まずい。このままだとじり貧。
性能が違い過ぎる。
触手による防御。強力な砲。溢れ出る殺気と憎悪。
勝てない…本能が告げる残酷な結論。
でも、負けたら…沈んだら…また独りぼっち?
勝たなきゃ。
海底で独りぼっちなんて…苦しいのは寂しいのは嫌だ。
ならば、負けなければ良い。
ある日、
No.6が言った「相手が負ければそれで良い」と。
違う。
こっちが負けなきゃ勝ちなんだ。
「痛いからやりたくないんですけど…。」
爆雷を頭上に投げる。
「うぅ!!」
背中から衝撃。前に爆発的な力で押し出される。
拳を突きだして…。
身体ごと触手に弾かれる。
着水と同時に爆雷を投げつける。
…決まった。
触手に叩き落とされる爆雷。
しかし、次の瞬間顔の目の前で爆発。
この間に持てる火力を全力で叩き込む。
直撃。
そう、さっきの動作は殴るためでなく
爆雷を顔の前に持っていくカモフラージュに過ぎない。
「ワタシハフリョウヒンナンカジャナイ…。
マケルコトナイ…ホンモノダァ!!!」
叫び声と共に浮遊感が私を襲う。
激痛。
よく見れば触手に腹を貫かれていた。
「フリョウヒンナンカニ…!!」
迫る触手。壊れた単装砲をしまい、急いで刀を抜く。
出血でフラフラしてきて力が入らない。
「提督!!!」
執務室。
お母さんと呼んでくれる少女がようやく打ち解けたあの娘がいつまでも持つはずがない。あの娘は無茶ばかりするから…速くしないと手遅れになる。
「鳳翔さん?誰でもいい。バケツを持ってきて!!!」
「え?」
「良いから、速く!!!」
時雨ちゃんの叫び声。
迫る触手になすすべなく捕らえられる。
殺 さ れ る
なら仕方ない。
死ぬよりましなこれを使う。
赤い注射。強制的にXシステムになる危険な薬だ。
左右から引っ張られて左腕がちぎれる。触手に叩き落とされる事によって着水。
私の艤装もとっくに大破している。
何度も何度も繰り返し繰り返しどちらが上か見せつけるように触手に叩き落とされる身体。
なぶり殺しか…。
もう、痛みも感じない。
なら…。
最期に一花咲かせてやりましょう。
残った腕で単装砲を投げつけ、
肩に乗った連装砲でそれを撃ち抜き、
残った弾と火薬が爆発して爆発を起こす。
「フリョウヒンノクセニ…。
イタイカ?クルシイカ?ハハハハハハ!!」
残った腕が触手に吹き飛ばされた。攻撃出来なくなった?
「孤独に泣くより痛みで泣いたほうが何倍もましです!!不良品?不良品が弱いと誰が決めたの?」
否、ここからだ。
傷口を加熱された砲身で焼く。
前日に仕込んだ装備を使おう。
身体に巻き付けた大量の爆弾を…。
既に潰れてしまった物が多いが要は爆発すればいい。
しかし、相手に肉薄しないとだめだ。
全速力で突…敵の魚雷が爆発して足がもげた。
なすすべなし。
あぁ、あの日と同じです。
圧倒的戦力の前になにもできず、誰も守ることができなかったあの日と…。
触手に首を捕まれる。連装砲が暴発して出血。
グキッ
嫌な音がする。
血が喉を逆流し、声もでなくなった。
ガンッ!!!
千切れる触手。
「私の可愛い娘に何してるの?
この敷島(提督)が黙ってるとでも?」
殺気をみなぎらせた提督。
「敷島型、なめてるの?」
「私の娘に何してくれるの?」
怒りに燃えるお母さん。
「バイハ”イ」
もう、手も振れないよ…。
これを最期に私の意識は跡絶えた。