艦娘?いいえ、不良品です。   作:バイオレンスチビ

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お艦鳳翔 母の温もり

ぱたぱたぱたぱた

「どうしたの!?」

 

部屋のなかには

パジャマのズボンを必死に守る友鶴と

何故か手にオムツを持ち、

友鶴のズボンを下ろそうとする雷と

必死にそれを止める時雨の姿。

 

「どういう状況!?」

 

「鳳翔さん!

助けて下さい!!」

 

事情説明中

 

 

 

「んで、雷にオムツ履かされそうになったと(クスクス」

ロリお艦恐るべし。

「グスッはい…。

って笑い事じゃないんですよ!?

何が悲しくてこの年でオムツ履かなきゃなんですか!?」

 

「その外見で言われてもね?」

 

「見かけで判断してはいけません!!」

体格こそ中1成り立て見たいなものだが、

身長は雷達より頭一個分小さい。

人間の頃も小さかったが、

これでも一応高校一年生だったんだよ!!

 

「ふふふ、

でもまぁ時雨ちゃんだって

雷ちゃんだって心配して来てくれて

看病してくれた上に

明石さんまで呼んでくれたのでしょう?

良かったじゃない?」

 

「そうですね…。

ご免なさい。

時雨ちゃん,雷ちゃん。

心配をおかけしました。」

 

「何で謝るの?」

 

「こんな私の為に貴女方の貴重な時間を割かせ

手間を掛けさせたのです

醜い身体までさら「もっと私に頼って良いのよ!

いつもいつも<こんな私>とか言っちゃて

そんなんじゃダメよ!!」…。」

「僕も同感だ。

君の過去に何があったかも知らないけど、

君はよく自分を不良品って貶す。

もっと自分を誇って良いと思うよ」

 

「だめです。

私の罪は誰よりも深い。

確かに私は、過去に囚われていると言えるのでしょう。

でもね、私は自分が嫌いなんですよ。

罪から逃げて弱い自分から逃げて、

それでも明日を夢見てしまう。

罪は消えず何も護れず、

”あの日々“の幻覚に引きずられ

皆さま方に迷惑をかけることしかできない。

私は、不良品です。

人間達のオモチャ。人形です。

人間でもない。艦娘でもない。

『被験者No.2

千鳥型水雷艇友鶴と思われる艤装を授けられた少女』

でしかないんです。

所詮は贋作…ニセモノです。

そんなゴミのような自分を

憎み嫌い蔑む。

そうすることで生きてきたんですから。」

……。

静寂。

「そうするしかなかったの?」

 

「…。はい。」

 

「貴女は、ニセモノなんかじゃない!!」

「いいや、ただのニセモノなんですよ。

この傷が証拠。

入渠しても痕は残ってしまう。

まぁ、毎日殴られて蹴られての生活だったから

だんだん痛覚も鈍くなってしまいましたが」

確かに私は、本物に近い方だ。

真鶴なんかは、

痛覚がなくて痛みを感じる事さえない。

自分の損傷具合も把握しずらく、

本人より僚艦が慌てることが多い。

千鳥は、四肢の欠陥のことと

夢遊病と幻覚症状に悩まれている。

初雁は…。

 

「それでもね、

生きたいって思うんですよ。

こんな身体、

早くおさらばすれば良いのにね。

消えたくないって思うんですよ。

何ででしょうね?」

溢れだした涙が止まらない。

「貴女が生きてるからでしょう。

生きてる人に艦娘に

二人も同じ存在はいないんです!!

貴女はニセモノなんかじゃない‼」

 

はじめて感じた人の温かさ

 

殴られて蹴られての生活を送ることがないという安心感

 

いろんな思いがごちゃごちゃになって、

涙が止まらない。

 

私の意識は暗転した。


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