艦娘?いいえ、不良品です。   作:バイオレンスチビ

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大規模作戦の幕開け

一人二人と部下が去っていく…。

お前のせいで死んだのだと私をにらむ部下達。

そんな目で私を見ないでくれ。

一人がいう。

「………。」

ガバッ

 

大丈夫だ。

いつもの夢ではないか。

 

私は提督だ。

それ以下でもそれ以上でもない。

今も昔も私にできることは

仲間を死地へと送り出すことでしかない。

そしてこれからもだ。

 

放送で艦娘達を食堂に集める。

 

 

 

 

 

提督が言う。

「隣の鎮守府からの報告。

≪鎮守府近海にて強力な敵の新型艦を発見した。

姫級だと思われ、

特殊な触手のようなものでの攻守と

強力な砲雷撃によって討伐部隊の全員が大破した。

ある艦娘の情報だとその個体は

チガウ、オマエジャナイとしゃべったらしい≫です。

…上から討伐命令が出たんだ。

私もほんとは皆をそんな危険な場所に行かせたくない。それでも、力を貸してくれるだろうか?」

 

口々に艦娘が叫ぶ

もちろんだとか大丈夫です等といった言葉が聞こえる。

 

「写真を見せよう。

隣の鎮守府の青葉がウチの青葉に送った写真だ。」

 

 

 

絶句した。

その敵は、私の見たことのある人物そっくりだった。

しかし、思い出そうとすると激しい頭痛に襲われた。

明らかに見たことのある顔なのに…おかしい。

「友鶴ちゃん、大丈夫?」

静かにうなずく。

 

 

提督は言う。

「こいつは、正規空母も戦艦も返り討ちにしたと言う。

触手に砲弾も魚雷も弾かれる。

艦載機も練度が足りなければ触手に叩き落とされる。

それに

この触手は戦艦の腹をも貫く。気を付けて欲しい。」

 

その後、

新たな艦隊が編成された。

 

私は、鳳翔さんの護衛艦となった。

護衛艦となったからには、

お母さんに指一本触れさせない。

心に誓った。

ただ、お母さんと私は文字どおりのお留守番となった。

提督いわく大規模作戦中に鎮守府を奇襲された例がある為に防衛戦力を少し残したかったかららしい。

 

 

 

”よかった。“

 

そう思ってしまった自分に気づいてしまった。

いつのまにか私の周りに大切な人達がたくさんできて

生きてることの楽しさを知ってしまった私は、

死ぬのが怖くなってしまった。

1度は棄てた命なのに、1度はこの世の全てに絶望してこの身を投げたのに…。

不安になる。

艦娘が死を恐れるなんて間違っているのかもしれない。

 

 

 

「お母さん…。変な質問だけど良いですか?」

 

「どうしたの?」

 

「艦娘でも死ぬのって怖い?」

 

「怖いよ。

でもね、

戦わないと大切なモノが護れないから戦うんだと思う。

それぞれみんなの考えることとか感じることは

違うのかも知れないけどね…。」

 

「よかった…。」

お母さんを護りたいが死にたくはない。

なるべく戦いたくない。

私は、護るために戦うだけで充分です。

 

貴女の護りたかったのは何でしたか?

むーさん。


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