転生したら始祖で第一位とかどういうことですか   作:Cadenza

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遅れました。本編の後書き追加は後日に持ち越します。

番外編第二弾。転生先が違っていたらverネギま。
尚、その内に番外編は番外編で独立させ、一発ネタなどを載せるかもしれないのでよろしくお願いします。

ありがちだけど、出すならこの娘だよねー。


吸血鬼ですが嫁と一緒に喫茶店をやっています。

雷の暴風(ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)

闇の吹雪(ニウィス・テンペスタース・オブスクランス)

 

 迸る雷風の嵐と闇の氷雪。それらがぶつかり合い、相対する二人の中間地点でせめぎ合う。

 お互いに小手調べ程度だったのか、暫くすると掻き消えた。

 

氷神の戦鎚(マレウス・アクイローニス)!!」

 

 二人の片割れ、プラチナブロンドの長髪に碧い瞳を持つ女神にような女性――エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが、相対するもう一人に向けて魔法を発動させた。

 

 魔力を糧とし、精霊によって精製されたのは、直径五十メートル以上の氷塊。上空に出現したソレは、真下にいるもう一人目掛けて落下を始める。

 

集束(コンウェルゲンティア)光の101矢(ルークム)

 

 そんな超質量の攻撃をもう一人、白みがかった金髪に朱い瞳の中性的な男性――アークライト=カイン・マクダウェルは、拳に集束させた魔法の射手(サギタ・マギカ)の砲撃で粉砕した。

 砕かれた氷の破片が周囲に飛び散る。

 

 それを見てエヴァンジェリンは、フッと笑った。

 

「かかったな」

 

 静かに腕をかざす。

 そうすれば飛び散った氷片が氷槍へと変化し、アークライトの全方位を取り囲む檻を形成した。

 

 エヴァンジェリンがその細く白い指をタクトの如く振るう。

 

千刃黒耀剣(ミッレ・グラディー・オブシディアーニー)

 

 隙間なく、まるで壁のように氷槍の弾幕が殺到する。だがその前に、アークライトも魔法を発動していた。

 

 氷槍を迎撃したのは、柄も鍔もない黒い千刃。ぶつかり合い、互いが互いを砕き、どちらとも分からない破片を撒き散らす。

 

 瞬く程の攻防だが、アークライトとエヴァンジェリンは頓着せず、すぐに次の魔法を選択する。

 

奈落の業火(インケンディウム・ゲヘナエ)

氷爆×10(ニウィス・カースス・デケム)

 

 再びぶつかり合う魔法。

 

 片や上級の複合魔法を無詠唱で放ち、片や最高難易度である同時発動を当たり前のように使いこなす。

 並の魔法使いなら卒倒する光景だ。

 それが意味するのは、アークライトとエヴァンジェリンの両者が最高クラスに精霊魔法の使い手であるということ。

 

 片手間に上級魔法を連発し、最上級魔法すらお互い苦もなく発動させる。

 まさしく頂点同士の戦いだった。

 

双腕解放(ドゥアープス・エーミッサエ)

 

 何度目かの撃ち合いの後。

 召喚した火精霊でエヴァンジェリンを足止めし、その隙にアークライトが両腕を広げた。

 

右腕固定(デクストラー・スタグナンス)轟き渡る雷の神槍(グングナール)〉」

 

 右に雷系最速の魔装兵具、

 

左腕固定(シニストラー・スタグナンス)神の雷(ディオス・アストラペー)〉」

 

 左に雷系最大威力の最上級魔法、

 

術式統合(ウニソネント)

 

 固定した二つの魔法を頭上で融合し、新たな魔法を形創る。

 

「”撃滅の轟雷槍(ブリューナク)”」

 

 そして現れたのは、全長三十メートル強の光の槍。無駄な装飾、派手さなど一切ない、ただただ純粋な雷によって構成された光槍。

 

 数百の火精霊を相手にしていたエヴァンジェリンも異常に気づいた。アークライトが掲げた光槍を見て、その表情を引き攣らせる。

 

「貴様っ、いくら修復できるからと言って限度が……ッ!」

「一面氷漬けにしたエヴァに言われたくないな」

 

 そう言ってチラリと視線を向けた先には、氷漬けの森林やら湖やらがちらほらと。

 だが同じくらい、ズタズタの遺跡やら新しい谷やら焦土やらが見えるのでどっちもどっちである。

 

 お互いに一流の魔法使いが拭けば飛んでしまう程の規格外であり、存在が災害と例えられる吸血鬼。

 そんな二人が本気でないとは言え、魔法の撃ち合いをすれば当然の光景だ。

 

「それはっ、お互い様だろうに!」

「言えてる、なっ!」

 

 光の槍を投げ放つ。

 投擲の瞬間に光がほどけ、直径数百メートルの束――ビームかレーザーにしか見えない圧倒的な光の奔流となった。

 

 殆ど壁と言っていい極太ビームが迫る中、全ての火精霊を倒して尚、エヴァは動かない。触れたモノを蒸発させる極光に中に……エヴァの姿が消えた。

 次いでその周囲にも破壊をもたらす。地面を抉り、木々を蒸発させ、大気を焼き焦がす。極光が収まった後に残ったのは、灼熱化した大地のみだった。

 

「やっぱりコレは威力が強過ぎるな。千の雷だと範囲が広過ぎるし。使い所が難しいな」

 

 そう言い、右手に《断罪の剣(エンシス・エクセクエンス)》を発動させ、背後に向けて振るう。

 ガキンッ、と。何かに受け止められた。

 そこには、アークライトの手刀を同じく”断罪の剣”で受け止めた、光に呑み込まれた筈のエヴァンジェリンが。

 

「そこらの奴等は、これで終わりなのだがな。お前には通じないか」

「何百年一緒にいると思ってる。攻撃を受けたと思わせて影のゲートで回避、そして背後から……だろ? 卒業したとは言え、俺はエヴァの魔法の師匠。これでも弟子の事は知ってるつもりだ」

 

 《断罪の剣》同士で鍔迫り合いながら、二人は会話する。

 アークライトの言葉にエヴァンジェリンが獰猛な笑みを浮かべた。

 

「そうだな。なら、師を越えるのも弟子の役目だと思わないか?」

「まだまだ越させはしないよ。俺が精霊魔法で負ける訳にはいかないからな」

「頂点は常に越えられる運命にあるものだ。私がお前を越えてやる」

「言ってくれるねぇ。――――そう言えば、エヴァと全開で戦った事はあまりなかったな。師匠として、弟子の成長を確かめたいんだけど……どうする?」

「望むところだ。私の魔法とお前の魔法、どちらが上かハッキリさせようか!!」

 

 言うな否や虚空瞬動で空気を蹴り、お互いに距離をとった。

 充分な距離をとると、二人共に魔法の詠唱を始める。

 

 圧迫するような威圧感が滲み出し、空間そのものがお互いの高まる魔力によってビリビリと悲鳴を上げる。

 戦争の第一線で活躍できる一流の魔法使いでさえ形振り構わず逃げ出すレベルの魔力が、無尽蔵といっていい勢いで拮抗し合っている。

 並の魔法使いなら次元が違うあまりに何も感じられず、一定の実力者なら冷や汗を流してこれから起こる天災を幻視するだろう力の衝突。

 

 ここからは全開。加減なしの全力。そうなれば必然的に選ぶ魔法は同じ。

 名を《闇の魔法(マギア・エレベア)》。

 発動すればまともに対抗できる存在は、知る限り片手で足りてしまう無敵一歩手前の禁術。

 

 《闇の魔法(マギア・エレベア)》同士が、これからぶつかり合う。それは正しく天変地異。地獄がこの世に顕現するに等しいだろう。

 

「「契約に従い 我に従――」」

「そこまでじゃ」

 

 とは言え、それをやらせる筈がないのだが。

 

 透き通るような高貴さを感じさせる声が、丁度中間地点に隕石の如く飛来した刀と共に、二人の詠唱を遮った。暫し遅れて声の主も降り立つ。

 浮かべている表情は、まさに呆れ顔だった。

 

「熱くなり過ぎじゃ、後の事も考えんか。うぬらが《闇の魔法(マギア・エレベア)》同士でぶつかり合ったら魔法球が壊れてしまうわ」

 

 その言葉にヒートアップしていた二人が覚めていく。比例して高まっていた魔力の衝突も収まり、周囲も戦闘の激しさを象徴する傷跡だけを残し、静寂が訪れた。

 

「……ふぅ、助かったキスショット。ちょっと調子に乗り過ぎた」

「……確かにな。久々の魔法戦で熱くなってしまった」

「やるならアークの城でやっておくれ。あっちは頑丈じゃからな」

「頑丈だからって壊れない訳じゃないんだが。あと修復するの俺だからね?」

「ならば模擬戦を控えよ。何個魔法球を壊せば気がすむ」

「「それは無理」」

「おい」

 

 若干ドスの効いた声。エヴァとアークライトが視線を逸らす。

 戦いが好きという訳ではないが、一度始めると楽しむ節があるので久々の模擬戦でヒートアップしてしまったのは仕方がないのかもしれない。

 その対価はそのまま二人に返ってくるので自業自得である。後片付けという対価が。

 

「……まぁよい。それより、そろそろ開店時間じゃぞ。カリンと茶々丸は既に準備を始めておる。店長が不在というのはいかんじゃろ」

 

 おっとマズい、とアークライトが一足先に出入口に急ぐ。やれやれと肩を竦めるキスショットと、模擬戦がヒートアップした発端が自分にあると自覚するエヴァが苦笑を浮かべ、その後を追った。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 ここ麻帆良学園都市は広大である。

 

 麻帆良は幼等部から大学部までのあらゆる学術機関を内包する学園都市だ。

 寮学生のための寮宿舎や通学生のための駅舎、文房具屋にスーパーマーケットなど学生に必要な一式を揃えられる店は勿論、学園都市(、、)であるので、生活に関係する店舗は一通り揃っている。それこそ娯楽施設や公共施設、果てには礼拝堂や教会までも。

 

 これらを全て総称し、麻帆良学園都市と呼ぶ。

 

 先に述べた通り、麻帆良は広大だ。年度初めは必ず迷子が続出する。

 そんな麻帆良で最も目立つのは、やはり中心地に聳え立つ正式名称《神木・蟠桃》――またの名を世界樹だろう。

 樹高二百七十メートルという、世にある樹齢千年を超える大樹が苗木に見えてしまうほどの巨木。

 

 普通に考えればそんな木などありえないのだが、麻帆良の住人は一部を除いてそれを異常と認識することは出来ない。

 

 その世界樹に比べれば目立たない、中心地から遠くもなく近くもない場所に位置するある一角。そこには一軒の喫茶店があった。

 

 見た目は西洋風でとてもシックなのだが、どこか近寄りがたい神秘的な感覚を覚える。

 入り口の上と脇の看板には『朱月』と店名が書かれており、今日のオススメメニューといったようなものはない。

 

 オープンと英語で書かれた札がある木製の押し扉がゆっくりと開かれる。カランカランとカウベルの音が鳴り、一人の少女が来店した。

 

 店内もいたってシンプル。カウンター席が五つ、四人用のテーブル席が三つに二人用が二つ。静かな心を落ち着かせる音楽が流れていた。

 しかし、少女以外のお客はいないようだ。

 常連なのか案内されるまでもなく、カウンター席の真ん中に座る。

 

「いらっしゃいませ」

 

 その直後、声がかかった。

 肩で切り揃えられた黒髪ショートに、この店の割烹着に似た制服を着た女性。初めて会った頃からの相変わらずの無表情であるが、とても整った顔をしている。

 とある理由で美少女慣れしている少女から見ても、相当高レベルだ。

 

「ああ、夏凜さん」

「どこか疲れているようね、千雨」

 

 女性の名は結城夏凜、少女の名は長谷川千雨。喫茶店『朱月』のウェイトレスと常連客である。

 

「ええ、まぁ……。ここに来てから色々と吹っ切れはしたんですけど、まだまだ慣れないというか無理だろこりゃというか……」

 

 ここ麻帆良は異常である。千雨は越してきてから今に至るまでまで、ずーっとそう認識してきた。

 世界樹とかいう東京都庁舎よりデカい巨木。街中で漫画みたいなバトルを繰り広げる学生。大企業が会社をあげて取り組むようなロボットを十人にも満たない人数で学生が作ってしまう天才集団。オリンピック顔負けの速度で爆走する同級生の女子中学生。

 これだけ異常も異常な光景がこの麻帆良では日常なのだ。どう考えても可笑しいのに、誰も彼もがそれを受け入れている。

 

 自分がいくら異常だと訴えても周りは耳を貸さず、ただ次第に孤立していくばかり。

 いつしか千雨は諦め、趣味へ逃げ道を求めた。だがそれでも異常な日常は変わらず、もしや周りではなく自分がおかしいのではとまで思い始め、徐々に追い込まれていった。

 第三者から見ればその時の千雨は、まるで自殺志望者のようだったらしい。

 中学生というまだまだ幼い域を出ない少女には、あまりに酷な状況だ。

 

 そんな時にフラッと立ち寄ったのがこの喫茶店だった。以来、週に一度は必ず来る常連となっている。

 ほとんどが愚痴を吐き出しにきているようなものだが、おかげで救われたのは事実だ。

 

 事実なのだが――

 

「でも無理。やっぱ無理っ。絶対に無理! なんだよ10歳の教師って! 飛び級って言葉使えば許される訳じゃねぇぞコラ! 労働基準法に喧嘩売ってんだろ! なのになんでウチのクラスの能天気阿呆共は普通に受け入れてんだ! キレるぞ!? スルースキルがカンストしてる私でもキレるぞゴラァ!!」

「もう十分にキレてますね」

 

 敬語が崩れ素の口調に戻り、ウガー! と髪の毛が逆立たんばかりに不満や疑問や怒りなどを吐き出した後、千雨はテーブルに突っ伏した。夏凜の冷静なツッコミも聞こえない。

 

 まるでMPが切れた魔法使いのようにダウンしている中、千雨の脇にコトッと何かが置かれた。

 突っ伏したまま顔だけ動かして見てみれば、ソーサーに乗せられたコーヒーカップがあった。昇る湯気と共に芳醇な香りが漂ってくる。

 おかげで少し回復した千雨は半身を起こし、コーヒーを置いたであろうダイニングキッチンにいる男性を見やる。

 

「マスター、これは?」

「いつもより疲れてるらしい常連さんへサービスだ」

 

 そう片目を瞑って答えるのはこの店のマスター。

 白みがかった――たとえるなら夜空に浮かぶ月のような金髪をポニーテールにし、宝石のように綺麗な朱い瞳をした、映画俳優完敗レベルの美人と評していい中世的な容姿。

 初めて来た時はあまりの美しさに言葉を失ったものだ。

 

 とは言っても、見た目に反して話してみると親しみやすく、自分の愚痴にも快く応じてくれるので馴染むのは早かったが。

 

「いいんですか? 見た感じからして、このコーヒーって結構お高い奴じゃ……」

「構わないよ。元々殆どは自家栽培。それに千雨ちゃんは毎週来てくれる常連さんだしね」

「なら……遠慮なく」

 

 マスターの好意に甘え、砂糖もミルクも入れずコーヒーを口に運ぶ。

 程よい苦味と酸味を残しながらも、決して顔を顰めるような類ではない。続く香りが味覚だけでなく嗅覚も刺激してくれる。

 

「……ふぅ、美味しい」

 

 半分ほど飲み干したところで一息つき、自然とその言葉が出てきた。

 マスターは笑みを浮かべる。

 

「落ち着いた?」

「はい、ありがとうございます。本当に美味しいですね、このコーヒー。これじゃ缶コーヒーが泥水ですよ。新作ですか?」

「その通り。最近完成した豆を特殊な方法で抽出、更に手間暇かけて濃縮させた自慢の一品だ。店に出すとしたら限定品でだな」

「…………あの、値段は?」

「う〜む、四桁いくかな」

「ちょ……っ!」

 

 思わず目を剥く千雨。下手をすれば、中学生のお小遣いが吹っ飛ぶ値段だ。

 

「心配いりませんよ。試しに飲んでもらったという側面もありますから。揶揄われただけです」

 

 夏凜のフォローに胸を撫で下ろす。見ればマスターも悪戯っぽく微笑んでいた。

 

「ちょっと焦りましたよ。そういえばイヴさんに雪姫さん、茶々丸さんはどうしたんです?」

 

 この店にはもう三人メンバーがいる。

 

 マスターの奥さんだと言う金髪金眼の超絶美人、昔の武士のような儂口調がギャップを誘うイヴ。奥さんがいる筈のマスターと雰囲気が夫婦のソレな、尊大な言葉遣いに不遜な態度だけど実は凄い純情なのではと睨んでいる金髪碧眼のこれまた超絶美人な雪姫。そして何故か雪姫に対し従者然とした態度をとる夏凜と同レベルの美人、セバスチャンの称号が取れそうなくらい従者スキルがヤバい茶々丸。

 

 全員が全員、余裕でミスコン優勝できそうなハイレベル美人である。

 

「三人は休憩中さ。俺とカリンでも十分だからね」

「えーと、それってつまり……」

 

 店内を見渡してみる。

 ガラガラだ。閑古鳥が鳴きそうなくらい。

 

「客がいなくて暇ってことですよね?」

「そうなんだよ。千雨ちゃんみたいな常連さんのおかげで黒字だけど、やっぱり新しいお客さんも欲しいのも本音なんだ。なぁ千雨ちゃん、クラスメートで引っ張ってこれる子いない?」

「げっ、それ私に言います?」

「千雨の言う通りです、アー……マスター。千雨はコミュ障なのですから、それは酷というものかと」

「あ〜、つまり千雨ちゃんぼっち?」

「ぼっちいうな!!」

 

 間違いなく暖かい日常。麻帆良に来てから味わえなかったソレ。

 何の変哲もないこの日常は、異常に溢れるこの地での、千雨にとっての確かな幸せだった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 千雨が去った後の喫茶店『朱月』。

 お客もいないのでカウンター席に座っているマスター――アークライトが、カンっと靴底で床を鳴らす。

 途端、波紋が空間に広がり、この喫茶店内を外界より遮断した。

 

 そこまでして千雨といた時は穏やかだった表情が一変し、真剣味を帯びた鋭いものへと変わる。

 

「カリン、エヴァからの報告は?」

「はい。やはりかの英雄の息子が教師として麻帆良学園本校女子中等部に来ているのは間違いないようです」

「近右衛門から報らせが届いた時は耳を疑ったが、本当のようだな。しかし、あの阿呆の息子か。大方メガロの元老院の差し金だろうな」

「英雄の息子の村を襲撃し殺そうとしておいて、失敗すれば都合のいい英雄(傀儡)として利用しようとする。大戦から全く変わっていませんね。何より吸血鬼という理由だけで正当防衛しかしていない御三方に賞金をかけたばかりか、悪の代名詞のように吹聴し、自分たちこそが正義なのだと主張する。そんな愚かな国など必要でしょうか。いえ、害にしかなりません。いっそ消し飛ばしましょう。『槍』ならば別空間であろうと関係ありません。さぁ、あなたの罪を数えなさい――」

「はいはいストップ。さすがにそれはマズいから。やるとして元老院だけだから」

 

 何やら投擲の構えをとった夏凜をアークライトが鎮める。

 

「まぁともかく、暫くは様子見だな。父親と違って常識的な子らしいから、大丈夫だと思いたいが……」

「私たちを含め、この麻帆良に常識を求めるのはどうなのでしょうか」

「…………だよなぁ。取り敢えず、詳しくは全員が揃ってからだ」

 

 一度そう締め括り、三人の帰りを待つ。

 

 平穏が一番。そう感じてこの麻帆良に定住した。時折、侵入者の対処に呼ばれることはあるが、それでも今の平穏なアークライトが好きだった。

 

 だが、そんな平穏は脆くも崩れ去る。

 

『こちらエヴァンジェリン。アークライト、件の英雄の息子だが、初日に魔法を一般生徒に見られたらしいぞ』

「は……?」

『儂じゃ。付け加えて、初日の授業一発目で魔法障壁を展開したままで黒板消しを受け止めたという話じゃ』

「……」

『茶々丸です。まだ魔力の操作が未熟でくしゃみ一つで武装解除を発動させてしまうそうです。更にそれを教室で披露したと』

「うぼぁ」

 

 主に英雄の息子によって。

 

 

 

 




アークライト
相変わらずの超絶チート吸血鬼。UQで不滅と判明した造物主を普通に殺せる存在。ネギま世界ではアヴァロンが存在せず、一体の吸血鬼として暮らしているのでかなり気楽。その為、朱い月(笑)モードが常時発動ではない。でも時折唐突に発動するので黒歴史はもしかしたらセラフよりも濃いかもしれない。
当時吸血鬼に成り立てのエヴァと邂逅し、そのまま共に行動することに。エヴァの魔法の師匠。当初エヴァへの感情は娘に対するようなものだったのだが、エヴァの気持ち+キスショットの画策でヤられる。
この世界ではネギが起こす騒動に苦労させられたり、後始末に追われたりと苦労人ポジション。
でも途中でぶっ切れて裏ボスへジョブチェンジする。
メガロは問題外としているが、ヘラスとは昔の好で仲が良い。

キスショット
この世界でもアークライトの眷属。同じく造物主は楽勝。斬れば終わり。エヴァの体術の師匠。
エヴァのアークライトに対する気持ちにいち早く気づいており、色々アドバイスしてアタックさせた。元よりかなり寛容で器が大きいので、エヴァの気持ちを知っても永い時を共に過ごせる者が増えるのはいい事と思っていた。だが独占欲がない訳ではないので、あくまで一番は自分といった感じ。
懐が深く包容力があるので、エヴァにとっては母であり姉であり師であり恋敵と盛り沢山である。
ヘラスのテオドラとは仲が良い。どう見ても娘を見るような目つきだそうな。

エヴァンジェリン
原作ではかなり悲惨な過去持ちだが、早期にアークライト、キスショットと出会っているのでそうでもない。長年アークライトの血を飲んでいたのでほぼ眷属化しており、元の真祖の特性が塗り潰されている。その所為かポテンシャルが底上げしており、世界最強の二人に師事していたこともあって原作より戦闘能力200%増し。尚も成長の余地があり、アークライトという目標まであるので向上心もバリバリ。まだまだ発展途上。UQの頃には造物主を嬲り殺しにできるくらいになってる。最近では対アークライト用に二種の別属性最上級魔法を闇の魔法で取り込む技を開発中。
根は純情なのだがツンデレも持ち合わせており、素直に気持ちを伝えられなかったが、キスショットの後押しもあって吶喊。押し倒した。
大戦に色々とあり、テオドラとは親友の間柄である。
ちなみに生涯で一番嬉しかったのは、アークライトの眷属化した事による身体の成長の余地が出たこと。今やキスショットに匹敵するナイスバディである。

結城夏凛
本名イシュト・カリン・オーテ。六百年ほど前にエヴァにひょんな事から拾われた。以来、何度か別行動をとっていたものの、現在はウェイトレス。実はアークライト並に生きており、最初の頃は吸血鬼だという事もあってかなり複雑だった。しかし今は解決済み。アークライトたちとの仲も良好。
尚、何気に三人を除いての最強クラス。特に『槍』と呼ばれるアイテムを使用すれば、アークライトともまともに戦えるレベル。戦争を一撃で左右できる存在である。



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