「あら、国後ちゃん?こんばんは。」
国後さんってあまり聞かない名前ですが、新入りさんでしょうか?
「こんばんは、鳳翔さん。」
入ってきたのは私と同じくらいの小柄な艦娘さん。となると、駆逐艦か軽空母って感じ…いや、水雷艇の可能性も捨てきれません。
「ん、国後か。」
そういいながら敬礼する若葉ちゃん。…どうして敬礼してるんでしょう。研究所で受けた授業で艦娘同士で敬礼をすることはあまりないと聞いたのですが。
「あ、若葉さん。」
若葉ちゃんに笑顔で答礼する国後さん。…国後さん、国後さん?どこかで聞いたことがあるような気がするのですが思い出せません。
「ふ、ふふふ…我、国後なり。海防艦ですよ。」
海防艦っていうと船団護衛の時にお世話になった記憶があります。
「えっと、海防艦ってことは…元戦艦ですか?」
そういえば提督が言ってました。実は昔やったことがあるって。古くなってしまった主力艦の就職先の1つだとか…。
「えっと、どうしてそうなったの?」
長門さんがいってたポケット戦艦ってタイプでしょうか。とても気になってるっていってましたし…。
「いや、でも常盤さんとか…。」
え、違うんですか?
「国後達は海防艦として建造された海防艦だ。だから軍艦だったことはあるが、戦艦になったことはない。」
ですよね。ビックリしました。私より重装備を強いられた人がいたとしたら大変なことです。
「なるほどそういうことなんですね。」
珍しく、もしかしたら私の方が背が高いかもしれません。だからなんだと聞かれればそれまでですが、やっぱり少し嬉しく感じる自分がいます。
「そうだよ。軍艦だったけど途中で制度が変わって海防艦も私たちと同じ艦艇に分類されることになったから別に敬礼も本当はいらないんだ。子日はなぜかすごく慌ててたけどね。」
「響さん、それは…」
さっきまで寝てたと思うんですが、復活したみたいですね。ウォッカなんて度数の高いお酒を加減しないで飲むからそういうことになるんですよ。
「ウィスキーだよ。」
…水じゃないんですか?!お酒をお酒で割ってどうするんですか!結局、量が増えちゃうだけじゃないですか。
「んぐっ、ゴホッゴホッ!?」
ちょっ、若葉ちゃんも大丈夫ですか?
「だ、大丈夫ですか…?」
喉を押さえながらコップを倒してしまったので中身が全部こぼれてしまいました。まぁ、濡れてしまっても着替えればいいだけなので私はあまり気にしていませんが、どうしたんでしょうか。
「喉、いたいぞ…だが、わるくない。」
ちょっと涙目になってますし、顔も赤いです。
「鳳翔さん、タオルか何かありませんか?」
とりあえず、国後ちゃんにはかかってないみたいですね。ハンカチで応急処置だけしておきましょう。
「んんっ、初霜か…?」
「違いますよ。」
「雷か?」
「違いますよ。」
エタノールっぽい匂いがするのは気のせいでしょうか。というか、初霜ちゃんと雷ちゃんは結構な違いがあると思うんですが…。
「えっと、タバコは…?」
水没してますね。完全に箱がふやけてます。
「ごめんね、若葉ちゃん。このお店はね、禁煙なの。」
ふやけた箱と格闘しているうちにタオルを持ったお母さんにタバコを取り上げられてしまいました。
「近くにいたので阿武隈さんを呼んできました!」
国後ちゃんが手を引いて阿武隈さんをつれてきました。てっきり初霜ちゃんと雷ちゃんかと思いましたが、確かに阿武隈さんとも仲がいいと聞いたことがあるので大丈夫でしょう。
「私の指示にしたがってください!」
千鳥足でふらつく二人の手を引いて第一水雷戦隊旗艦は帰還していった。
お待たせしてすみませんでした。