艦娘?いいえ、不良品です。   作:バイオレンスチビ

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友鶴の過去


長い昔話

母は、

タバコをよく吸っていた。

毎日イライラしていて、私に何かと理由をつけては

ジュッ!!

いやぁあぁ~!!

毎日のように私で火を消していた。

さらに炊事洗濯家事全般が私に押し付けられた。

殴ったり蹴ったりなんて当たり前。

 

私は奴隷のように働いた。

 

父が帰って来ると、

父は、酒に酔いしれて

私をサンドバッグにしたり、

私を痛め付ける事でストレスを解消していた。

父は、

ずる賢く主に他人からは見えない部分を傷つけた。

 

 

学校も上手くいかない。

登校して教室の前、静かにドアを開ける。

ガラガラガラ…。

静まりかえる教室。寄ってくる人間の形をした何か。人で有りながら、人ではない獣。

「ケッ今日も来やがった。何しにきてんだ?きもいんだよ。あ~あ、気持ち悪!」

毎朝、この騒ぎである。

菌扱いされ、物を隠され、悪質な嫌がらせを受ける人の気持ちも考えて欲しい物だった。

誰かに助けを求めても意味はなく、悪口や嫌がらせは、絶えず続いた。

 

皆に死ね死ね言われ続けた

存在を否定されて悪質な嫌がらせを受け続けた

そんな扱いを3年間も受け続けた私の心は壊れてしまった。

 

 

毎日カッターナイフを腕に突き立てた。

血を舐めて

「今日も死ねなかった。」

独り呟く。

 

生きるのが辛い。

でも、死ぬことが怖い。

 

そして私は、

飛ぶことにした。

皆のお願いを叶えて死にたいとおもったから。

辛くて消えたくて仕方なかったから。

私は校舎の屋上からとんだ。

 

迫る地面。

廻る記憶。

苦しみの哀しみの記憶が廻る。

 

 

 

 

 

 

 

暗転。

 

 

 

 

 

 

 

 

目覚めたところは病室。

周りには、妖精さんがたくさんいた。

混乱する私に現実は容赦なかった。

 

ズキンズキンズキン

頭がいたい。

割れそうな程に。

知らない記憶が流れ込んできた。

 

この瞬間から

私は

被験者No.2

千鳥型水雷艇友鶴の船魂を授けられたと(思われる)少女となった。

 

周りには、

同じような状態の女の子が4人いた。

 

白衣の男性が入ってくる。

「やぁ、犠牲者の諸君。

こんにちは。

君らは、人類の為の生け贄に選ばれたのだ。」

 

意味がわからなかった。

「生け贄に選ばれたのだ?

はぁ?何言ってんだてめぇ?」

一人の女の子が言う。

「うるさいな。

No.6。次に騒いだら罰を与える。」

「うるさいなだと?

てめぇがワケわからんこと抜かして≪バキィ≫…!!」

血の気が引けた。

普段の暴力の何倍も酷い音だった。

「そして、連帯責任だ。」

 

それから毎日

何度も何度も殴られて

何度も何度も蹴られて

骨が折れたり皮膚が裂けたり

入渠だと言われてお風呂に投げ込まれ、

回復が遅いと罵られ

 

 

一番反抗的で強かったはずの

私にとっての初めての親友のNo.6も壊れてしまった。

延々と「死にたい死にたい死にたい…。」と繰り返し、

研究者達の捌け口にされて…。

口封じのためだろう

実弾演習の時に≪殺せ≫という事になった。

 

彼女は、

私に向かって真っ直ぐに向かってきた。

 

私は、彼女を助けたかった。

それでも恐かった。

彼女を殺らなかった暁には

自分が研究者達の捌け口にされるかもしれない。

言うこと聞かなければ、何をされるかわからない。

 

 

私は、動かなかった。

彼女が私を殺れば彼女の価値が上がり、

私も死ねる。誰も傷つかない。

突然向かってきた彼女に押し倒された。

彼女は笑っていた。

それこそ見たことがないぐらい安心したかのように。

私と一緒に倒れ込んだ彼女は私の砲を奪い取り、

自らの頭に突き付けて

「バイバイ」

そう言いながらゼロ距離で引き金を引いた。

飛び散る血飛沫。

あまりにも突然で

止めることもできなかった。

彼女は沈んだ。

 

 

 

私は、彼女を殺したんだ。

自分が助かりたかったが為に。

見捨てたんだ。

自分の手さえも汚さずに。

 

豪雨の中,演習場で私は泣き叫んだ。

あんなに優しかったのに

あんなに強かったのに

彼女は死んだ。

こんな私を親友にしてくれたのに、

私は彼女を殺したんだ。

 

 

コレが私の罪。

 

 

その後、

この事が世間に知れるとまずいと言うことで、

この教導及び訓練の事実はもみ消され、

我々不良品は、

高い戦果を上げる鎮守府に引き取られることになった。


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