艦娘?いいえ、不良品です。   作:バイオレンスチビ

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提督と友鶴


部屋の中で

ノックの音がした。

 

ガチャ

 

「入るよ~。」

提督さんでした。

 

「どうしたんですか?

というか、

入るよ~っていいながらすでに入ってるし…。」

 

「気にしない。気にしない。

あ、そうそう。今日も調子が悪いの?」

「ごめんなさい。

なにゆえ、不良品な者で…。」

「不良品って言うな!」

「しかし、

これは紛れもない事実です。」

そう

私は、不良品である。

人類のためってことで身を捧げられ、

結果、人間でもなく艦娘でもない者にされた。

そんな中途半端で

しかも、欠陥だらけ。

 

これで不良品でなかったらおかしい。

 

「夜、

一度も電気が消えなかったわ。何をしていたの?」

うわぁ、言いたくない。

激しく言いたくない。

「言わないとダメですか?」

とりあえず、拒否権の確認。

「なんで?言えないの?」

アウトォ!!

「誰にも言わないですか?」

 

「言わない言わない。なんでそんなに警戒するの?」

 

「耳をかしてください…

 

暗いのが怖いだけです(ボソッ)。」

 

「プッwなにそれww可愛い…」

笑われた…。

「これ真剣な悩み事なんですけど!!」

 

そうなのである。

これ、実は真剣な悩み事なのである。

暗いとこって何故か実験室を思い出してしまうんです。

お陰で、

全然眠れない夜は、

川内(夜戦バカ)さんと一緒に散歩したり…。

早く起きてすぎた日は、

古鷹さんとお話ししたり…。

 

とにかく、

独りではいられないのである。

 

「そういうことね。

ん?」

人の気配が…。

 

「青葉、聞いちゃいました!

フフフ…。

これで<謎の艇娘友鶴の生態>の記事が増える!」

 

ん?

 

スッ

 

ドアの隙間から何か…。

 

ドドドドドド!!!

対空機銃!?

 

「ヒィッ!?な、なんでぇ~!?」

 

盗み聞きするからです。

 

「提督さん、納得していただけましたか?」

「うん、わかった。

納得したよ。んにしても、理由が可愛いけど」

 

「可愛いは余計です。」

まったく、これわりと深刻な悩み事なのに…。

 

「んじゃあ、またね~。お大事に。」

 

「はい。またねです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗いのが怖いかぁ。

まぁ、仕方ない事だろう。

日記に書いてあったけど…。

ひどい実験だったようだ。

更に

見ているだけで吐き気がするような

扱いを受けて、

過労死寸前まで追い詰められるほどの

訓練。

 

確かに、

この記憶を思い出すのは…。

怖いんだろう。辛いんだろうな。

 

この実験の死者は

二人。

生ける屍と化して

消えることしかできなかった

運命を狂わされた

少女。

 

彼女は、

「まぁ、元々腕一本動かせぬ身体だったので

良いんじゃないですか?

不良品にされた事は

嬉しくないことこの上ないけど…。」

と語っていた。

 

痩せ我慢だろう。

すぐに無理するんだあいつは…。

 

 

 


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