「この机って…」
どこから見ても学校で使うものですよね?鎮守府って軍事施設であって教育施設じゃないですよね。
「あぁ、ごめんごめん。手前にあってすぐに出せそうだったからさ。」
まぁ、小中学生でも運べるものですからね。
「裏に“タカシ君”とか書いてあるんですが…。」
タカシ君って誰なんですか…。ええっと、これはどういう?どこから出してきたんですか。
「あ、本当だ。誰なんだろうね。」
“古い鎮守府の中には学校や病院を転用していることがある。学校や病院といった場所は総じて生死問わず多くの人々を集める場所であり、我々も気を付けねばならないのかもしれない。彼らの方へ引き込まれないように。”
…い、嫌なタイミングで青葉さんが毎年出す【夏の海軍心霊特集号】の内容を思い出してしまいました。
「たぶん、使い回してるから仕方ないんだよね。ほら、廃校になったりすると椅子や机が余るでしょ?よく言えばエコ。悪く言えば貧乏性なんだけどさ。海軍としては、中古で揃えた方が安上がりだと思ったらしいよ。」
なるほど。確かに駆逐艦娘の皆さんや私みたいに小柄な艦娘にはピッタリかもしれませんが…。
「あとは、たぶん先任さんの趣味じゃないかなぁ。この鎮守府も古いからね。いろんな理由で頭がすげ替えられたり中身ごと一新されたりしてるのよ。」
…い、嫌なことを聞きました。それって要するに事故物件ってことですよね。“いろんな”って“そういうこと”ですよね。実際襲撃されて大ケガしたこともありますが怖いことを聞きました。
「はい、これは榛名の机に。こっちは比叡の机にお願いね。」
羊羮で雇われた妖精さんたちが書類を運ぶ姿は可愛らしいのですが、そろそろ日付スタンプを押し込む右手が震えてきました。
でも、向こうで「ワン、ツー!」と「ダイジョブデス。」を淀んだ目でリズムよく繰り返してる二人や「時間と場所を考えなよ…」と呟きながら不可の判子を押してる金剛さん。そして、軽口を叩きながらも目を血走らせながら筆記する提督に山盛りの書類を運び込んでくる大淀さん。…うん、まだまだ私は元気です。
「誰、こんなに遠征に出したの?…私じゃん!」
私も早く“タカシ君”から解放されるように頑張ります。確かに大変な仕事です。でも、正直なところ呼んでもらえて私は凄く嬉しいのです。こんな私でも皆の役に立ててるってことを実感できますから。
「そろそろ休憩にしませんか?」
「あれ、お母さん?」
…なるほど、お昼の時間でしたか。
「うん、そうしよう。ごめんよ、付き合わせてしまって。さっき渡した間宮券、置いていかないでよ?」
これで超高速お餅つき状態にあった金剛さん達も休めるはずです。
「あぁ、それと鳳翔さん。」
「なんですか?」
「…夜食の準備もお願いします。」
…午後は他の人を呼ぶらしいですが、病み上がりなので無理しないでください!