「ねぇ、龍田さんとの出合い教えてよ。」
「電も知りたいのです!」
……え?
「間宮アイスというおいしい物を食べてる時にその話題で話すのは…。」
「だって気になるんだもの。大丈夫よ?この雷様は口も固いんだから!」
「電も大丈夫なのです!」
あぁ、そんなに目を輝かせないで…
「私的にはかなり恥ずかしい話なんだけど…。」
嵐の夜に二人はやってきた。
研究所という名の牢獄にその制服は純白で風になびく髪は艶やかにまるで女神のようだった。
もう一人は天使のようだった。暗闇の中の私を救いに来た天使。
「私は敷島。あなたを助けに来たの。」
「龍田だよ~。ひさしぶりだね友鶴ちゃん。」
龍田さんを私は知っている。いや、正確にいえば友鶴(自分)は知っていた。嵐の中で沈んでいく私を救いに来てくれた艦だ。
「た、龍…田さ…ん…?たす…け…てくだ…さい…。」
独房に入れられて数週間ほとんど飲まず食わずだったからか声もかすれて上手くしゃべれない。度重なる暴行によって私は目も当てられないほどの状態であったと思う。衰弱しきった身体にはもはや力などほとんど入らず、自分の死を望んだことなんて数えきれないほどだった。それでもこの瞬間だけは強く思った。死にたくない、助かりたいと…。
残った力を振り絞り、私を拘束している鎖をジャラジャラいわせながら鉄格子へと這う。
首にはめられた鉄の輪が引っ張られて首が苦しかった。腕は折れて変な方向に曲がっていて足は動きそうになかった。吐血が止まらなくなってきて視界が歪む。限界が近いことはわかっている。
ギィイィイ
白い服の女性が鉄格子を力ずくでこじ開ける
その隙間から龍田さんが入って来て
バキィーン
薙刀で鎖を叩き斬った。
「ごめんなさいね。待たせちゃった。」
胸に抱かれてその声を聴いた瞬間、涙が溢れた。
毛布にくるまれて龍田さんに横抱きされて独房を出た。
横殴りの雨と空を駆ける稲妻、響く風と波の音。
脅える私を少し強めに抱き、優しく撫でながら何度も何度も耳元で〝大丈夫〟という優しい声が温かい体温と鼓動が私を暖め、ぬくもりが私を包んでいった。
そのまま私は眠りについた。
それまで感じたことがないほどのあんしんかんとぬくもりを感じながら意識を手放した。
…
……
「提督さんを初めてかっこいいって思ったかもしれないわ…。」
「すごい話なのです…。」
「いや、もうこれは一大スクープですよ!」
…ん?
「いつの間にいたんですか!?青葉さん!!」
ずっとここにいたみたいな空気を出してますけど!?
「いやぁ、なんかすごいお話をしていたので飛んできちゃいました。」