「あ、そんな感じで…うん、ちょっとその体勢のまんまで動かないでね。」
一緒に描いて欲しい人とかいる?と聞かれて龍田さんと二人で描いてもらうことになったのですが…。
「あら、どうしましたぁ?」
膝の上に座らせてもらうのはやっぱりちょっと恥ずかしいです。
「なんでもないです。」
「いいねぇ、いいねぇ、捗るわぁ。
あ、ついでに資料用の写真ももらいますわ。」
楽しそうな顔をしながらすごい勢いで色鉛筆を滑らせていく。…資料って何の資料でしょうか?
「…秋雲さんがこの鎮守府に来て最初に書いたのが提督だったんだけどさぁ、金剛さん達とお茶会してるところを描いたわけよ。」
「へぇ、そうだったんですか。」
というか、おしゃべりしながらかけるなんて秋雲さんって器用なんですね。
「まぁ、ちょっと遠くから見つからないように描こうとしたんだけど…次の瞬間、ブァッて風が吹いたと思ったら提督達と一緒にテーブルを囲んでたわけ!ヤバイわ、うちの提督化け物だ!って思ったのを覚えてる。」
「ふふふ、まぁ…ちょっと人外じみてるところあるからね。例えば天龍ちゃんが斬りかかったら提督の手刀で刀を折られたってこととか。噂だと峰打ちで姫を沈めたとか、深海棲艦を相手に100人斬りを達成したとか…調べればどんどん出てくるかしら?」
あ、だから天龍さんの刀が一時期なかったのか…きっと修理に出していたのですね。
「はい、完成!」
「よかったねぇ、友鶴ちゃん。」
「はい!」
秋雲さんに似顔絵を描いてもらいました。龍田さんとのツーショットです。
「秋雲さんありがとうございます!」
「いやいやぁ、こちらこそありがとう。龍田さんまで描けるとは思わなかったよ!」
「あらそう?」
「頭の上の浮いてるやつの描き方がわからなくてねぇ、それにこの秋雲さんはこの鎮守府にいる全員の絵を描くという目標があるから。まぁ、気がついたら増えてるんだけどね…」
これだけ大規模な鎮守府なら所属する艦娘も相当な数になりそうですけど…。
「次の漫画も楽しみにしてるわ。」
「あ、それで思い出した…よかったらこれを君にあげよう。布教、布教っと…。」
「え、あ…ありがとうございます。」
「初心者向けの優しいやつだから。あ、龍田さん…これは全年齢対象のほのぼの系だから…その、教育的な悪影響とかそういうのは…。」
「あら、ならいいのだけど。」
「おっと、そろそろ巻雲が帰ってくるから失礼するよ。じゃ、またねぇ!」
ウォッ!ナガトサン,ナガトサンナンデ!?
…なんか曲がり角のほうから聞こえた気がするんですけど。き、気のせいですよね?
「駆逐艦って元気でいいわねぇ。見てるとこっちまで元気がもらえるわ。」
「そうですね。」
「あ、一緒に酒保でもいきましょ。絵を飾るならやっぱり額縁がないとダメだもの。」
あ、たしかに額縁なんて持ってませんでした。
「天龍ちゃんの歯ブラシがちょっと古くなってきたから買い換えてあげようと思ってね。一緒にどうかしら?」
「いきます!」