なざなざなざりっく!   作:プロインパクト

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おっちょこちょい~カルネ村編~3

「あ、ぁぁあ。どうしよぅ……」

 

 

先ほどまでの剣幕はどこに行ったか、エンリとネムは目の前でオロオロとするやまいこをただ見ていた。

 

 

兵士との戦闘を終え、一段落してふと我に帰ったやまいこは、重大なミスに気付いた。

 

 

「【無限の背負い袋】持ってきてない……ッ?!」

 

 

そう、助けに来たのに丸腰だったのだ。

そして、それが無い以上【ポーション】などで傷の手当ても出来ない。

 

これ以上ない間抜けな惨状に、やまいこはただオロオロと右往左往するしかなかった。

 

 

 

 

「お嬢ちゃん、お探しの物はこれかい?」

 

いっそナザリックに二人とも連れていこう、そうしよう。と【ゲート】を起動させようとすると、横から声を掛けられた。

 

声と共にやまいこに差し出されたのは、紛れもなく彼女の【無限の背負い袋】だった。

おぉ、と歓喜するやまいこだったが、差出人の顔を見て真っ青に染まった。

 

 

「ぶっ、ぶくぶく茶釜さん……」

「言いたいこと、分かるかな?」

 

 

にこにこと笑顔で対応したのは、【変化の腕輪】で変身したぶくぶく茶釜の姿だった。

突然現れたもう一人の女性に、エンリとネムは「誰だろう」程度の認識だったが、やまいこは違った。

 

 

「あ、あのぅ。……怒ってます?」

「あぁん?!」

「ひぃぃ?!」

 

ドスの効いた声と共に、ぶくぶく茶釜の態度が一変した。両手でやまいこの顔をガシリと掴むと、そのまま頬っぺたをムニムニと力強く捏ねまくる。

 

「あの時、私は、待ってって、言ったでしょ‼」

「で、でも、それじゃ間に合わな――」

「問答無用ぉ‼」

 

ある程度捏ねると、気がすんだのかぶくぶく茶釜は手を離した。

そのままエンリへと近付くと、一本の【ポーション】を差し出す。

 

「はい。これで充分治るから、使って」

「は、はい」

 

始めてみる赤い色のポーションに、エンリは一瞬飲むのを躊躇ったが、助けてくれた恩人(の仲間)から貰ったのだ、意を決して飲んだ。

 

 

「……うん、大丈夫そうだね」

 

傷が治ったのを確認すると、やまいこはエンリとネムに微笑んだ。

一通りお礼も言って、安心したのも束の間、エンリは失礼を承知で言った。

 

 

 

「あの、村の方にも他の兵士が居ると思うんです。助けてくれませんか?」

 

「良いよ、元からそのつもりだしね。良いでしょ、茶釜さん」

「そうだね。モモンガさんにも連絡入れてるし、多分こっちの様子見てると思うよ」

 

 

 

そう言ってぶくぶく茶釜は視線を空へと送る。エンリも同じように見上げたが、特に変わったものは無かった。

 

「さて、それじゃ村の方へと案内してくれる?」

 

ぶくぶく茶釜のその言葉に、エンリは頷いた。

 

 

「……良かった。無事なようだな」

 

 

第9階層、執務室。そこには部屋の広さに比べて、かなりの人数が入っていた。

 

 

「モモンガ様、すぐにでも私ども守護者を送り込み、御二方に帰還して貰うべきでございます」

 

 

モモンガに対してそう言ったのはデミウルゴスだ。冷静なように見えるが、【遠隔視の鏡】に写る兵士へと、分かりやすい敵意を放っている。

デミウルゴスのその言葉に、同席している他の守護者も頷いた。二人を連れ戻し、代わりに自分を行かせろと、態度が語っている。

 

 

 

「先ほど、茶釜さんから連絡があった。村の方へと赴き、問題解決まで滞在するようだ」

 

「そのようなこと――」

 

「なら、お前にあの二人を止められるか?」

 

 

デミウルゴスが言う前に、椅子に座って腕組みをしているウルベルトが、そう言った。

何かを迷うような態度のデミウルゴスに、続けて言う。

 

「あの二人ならば大丈夫だ。茶釜さんは防御特化、やまいこさんは突破力も充分ある。それに、こうして観測もしている。事が動けば、お前達を送り込むとしよう」

 

 

それまで待て。とウルベルトは締めた。その言葉に守護者は納得できていないのも居るが、頭を下げ了解の意を取る。

 

 

 

「それにしても、あの兵士達の出所は何処なんですかね」

「この辺りの三大国のいずれかでしょうけど……。正直、この村を襲うメリットが無いですからね」

「ふむ。これからの出方次第ということですか」

「そうですね。……ペロロンチーノさん、タブラさん、たっちさん、ウルベルトさん。もしもの為に、戦闘準備しといて貰って良いですか?」

 

モモンガの言葉に、呼ばれた数人が頷いた。

 

 

 

呼ばれなかった者の一人、ブループラネットが手を上げた。

 

「私たちはどうすれば?」

「この村からナザリックは近いので、もしもの時のために各階層守護者と連携して、防衛レベルを最大限に上げておく段取りをしてもらえますか」

「分かりました。……ギミックはどうします?」

「それは相手の実力次第で決めましょう。先ほど程度なら、充分勝てる筈です」

 

 

分かりました。とブループラネット他、数名が声を上げた。

貧乏性が多い【アインズ・ウール・ゴウン】は、折角各階層にギミック組み込んだにも関わらず、わざわざ出向いて相手することが多い。

まぁ、資源がバカにならないという理由が主なのだが。

 

 

「……おや、村の外に怪しげな集団が」

【遠隔視の鏡】を覗いていたタブラが、一点に指差して言った。

モモンガが操作すると、鎧と法衣を合わせたかのような装備の集団が、村の様子を覗くように森に隠れていた。

 

「黒幕かな」

「うーん、兵士達の装備と全く違うけどなぁ」

「偽装の線もありますよ」

「あ、そっか。ならそうなのか?」

「俺が狙撃しましょうか?」

 

イタズラするノリで、ペロロンチーノがそう言った。

弓での攻撃を得意とする彼なら造作もないことだが、それは決断が早すぎる。

 

「待ちましょう。まだ不安要素が多いですから」

「了解でーす」

 

 

さて、次はどうでる?

 

 

仲間の安全を確実な物にするため、モモンガは【遠隔視の鏡】を操作した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ていうか、やまいこさんの人間の姿。ユリにそっくりですね」

「茶釜さんはルプスレギナかな?」

「……変化の見た目、ナザリックの者から選びましょうか」

「そうですね。少し弄れば充分使えると思います。皆美男美女だし」

 

「「「「「?!」」」」」

 

至高の方々に自分の容姿を使ってもらえる。

その情報に、ナザリックで仁義無き戦いが勃発するが、また別の話。

 

 

 

 

 

 


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