「…静かですね。」
一人部屋のなかで呟いた。今日は提督に部屋にいなきゃダメと言われたからお母さんや龍田さんに会いに行けない。何より問題なのは昼食をどうするかです。買い置きとかありませんし、こんな私でもお腹ぐらいすきます。
「なんだか寂しいな。」
コンコン、コンコン。
「友鶴ちゃん、出前ですよ。」
私、出前なんて取りましたっけ?というか、そもそもお母さんの店って出前頼めるんでしたっけ?
ガチャッ
「お母さん?」
「良かった、両手がいっぱいで開けるに開けられなくってちょっと困ってたところだったんです。一緒に食べましょ?」
「ちょっと散らかってますが大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。」
「「いただきます!」」
お母さんは、お店では和食をよく出しているけれど実は洋食も中華も得意です。メニューに書いてない料理でも作ってくれます。そして、お母さんに作ってもらったおにぎりを持って赤城さんが出撃すると通常の三倍の戦果を叩き出すとも言われています。
「お金は提督がくれたから心配しないでいいですよ。
大慌てで飛んできたものだから少し笑ってしまいました。」
「提督ってちょっと抜けてるところありますよね。」
元高校生としては〝お子さまランチ〟な見た目のこれを食すには少し抵抗がありますが、今の私なら別に違和感はないでしょう。
「友鶴ちゃんも食べたら着替えなきゃダメですよ。」
「そうですね。」
朝食を食べてから帰ってきて二度寝するためにパジャマになったのをすっかり忘れていました。
「…ご覧の通り、友鶴には異常なんて物は見られません。それに精神も回復してきています。それなのに首輪(爆弾)をつけるなんて許されるべきではありません。しかし、大本営は被検体には首輪(爆弾)をつけろと言っているのです。私はそんなこと許せない!だから、みんなに力を貸してほしい!」
鳳翔さんの服に夕張特製の超小型カメラをつけて映像をスクリーンに映しながら説明する。しかし、実を言えば私は三笠なんかと違って大勢の前でしゃべるのはあまり得意ではない。映像や資料、スライドショーを利用して落ち着いてプレゼンする。一応、やれることは何でもやって来た。人事は尽くした。
「駆逐艦地位向上委員会としては異論はないわ。よろこんで、協力させていただくわ。」
「我々、駆逐艦を愛でる会も同じく異論はない。」
ありがとう、同士長門よ。そして、暁(二代目)ちゃん!
「私達も協力するわ。」「教官、我々も全力をもって援護します!」「しょうがない、先輩には世話になりましたから。」「お姉様の仰せのままに!」
教え子が後輩が妹達が叫ぶ。
「やるぞぉおおお!!!」
「「「おぉおぉおお!!!」」」
「いくぞぉおおお!!!」
「「「おぉおおお!!!」」」
士気は充分だ。いくら頭の硬い上層部とはいえ、我々の声を無視する事はできないだろう。私はあの娘は一人じゃないのだから。