「なんだ、誤解だったのでありますか。」
あぁ、よかった。よかったのであります。あの三笠様のお姉さまに何かあったとなれば軍の内部に嵐が吹き荒れることになったでありましょう。
「そうですよ。どうしたらそんなに物騒な誤解をするんですか。まったく、青葉はビックリしましたよ。」
鎮守府の青葉さんは情報通なことが多いものでありますが、今回の鎮守府でも情報に強いみたいで助かったのであります。
「ご協力、感謝であります。」
間宮スペシャルは懐には痛い一撃でありますが、この辺りは経費が降りるでありましょう。
「いえいえ、あきつ丸さんもお勤めご苦労様です。また面白い話を聞かせてくださいね。」
夜警をしているときの怖い話って需要がそんなにあるとは思えないのでありますが…。あぁ、夏の特別号なんかに使うのでありましょうか。海軍怪談集みたいな感じで。
「提督は、現在お会いになることができませんので代理として大淀が書類を受けとります。」
「秘書艦の金剛デース!よろしくお願いしますネー!」
怖いくらい手を震えさせながら書類の確認をする同僚殿。査察する側がビビってどうするんでありますか?まったく、そういう態度だから出世できないのであります。臆病であることは戦場で大切なことでありますが、時と場合によるものであります。
「失礼。このあきつ丸が代読させていただくのであります。」
『基本的には問題なしであります。されど、過大な業務を押し付けられているようにも思われるところであります。この点については、こちらから話をつけに行くので心配無用であります。』
「つまり、この鎮守府には問題がない。あるとしたら、仕事を押し付けすぎた上の人間であると?」
眼鏡を持ち上げながら訪ねる大淀さんと無言で腕を組む金剛さん。
「その通りであります。その他には特に指摘すべきと感じることはなかったので、詳しくはその書類に記載してあります。ああ、あと提督によろしくお願いするのであります。」
ボロが出るタイミングとして多いのは査察に来た人間が帰ろうとするとき。きっと、気が抜けてしまうのでありましょう。そして、そのタイミングで提督殿は倒れてしまったのであります。自分達がプレッシャーを与えてしまったという面も否定はしきれないものでありますから、とても申し訳のない気持ちになってしまったものであります。
「はい、確かに受けとりました。」
「では、これからも武運長久を祈っているであります。」
「えぇ、これからもお互い頑張っていきましょう。」
揃って敬礼。回れ右で退室。慣れた流れであります。