艦娘?いいえ、不良品です。   作:バイオレンスチビ

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停電

「いらっしゃいませ!」

 

青葉がいつもより良い笑顔で挨拶してきた。また新作が入ったんだろうか。

 

「今回の新作はなんだ?あぁ、駆逐艦もしくは水雷艇で頼む。とびっきりのやつをな。」

 

駆逐艦ウォッチングで自らの手で写真を狙うのもありだが、プロ(青葉)の写真には敵わない。

 

「いろいろありますよ。今回は珍しく若葉さんの写真が手に入りましたし、貴重な写真をいくつもご用意できました!」

 

若葉の写真…確かに貴重だな。この間、神通の訓練に参加して何故か良い笑顔でキラキラしてたからな。それはもう、滴り落ちる汗を舐めとりたい程にかわいいものだった。

ついでにあの訓練で友鶴が倒れたと聞いた時には慌てたが、幸い大事には至らなかった。しっかりお見舞に行ってリンゴをその場で絞るととても喜んでくれた。

 

「…長門さん、ちょっとヤバイ顔でしたけど大丈夫ですか?と、取り敢えず鼻血止めてください。」

 

「す、すまない。」

 

机に広げられた駆逐艦の生写真。

牛乳を飲んだ直後の白い髭のついた暁や、並んで眠っている雷電、夕張に甘える五月雨に卵焼きを焼いている瑞ほ…瑞鳳!?まぁ、かわいいから良いか。

 

「友鶴ちゃんのお写真も手に入っま…<ブッ!>あれ?!」

 

「停電…か?」

 

先程まで取引に集中していて気付かなかったが、外は大荒れでとんでもないことになっていた。

 

「まずい!部屋の窓があけっぱなしだぁ!!!」

 

文月の写真週刊誌を整理しようと部屋中に広げたままだったのをすっかり忘れていた。もう遅いかもしれないが、目も当てられない事態に陥る前にお文様を救出せねば!

 

 

「うぉおおおお!!!」

 

ドアを開くことも忘れて飛び出した。

 

「あぁ!?私のドアがぁ!?」

 

 

 

 

 

 

「…ん、停電か?って友鶴…怖がりすぎやろ。」

 

「だって…。」

 

<ウォオオオオ!!!>

 

<ガッシャアァン!!!>

 

「ひぃ!?」

 

絶対なにか聞こえました。何か壊れる音もしたし…凄い雄叫びでしたし…。

 

「友鶴、いいか?…この世で一番怖いのは竜飛さんがキレる事だけや。」

 

龍驤さんも酔っ払ってるし。

 

「龍驤さん…このくらいにしといた方が良いんじゃないんですか?だいぶ酔ってますよ?」

 

お母さんが止めても言うことを聞かない。そもそも竜飛さんって誰なのでしょうか…。

 

「友鶴ちゃん、先にお部屋に戻っても大丈夫よ?たぶん、匂いだけで酔いかけてるでしょうから。」

 

「はい…ちょっと気分が。」

 

お酒臭いのはちょっと苦手です。なんだか気持ち悪くなってしまいますし…。

 

「一人が怖ければ今から一分以内に外に出れば長門さんが走って来ますから長門さんとお部屋に戻れます。友鶴ちゃんの部屋の電気は付くでしょうから大丈夫です。」

 

長門さんが?

 

「竜飛さん、ついに未来予知まで始めおったか!」

 

「え?竜飛さ「気にしなくても大丈夫ですよ?」…。」

 

一瞬、薄暗い中でお母さんの目に物騒な光が灯った気がした。

 

その後、長門さんによって無事に部屋まで帰ることができました。




友鶴ちゃんの部屋は元々医務室であったのを改造したものです。配線は停電中も使えるものになっています。


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