冒険者の中で都市伝説のように広まっている、ある“噂”がある。
「“ナザリック地下大墳墓”?」
切り分けた丁度良い焼き加減の肉を、口の中に放り込んでガガーランは訪ねた。
「そうなの。まぁ、噂程度の物なんだけど。知ってる?」
「……あー、聞いたことはあるな。確か、“黄金の大墳墓”だっけか?」
ガガーランの言葉に、正面にいたラキュースが顔を綻ばせる。
隣に座っていたイビルアイが、嫌なものを見たかのように顔をしかめるのを見て、ガガーランは理解した。
やべぇ、地雷を踏んだ。と。
「む。先に食べてる」
「仕方ない。私達はじゃんけんで負けた」
そんな時、自分達のテーブルにやってきたのは、それぞれ赤と青を基調とした装備を着けたものがトレードマークのティナとティアだった。
彼女達はギルドの方で、何か良い依頼がないか探しに行っていたのだ。
双子である二人は同じようにヘソを曲げて、ぶつくさと呟く。
「それにしても、私達のは無い」
「ひどい扱い。これは争いの種」
「お前らの分もあるよ」
テーブルに備え付けられたベルを鳴らすと、従業員の一人がステーキを乗せた盆を二人前、持ってきた。
冷めては美味しくなくなるため、二人が来るまで保存してもらっていたのだ。
「流石筋肉、ムキムキは伊達じゃない」
「私は筋肉のことを信じていた」
「よーし、お前らの分は俺が喰ってやる」
ガガーランがそう言うと、二人は奪い取るかのように盆を受け取り、さっさと食べだした。
「――ねぇったら。ガガーラン、聞いてるの?」
「おーおー、聞いてるよ。それで、どうすんだ?」
そういえばラキュースの話がまだだったと、視線をラキュースに戻す。
彼女は不満そうにしていたが、ガガーランが謝るとすぐに機嫌を直した。
「だから、その“黄金の大墳墓”に行ってみようって」
「私は反対だ。そんな美味しい話、普通に考えて罠だろう」
「そう?でも本当だったらどうするの、冒険の宝物はいつでも不確かな物じゃない」
「そうは言うがな……」
どうやらイビルアイは反対らしい。
どうするか、と考えていると、ティアとティナの二人が口を開いた。
「“黄金の大墳墓”って何?」
「金銀財宝ざっくざく?」
「おぅ、実はな――」
“黄金の大墳墓”
とある草原にある大墳墓には、金銀財宝が見渡す限りに存在するらしい。
だが、それに至るまでには無理難題の数々があり、未だ到達出来たものは数名しかいないという。
「――というわけだ。どうだ?」
説明も終わり、二人の様子を見ると、目がキラキラと輝いていた。
どうやら、行く気満々らしい。
その事に気付いたのか、反対していたイビルアイも渋々といった様子で頷いた。
“都市伝説の検証”
彼女達アダマンタイト級冒険者、【蒼の薔薇】の今回の依頼は、それに決まった。
「何か、引っ掛かるんだがな……」
ぽつりとそう言うイビルアイの言葉は、周囲の喧騒に溶けていった。
◆
「“黄金の大墳墓”……?」
「知らないかい? ここに来たら教えてくれる人が居るって話なんだが」
王国より少し離れた場所、そこにある村落は、カルネ村という場所だった。
頑丈そうな外壁と【ゴブリン】の集団を見たとき、数瞬場所を間違えたかと思ったが、間違ってはいなかった。
【ゴブリン】と戦闘を開始するか否かというところで、ガガーランが今話しているエンリという少女が待ったを掛けたのだ。
「この村からそう離れていないらしいんだが……」
「……あぁ、なるほど。ナザリックのことかな?」
「聞いた言葉が出たな、知ってるのかい?」
エンリは少し考えて、口を開いた。
「えぇ、ここカルネ村と交友関係を結んでいるところです。確か、大墳墓という名前もあったかと」
「なるほど。……良ければ、道案内をしてくれないかい?道中の護衛なら任せてくれ」
「良いですよ。もう一人、あそこにいる妹のネムも一緒に良いですか?」
「おう。もちろんだ」
エンリの視線の先を見ると、ネムと呼ばれた少女はラキュースら四人と遊んでいた。
話がまとまったガガーランに気付いたのか、ラキュースがネムを抱き上げてこちらにくる。
「可愛らしい妹さんね!」
「ありがとうございます。ネムも、お礼を言ったの?」
「ありがとう、ラキュースさん!」
ネムの言葉に、ラキュースが弾けるような笑顔になった。
イビルアイによく構ってやるとは思ったが、やっぱり子供が好きなのだろうか。
「やばい、ロリに目覚めそう」
「私は既に目覚めてる、ティナはショタだけにして」
「お前達、仮に目覚めたとしたらすぐにいってくれ。全力で距離を開ける。物理的にも心の距離も」
「「BBAには興味ない」」
「よく言った。武器を構えろ」
馬鹿なやり取りをしてるのが数人いるが、放っておこう。
〰〰〰
「ここですね」
「……大、墳、墓?」
そこを見て最初に思った感想がそれだった。
どう見ても、城か何かにしか見えない。
墳墓という名前は、一体どこからきたのだろうか。
「そこの門が入口です。……誰か居ますね」
「ありゃぁ……、なんだっけ、忘れた」
「知ってる。“フォーサイト”、“天武”」
「ワーカー稼業では、それなりに有名」
そう話していると、こちらに気付いたのか、二つのチームの代表らしい二人がこちらへと来る。
エンリとネムを他に任せ、ラキュースとガガーランは数歩前に出た。
「よぉ、【蒼の薔薇】さん。アンタ等も黄金目当てかい?」
「えぇ。冒険者として、財宝を探すのは当然のことでしょう?」
「はっ、そんなことしなくたって稼いでんだろ?まだ金が欲しいのかよ」
「あら、【フォーサイト】だって最近は名が売れてるじゃない。相当稼いでるんじゃないの?」
「俺らの稼ぎなんか、お前等からすれば小遣いみたいなもんだよ」
茶化すように言う【フォーサイト】リーダー、ヘッケランに、ラキュースは軽くおどけてみせた。
「初めまして、【蒼の薔薇】のラキュースさんですよね。お噂はかねがね聞いております」
「あら、【天武】のエルヤーさんだって、噂は色々聞いておりますわ」
「おやおや、僕のような者の情報も知っているとは、流石はアダマンタイト級ですね」
「情報が武器となるのは、冒険者なら常識でしょう。天才と称されるエルヤーさんだって、それは知ってますでしょう?」
紳士的に、好青年をイメージさせるエルヤーだったが、ラキュースの中では一番警戒してる男だった。
ワーカーという荒くれ者稼業の世界において、“非道”というジャンルなら彼ほどの人間はいない。
ガガーランも勘づいたのか、ピリッとした空気を漂わせていた。
「――皆さま、先程から門前でお話し中ですが、何か御用で御座いますか?」
突然の話し声に、ラキュースは心臓が止まるかと思った。
振り向くと、メイド服を着た女性が数名立っている。
皆が皆それぞれ美形であり、よく美人だと言われるラキュースだが、彼女達には敵わないと素直に思った。
「――おぅ、お姉ちゃん。ここがナザリックって場所かい?」
ヘッケランが、単刀直入にそう言った。
すると、メイドは思わず魅入るほどの綺麗なお辞儀をして言う。
「お客様でしたか。――いらっしゃいませ、本日は【アミューズメントパーク・ナザリック】にようこそいらっしゃいました」
メイドの声に合わせて、重厚な門扉が、音を立てて開いていく。
門の上に据えられた杯に、蒼い炎が音を立てて灯った。
「それでは皆さま。中へとお入り下さいませ」
〰〰〰
「え、えと、シクススさん。私たちも入って大丈夫でしょうか」
「エンリ様!ネム様まで……。申し訳ありません。現在やまいこ様方は外出中でして、お会いできないのですが」
「あ、そうですか。なら、また今度――」
日を改めて来ます。と言おうとしたところで、ネムが口を開いた。
「シクススさん、アミューズメントパークってなぁに?」
「はい。るし★ふぁー様が考案された、各種ゲームを行ってゲームクリアを目指すシステムの事です」
「わー、面白そう!」
「冒険者用に作ったものなので、お二人に出来るかどうかは……」
そこまで言ったところで、シクススが頭に手を当てた。そして、何も無い場所へペコペコしたかと思うと、こちらへと向いた。
「モモンガ様から、お二人を入れるよう承りました。こちらへどうぞ」
もしかして何処からか見てるのか、と上空を見渡したが、白い雲以外何もなかった。
◆
「……、何処だ。ここ」
扉に入ると、薄暗い見知らぬ場所へと来ていた。周囲を見ると、【蒼の薔薇】以外誰もいない。
「多分、転移トラップ」
「警戒して」
ティアとティナが即座に武器を構えるのを見て、三人にも緊張が走った。
周囲を見ると、闇に目がなれて来たのか、自分達がどんな場所に居るのか理解できる。
「なんだここは、王宮の通路か……?」
不思議そうにイビルアイが呟いたとき、一気に照明が点いた。
急だったため目の前が眩むが、すぐに回復したラキュースが声を上げる。
「見て、何か天井から出てる」
指差した場所には、一枚の石板が出ていた。数秒して、大きな音楽と共に文字が表示される。
『【アミューズメントパーク・ナザリック】へようこそ!今日は、楽しくて仕方がないくらい楽しんでいってね!』
ピッ、ピッという音と共に、石板の文字が変化していく。
『まずは、ルール説明だYO★これを見逃すと、大変なことになっちゃうから、ちゃあんと見ててね!』
『ルールは簡単。これからここの通路をひたすら走ってもらいます。時間は無制限!お邪魔キャラが出てくるから、早く逃げないと大変だZO★』
「「「………………」」」
途中途中で出てくる馬鹿にしたような表示にイラッとしながらも、一同は石板に目を通す。
『そして、これが重要!このナザリックの中にあるものは、許可が下りた物以外は壊したり、殺さないでね!もしルール違反が起きた場合は、処理班が出動します』
『さぁ。それでは、宝物目指してレッツGO!』
その瞬間。
四人の後ろの方から、カサカサと音を立てて出てきたモノがいた。
「――ッ?!」
「なっ……?!」
「うげぇ?!」
「ひぃぃ?!」
「ぅお?!」
普段アダマンタイト級冒険者として数々の強敵と戦い、まさに怖いもの知らずの彼女達だったが、ソイツは対象外だった。
黒光りする体、生理的に無理な足音、――そしてその巨体。
「デカすぎでしょ、あのゴキブリぃ?!」
「人よりデカイ!蕁麻疹でそう!」
ラキュース達はそう叫んで、一気に走り出した。
それに続く三人だったが、イビルアイが動かない。それどころか、魔法でも使うつもりか、何か口に手を当て集中している。
ガガーランは急いでイビルアイへと駆け寄った。
「よせ、イビルアイ、何するつもりだ!」
「私には蟲関係に絶大な効果を持つ魔法がある、それを――」
「バカ野郎、石板に書いてあったことを忘れたか!」
“処理班”
その言葉が、イビルアイの中で警鐘を鳴らした。
「俺たちを知らない間に転移トラップにはめれる連中だ。もしそれが本当なら、本気でヤバイぞ!」
「……くっ!」
踏ん切りがついたのか、イビルアイも猛ダッシュで走り出す。
先に行った三人に追い付いたのは、すぐの事だった。
『問題。これから出す魔法アイテムを使用しなさい』
「えぇーと、これはこうで」
「早く、鬼リーダー!」
「ヤバイ、絶体絶命!」
先程と同じような石板に記された内容をこなしている。見れば、町中で高価な値段で売ってある魔法アイテムだった。
「貸せ、私がやる!」
知っているのか、イビルアイが奪い取るとすぐさま起動させた。
それに反応し、石板からチャイムがなると、塞がれていた通路の壁が開く。
「ありがとうイビルアイ、今あなたは最高に輝いてるわ!」
「イビルアイ、マジパネェ」
「天使、天使!」
「そうかい、さっさと行くぞ!」
カサカサと嫌な気配を感じ、次の壁を目指して走る。百メートル程先の方に、同じように壁が出来ていた。
『問題、これから出てくる藁束を、武技を使用して破壊せよ』
足元のブロックが数枚外れ、藁束が出てきた。
これは自分の役目だと、ガガーランが前に出る。
「行くぜぇ!武技【剛撃】!」
ガガーランの持つウォーピックが振り回され、けたたましい音を立てて藁束が破壊された。
すると石板に『特別ボーナス!』と表示され、通路脇の壁から数個のコップがせりでてきた。
手に取るとひんやりと丁度良く冷えており、立ち上る香りは柑橘類のものだった。
「……これ、飲んで良いのか?」
警戒心からくるそれに、ガガーランは周囲に訪ねた。
「うまい。もう一杯」
「要らないなら貰う」
「早いな?!もうちょっと警戒しろよ……、うまっ!」
ふぅー、と全員が飲み干し、元の位置へと戻す。
このゲームのやり方を理解した全員が顔を見合わせた。
「取り敢えず、アイツから逃げながら問題をこなしていくという訳ね」
「そうだろうな……、だが、これは明らかに何者かの策略だ。用心はしておこう」
「そうだな。……さて、行くか!」
懐に仕舞っている【ポーション】の本数を確認して、【蒼の薔薇】は走り出した。
◆
「ここはなんだ。……闘技場か?」
【フォーサイト】リーダー、ヘッケランは、周囲を見て呟いた。
暗い通路が続いた先に、外への明かりが見える。ここからでも聞こえる喧騒に、眉をひそめた。
「多分、何かある。警戒しろ」
ヘッケランの言葉に同じ【フォーサイト】の面々、ロバーデイク、アルシェ、イミーナがコクりと頷いた。
ゆっくりと進んでいくと、その闘技場の全貌が明らかになった。
目の前に広がる地面には、四点のポイントを結ぶ大きな四角形の線。
その奥の観覧席だと思われる壁には、数字が書かれていた。
そして、自分達を待ち構えるように立っている数名の人間。
ヘッケラン達全員が入ると、会場に歓声が沸いた。
『さあ、始まりました!【ナザリック・べいすぼうる・クラシック】。今回の相手出場選手は、外部から来た冒険者四名!』
声と共に、ヘッケラン達全員を包むようなライトが、ドラムロールと共に照らされた。
『対するナザリックからは、我等が至高の方々、建御雷様、ペロロンチーノ様、タブラ様、ヘロヘロ様です!実況放送はこの私、アウラと、抉れ胸に定評のあるシャルティアでお送りします!』
誰が抉れ胸だゴラァ!と、聞こえてくるが、ヘッケラン達は目の前の人間に釘付けになっていた。
正直に思ったのは、次元が違う、と感じたことだ。
転移トラップにせよ、この状況にせよ、圧倒的な力と能力を持つ者にしかできない技だ。
「ゲームをする前に、お前達の願いを聞こう」
ペロロンチーノと呼ばれた男が、ヘッケランに向かってそう言った。
言わないと始まらないと感じ、正直に言う。
「俺達は、このナザリックにあるという財宝を狙いに来ました」
「なるほど、金か……。さて、挑戦者。この【べいすぼうる】で俺達に勝てれば、それは叶う、約束しよう」
「……負けた、場合は?」
「おいおい、始まる前から負ける心配か?つまらないな……。別に殺したりはしない、それは約束しよう、それ以上はダメだ」
死にはしないが、とんでもない目に遭うということだろうか。
では始めよう、とペロロンチーノが言うと、会場からファンファーレが鳴り響いた。
奥の巨大な掲示板のような物に、“一回表”と表示される。
訳が分からないでいると、ピッチャーのヘロヘロが言った。
「これから私がそこに座っている者にこのボールを投げる。これを君達は打ち返し、あの奥にある数字が書かれたボードへと叩き込んでくれ」
「ま、待ってくれ。こっちには女性も居るんだ、ハンデをくれないか?」
「バットは魔力、または武技系統の力を込めればその分強く振れるが……、仕方ないな。おい、アウラ、向こうに点数を50点追加してくれ」
ヘロヘロのその言葉に、会場に拍手喝采が起こった。
『おぉっとぉ!ここでナザリックチーム、ハンデを与えたぁ!至高の方々、余裕がありすぎだぁ!』
『歴然とした力の差でありんすね、これでも足りないでありんせんか?』
『なるほど、それもそうか。早く勝負が着いたら、面白くないもんね』
『そうでありんす。……まぁ、弱いのが頑張ったところで、結果は見えてるでありんすけど』
その実況を聞きながら、ヘッケランはバッターボックスと呼ばれたところへ入る。
ヘロヘロがマウンドで構えると、大振りで腕を振った。
「ストラーイク!」
「へ?」
後ろに座っていた者が着用しているグローブに音が鳴ると同時に、審判が声を上げた。
間抜けな声を上げて見ると、先程までピッチャーが持っていたボールがグローブに収まっている。
「どうした、もうゲームは始まっているぞ」
「……ぐぅっ!」
掲示板のカウントが一つ点灯したのを見て、後猶予が二つしかないと分かる。
「(良く見ろ、ボールに思いきり当てれば飛ぶ筈だ!)」
ヘロヘロが投球フォームに入る。
タイミングを合わせ、思いきり振った――が、当たらない。
ツーストライッ!と審判から声が上がり、ヘッケランは焦る。
結局打てることは出来ず、続くイミーナもアウトとなった。
「(……そうよ。こっちは50点もハンデがある。ギリギリを投げて、飛ばされないようにすれば……)」
一回裏、ピッチャーはアルシェだ。
魔力を込めれば威力が上がると聞いて、アルシェ自身が立候補した。
優秀な魔術師であるアルシェの提案に、他の【フォーサイト】メンバーも快く頷いたのだ。
投球フォームを構え、捕手へと思いきり投げ付ける。魔力を込めれば威力が上がるというのは本当のことで、その球速は中々のものだった。
例え化物染みた力を持っていようと、向こうの攻めを抑えれば勝てる筈だ。
「(よし、行け――)」
カァン、と。
木製の何かを打ち付ける音がすると同時に、掲示板の得点ボードへとボールが叩き付けられた。
外野にいたイミーナが、何が起こったか分からない様子で目を見開いている。
「あ、5点かぁ。もう少し左だったな」
「チャンスですね、僕が一歩リードさせてもらいますよ!」
和気藹々とやり取りをしている彼らを見て、アルシェの中で何かが砕けそうになる。
ダメだ、話にならない。
この先の展開を考えた上で、かなりの魔力を込めたボールを軽々と打ち返されたのだ、もう他に武器はない。
踏ん張って落ち込みたくなるのを我慢するが、次の一言でそれも終わった。
「さーて、さっきの球じゃ遅すぎるな。もう少し早く投げてくれ」
こちらを気遣うように言われた要求に、今度こそアルシェの中で何かが砕けた。