「はい、はい…。」
電話をしながら頭を下げる。今回、騒動が大きくなったのは下手人の言うことを信じて艦娘達を下げた私にも問題があると向こうは言うのだ。
「ええ、その事は本当に申し訳ないと思っています。」
それが本気なのかどうかは問題ではなく、彼等にしてみれば誰かに責任を押し付けたい。自分の権力闘争において不利になるようなことは避けたい。そんな思いから私を叱責しているのだろうと思う。
「はい、それでは…。」
始末書。…始末書かぁ。昔はよく無鉄砲なことをして書かされたものですわ。食後の運動にバレーボールをしていたら窓ガラスを突き破ったとか艤装を展開した状態で振り返って近くにいた明石の後頭部を強打して入渠させることになったとか…。
ガチャンッ
「あぁ、耳がガンガンする…。」
そんなに怒鳴らなくたって聞こえる。わかってますよ。今回、私が動けていたなら犠牲者の数だって減ったかもしれない。今とは違った展開になっていたかもしれない。しかし、そうならなかった。タラレバの話をしたところで現実は変わらない。私が殺したようなものだ。
「提督ぅ…?」
「ごめんごめん。金剛、心配しないで?ちょっと怒られちゃっただけだから。」
金剛が心配そうにこっちを見ていた。いけないな。それはいけない。私は提督なんだ。
「さて、金剛。これから忙しくなるよ?」
この辺りでは私の鎮守府が一番大きい。保有する戦力も大きいし、少し古いけど設備も整っている。
「この辺の海域を哨戒する任務が下った。…つまり、壊滅した大本営の艦隊が建て直されるまで部分的でいいから代役をしろというわけだ。」
とはいえ、大本営は文字通りに大きいので人員の補充は結構早く終わると思われる。それに、任された範囲もギリギリ許容範囲内だ。
「oh…それって、提督の仕事なの?」
「あと、査察を受けろと言われたね。」
かなり忙しくなりそうだ。痛くもない腹を探られるのは気に入らないが、それで気がすむのなら好きなだけ見ていけばいいさ。
「あぁ、後で明石に高い茶葉でも差し入れておこうかなぁ。」
「大丈夫デース。私も一緒に謝りマース!」
私は椅子に座っていればいいけれど、明石はメンテナンスしたり修理したり色々と仕事が多い。大淀もそうだけど、頑張りすぎじゃないかと時々心配になってしまう。
「さて、準備にかかるとしようか!」
駆逐艦や軽巡洋艦、軽空母を中心に哨戒のための艦隊を編成して。航空機の整備をしながら基地航空隊を編成して。資材が足りなくなりそうだから遠征用の艦隊も編成して。敵の本丸を叩きにいく大本営への手伝いとして装備の貸し出しを許可する書類を書いて。資材の貸し出しを許可する書類を書いて。…貸し出しを強引に迫られたってのも気に入らないのだが、文句をいっても深海棲艦は減らない。査察に向けて整理整頓して掃除をして…。
「なんか、嫌になってきた。」
「oh…。」