「どのくらい寝てました?」
長い夢を見ていたようだ。
「1ヶ月。寝すぎですよ?」
鳳翔さんの優しい声。
何故か起き上がれない身体。
よく見たら
…ない。
私の手足がない!!
鳳翔さんのくれたリボンがない。
「手足がないんですが…。」
1ヶ月もあったなら修復くらいできたでしょうに…
「もうちょっと待ってくださいな。駆逐艦の子達も頑張っておつかい行ってますから。」
やっぱりだ。
貯めとけよ提督。
その辺ちゃんと準備しておけよ提督。
「そんな事より友鶴ちゃん。」
?
「なんですか?」
「手足が取れていたのに…大怪我してたのに…
何であんな無茶をしたの!」
「ごめんなさい。
記憶が曖昧で「ばか。普通はそうなる前に退くの!!」…」
「沈んだら…どうするつもりだったの?
1ヶ月も待ったお母さんの気持ちがわかる?
もう私は、誰も失いたくないの…!」
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。
でも…。アイツは、元仲間で死んだはずの披検体で深海凄艦に成り果てていて…もう、見てられなくて、あの娘の悪夢をこの手で終わりにしようとムグッ」
「だからって独りで逝かないで下さい。
もう、抱え込まないで下さい。
世の中、独りでなんでもできる人なんていないんです。
もっともっと頼って下さい。
…お母さんからのお願い。」
私は静かに頷いた。
そこに言葉は必要なかった。
くぅう~。
どこか抜けた音がした。
顔が熱い。
「お腹減ったの?」
「はい…。」
お母さんはお台所までちょっと嬉しそうに歩いていった。
戻ってきたその手には…!
プリン!!
「はい、あーん。」
お母さんの手作りプリンをゆっくりと味わって食べる。
しばらくは
私は軽いものしか食べてはいけないらしく
また、食べる量にも制限がかかっている。
まぁ、無理もない。
1ヶ月も何も食べなかったのだし、
そのうえにあの戦闘では、
内臓にダメージを受けた可能性も高い。
明石さんいわく、
私の身体はまだ細かいところまでは修復できていないそうだ。
死んでないことが奇跡のようだ。
コンコン
「青葉です~。ちょっとインタビュー良いですか?」
え?
コンコンコン
「青葉です~。起きたのでしょう?」
何で青葉さんが知ってるの!?
「いいですよ~。」
笑いながら答える鳳翔さん。
いやいやちょっと待ってくださいな。
ここ私の部屋だしそんでもって答えるのも私だし…。
「今回の敵、知り合いだったって本当ですか?」
いきなりこの人はとんでもないことを…。
「一応ですけど…。まぁ、知り合いでしたね。」
そう、知り合いだった。
研究所の披検体の最初の犠牲者が彼女だったのだ。
あれ以来、何故か私の夢の中にもアイツは現れて私を追い詰めるのだ。
「第二問。提督についてどう思いますか?」
話題の変換が大き過ぎるような…。
「戦艦の敷島だったとか人間の敷島だったとか
私にとってはそんなのどうでもいい話で、
あの人は命の恩人であると同時に大切な司令官である。
ただそれだけです。」
私にとっては提督の正体が戦艦だとか人間だとかそんな事はどうでもいい話であり、
重要なのは、あの人が無事であり笑顔であること。
ただそれだけでいい。