コードギアス 反逆のお家再興記   作:みなみZ

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12話

僕の目の前には、赤い上にかっちょいい感じの、とっても強そうな機体が佇んでいる。

 

出陣する前に、ダールトン将軍が敵のKMFはグラスゴーのコピーしか無いと言っていたのだが…。

 

これ本当にグラスゴーのコピー?

何か赤い彗星のコピーって言ったほうがしっくり来ますよ?

 

『紅蓮二式は、ナイトオブラウンズを抑えていろ!

私達は、コーネリアをやる!』

 

 

情報の錯誤に悩む僕に、敵の指揮官らしきナイトメアから、オープンチャンネルで、とっても嬉しくない情報が入った。

どうやらあの赤い機体は紅蓮二式と言うらしい。

益々、グラスゴーのコピーとは思えない名前だ。

 

……って!?

僕があれの相手をするの!?

 

じょ、冗談じゃない!

僕と殿下の機体が満身創痍で、こっちの戦力は絶望的なのに、あんな強そうな機体と戦ってたまるか!

 

逃げましょう!殿下!

逃げまくりましょう!殿下!

そのまま駆け落ちする勢いで逃げましょう!殿下ァ!

子供は三人は欲しいです!殿下ァァァ!

 

「そちらは任せた!

私はゼロを倒す!」

 

殿下ァァァァァァァ!?

そちらってどっちィィィィィ!?

僕との愛の逃避行はァァ!?

 

とてもカッコいい台詞と共に、殿下はスラッシュハーケンを敵に打ち込みながらも、駆け出していった。

即座に頓挫した、僕と殿下の愛の逃避行計画。

地味に凹む。

そして頼むから、この状況で僕を一人にしないで下さい。

あまりの心細さに泣いてしまいそうです。

 

そして打ちひしがれる僕に向かって、襲い掛かってくる赤い機体って…早っ!?そして危なッ!?

 

ジグザクに移動しながらも、猿のような身軽さで、赤い機体がこちらに向かって飛び掛りながら、攻撃をしてきた。

煌めきながら振り下ろされるナイフ。

怖すぎる。

ナイフによる斬撃に対して、グロースターの右足のランドスピナーを稼動させ、半身の姿勢で避けることにする。

一瞬の後、今まで僕が居た所に、振り下ろされるナイフ。

とりあえず助かった。

 

しかし安心するのはまだ早かった。

相手はナイフを振り下ろした体勢にも拘らず、ごつい右手で僕のグロースターを薙ぎ払わんと、振り上げてきた。

慌てて、グロースターをしゃがませる。

しゃがませた直後、グロースターの頭をかすらせながらも、なんとか避けれた。

九死に一生って感じだ。

 

 

半ば、奇襲といった襲撃が失敗した事で、敵も慎重になったのか、向うから間合いを取り直してきた。

それに呼応して、僕もグロースターを後退させ、間合いを取り直す。

 

助かった。

マジで死ぬかと思った。

やっと安堵の溜息を吐く事ができたよ。

 

 

にしても何なんだ!?

あの運動性能は!?

あまりの速さにびびったよ!

ガチムチ将軍の嘘つき!

あんなのがグラスゴーのコピーであってたまるかよ!

むしろランスロットのコピーなんじゃないか!?

 

あの赤い機体は、絶好調の時の僕のグロースターよりも、運動性能は遥かに上だ。

 

そんでもって、その凄い機体と相対している僕の機体は、調子が悪いグロースター。

マジでやばい。

どうしよう。

 

って考えている間に、また来たぁ!?

 

この状況をなんとかしようと、考え始めた矢先に、向うから間合いを一気に詰めてくる。

そしてその勢いのままに、こちらに向かって襲い掛かる赤い機体。

向うは殺る気満々だ。

マジで勘弁してください。

 

 

襲い掛かる赤い機体に対して、僕は唯、その攻撃を避け続ける事しか出来なかった。

 

相手の動きを間近で見て、さらに不味い事態が解った。

 

この赤い機体のパイロットは、機体に振り回されていない。

逆に乗りこなしている。

 

KMFにも関わらず、どんな乗り物でもハイスペックな乗り物というのは、実に乗りこなす事は難しいものである。

未熟な者が、その乗り物の最高クラスの物に乗ったとて、振り回されるだけで、碌に乗りこなせない。

だが、このパイロットは、そのナイトメアとしては最高クラスであろう、あの赤い機体を見事に乗りこなしてる。

 

つまりはあの赤い機体は、パイロットとしても凄腕と言う事だ。

あの赤い機体に相応しい実力を持ったパイロット。

だが、まだ甘い。

 

 

突き出されたナイフを持つ左手の一撃を避けながら、相手の懐に潜り込み、そのままの勢いで体当たりを喰らわす。

 

グロースターと言う名の、8tにも及ぶ鉄の塊の突撃には、どんなナイトメアであろうと体勢が崩れる。

そしてそれは、如何にハイスペックを誇る、目の前の赤い機体とて例外ではない。

 

体勢を崩すした相手の隙を見逃さないように、グロースターの右足を持って、相手の左足を踏みつける。

それと同時にグロースターに搭載されている最後の武器―――スラッシュハーケンを相手の胴体部に狙いを付け、放つ。

 

「貰ったァァ!」

 

自分でも知らず知らずに、勝利の雄叫びを発していた。

其れほどまでに、この一撃は僕に勝利を告げる。

もしくは勝利への掛け口となる一撃なのだ。

 

赤い機体の崩れた姿勢で、グロースターに寄って、左足を固定された状態で、スラッシュハーケンの一撃を避けるのは、如何にあの機体の優れた運動性能を持ってしても、不可能と言ったもいい。

避けるのが無理ならば、其のまま直撃を食らうか、防ぐしか手は無い。

 

防がれても良し。

この状態でスラッシュハーケンの一撃を防ぐ方法は一つしかない。

それはあのごつい右手を使って、防ぐ事だ。

あの右手がどんな性能を持っているのかは解らないが、スラッシュハーケンの直撃を受ければ、あの右手は破壊する。

それは相手の武器を一つ奪うと言う事だ。

それは勝利への掛け口となる。

一番怖いのは、左手に持つナイフで、スラッシュハーケンを絡み取る様に、防がられる事である。

だからそうされない様に、左手のナイフの突き出しにカウンターで攻撃したのだ。

伸びきった左手で防ぐのは不可能。

これで防ぐには右手を使うしかない。

 

直撃すれば尚良し。

そのまま胴体部に直撃すれば、この機体の戦闘続行は不可能と為り、僕の勝利となる。

仮に、戦闘続行であっても、大きな損傷は防げない。

こちらが一挙に有利となる。

 

赤い機体が、僕の一撃を受けるのか、防ぐのか。

どっちに転んでも僕の有利となる。

 

スラッシュハーケンの一撃に対して、赤い機体が取った行動は…。

 

防ぐ事であった。

 

大きな右手を自らの胴体部の前に構え、スラッシュハーケンの一撃に対して備える。

 

どうやら僕の勝利はまだ先らしい。

だが勝利に近づいたのは間違いない。

 

その右手…貰ったァァ!

 

そしてグロースターのスラッシュハーケンと、赤い機体の右手が接触し…。

 

 

スラッシュハーケンが爆発して砕け散った。

 

 

 

 

……………ヤックデカルチャー。

 

 

今僕の視界にはありえない現象が起こった気がする。

僕の網膜がいかれちゃったのかな?

え?何でスラッシュハーケンが爆発しているの?

逆でしょ?右手を貫かなきゃ。

ゴッドフィンガー??

爆熱なゴッドフィンガーなの?あれは?

流派東方不敗なのか?

東方は紅く燃えているのか??

師匠ーーー。

 

現実に付いて行けない。

マジにデカルチャー。

デカルチャー過ぎる。

 

だが、一つ解った事がある。

とりあえず勝利から遠ざかったのは間違いない。

泣ける現実だ。

 

あまりの現実に僕の思考が現実に追い付けない中、敵の赤い機体は動き出していた。

その右手でこちらを掴もうと腕を突き出してくるのであった。

 

その気配に気付いた僕は、すぐさまグロースターを後方へと移動させる。

 

あの右手はやばい!

しかしどんな仕組みが仕込まれているかは知らないけど、間合いさえ取れば!

グロースターを後方へと動かしながら、そう考える。

しかし相手の間合いの外へと抜け出した時、一つの天啓が頭を過ぎった。

キラリンって感じで過ぎった。

気分はブータイプだ。

 

まずい…!

この考えと行動!

やられフラグだ!!!

 

 

舞い降りた天啓の警告に従い、グロスターの脚部の向きをずらし、後方への移動から、左後方への移動へと変更する。

その突如、赤い機体の間合い外からの一撃が、先ほどまで僕が居た場所を貫いてきた。

突き出した腕を更に伸ばして。

 

この言葉では、限界いっぱいに伸ばした腕が、何とか僕の居た所まで届いた、といった感じの言葉だが、現実は違う。

 

文字通り腕を伸ばしてきたのだ。

ビヨーンって感じで。

 

 

まさかあの技をこの眼で直に見るときが来るとは…!

あれぞブェペリがジョブサンに仕込んだ技。

ズームパンチ!!

BOBOの珍妙な冒険だね。

誇り高き血統だよね。

燃える展開だよ。

今の状況はとても燃えれないけど。

 

……って!冷静にテンパッテる場合じゃネェェェェ!

普通にテンパろうぜ!?僕!

テンパル自体が駄目だけどな!僕!

 

なんじゃあの右腕は!?

 

スラッシュハーケンを爆破させた上に、腕を伸ばしやがった!

 

つまりあれか!?

爆熱ゴッドフィンガーな右手の上に、ズームパンチな右腕なのか!?

 

どんだけチートなんだよォォォォ!

あんな右手だったら、ジョブサンだって、もっと楽にBIOを倒せるわァァァ!

 

ブモンだって、ゴッドブンダムがあんな右腕だったら、もっと楽にブンダムオブブンダムになれるわ!

デカルチャーにも程ってもんがあるんだよ!このボケェェェ!

 

って、こんな相手に僕はどうすりゃいんだYO!?

しかも僕に残された唯一の武器である、スラッシュハーケンも爆発されちゃったしYO!

マジで誰か教えてくれYO!?

つーか助けろYO♪イエー!チェケラ!YOYO♪チェケラ!TA♪SU♪KE♪TE!!YO♪チェケラァァ!

 

 

絶望のあまりに、ちょいと小粋なラップを口ずさんでしまった。

何と僕はラッパーの鏡なのだ。

この僕の今の心境をありのままの姿を、彩ったラップに全ブリタニアが泣いた。

むしろ世界が泣いた勢いだ。

今日から僕はDJ。AQUAだ。

世界コンサートに突入だ!

そして可愛い萌えっ子のファンの子と、毎日うっはうっはな生活を送ってやる!

 

しかし現実は甘くはない。

現実逃避で、DJ。AQUAと化した哀れな僕に、赤い機体は情け容赦なく襲い掛かってくるのであった。

 

SHI♪NU♪ZE♪チェケラ!

 

 

 

 

 

 

■紅月 カレン■

 

 

 

 

 

『紅蓮二式は、ナイトオブラウンズを片付けろ!

私達は、コーネリアをやる!』

 

「はい!」

 

ゼロの通信に応え、私の操る紅蓮二式は、新たに現れたナイトメア。

グロースターに向かって突き進む。

ナイトオブセブン―――アクア・アッシュフォードに向かって。

 

紅蓮二式の運動性能を十分に見せ付ける様に、ジグザグに進みながらも、一気にグロースターに接近する。

そして、そのままの勢いのままに、紅蓮の左手に握るナイフ―――呂号乙型特斬刀をグロースターに振り下ろす。

 

紅蓮の一撃をアクアのグロースターは、右足のランドスピナーを稼動させる事で、半身の姿勢になりながら避けてきた。

私の右前方に居る、グロースターに追撃の攻撃として、紅蓮の右腕―――輻射波動を搭載した、大きな右腕を下から上へ薙ぎ払うように、右腕を振り切る。

その一撃も、グロースターはしゃがみ込み、最小限の動きで避けるのであった。

 

二連続の攻撃を避けた、グロースターから距離を取ると、グロースターも後退し、間合いを取り直してきた。

あの二撃は、紅蓮の運動性能を知らないであろう、アクアには半ば、奇襲じみた攻撃だ。

それを最小限の動きで、ああも見事に避けられた。

流石はアクア―――ナイトオブセブンの名は伊達では無いと言う事ね。

でも…。

 

私はある種の失望感に似た思いが心に抱いているのを感じた。

 

アクアのグロースターの動きは、この紅蓮二式は元より、先ほど相手をした同型機である、コーネリアのグロースターよりも動きが鈍いのである。

コーネリアのグロースターが特別機なのか、アクアのグロースターの調子が悪いのか。それとも両方なのか。

答えは私には解らないが、この紅蓮二式よりも、アクアのグロースターの戦闘能力が低いのは間違いない。

 

更には、アクアのグロースターは武器を持っている様子も無い。

丸腰でこの紅蓮二式を相手しようと言うのだ。

 

これでは、遥かに私のほうが有利なのは言うまでも無い。

勝敗の行方は誰でも解ると言うものだ。

私はアクアと対等の戦いをしたかった。

 

アクアは私の憧れの一つであった。

 

まだ二人が幼い頃に、一度だけ出会った私達。

 

大切なものを取り戻したいと願った私。

大切なものを守りたいと願った、アクア。

 

私は運命なんて言葉を信じないが、私達二人が、敵として向き合う事は、既にあの時から決まっていたのかもしれない。

 

だからこそ私はアクアと戦う時は、正々堂々と同じ条件で戦いたかった。

勿論、そんな事は実質不可能である。

でも、そう思う気持ちを止められないのだ。

 

実際に、再び攻撃を始めた、私の紅蓮の攻撃を、唯アクアが避け続けるという、あまりにも一方的な展開が繰り広げられている。

これでは私がアクアを追い詰めるのは目に見えている。

 

この戦いは、私が望んだ戦いとは程遠い。

 

そう私が考えた直後に、動いたアクアの行動に私は自らの思い上がった心が吹き飛ばされるのを感じた。

 

アクアのグロースターは、紅蓮の左のナイフによる、突きを避けたと同時に、カウンターで紅蓮に突進して来たのだ。

半ば、虚を突かれた私は、その突進を食らうしかなかった。

そしてアクアの行動はまだ終わらない。

 

突進した勢いのままに、紅蓮の左足を、グロースターの右足で踏むように固定する。

これで紅蓮は直ぐには素早く行動が出来ない。

そして、アクアに残された最後の武器、スラッシュハーケンを放ってきた。

 

この瞬間、私はこれが全てアクアの目論み通りの展開だったと気付いた。

 

自らに残っている最後の武装、スラッシュハーケンを、紅蓮の左手に握る呂号乙型特斬刀で、切り払われないように、左の突き出しに合わせたカウンター。

紅蓮の運動性能を一時発揮させないように、自らの右足で紅蓮の左足を踏みつけることによって固定し、スラッシュハーケンの一撃を避ける選択を潰す。

 

私に残された選択は、スラッシュハーケンの直撃を食らうか、残された右腕を犠牲にして、直撃を避ける事しか出来ない。

 

アクアにとって、この一撃が直撃すれば良し、仮に右腕で防がれても、確実に右腕は潰れる。

アクアの有利になる事はあっても、不利になることはありえないという事だ。

 

―――この紅蓮二式の右腕が唯の右手だった場合だが。

 

スラッシュハーケンの射出上に、右手を構え、即座に輻射波動を発動させる。

直後、スラッシュハーケンと紅蓮の右手が接触し、スラッシュハーケンは爆散する事になった。

 

アクアの誤算は、この右腕に輻射波動が搭載されている事を知らなかった事であろう。

 

血が沸々と滾ってくるのを感じる。

 

攻撃を失敗したアクアのグロースターを、拘束しようと右腕を突き出す。

 

アクアは、事前に察した様に、こちらから離れようとグロースターを後退させている所であった。

右腕を突き出しただけでは既に届かない範囲まで、後退しているグロースター。

そして届かない相手に手を伸ばそうとしてる、私の紅蓮二式。

 

「取ったァァ!」

 

右腕に付けられた、腕全体が伸長する仕掛けを発動させ、紅蓮の右腕は間合いを伸ばす。

唯、後退をして間合いを取ろうとしてるグロースターの姿に、私は勝利を確信し、コクピットの中で吼える。

しかし私が勝利を確信した一撃を、あろうことかアクアは、今正に私の紅蓮がグロースターを捕まえようとした時、グロースターの進路の方向をずらし、紅蓮の魔の手から逃れたのであった。

 

アクアが私に見せた計算された攻撃。

そして今私が必殺と思った一撃を避けれた事。

 

それら全てが私の血を滾らせる。

 

そうだ、私は何を勘違いしていたのだろう?

私の目の前に居るのは軍事超大国ブリタニア帝国の中で、唯、ナイトメアの強さだけで軍人としての頂点の一角に居座る男。

帝国最強の騎士の一人であり、ナイトオブセブンの称号を与えられた男―――アクア・アッシュフォードなのだ。

 

何が、向うの方が不利なのが気に食わないだ。

 

アクアは自らの不利など気にせず、自らのできる最大限の事をしようとしている。

そしてそれに応える私が何を考えていた?

私が考えていた事は、自らの力を最大限に引き出しているアクアを侮辱している事だ。

 

アクアは自らの持てる力の全てを持って、私に挑んでいる。

ならば私がすること事は唯一つ。

 

「全てを持って、貴方に応えるだけ!」

 

勝負よ―――アクア!

 

迷いを断ち切った私は紅蓮を稼動させ、一直線に進む。

 

恋焦がれた、愛すべき敵の下へ。

 


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