俺は愉悦   作:ガンタンク風丸

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おひさ、です。最近フレの桜セイバーがアサシンに見えて仕方がありません。というかアサシンと間違えて連れていくっていうのがかなりあります。ヤバイー

これが私の頭の中のまいやんのイメージ。武器とかいいから


カレンとアップルパイと衛宮切嗣【前編】

 

 遠坂邸でのアサシンの脱落から一日が経った。

 しかしアレには少なからず僕も驚かされた。

 なにせ日本の英霊だったのだ。しかも『斎藤一』とまで名乗る始末だ。騎士道精神……いやあれは武士道精神か、アレは本当にあきれるぐらいに凄いよ、本当に。いや割と本気で。

 願わくばうちの騎士王様が見習わない事を祈るばかりだ。いや、もういないから見習うも無いか。

 きっとそこら辺はアイリが上手くやってくれるだろう。

 それにしてもアサシンがいの一番に脱落してくれて本当に助かった。同職に後ろからバッサリ、なんて目も当てられないからね。

 ……まあ本当に脱落したかなんて分からないしあの言峰綺礼はまだこの冬木の町にいるのだから不安要素が結局は拭えない事が痛いというところかな。

 それにあのアサシン脱落直後に起こった魔力の爆発。きっとアレもサーヴァントのものだ。魔力の規模からして間違いない。

 だが問題はその時にどの陣営とどの陣営が戦ったかだった。

 こればっかりはアサシン脱落に気を取られてしまい、そこでサーヴァントの戦闘があった、ということしか分からない。全く持って迂闊だった。ただわかることと言えば魔力の残滓と魔術の痕跡から戦った片方がキャスターだという事のみである。

 

「フゥーー――――」

 

 そんな事を冬木の一角にある公園のベンチに座ってタバコを蒸しながら衛宮切嗣は考える。

 ライダーとキャスター以外のマスターの居所は既に知れている。ライダーのマスターはいつもサーヴァントと一緒にいるからどうも手を加える余地がないのが惜しいが、あとは自分と舞弥が後ろからやればいいだけ。もちろんそれだけじゃ終わらないだろうけど大体こんな感じだろう。

 世界の恒久的平和。正義の味方。そんな色々なフレーズが頭をよぎる。

 そんな束の間の思考の空白が起きたそんな時だった。

 ―――赤い布が上から落ちてきたのは。

 

「――――ッ!?」

 

 その赤い布はまるで意思があるかのようにあっという間に僕の身体に巻き付き、雁字搦めにされ逆さ吊りになってしまう。

 

「―ッ―――!」

 

 咄嗟のことだったが即座にすり抜けようと身をよじる。しかしそれは身を動かせば動かすほど強固に自分の身体を縛り上げてきた。

 身体を全方向から圧迫され鈍い痛みが走るが、考え方を変えればただそれだけだ。問題はその後の身体のパフォーマンスに問題があるかどうかと、これがどんな意図で行われたかである。

 切嗣はすぐ様その犯人だろう気配がする背後の草影に視線を向ける。そこに、まるで示し合わせたかのように一人の少女が草影から歩み出て姿を現した。

 

「フフ……一丁あがり、といったところね。あぁ滑稽。くたびれているヘビースモーカーを釣り上げるとか……マジ受ける」

 

 波打つような白髪に金眼、そしてタータンチェックに彩られた服装。僕はそれが誰か知っていた。当たり前だろう、調べたのだから。確か言峰綺礼の娘、名をカレン・オルテンシアといった筈だ。

 という事はまさかこれは言峰綺礼からの差金か?自分の娘まで使うとは卑劣な……。

 

「あら、別にこれは父様の命令とかではないですよ?まぁ、勝手な御推理は別に構いませんけど」

「……」

 

 そう考えたら真っ向から否定された。何なんだろうこの少女は、まさか心を読めるのか……?

 再度その金眼を見据えるが、少女の目に偽りの色は見え無い。確信とまでは言えないが、これは十中八九少女の独断で行われたことなのだろう。

 しかしそれならば何故僕を……?というか改めて見ればこの赤い布礼装じゃないか。娘になんて物を持たせてるんだ言峰綺礼。僕ならイリヤにはこんなもの持たせない……あれ?でも魔術とかはどうなるんだろうか?……いや、そんな事はいい。取り敢えず死ね言峰綺礼。

 

「何故っ?って疑問を思ってる顔ね?

いいわ教えてあげる迷える仔羊第一号、それはね―――趣味よ」

「…………っ?」

 

 思わず間抜けな声が出そうになってしまった。しかしいくら相手が子供とはいえ弱みを見せることはこういう状況では悪手、ここは相手の様子を見てなおかつ情報を引き出すことが先決だろう。

 …………今更ながらだけどなんで僕敵の娘に捕まっているのにこんなにも冷静なんだろう?

 

「やっと口を開いたかと思えばまたダンマリ?……そう、じゃあこれを見せれば流石の仔羊第一号もなにか声を上げずにはいられないでしょう。さぁ、しかとその目に焼き付けなさい、そして刮目するのです」

 

 そうして言峰綺礼の娘、カレンが大仰な手振り素振りで僕に自らの手の甲を見せつける。そしてそれを見た僕は思わずその目を疑った。正確にはその右手の甲に宿る三角の令呪(・・)に。

 

「なっ……!?」

「やっと声を上げましたね。さぁ、どう?驚いたでしょう。その感想を聞かせてくれないかしら?さぁ、早く、早く」

 

 何故か頬を少し赤らめさせながらそう荒い息と共に語る言峰綺礼の娘、カレンに僕は内心頬をひくつかせながらもジッと改めてカレンの姿をみて黙考する。

 表のみ見るならば主だった装備は赤い布の概念礼装のみだ。しかしカレンの着ている服にはナイフなどを仕込ませられそうな場所はかなりある。……だがその線はないだろう事も切嗣には分かった。何故ならば武器など携帯している人間独特の足音の重さがなかったからだ。それにもしそういう足音を訓練などで消しているとしても服の凹凸から武器が忍ばせてあるかないかの推理は容易い。

 まあバックラーとか金具とかに仕込みナイフとか入れている場合はその限りじゃないが。靴底だってその範疇だし。

 

「君は……マスターなのか……?」

 

 

 

 

 

 

 

「ええそうよ」

 

 カレンは躊躇いなく頷いた。躊躇いなさすぎて一瞬思考回路が停止するぐらい切嗣は呆気に取られてその顔を見る。

 

「ウフフフ……そんな顔しないでくださいな。ああ、お腹が捩れ切れそう……フッ」

 

 ああ楽しい。なんて楽しいのかしら。

 父様の机にあった紙に書いてあった事だけど……確かこの人は衛宮切嗣とかいう男だったわね。聖杯戦争におけるセイバーのマスターであり魔術師殺しで名を馳せた殺し屋。よく分からないけどまあ……弄りがいがあるのは確かね。だって男だもの。

 そもそも私が令呪なんか持ってる訳ないじゃない。ペンで描いただけなのに本当に愉快ね。ホント愉快。マグダラの聖骸布に包まれているから令呪の魔力的な判別は不可能だしね。

 そうだ、いいことを思いついたわ。確か今判明していないマスターとサーヴァントのクラスはキャスターだったはず。サーヴァントを出せば益々マスターっぽくなるわ。その方がこの男の間抜け面を拝めそう。

 

「山崎、現れて」

 

 私はすぐそばにいるだろう父様の付けた護衛役であるサーヴァントの名前を呼ぶ。

 母様はサーヴァントの存在を知らないだろうけど私はちゃんと知っている。確か私が加虐霊媒体質だったからかしら。まあそんなこと今はどうでもいいんだけれど。衛宮切嗣さえいじれれば。

 父様には私の言う事を聞くように言われているから私の言うことは聞くし問題は無い。……ほら、現れてくれた。

 

「……む」

「フフフ、ほら。自己紹介ですよ、山崎さん」

「……なぁ、一応俺は聖杯戦争の為にいるサーヴァントなんだが……。そこんとこ、分かってるか?」

「ええ分かってますとも。でもその方がこの男の反応が見られるでしょう?ねえ、衛宮切嗣」

「……僕の名前を知っていたのか」

「ええそれはもちろん。まあ、全部父様の受け売りだけど」

 

 正確には書斎の机の上にあった父様のものであろう資料の、ね。

 そんな私の言葉に衛宮切嗣はあからさまに舌打ちする。その忌々しげな表情に私は思わず見悶えた。うん、いい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうしましょう。これは助けた方がやはりいいのでしょうか……?

 十数メートルほど前方、木陰に隠れた私はそこにいる言峰綺礼の娘と切嗣を見つめる。

 何とか切嗣にコンタクトを取りたいが言峰綺礼の娘の礼装に囚われているのに加えその側にはサーヴァントの姿があった。ライトによるモールス、読唇術、マイキング、色々と考えてみたが切嗣側の返答は困難だろう。頷くにしても側でサーヴァントが見ているためこちらの位置を気取られる可能性があるしマイキングにしてもまばたきが見える距離まで近づくとなるとサーヴァントに気取られる。そもそもこの距離でも既に気取られている可能性があった。というかその可能性はかなり高い。

 幸いな事に切嗣はこちらの事を認識していた。それが救いというべきか。

 空白の時間にケーキバイキングに行こうとしたらこんな場面に出くわす私も、なかなかな運の持ち主ですね。悪運ですけど。

 

 どちらにせよあちらが切嗣に危険を及ぼす兆候が出たらだ。このまま見逃してくれる可能性もない訳では無いのだから。

 あのサーヴァントは残りの判明していないクラスから推理してキャスターだろうか。全然そんなふうに見えないが。そもそも和装だし、だんだら模様の新撰組の羽織着てるし。

 新撰組の医者……とか?

 

「切嗣、状況はよく分かりませんが。無事を祈ります」

 

 どーか早く解放してあげてください。私の心がマッハでストレスしていくので。

 そんな事を内心吐露しながら胸のホルスターから艶消しされた拳銃を抜き、銃口にサプレッサーを取り付ける。発炎筒(スモークグレネード)を持つことも忘れない。有事の時はこれ投げて突ろう。パショパショ。

 

 そんな事をしているうちに切嗣たちが動き出した。逆さだった切嗣は既に垂直に直されているが、相変わらずあの赤い布状の礼装に囚われたままである。

 雁字搦めの麩巻き(ふまき?)にされている姿は何処か哀愁が漂っていた。もしこんな姿を奥方や娘さんに見られたら切嗣のSAN値は一瞬で削れ飛ぶこと間違いないでしょう。

 ……取り敢えず写真を取っておきましょうか。最初に断っておきますが別に奥方に後でこっそり見せるとか私はする気はありませんから。するつもりありませんから。

 ……大事なことなので二回言いました。と言うかそろそろケーキバイキングが始まりますね。切嗣は…………なんか大丈夫そうです。どうしましょう、放っておきましょうか。

 ……もちろん冗談です。

 

 そんな下らない思考をしているうちに切嗣達は新都の歓楽街へと入った。ああ、確かあっちの方に件のケーキバイキングがあったはずです、行きたい。

 切嗣。あんなに引き摺られて……ケーキバイキング……。

 

「さあ子羊よ。私にアップルパイを買いなさい。というか買うのです」

 

 恐るべし言峰綺礼の娘。殺気全開の切嗣に物怖じすること無く金をせびっています。もうここまで来ると尊敬の念すら湧いてきます。

 切嗣は隣にいるサーヴァントを忌々しげに一瞥した後「勝手にしろ」と言い、そっぽを向く。

 そして麩巻き(ふまき?)にされた布の隙間からスルリと切嗣の財布が地面に落下した。

 

「…………」

 

 ……切嗣……。

 

「フフ、山崎さん。さあ、あそこのパン屋です」

「はいはい分かってる分かってるっつーの。……お前さんも大変だな……衛宮切嗣」

「……同情するなら解放しろ」

「それは無理だ。その赤い布は対男性に特化した礼装だからな。男の俺じゃ引き剥がすなんていうのは些かしんどい」

 

 なら私なら引き剥せるのですか。

 

「さあ何個買えるでしょうか。帰ったら父様に自慢しましょう。衛宮切嗣の金を巻き上げてアップルパイを買った、と」

「やめてやれ」

「あら、どうしてですか?」

「……うん。男の尊厳とかいう奴だ」

「そんなもの、適当に犬にでもくれてやりなさい」

 

 切嗣、私はあの娘が怖くなってきました。

 そうこうしているうちに切嗣達は件のパン屋へと入っていく。そして、数分して大量の紙袋を持って出てきた。きっとあの中には大量のアップルパイが入っているのでしょう。容易に想像がつきますね。

 言峰綺礼の娘はサーヴァントに持たせた紙袋から一つのアップルパイを取りだすと、それを黙々と食べ始めた。

 またしばらくすると、今度は切嗣達の前に一人の少年が歩いてくる。

 ……たしかアレはウェイバー・ベルベット。切嗣同様聖杯戦争に参加するマスターだったはず。

 

「あ」

 

 言峰綺礼の娘もそれに気づいたのだろう。アップルパイから口を離し、ウェイバー・ベルベットに向かって指を指した。

 

「山崎さん。この人マスターですよ」

「なっ!?」

 

 ウェイバーは突然指を指されて言われたその一言に、声を裏返して大いに叫んだ。よりにもよってあの娘に捕まるとは……哀れですね。

 

「殺すのか?」

「ッ!?」

「いえ……嬲りましょう」

「その反応はどうにかならんのか……?」

「無理な相談ですね、山崎さん。これが素なのだからどうしようもないでしょう?……さあウェイバー・ベルベット、迷える仔羊第二号。貴方には二つの選択肢があります。私にアップルパイを貢ぐか山崎に嬲られるかです。さて、どうするかしら?」

 

 南無三。

 

 

 

 




イベがだるい件。

というかまた友人が星5出しやがったそれもヒロインX。アイツ何体目よ星5。そろそろ呪い殺したいのですがキャス狐さんやってくれませんかねぇ。

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