呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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前回 ホラーと化した上条恭介。

今回、私なりに書いてみたいと思ったのは、魔法少女の存在を資格があるものとそうでないものが知った時、片方しか願いが叶えられないと言われた時、叶えられない側は言いようのない悔しさを抱くというものです。

そういうのをもっと掘り下げて書いてみたいです。

さやかと仁美の二人が今作ではそんな感じです。


第弐拾六話「上条 恭介 前編」

 見滝原市 巴 マミの住まうマンションにて

 

「ったく、マミの奴は何処に行ったんだよ!!」

 

既に消火作業が終わった深夜に幼い少女の声が響く。

 

杏子はマミのマンションが火事に遭ったことを知り、伯父と共にこの場へ来ていた。

 

「無事だと良いんだが、ここにある邪気はあまり気持ちの良いものではないな・・・」

 

バドは火事の中心であった部屋の向かい側に向ける。

 

見えるのは異様な邪気というより”様々な怨みの念”の跡が濃く残っていたのだ。

 

このような”怨みの念”は曰く付きの場所に多いのだが、このような新築マンションには似つかわしくない程だ。

 

部屋の主は、どういう神経をしていたのかと問いたくなる。こんな場所には近づくだけでも危ないし、生活等したら数日と待たずとして亡くなってしまうだろう。それだけ”生者を恨む念”が多く渦巻いていたのだ。

 

「伯父さん。ナダサの話だと、色々と怨みを買ってたって・・・・・・それにここの奴、見かける度に違う女を連れてたよ」

 

かつてマミとコンビを組んでいた時、時折見かけていたこの部屋の主 柾尾 優太に対して杏子はいつも不快感を抱いていた。元々、神父の娘であるからか不快感は強かった。

 

「杏子ちゃんは、知っているのかい?ここの、まだ表札は残っているか・・・まさ・・・柾尾 優太か」

 

「話したことはないよ・・・なんていうか、あんまり関わりあいたくない奴だったかな」

 

マミとコンビを解消した後は、ここに来ることはなくそれ以来見かけなくなったが・・・

 

「そうか・・・これはそういうことなんだろう」

 

「それってどういうこと?伯父さん」

 

一人で納得している伯父に対して問いかける杏子。

 

「あぁ、ここに居た柾尾 優太は、”存在するだけで生きていない人間”だったんだろうな」

 

「存在するだけで生きていない?」

 

「人間っていうのは、色んな目に遭って変わっていくんだ。良くも悪くもな・・・」

 

「杏子ちゃんや俺みたいに色んな目に遭って、やらかしたことも変わることに違いない。だけど、ここの奴は違うんだろう」

 

伯父の言っている意味がよく分からないという表情の杏子であったが

 

「色んな目に遭って、悲しかったり、嬉しかったり、怒ったりすることを繰り返すことなんだ。ここで感じながら変わっていくんだ。良くも悪くもな」

 

バドは自分の胸を指す。ここにあるのは人ならば必ず持っている”心”が宿る場所。

 

「柾尾 優太には、それがないんだろう。生まれつきなのかどうなのかは知らないが、ただ人の形をしているだけで、色んな目に遭っても何も感じることがないから、変わらない。”存在しているが生きていない”」

 

「・・・・・・なんだよ。それ、気持ち悪いな・・・まるで人形。あの気味の悪い絵本にそんな人形がいたな」

 

昔、まだ家族が居た頃に父が貰って来た絵本の中に自分を人間と思い込んで悪さをする人形が主人公のモノがあった。小さい頃に見たとき、あまりの人形の気持ち悪さに絵本はそのまま燃えるゴミの日に出してしまった。

 

結末までは読んだが、あの人形の最期は燃やされた灰になったというものだから、この部屋の主も似たような末路を辿ったのは間違いないだろう。

 

バドは、焼け跡となった柾尾 優太の部屋に足を踏み入れた。部屋の中は爆発したのか様々なモノが散乱としていて荒れ放題だった。部屋の一角に視線を向ける。そこには魔戒騎士ならば馴染み深くも忌まわしい”陰我”の後を感じた。やはりここにホラーが現れたのだ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

見滝原病院 志築仁美の病室

 

仁美は眠れない夜を過ごしていた。さやかに突き飛ばされ頭を打ち、怪我をしたが特に異常がなかった。

 

意識を回復してから彼女の考えることはただ一つ、上条恭介の事だった。

 

「やっぱり納得がいきませんわ・・・・・・どうして、美樹さやかなんですの・・・私だったら・・・もっと・・・うまく・・・・・・」

 

彼女が考えていたことは上条恭介に奇跡を齎す資格が自分にあれば、きっとさやかよりも上手く事を運べたのではないかと・・・・・・

 

正直に言えば、自分はクラスでは優秀な成績で物事の見識もさやかよりもずっと深い。

 

だからこそ、今回の結末は奇跡を願ったのがさやかだったから、この結末に至ったのだとさえ考えていた。

 

「でも・・・まだですわ・・・私が叶えられなくとも・・・・・・誰かに叶えてもらえれば・・・・・・」

 

ここでふと思いついたのは、友人である鹿目まどかだった。入学当初より仲良くしている友人であるが、悔しいことに彼女も”奇跡を起こす資格”を持っている。だが、何も叶えていない。

 

資格がないことに悔しい思いをしている自分を差し置いて、欲しくてほしくてたまらない資格を有効に使おうともしない彼女を半ば軽蔑すらしていた。

 

「どうせ叶える願いなんてないんですなら、わたくしの為に・・・上条恭介さんの為にその奇跡を捧げるべきではないでしょうか・・・」

 

思い立ったが吉と言わんばかりに病室にある自身の荷物から携帯電話を取り出し、さっそくまどかに掛けるが、すぐに留守電になったことに苛立ちお覚え、そのまま携帯電話をベットに叩きつけた。

 

「・・・・・・こんな時に・・・・・・わたくしや上条恭介さんが美樹さやかの為に大変な目に遭っているのに気にもかけないなんて・・・」

 

所詮はその程度の友情でしかないのかと思うが、普通ならばほとんどの人間が眠っている時間なのだ。

 

そんな時間に電話を掛ける方が非常識なのだが、その非常識な時間に出歩いている影があった。

 

病院を背に歩いているのはいつの間にかタキシードに着替えていた上条恭介だった。

 

偶然にも仁美は病室の窓から彼の姿を目撃した。一瞬、見間違いではないかと思ったが、

 

「か、上条さん!?!ど、どうして!!」

 

居てもたっていられず彼女は病室を飛び出していった。

 

その後、辺りを隈なく探したが彼の姿を見つけることは叶わなかった・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ミュージック スクール virtue

 

上条恭介の父が理事を務めている音楽教室であり、5階建てビル全てが教室、スタジオである見滝原を代表するスクールの一つである。

 

スタッフルームで上条恭介の父は、非常に落胆していた。息子の不幸とこれからの将来に対して……

 

「理事。気を落とさないでください。恭介君はまだ若いですし、やり直しはいくらでもききますよ」

 

「先日も手の事は諦めろと言われた時の恭介の荒れっぷりを知っているか?あの子にとってヴァイオリンがすべてだったんだ」

 

後で病院関係者に聞いた話だといつも見舞いに来ている美樹さやかに八つ当たりすらしたと言う。

 

このことを知ったときは我が子ながら情けないとしか思えなかった。ほとんどのモノが息子の才能と将来に期待を寄せた居たのだが、将来性がないと判断した時には手のひらを返したように無視を決め込み、治療に専念している時すら、励ましの言葉すらかけてはいない。そんな息子に変わらず接してくれたのは、幼馴染の美樹さやかだけであり、あの子がどれだけ息子を想っていてくれたことには感謝しかなかった。

 

志築家からは、将来をと話を持ち掛けられたが、将来性がないと知った途端に勝手に話はなかった事にと言われた時は思わず怒鳴りたくなった。あそこの娘さんも恭介のことを好いているのだが、一度たりとも見舞いに来たという話は聞いていない。仮に付き合っても交際は認めたくはなかった。

 

その後、息子の右手が奇跡的に治った事には救ってくれた幸運の女神に感謝した。

 

あの病院の屋上で戸惑いながらもヴァイオリンを引く息子の将来はまたこれからと思っていた矢先に・・・

 

立ち会ってくれた美樹さやかにも感謝していたし、誰よりも喜んでくれた彼女も息子の不幸に大きく傷ついているだろう・・・・・・

 

「恭介の不幸もそうだが、私はさやかちゃんが心配だ。警察はちゃんと探してくれているのだろうか?」

 

現場に居合わせた後、そのまま行方が分からなくなってしまったさやかを心配し、警察に問い合わせたが…

 

「まだ見つかっていないそうです。彼女の父親に至っては・・・なんというか・・・・」

 

「あぁ、、子供の安否よりも犯人探しに躍起になっているんだったな」

 

スタッフルームに控える講師達も今回の件で非常に心を痛めていたのだった。

 

今まで傍にいてくれたさやかの安否、傷心の娘よりも犯人を捕まえることに躍起な父親に対しては溜息を付いた。

 

そんな時であった・・・・・・

 

「あれ?まだ、誰かスタジオにいるんでしょうか?」

 

突然、ヴァイオリンの音色が聞こえてきたのだ。聞いたことのない曲だった・・・

 

「うん?この弾き方の感じは・・・まさか・・・」

 

上条恭介の父親は、この曲を弾く奏者に覚えがあった。だが、決してありえないのだ。奏者はもうヴァイオリンを引くことはできないのだから・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 見滝原のビル群を駆け抜けていく影が二つ。魔法少女に変身した美樹さやかと彼女を護るために創造された人造インキュベーター ソラである。ソラは魔法少女の姿をしており、白いマントを靡かせる軽装に対しソラは巫女装束を模した衣装纏っており、その姿は完全に魔法少女の姿である。ソウルジェムを思わせる宝石が額に輝いていた。

 

「さやか、本当にそれで構わないのですか?」

 

「うん。もう決めたんだ。アタシは自分が叶えた願いの責任を果たさなくちゃいけない。だから、恭介の所に行ってやれることをする」

 

二人が向かっているのは、上条恭介が入院する病院である。その目的は彼の腕をもう一度治すことだった。

 

「アタシの魔法は治癒でソラと合わせれば手の再生は十分可能なんだよね?」

 

「はい。私自身の能力は”転写”。彼の左手を転写し、反転すれば右手の再生は十分に可能です」

 

ソラは状況によっては姿を変えることのできる能力を持ち、外観をキュウベえに擬態したり、また今のように魔法少女に擬態することができる。それは自身に装備であったりと多岐に渡る。

 

その能力があれば上条恭介の失った右手を再現できるのだが、肝心の右手を繋ぐすべがなかった。ここを繋げるのがさやかの”治癒魔法”であった。

 

落ち着いたさやかは、恭介の失われた手を何とかする方法がないかとソラに聞いたところ、彼女は、さやかの魔法を確認した後、この方法を提案したのだった。

 

そして・・・・・・さやかは、あることをソラに尋ねた。

 

「ねえ、ソラ。多分、三年生も姐さんも知らないと思うんだけど、ソウルジェムってさ・・・・・濁り切っちゃうとどうなるの?」

 

願いが叶えられるという甘い言葉に魅せられ、魔法少女になったが、その実態については知らないことが多すぎる。

 

「・・・・・・はい。インキュベーターは、聞かれなかったから話さなかったと答えるでしょう。ですが、この事実は魔法少女を希望としてみているモノからすれば、あまりにも救いがなさすぎます」

 

ソラは答えることに対して躊躇していた。その様子にさやかは、真実はあまりにも残酷であることを察した。

 

生唾を飲み込み、真っ直ぐにソラを見据え

 

「遅かれ早かれアタシ達は知ることになるってことだよね。先延ばしにしたって、結局は逃げじゃん。だったら、アタシは知っておきたいんだ!!魔法少女の真実を!!!教えて!!!ソラ!!!!」

 

どんな事であってもさやかは受け入れようと決めたのだ。どんなに残酷な真実であっても・・・・・・

 

残酷な真実を知り、潰されるのならば結局はそれまでだろう。今更ではあるがさやかの脳裏に姉が話したある話が鮮明に浮かんでいた。

 

アレは姉が祖母の故郷に墓参りの旅行について行ってしまった時に、そこに祭られていた”みながみびと”の伝説を聞かされた時のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 東のある寒村にそれは大層な腕前の笛吹きの男が居り、彼のその腕前には寒村を収める領主にも覚えが良かった。

 

そんな彼に想いを寄せる村娘が一人・・・その娘は男とは幼い頃からの馴染みでその男の傍らでいつも笛を聞いていた。

 

ある日、男が村から用事で隣村にの道中で野党に襲われ、腕を斬りつけられてしまい、男は笛を吹くことができなくなってしまった。

 

意気消沈した男に対し、娘は村に伝わる”水神”が宿る泉に祈った。

 

男の腕を治すようにと・・・・・・娘の祈りを”水神”は聞き入れた。だが、”水神”は代償を求めた・・・・・・

 

祈りを叶える代わりにお前の命を捧げよと・・・・・・

 

それを受け入れ、娘は男にもう一度笛を吹けるようにと・・・もう一度あの音色が聞きたいと願って・・・・・

 

命を捧げ、男は笛を吹くことができた。その代償を知ることもなく・・・・・・

 

男がその代償に気づいたとき、娘が自分を好いていてくれたことと何もしてやれなかったことを後悔し、幼馴染への感謝の想いから、”みながみびと”として祭られることになったという・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

”さやか・・・・・・神仏、いえ、大きな力に願いを祈ることは大きな代償を払わなければならないわ。命をそれこそかけてね。だけど、それを求めるあまりに道を外れて鬼や魔に堕ちることもあるわ。これはこの話とは別の昔話だけど、今はやめておくわね”

 

 

 

 

 

 

 

今の自分は、姉の話してくれた”みながみびと”の村娘のように奇跡の代償として命を払ったのだ・・・

 

そして、さらなる代償が必要なのだろう・・・その真実こそが・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「わかりました・・・・・・魔法少女はあくまで少女 ソウルジェムも同じです。少女が大人になれば、女になります」

 

ソラはこの先を話すことに抵抗を覚えたが、さやかは”やはりそうなのだろうか”と察した。

 

「魔法少女が成長した姿こそが、”魔女”なのです」

 

「やっぱりね・・・・・・キュウベえのやることだから、どうせろくでもないことだと思ったけど、本当にろくでもないことだったね。そんなろくでもないことに調子に乗ってたあたしって・・・・・」

 

 

 

 

 

「アタシって・・・・・・ほんとに馬鹿」

 

 

 

 

 

 

 

 

二人はビルの間を駆けていたが、さやかはここが見覚えのある場所であることに気が付いた。

 

「ちょっと待って、ソラ。少しだけ寄り道したいんだけど」

 

「はい。この辺りは確か、ミュージックスクールVerite がありましたね」

 

「知ってるんだ。え~と、やっぱりお姉ちゃんから?」

 

「はい。あのミュージックスクールの上条理事は蓬莱暁美様のお知り合いでしたから、その辺りの事も聞いています。最も数年前の情報なので更新をしなければなりませんが・・・」

 

さやかが魔法少女になり絶望しそうになったら、封印が解けるというピンポイントな状況で目覚めた為か、少しばかり自信がなさそうであった。

 

このソラは頼りになるのだが、時折見せる不安そうな表情がさやかの庇護欲をそそる。

 

「ここは、アタシが案内するからこっち!!」

 

方向転換し、二人はミュージックスクールのあるビルへと向かうのだった。

 

「さ、さやか、待ってください」

 

少しだけ上づいたソラの声が響いた。

 

 

 

 

 

スタジオに響く不思議な曲は、楽しげではあるが、何処となく不気味な響きを奏でていた。

 

時刻と誰もいないはずのスタジオからあり得ない人物が演奏していることにスタッフ達は不気味さを感じていたのだった・・・・・・

 

「理事・・・なんというか、これ引いてるのって・・・・・・」

 

「いや、あり得ない・・・・・・恭介は病院に居るはずだが」

 

扉の前まで来た時、ゆっくりと扉が開き始めた。そしてパッと照明が照らされる。

 

「ここに来るのは久々だけど・・・・・・僕もまだまだだな~~。早く後れを取りも出さなくちゃいけないのに」

 

聞こえてくるのは、聞き覚えのある息子 上条恭介のモノだった。

 

「父さん、先生方・・・夜分遅くに失礼します」

 

上等なタキシードに身を包み、ヴァイオリン本体と弓を持った上条恭介が笑った。笑った瞬間の顔に影が差した。

 

「ほ、本当に恭介なのか?何故、ここにいるんだ。それに・・・」

 

信じられないことに吹き飛ばされた右手が恭介に存在していたのだ。

 

「僕も奇跡を起こしたんだよ。さやかが願ってくれたんだけど、運悪く台無しになっちゃったんだ」

 

「な、なにを言っているんだ?さやかちゃんが・・・」

 

全く話が呑み込めなかった。奇跡を起こした?どういうことだ?一瞬見た息子の顔は奇跡が起きたというよりも何か恐ろしいものに取り憑かれたのではとしか思えなかった・・・・・・

 

「あははははははは!!!そうさ、僕はやっと自分の音楽を取り戻したんだ!!!でも、少しだけ欲が出ちゃったんだよ」

 

「色んな曲を弾いてきたけど僕自身の曲が欲しいなって・・・でも、インスピレーションが湧かないんだ」

 

「適当に引いてみたら何かいいフレーズが見つかるかもしれない」

 

恭介は曲を奏で始めたその曲調は甲高く、まるで人の断末魔の悲鳴のように聞こえる響きを持っていた。

 

「な、なんだ・・・この曲は、人間が考えるものではないぞ」

 

心の底から不安にさせる響きを持ったそれは人間の原初の本能を刺激する。

 

「あ、あ、ああ。ああああああああああっ・・・・・・・」

 

恭介の父の隣にいる講師が痙攣を起こし、白目を剥き出しガラスの陶器が割れるように弾けた。

 

「ああっ!?!!」

 

余りの出来事に仰け反り、腰を抜かしてしまった。割れた陶器のような肉片が恭介の奏でる曲に合わせて浮遊しの足元に展開された円に吸収されていく。

 

「あはははははははは!!!!これが恐怖なんだね!!!!音楽は理屈じゃない、感性なんだ!!!その時に感じる感情の高鳴りこそが僕が求めるオリジナルの!!!僕だけの曲なんだ!!!!」

 

恭介の身体から悪魔を思わせる悍ましい二本の腕が背中から飛び出す。

 

さらに頬が裂けていき口が耳まで大きく開いていく。

 

「きょ、きょうすけ・・・オマエは・・・音楽の為に・・・そのためだけに悪魔に魂を売ったのか・・・このバカ息子が・・・・・」

 

「それだけの価値があるんだよ。その価値は十分にあった・・・だから父さん。協力してくれるかな?」

 

悪魔のような悍ましい顔から穏やかな上条恭介に変化させ、実父へと近づくが、

 

スタジオの窓を突き破るように彼女は、上条恭介の前に飛び出した。

 

「恭介!!!!あんた、なにやってんの!!!!!」

 

魔法少女の姿のさやかは、怒りの表情でサーベルの切っ先をホラーと化した恭介に向けた。

 

「さやか!!!相手はホラーです!!!魔女とは比べてはいけません!!!」

 

続いてソラがさやかに続く。

 

「ソラ!!!おじさんを逃がして!!!アタシはちょっと恭介と話さなくちゃいけないから」

 

「さやか・・・・・・あの後どうなったか心配したけど、無事だったんだ?てっきり魔女にでもなったんじゃないかと思ったのにな~~」

 

「あいにくさま。さやかちゃんはそう簡単にへこまないわよ。恭介、あんた魔法少女のことしってたんだ?」

 

「つい最近になって知ったんだよ。魔女になる話は結構ショックを受けるんだけど・・・それを曲にしてみたかったな」

 

魔法少女の事を知らないはずの恭介が何故、知っているのか気になるが、彼の身に起きたことによる影響だろう。

 

「悪趣味すぎるよ・・・・・・恭介・・・・・・」

 

「それは感性の違いだよ、さやか。人それぞれなんだよ。本当の芸術を理解する人は本当に少ないんだ」

 

笑みを浮かべる恭介の姿は、彼女が知る幼馴染のモノではなかった・・・・・・

 

(これがアタシの罪と罰・・・・・・魔法に縋って、命を払った代償が恭介・・・・・・)

 

彼女の暗い感情と後悔に呼応するようにソウルジェムが僅かに濁るのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 




あとがき

仁美がなんだか、物凄くヤバいことになってきました。

悪いのは、某青年なのにさやかのせいにするという逆恨みっぷり・・・・・・

さりげなく、まどかを利用しようと考え始めたのでかなりきています。

今回はさやかがホラー化した恭介と対峙。そして、魔法少女の真実を先んじて知ることになりました。

さやか先に魔法少女の真実を知り、受け入れるというSSは中々なく、さらには魔法少女となって恭介を治癒するというのは本来ならあり得ないんですが、そういう方向性でということにしてください。

さやか自身が割としっかりして居たのは姉 蓬莱暁美の影響ということで・・・

その姉とのやり取りは別作品にて・・・・・・





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