「35.7℃…でした。」
ベッドに腰掛けるのは暁ちゃん。
「そう。よかった。暁は暇で退屈で大変だったのよ。」
暇も退屈もそんなに変わらないような…。まぁ、私も明石さんから熱は下がったけど念のため今日は部屋で休んでくださいと言われてますから暇なんですが。
「わざわざありがとうございます。」
「お礼なんてしなくていいのよ。暁はレディだから友達のお見舞いにいくのも当然のことなのよ!」
レディは関係あるのでしょうか?…まぁ、それを言うのは野暮ってもんでしょう。
「えっと…他のみんなは?」
「天龍さんたちと外出したわ。…まったく、起こしてくれればいいのに。」
あぁ、だから少し不機嫌そうな顔をしてるのですね。
「そんな暁ちゃんにお願いが1つ…」
「何かしら?暁にできること?」
えぇ、この状況では暁ちゃんにしか頼めないことです。
「実は、間宮券の有効期限が今日までなんです。腐らせるのはもったいないですし、私は部屋から出られません。ちょっと協力してもらえませんか?」
「わかったわ。そのくらい簡単よ!」
「じゃあ、頼みましたよ?」
「たくさん持ってるのね…。」
他の艦娘の皆さんには理解できないかもしれませんが、食が細い私が間宮さんの甘味を堪能するには多少の工夫が必要になるんです。
「一人じゃ食べきれないことがありまして…。」
ちょっと苦い思い出です。
「うん、まぁ…そういうこともあるわ!」
あ、納得してくれました。ちなみに赤城さんに同じことを言うと〝この子は何をいってるの?〟という表情になります。
「チョコとバニラどっちがいい?」
「2枚ありますから両方買ってきて二人で分けて食べませんか?そうすれば一石二鳥です。」
「なるほど!」
実を言えば他の第六駆逐隊のメンバーは暁ちゃんの着任記念日を祝うプレゼントを買いに行ったのです。だから、ここは私も協力します。大切な友達ですからね。
「じゃあ、行ってくるわ!」
「おねがいします。」
さて、私が今回任されたのは暁ちゃんの暇潰しの相手。これは非常に難しい任務です。電話で指令を受けたときはビックリしましたよ。
「お湯を沸かさないと…。」
ただ、何をすれば喜んでくれるのかいまいちわからないのでお茶会でもしましょうか。提督や金剛さんのティータイムを羨ましそうに見ていたことがありましたから喜んでくれるかもしれません。
緑茶にするか紅茶にするか…〝レディ〟といったら紅茶でしょうか?たぶんコーヒーは飲めないでしょうから砂糖とかレモンとかいれて調整できる紅茶にしましょう。
「あ、レモン切らしてました…。」