このペンダントですか?ビュエルバで会った方にいただきました。
ええ、「オリバー・シモレット」です。ご本人にお会いできるなんて思っていませんでした。
縁があって親しくさせて頂いて、これを譲り受けたのです。どちらかというと迷惑をかけていたのは僕のほうなのに、律儀な人ですよね。
どんな方だったか、ですか。
そうですね、一言でいうなら不思議な方でした。
所作の振る舞いが綺麗だったので、貴族の方と思いましたが……彼の纏う雰囲気はとても柔らかいもので、貴族ではありえないと思います。
かといって商人というには、こんな風にあっさりと僕に作品をプレゼントをしていますし……僕が出会ったことのない立場の方なのでしょうね。
それに家族想いな方でした。妹さんが誘拐されてビュエルバまで来たそうなのですが、坑道を進んでいくときに、ヴァン……彼の弟さんをいつも気にかけているのがわかりました。
僕は彼の隣にいましたが、平気そうな顔で進んで先頭を切っていましたけれど……あれはきっと、無理をしていたのだと思います。後で体調を崩されていないといいのですが。
あと、少し人が悪いところがあるみたいで、僕や弟さんをからかって遊ぶところがありました。まったく、あそこまで子ども扱いをされたのは初めてです。同行していた彼より年上の方も、同じようにからかわれていましたね。
いえ、彼の態度は本名を知っても変わりませんでした。
嬉しそう、ですか? そうですね……はい、嬉しかったです。
彼の態度は自分がひどく幼くなったような気分になりますけれど、安心するんです。
あとは、そうですね。怒るとけっこう怖かったです。
はい、怒られました。
魔石坑への同行をさせていただく途中で、僕と彼の弟さんでふらふらと寄り道ばかりしていまして。
真っ直ぐ歩けと頬を抓られましたよ、公衆の面前で。
ええ、どこも人通りが多いところですね、ビュエルバは。
――もう、そこまで笑わなくてもいいでしょう。
え、お知合いなんですか? 彼と? そんなそぶりは……
……ああ、なるほど名前を伏せているんですね。もしかして、変装もしていたんですか?
それじゃあ彼も気づきませんよ。そんな格好では僕だって気づかないかもしれませんよ。もしかして、いつもそれで抜け出されているんですか?
まったく……兄上も人が悪いです。
わかっています。変装のことは秘密にしますから、今度方法を教えてくださいね。
……だって、僕もやってみたいじゃないですか。
兄上だけずるいですよ。