達でも死んだら、ミチルは悲しむわ・・・」

 

助けたところで、プレイアデス聖団が感謝などしないだろう。

 

何の得もないことではあり、かつての佐倉杏子なら絶対に受けようとはしなかったものだ・・・・・・

 

そんな自分が可笑しいのかほむらは、胸の内で”道化”を演じる自分に苦笑した。

 

 

 

 

 

 

 

ソウルシェムから黒い西洋の悪魔が飛び出したと同時に悪魔から強烈な瘴気と邪気の渦がプレイアデス聖団、真須美 巴一派らを巻き込んだ。

 

「あらあら・・・あの子。飛び入り参加にしては随分と派手な事をしてくれたわね」

 

真須美 巴は目の前で変化する”ホラー”を感心するような視線を向けていた。

 

「うん?飛び入りって・・・あそこで転がっている娘かい?」

 

「ええ、そうよ…多分、”予知”か何かの力で私達の事を察して”プレイアデス聖団”を助けようとしたみたいだけど、まさか・・・自分が”プレイアデス聖団”を攻撃することになる”未来”になるなんてね」

 

真須美 巴は心底愉快に笑った。

 

「キャハハハハハハ!!!あーっははははははっはははは!!!!!!」

 

ワザとらしくお腹を抱え、場違いなほど陽気な声で笑う。

 

「あはははははは!!!巴ちゃん!!!最っ高だよ!!!こんなに面白い事なんてそうそうないよ!!!」

 

明良 二樹もまたこの光景が面白いのか心の底から笑った。

 

ここ数か月の間でここまで面白いことがあっただろうか・・・・・・

 

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAxッ!!!!!』

 

ソウルジェム・・・直接魔法少女の魂に取り憑いたホラー ジャムジュエルは闇から怪しげな青い光を伴ってその姿を現した。

 

その姿は三つの首・・・ではなく一つの蛇の頭と首が三等分に分かれている異形の蛇であり

 

断面には、剥き出しになった筋肉、骨が存在し・・・

 

腹の部分にはソウルジェムを思わせる卵型の宝石に似た巨大な器官を持ち、長い体を巻き、宙に浮いていた。

 

中央の額には”佳乃 ゆい”の怒りに満ちた顔が浮かび上がっており、鱗には魔法少女としてのシンボルであった”五角形”が描かれていた・・・

 

体の鱗一つ一つもまたソウルジェムの輝きに似た光を示しており、その光景に一人の魔法少女

 

「・・・・・・なんて綺麗なの・・・・・・」

 

双樹 あやせは色とりどりの宝石を散りばめたかのような姿をしたホラー ジャムジュエルの姿に目を輝かせていた。

 

「おい・・・あいつ相当ヤバいぞ。そう言ってられる状況じゃ・・・・・・」

 

「ううん・・・綺麗なモノは本当はすごく怖いものでもあるの・・・あんなに綺麗なモノみたことない」

 

ホラー ジャムジュエルの輝く身体に双樹 あやせはこの怪物が”欲しい”と願った・・・

 

だが彼女は理解していた”この怪物”は決して手に入らないモノであると・・・叶わないこそ欲していた・・・

 

ユウリは明らかにあの怪物 ホラーは自分達が狩る存在である”魔女”よりも遥かに危険な存在であることを一目で理解した。そして、この化け物をこの場に呼び寄せたのは・・・・・

 

「アンタの怨みは相当だったんだな・・・アタシでもアンタには負けるよ」

 

プレイアデス聖団への攻撃は、それぞれの意思の元で行う平等なモノであったが、今回は自分の意思以上にこのホラーの方が遥かに強いことを認め、憧れるような視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

「違う!!ゆいは、アンタ達の仲間なんかじゃない!!!」

 

牧 カオルは襲撃者達の言葉を否定するように声を上げる。

 

『GYAAAAAAAAAAAAAッ!!!!』

 

牧カオルに対してジャムジュエルは抗議するように吼えた。

 

吼える際に怒りに満ちた”佳乃 ゆい”の頭部を見せつけるように・・・・・・

 

『ユルサナイ・・・ゼッタイニ・・・ユルサナイ』

 

「ゆ、ゆい・・・ごめんなさい・・・ま、またわたしは・・・・・・」

 

自分達を助けようとしてくれた”佳乃 ゆい”を拒絶し、自分の都合で排除したのは自分たちなのだ・・・

 

「・・・ここにいるメンバーは君達への憎しみや怒りを持って集まっているんだよ。今この場で君たちへの”憎しみ”もった彼女は・・・僕たちの同士だよ」

 

明良 二樹は牧 カオルの言葉を否定する。拒絶しておいてそれはないんじゃないのと小馬鹿にするように笑う。

 

二人の会話を聞いていたユウリは違和感を感じていた。

 

(となると・・・あいつは三人目じゃなくて四人目・・・じゃあ、三人目は何処に居たんだ?)

 

先に先行していたもう一人は結局誰だったのか分からなかったが、この状況下ではとくに考える必要のないこととしてユウリは思考を止めた。

 

ホラー ジャムジェルは散りばめられた宝石を輝かせると同時に至る所にゲートを開いた。

 

このホラー ジャムジュエル”ホラーの大量召喚”であったのだ・・・・・・

 

西洋な悪魔が大量に咆哮を上げる・・・

 

そして一斉に”アスナロ市”の空へと飛びあがった。

 

 

 

 

 

 

一部の素体ホラー達が真須美 巴らに迫ってくるが、5機の魔号機人達が庇い、刀で迎撃、殲滅を行った。

 

「キャハハ!!!これは盛大に楽しまないといけないわね!!!」

 

「強いな、魔号機人・・・ホラーと戦えるのはこの場では君達だけだね」

 

本能的にホラーを攻撃するようになっているのだが、使用者に危険に身が及ぶとそちらを優先して護るように行動する魔号機人に明良 二樹は5機の機械人形らに労いの言葉を掛けた。

 

「プレイアデスに言っておくわ。この怪物の名は、ホラー!!!人間の邪心を糧にする怪物よ!!こいつのはどんな攻撃も通じないわよ!!!魔法少女の力でもね」

 

笑う真須美 巴はこのままホラーに喰われる”プライアデス聖団”を見るのも悪くはないと考えていた。

 

「巴ちゃんの補足をすると、魔戒の力を持つ人じゃないと戦えないってさ・・・この場だと魔号機人だけかな」

 

魔号機人達は赤い目を光らせて、ホラーを見ていた。元々が対ホラー用の武器である魔号機人達は本能的にホラーに敵対感情を持っているが、指揮者である明良 二樹の護衛に徹している。

 

機械である魔号機人達は眼下で絶望的な状況にある”プレイアデス聖団”を護る気などなかった。

 

護るべきは使用者である”明良 二樹”と”真須美 巴”の二人である。

 

事実、浅海サキは果敢にも素体ホラーに攻撃を仕掛けるが、全くのダメージを与えられていなかった。

 

逆に魔号機人は、一太刀でホラーを切り伏せていたのだ。

 

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!!!!!』

 

三つの首を持つ蛇はその牙をプレイアデス聖団・・・特に牧 カオルに対して向かっていく。

 

「く、こんな奴に!!!」

 

「待って!!!ゆいを攻撃するのは!!!」

 

「そんな事を言っている場合じゃないわ!!!」

 

戦おうとする浅見サキに対し、罪悪感からなのか戦いを止めようと制する牧カオル。

 

だが、状況はハッキリって最悪そのものだった。既に二人のメンバーがこの場から排除されており、今や4人になってしまったことに御崎海香は声を上げた。

 

宇佐木里美は、三人を何とかして護ろうと結界を張るのだが、数の多いホラーの多勢無勢に苦戦していた。

 

時折、嫌らしそうな視線を向ける真須美 巴らには怒りしかないのだが、ある意味この事態を引き起こしてしまったのは自分達だと彼女は自覚していた・・・・・・

 

正直に言えば宇佐木里美は”プレイアデス聖団”のやり方に半ば嫌気が指していたのだ。

 

だからこそ、黙っていたのだ。プレイアデス聖団の一人が既に”裏切っていた”ことを

 

いや、裏切ったのではなく、身勝手な願いの代償と言うよりも因果応報に近いというものだったのだ・・・

 

(・・・ニコちゃん・・・・・・いえカンナちゃんはもう12人目には会えたのかな)

 

ミチルにもう一度会いたいと願ったことに嘘はない。それと同時に”死んだ人”が蘇ることに恐怖する自分が居た・・・会いたいけど会いたくない・・・・・・

 

自分の願いは”声を聴くことのできないペット”の死がきっかけであったからだ・・・

 

ミチルの”死”に恐怖し、その”死”をなかった事にしようと幾人ものミチルを創造したのだった・・・だけど結局は、何も変わらなかった・・・

 

ミチルは”死”んだままで現状は何も変わらない・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「どうして!!!私達魔法少女は貴方のような人を護って来たのに!!!!」

 

改めて御崎海香は明良 二樹に叫んだ。真須美 巴のような最悪な極悪人と手を結んだあげく自分達に悪意を向ける彼に訴えたのだ。

 

明良 二樹は呆れたように肩をすくめる。あまりにもプレイアデス聖団の頭の中が”ハッピー”だったからだ。

 

「それは君たちの押しつけじゃないの?僕が君たちに護ってくれと泣いて頼んだことがあったかい?守ってやってるから感謝しろって、魔法少女って厚かましいんだね」

 

明良 二樹は1機の魔号機人に指示を出す。その行為に御崎海香は僅かであるが喜色の色を浮かべるが・・・・・・

 

「僕はね・・・真須美 巴ちゃんと一緒に遊ぶのが大好きなんだよ♪君たちと遊んだって面白くもなんともないよ。ホラーって邪気が凄いからソウルジェムも割とすぐに濁るらしいから、メンバー追加でもいいかな?」

 

「そんな感じよ♪二樹、ホラーとの交渉は惜しんではだめよ♪」

 

あろうことか、最大の脅威であるホラー ジャムジュエルに加勢する始末だった・・・

 

「キャハハハハハ!!!アナタたちの最期は私達が看取ってあげるから、安心しなさいな」

 

ホラー ジャムジュエルが咆哮を上げ、プレイアデス聖団の四人に迫った時だった。

 

 

 

 

 

 

 

「まだ最後じゃないわよ・・・間一髪といったところかしら、プレイアデス」

 

 

 

 

 

 

 

突如として声が響く。

 

ホラーはその声の気配の中に自身の天敵である”法師”のモノを感じる。

 

視線を向けるとそこには、長い黒髪を夜風になびかせ、

 

紫色の弓を構えた魔法少女 暁美ほむらの姿があった。

 

遠くに見えるアスナロタワーを背に彼女は眼下に居るホラーに視線を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

弓を構え、矢を放った瞬間であった。一瞬にして多くの”魔戒文字”を伴った衝撃が大量に召喚されていた素体ホラーを粉砕し、さらにホラー ジャムジュエルの身体に衝撃を与える。

 

その光景に一同は驚愕する。まさか魔法少女でありながら、ホラーを狩る”魔戒”の力を持つ者の存在に・・・

 

「ああぁ・・・綺麗なモノに・・・なんてことを!!!!」

 

双樹 あやせはこの世で最も美しいモノを傷つけるほむらに対して怒りの視線を向け、飛び出していった。

 

サーベルを突き立てるように構え、彼女に向かっていく。

 

「綺麗なモノ?・・ホラーの本質はおぞましいの一言に尽きるわよ」

 

見慣れない魔法少女に対しほむらは焦ることなく左手を横に振るうことでカウンター用の五本の爪状の刃を抜く。

 

抜かれた五本の刃は鋭い音を立てて双樹あやせのサーベルを防ぐ。そのままサーベルは横に弾かれる。

 

弾かれ大きな隙を生じた双樹あやせに対し、ほむらは追撃をせずにいつでも放てるように弓を構えた。

 

「・・・・・・・へぇ・・・このまま来てたらルカが攻撃するの・・・分かってたんだ・・・」

 

先ほどの双樹あやせとは違う雰囲気と口調で”双樹 ルカ”は笑う。

 

「貴女からは少し得体のしれないモノを”見た”からよ・・・」

 

ほむらの横に数枚の”魔戒札”が飛び出す。この”魔戒札”がほむらにほんの先の展開を伝えていたのだった。

 

「・・・・・・貴方とやりあうのはあまり得策ではありませんね。最も貴女であっても”アレ”・・・ホラーを倒すにはまだまだ力不足のように思えますが・・・・・・」

 

「そうね・・・私の目的はプレイアデスをここから逃がすことにあるわ。結果的にはホラーもこの場で何とかしなくてはならない」

 

魔法少女、魔女ならまだしもホラーに後れをとるものかと”エルダ”に師事してきたが、ホラー ジャムジュエルの身体は見た目にふさわしく頑強なもののようであった・・・・・・

 

「それでしたら、私は貴女を止めませんわ。最も”魔法少女狩り”のプレイアデスが貴女に感謝するとは到底思えませんしね」

 

「ああ・・・そうだぜ、アタシからも忠告しておく。アイツらは自覚のない外道だ・・・助けたってアンタには何の得意もないし、恩を仇で返されるだけだ」

 

いつのまにかユウリも近くに来ており、プレイアデス聖団に関わるのはやめろと言っていた。

 

最もユウリ自身が”正義”と言うべきではなく、”悪”にカテゴリーされる存在であることは彼女も自覚していた。

 

故にあのプレイアデス聖団を救うべきではないと・・・・・・

 

事実、あのホラーはプレイアデス聖団の”陰我”により誕生したのだから・・・

 

「言いたいことはそれだけかしら?あなた達」

 

ほむらは何を言っているのかと言わんばかりに返す。

 

「相手が何であれ、魔法少女狩りでも死んだら悲しみ娘が居るのよ・・・憎いけど死んでほしくない。そう思っている娘の為に・・・動くのも悪くはないと思ったからよ」

 

ほむらの言葉に二人は呆気にとられたが、彼女はそんな二人に気づかれないように”時間停止”を行った・・・

 

確実にプレイアデス聖団の少女達を助けるために・・・・・・

 

「私は”正義”とかそんなモノを求めるつもりはない。自分に思うように戦う。彼のように・・・・・・」

 

”彼” バラゴのようにと口に出した自分は、いよいよ”暗黒騎士”に染まっている・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・まだ・・・生きている・・・・・・・・・・」

 

若葉 みらいは思い意識を覚醒させる。高層ビルの屋上から投げ出されたが辛うじてだが自分は助かったのだ。

 

背中に激痛が走り、手足の関節は奇妙に曲がっており、鈍い激痛が身体を走る。

 

(・・・・・・サキとみんなは・・・どうなったの?)

 

戦局はハッキリって自分達に不利であった。あの骸骨の人形達の強さに加え、手練れの魔法少女二人とさらには不意を突いて運よく捕らえるのが精一杯だった真須美 巴の布陣なのだ・・・

 

単体でもかなりの強さを誇る 真須美 巴が徒党を組んで襲撃を掛けてきた。

 

「・・・・・・はやく・・・行かなきゃ・・・どうしよう・・・身体が動かないよ・・・・・・」

 

魔力を使えば身体を修復できるが、その身体が言うことを聞いてくれない。

 

このまま気づかれずに・・・”死”・・・ソウルジェムが濁っていき、気づかれずに”魔女”になるのだろうか・・・

 

”ミチル”復活の為に創造した”ジュゥべえ”ならば、ジェムを浄化できるはずだったが、結局は見せかけだけであったことが判明した後、封印を施した為この場に来ることはない・・・・・・

 

「まさか・・・魔法少女にまた会うなんて・・・ぼくの人生はこういうのに縁があるのかな?」

 

誰かが自分の傍に来ている。それに魔法少女の事を知っていた。

 

「メイ、その子を動かすなよ。下手に動かしたら神経が傷ついちまう」

 

さらに・・・若い男性の声が聞こえてきた。

 

「どうやったらこんな・・・ってまさか上から落ちたのか?」

 

ジンはまるで強い衝撃を受けたかのような傷跡とさらにはそのまま真上の屋上から落ちたことに驚く。

 

奇妙な事と言えば、彼女の纏っている衣装だった・・・

 

「ったく・・・なんだ?この格好は・・・まるでふうぞ「それ以上は言ってはダメだよ!!ジン!!!」

 

メイからみても彼女の衣装は、魔法少女としても少し問題があり夜の蝶と言われても致し方のないものであったからだ・・・・・・

 

「君っ、意識はちゃんとある?グリーフシードは持ってるよね」

 

視界に現れたのはエメラルドを思わせる緑色の目をした20前後の赤毛の女性が心配そうに見ていた。

 

それに彼女は、魔法少女について知っている。

 

「あ、貴女は・・・僕達・・・・・・魔法少女を知っているの?」

 

「前にあのキュウベえに勧誘されたことがあっただけだよ」

 

”断ったけどね”と言い、メイは若葉 みらいが持っていたグリーフシードを手に取り、首にある少し濁ったソウルジェムへと近づけた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ほむらは時間の止まった”世界”を勢いよく駆け抜けた。

 

自分の”魔法”を明かすことになるのだが、ミチルの為だ。後の事は何とでもしようと考えていた。

 

直ぐに時間の止まっている牧 カオルに近づき手を取る。

 

「あ、アナタは・・・そ、それにこれはっ!?!」

 

周りの景色があり得ないモノに変化していたのだ。時間が止まったかのように全てが”停止”していた。

 

「時間が止まっているの!?!」

 

「そんな事はどうでもいい事よ。早く他の人の手を取りなさい」

 

自分が手を取るのも悪くはないのだが、手を取った瞬間攻撃をしてくる可能性もある。

 

「わ、分かった」

 

ほむらの指示に従い、牧 カオルは他の三人に触れ、この場から離れるようにと伝える。

 

牧 カオルと同じように驚く 御崎海香、宇佐木里美だった。

 

浅見サキはほむらとの因縁があったのか、攻撃をしようとしてきたが三人に戒められ、悔しそうにほむらを睨んでいた。

 

4人を比較的安全な別の建物の屋上へ連れ出した後、ほむらは直ぐにホラー ジェムジュエルの元へと向かっていくのだった・・・・・・

 

降ろされた4人は、呆然とした様子で遠くなっていくほむらの背を見送っていた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、魔戒文字と共に衝撃波がホラー ジャムジュエルを襲う。

 

ほむらは上空に佇むホラーに対し・・・・・・

 

「堅いわね・・・・・・中級ホラーぐらいならいけると思ったのに」

 

やはりホラーは自分にとっては強大な敵だと改めて思い知る。だが、ここで歩みを止めるわけには行かないのだ。

 

「まだまだ私にはやらなければならないことが残っている」

 

ほむらは”魔戒符”を取り出し、牙を立てて突撃してくるジャムジュエルに対し投げつける。

 

”魔戒符”はホラーの額に浮かんだ少女の顔で爆発四散する。

 

『ジャマヲスルナああああああああ』

 

上空に飛翔し、宙返りの反動で勢いよく後退し、態勢を整えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「巴ちゃん・・・どうする?あの魔法少女ちゃん、かなり厄介だよ。僕たちの遊びが・・・・・・」

 

不満そうに明良 二樹はホラーと戦う 暁美ほむらを見ていた。

 

「まさかのイレギュラーね。ホラーも中々楽しいものでしたが、現場でのアクシデントは付き物ですから」

 

真須美 巴は少し思案するように視線を動かす。協力者である他の二人もこのアクシデントに目を見張っており、プレイアデス聖団への攻撃を中断している。

 

「簡単なゲームよりもある程度の難易度があった方がずっと面白いわ・・・」

 

「じゃあ、魔号機人を援護に差し向けようか?」

 

明良 二樹も魔号機人を四機同時に差し向ければ攻略できるだろうと考えたが、暁美 ほむらの能力が分からない為、下手に手を打つと四機すべて失う可能性があると考えた。

 

『お前達・・・随分と楽しそうにしているな。ええ・・・真須美 巴』

 

ゲームを攻略しようと動いていた二人に背後に大柄のトレンチコートの男が立っていたのだ。

 

「あら・・・バグギ。今更、何をしに来たの?」

 

「こいつが巴ちゃんの言っていた。使徒ホラーってやつ?あっちと比べると迫力がイマイチかな」

 

魔戒騎士、法師が恐れる”使徒ホラー”に対し二人は、これと言って恐れを感じていなかった。

 

『お前達の遊びに引かれてホラー ジャムジュエルもそうだが、暗黒騎士が近くに来ている』

 

バグギが興味を引く”メシアを召喚し一体化する”という大それたことを行おうとしている”暗黒騎士”のその本領を見たいから、バグギはこの場所に足を運んでいたのだ。

 

餌風情の明良 二樹に軽んじられることに対してもこれと言って情が昂ることもなかった・・・

 

それ以上の昂ぶりを感じていたのだから・・・・・・

 

『ハハハハハハハハハハッ!!!!!ジャムジュエル、お前には”餌”になってもらうぞ!!!!!』

 

バグギは両腕より黒い渦を発生させ、黒光りする”雷”をジャムジュエルとほむらの居るビルへと叩きつけるように振るった。

 

 

 

 

 

 

 

耳に酷くこだまする音と共に衝撃波が光と共に”アスナロ市”を震わせた。

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か?魔法少女ってほんとに居るんだな・・・」

 

先ほどまで重傷であった少女が傷一つなく回復した様子にジンは目を丸くしていた。

 

衣装はPT〇に引っ掛かりそうだが・・・そんな視線を察してかメイはジンの腕を抓った。

 

「痛っ!?!抓んなって!?!!」

 

「ジン・・・君達男子には縁のない話だよ。まぁ、そっちの方が良かったかな」

 

メイは魔法少女に関する残酷な真実を察すると男子の方がある意味幸福であると考える。

 

「あのボ、じゃなくて私を助けて・・・」

 

「はいはい、畏まって言わなくても良いよ。君も自分の事をぼくって言うんだろ。ぼくもさ♪」

 

「ボクは若葉 みらい。助けてくれてありがとう」

 

メイの気さくな態度と言葉遣いに若葉 みらいは笑みを浮かべて感謝を述べたのだが・・・

 

突如として響く爆発音と衝撃波が三人を襲う。咄嗟にジンは、二人を庇った。

 

近隣のビルの窓ガラスと言うガラスが砕け、さらにいくつかのビルの一部が倒壊する。

 

落下してくる瓦礫から庇うジンから飛び出すように若葉 みらいは不得意であるが結界を張った。

 

「ちょっと、大丈夫?結界を張るのは割と魔力を消費するんだよ」

 

魔法少女の事情を知っているメイに対し、若葉 みらいは

 

「大丈夫・・・魔女ならまだしもこのぐらいなら頑張れる!!!」

 

自分の身を案じ助けてくれた人たちを助けるべく 魔法少女の責務を果たそうと彼女は動いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

瓦礫の山とさらには炎上する周辺はパニックに陥っていた。

 

逃げ出す人々とは逆に騒ぎの中心へと足を進める影が二つ バラゴと京極 カラスキであった。

 

「嫌な”呪い”が二つも・・・もう一方は・・・・・・多分、バグギか」

 

カラスキは人目を憚らずに騒ぎを起こした”使徒ホラー バグギ”に対し歯を噛みしめた。

 

対するバラゴは、バグギとホラーの近くに”彼女”が居ることを感じていた・・・・・・

 

(ほむらくん・・・・・・君は魔戒導師としては素晴らしい素質をもっているようだね)

 

ホラー ジャムジュエルと戦っているほむらに対し、バラゴは場違いなほど穏やかな感情を抱いていた。

 

彼女の魔戒導師としての才はいずれ自分にとっても大きな力になることを・・・

 

共に歩むことのできる存在に成長することへの期待が胸中に存在していた・・・・・・

 

だが、バグギが近くに居る以上戦闘に時間を掛けさせるわけには行かない、ホラー ジャムジュエルはその堅い体は魔戒騎士ですら手を焼く程なのだから・・・・・・

 

胸元の魔導具を手に取り、怪しく輝かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!!!!』

 

鳥とも猿とも違う獣の咆哮が響く。突然の事態に ジン メイ 若葉 みらいの三人は

 

「な、なんだ!?!化け物でもでたのか?!」

 

「え~と、これ魔女じゃないよね?こんな奴が居たの?」

 

「魔女よりももっと邪悪、それでいて強い・・・」

 

若葉 みらいのソウルジェムはホラーの異様な邪気を感じ、僅かに濁り始める。

 

三人の前に長い黒い髪の少女が降り立った。それに続いて、ホラージャムジュエルも現れた・・・・・・

 

背後の気配を察し、ほむらは三人に対し勢いよく振り返った。

 

「この場から早く逃げなさい!!!アイツは人を喰うわ!!!死にたくなかったら!!!」

 

振り返った少女 暁美ほむらをジン シンロンは目を見開かせた。

 

自分の記憶と違い、装いは変わっているが・・・間違いなく、行方不明になっている妹だった・・・・・・

 

「ほ、ほむら!!!おまえ、ほむらなんだろ!!!!」

 

「私をって・・・ジン、ジンお兄ちゃん!!?!何故・・・っ!?!」

 

思いがけない再開にほむらは、迂闊にも集中を欠いてしまった。

 

直ぐに時間停止を行うべき時に、手元が狂ってしまったのだ・・・・・・

 

その隙を逃さんと迫りくるジャムジュエルだったが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両者の間に割り込むように黒く長い柄を持った斧「暗黒漸」がジャムジュエルのその巨体を吹き飛ばした。

 

使用者の強大な力によって投げられたそれは一撃必殺に近い”衝撃”を与える。

 

深々とアスファルトの上に刺さった「暗黒漸」の存在に、ほむらは近くに彼が来たことを察する。

 

「バラゴ。あなたは・・・どうしてこういうタイミングで来るのかしらね」

 

内心、”私でも十分だった”と言いたかったが、これを兄の前でいうのは気が引けたのだった。

 

「ほむら君。良くやった・・・あとは僕がこのホラーを喰らおう・・・・・・」

 

黒いローブを目深に被っていたバラゴは、魔導具を頭上に掲げると同時に”暗黒騎士”の鎧を召喚する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナロ市に”暗黒騎士 呀”が立つ。

 

『お、オマエは・・・な、ナンだ?』

 

態勢を整えつつ、目の前に現れた”闇色の狼”から感じられる自身のそれよりも・・・それ以上の”威圧感”と”邪気”を持った存在にジャムジュエルは・・・思わず後退してしまった・・・・・・

 

「・・・・・・使徒ホラー バグギを目の前にしてそれか・・・お前など喰うに値しない」

 

魔戒騎士・・・ではなくおそらくは鎧に食われた”暗黒魔戒騎士”には違いないだろうが、ここまでの”力”と”意思”をもつ存在はジャムジュエルも聞いたことがなかったのだ・・・・・・

 

身体中の鱗を身体を振るうことによって弾丸のようにして攻撃を開始するが、

 

黒炎剣を構え、それらを一刀のもと全て粉砕する。

 

使徒ホラーがアスナロ市に姿を現していることにすら気が付かない三流ホラーにバラゴは嘲笑う。

 

だが、その身体の堅さだけは一級品であるホラー ジャムジュエルを倒すには一撃必殺の剣を撃ち込む必要があった。

 

呀は、黒炎剣に炎を纏わせると同時に一瞬にしてジャムジュエルの正面に踏み込む。

 

『ナッ・・・っ!?!』

 

額に浮かんだ”佳乃 ゆい”の顔が再び絶望に歪む・・・

 

その表情を感情のない白い目が映したと同時に

 

金属が崩壊する音と共に炎が上がり、黒炎剣が空を切った・・・・・・

 

ホラー ジャムジュエルは黒い炎と共に消え去った・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗黒騎士 呀は、紅蓮に染まるアスナロ市を瞳のない白い目がある一点を見る。

 

 

 

昼間倒したトレンチコートの男と瓜二つの影に従う二人がビルの上から暗黒騎士 呀を見下ろしていた・・・

 

 

 

 

 

 

続  呀 暗黒騎士異聞 アスナロ市編 漆

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

暁美ほむらがチョイ強め。今のところ上級ホラー以外ならば倒せるレベルにあります。エルダの指導もですが、ほむらは魔法少女としての素養は低くても魔戒導師、法師ならば素養が高いのが今作の設定。

全員揃いました。ほむらも兄と再会・・・

暗黒騎士 呀としてのバラゴは結構久々だと今更ながら気が付きました。

見滝原の風雲騎士と比べるとやはり原作における”敵役”なので、重い・・・・・・

次回から、バラゴと合流して本格的にバグギとの戦闘に入ります。

あと3、4話程で終わらせればと思いつつ、1話分追加になるかもしれません。

正直、プレイアデス聖団のアンチが割と入っているような気がしないでもないのですが、やっていたことはほぼ、外道だったと思います。

故に後々の追及が怖いところです。



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