ボクは、教師という職に就いていることに充実していた。
確かに、授業を聞かない反抗期真っ盛りの子供や、
問題児ならぬ問題親、モンスターペアレントだっている。
日々ストレスとの戦いで、元々言いたいこともはっきりと言えない性格も相まって、イライラを溜め込むこともあった。
だが、それでも子供と接することは楽しかったし、やりがいもあった。
怖いもの知らずで、言いたいことをズケズケ言ったりする子供も好きだ。
反抗期の子供だって、大人になるための自立する用意だとも言える。
モンスターペアレントと呼ばれる人たちも、自分の子供なんだ、大切にするに決まってる。
だから、そんな子供達が大人になっていく段階を見ていける教師という仕事に、ボクは誇りを持っていた。
だからこそ、今ボクがこうして彼女達をを庇っているのも、ボクは間違っているとは少しも思っていないし、言わせない。
◆
「ひ、怯むな、ぶっ殺せ!」
隣に居た相棒が、剣を振り上げて黒髪の女に突撃した。
見た目が異様だから多少怯みはしたが、所詮は女、すぐに片はつく。
――そう、思っていた。
ゴパッ、という音と共に、何かが俺の隣を目にも止まらぬスピードで通過した。
視線を送ると、遥か数十メートル先で、見覚えある鎧を着たナニカが、グシャグシャになりながらバウンドし、更に吹っ飛んでいたところだった。
「……ステータスが結構下がるから、割りと本気で殴ったけど……。まぁ、別に良いか」
拳をグーパーしながらブツブツ呟いていた女が、俺の方を見た。
それだけで、身体に冷や水をぶっかけられたみたいに冷え上がる、足の感覚が希薄になり、自分が今立っているかどうか、それすらも確認できないくらい震えていた。
「さて、次は君の番だね」
女が、この場の空気に合わない笑みを浮かべながら、こちらへとゆっくり近付いてくる。
「た、頼む……っ、見逃してくれ‼」
女は一瞬きょとんとした顔をした後、軽く笑って言った。
「君は、そう言って助けを求める人に、少しでも慈悲を与えたかな?」
「そ、そうだ。与えた、与えたとも‼」
「へぇ、ヘラヘラ笑いながら殺してたのは、慈悲を掛けた結果なんだ。ならさ……」
自分達の行いが知られ、兵士は後がなくなったことを理解した。
兵士の心境が分かったのか、女はにこりと微笑んで言った。
「“郷に入りては郷に従え”ボクの国の言葉なんだけどね、それを実行しよう」
「や、やめ――」
言葉はそこまでしか語られず、腹部に絶命の一撃を受けて、兵士の身体はゴムボールのように吹き飛んだ。
「まだまだスッキリしないけど……。まぁ、取り敢えずは良いか」
鉄拳制裁。
体罰教育という、PTAやら教育委員会が物申しそうな特別授業は、彼女、やまいこの鉄拳で幕を閉じた。
【変化の腕輪】
課金アイテム。異業種のみ装備可能、ステータスのみ少し下がるが、人間に変化できる。
ユグドラシル時代、異業種PKへの対抗策として出されたアイテム。特に意味が無いので、すぐにゴミレアとしてランクインされた。