やばいー、冬の課題が欠片も終わってないー
1月4日、改修。
「どうせ来ませんよ……」
「フッ、来なかったならばそれで興醒め、来たら儲け物、それで良いではないか。なぁ、カレンよ」
「そうねアーチャー。さあアサシン、パパッと呼んでしまって」
「私、貴女達についてきた事に今もの凄く後悔の念を覚えています……」
「……アサシンだっけ?その気持ち物凄〜く良く分かるわ……」
「あら凛?私、今貴女がとある家の花瓶を割ったこと思い出したのだけれど、貴方の父に言ってもいいかしら?」
「ごめん。やっぱり良くわからない」
「凛さん……!?」
冬木、新都の一角での会話。もちろんアサシン、アーチャー、カレン、凛らの会話である。
今現在いるのはとあるビルの最上階、もちろんアーチャーが黄金律にて手に入れた金により借り仕切った場所だ。
今からやろうとしているのはアサシンの宝具『誠の旗』にて、今夜にやるアサシンの脱落偽装の時にアサシン役をする奴の選定をすることだった。
なんでもアサシンに説明されたアーチャーことギルガメッシュによれば『余興は良いが自分のお眼鏡に叶わない奴なんてわざわざ殺したくない』という事らしい。
アサシンはこのめんどくさいアーチャーに深くため息をつきながら、自分の身の丈の二倍はあろう真ん中に大きく『誠』と書かれた旗を取り出す。
そしてそれを両手に持ち、何を思ったのかソレを思いっきり床に突き刺し、言った。
「新撰組一番隊隊長沖田総司が呼び奉る。我が同胞よ我が盟友よ。時は来た、さあ、死を越え時を超えて我が呼びかけに答えよ!」
その言葉と共に旗の刺さった床の部分から放射状に光るヒビが床に広がって行く。
その光は魔力であり同時にヒビは英霊の座とを繋ぐ門の役割を果たしているのだが……まあそんな事魔術の『ま』の字も知らないアサシンに知る由はないだろう。
そして、それは現れた。
「イエッサーッ!隊長呼んだですかい!?」
「早いですね!?」
今回のアサシンの呼びかけの定員人数は一人だったがそれにしては早すぎる。アサシンは呼びかけてから少なくとも十秒以上は掛かると思っていたのだ。
「あの、何でこんなに早かったので……?」
「もちろん!スタンバってましたからっ!」
「ああはい……そうですか……」
「いやぁ〜皆我先にと行くものでしてね?何とか組長や土方さんという猛者達を踏み越えて俺がここに参った次第です!」
「……いえ、もう分かりましたから……コフッ……。アーチャー、これでいいですか?」
アサシンは後ろに女王様座りでソファの真ん中にデンと座りワインを嗜んでるアーチャーに振り向き様に問いかける。
しかしアーチャーの事だ。そんなの答えは決まっているようなものだろう。
サディスティックにニヤリと口角を吊り上げると、アーチャーは鼻で笑いながら言った。
「ダメだな。チェンジ」
「ですよね〜……という事ですみません。チェンジです」
「えっ!?俺の出番これだけ?マジで?」
「マジです―――えぃっ」
アサシンが旗を振る。すると先程までいた隊士の姿が光の塵となって消え、次の瞬間にはまた新しい隊士が出てきていた。
「姉御ぉぉぉぉぉッ!来たですよ!」
「…………これは?」
「ハッ、チェンジだな」
「ですよねー……―――はぁ」
「えっ」
この後三十分くらいの間、これが続いたのだが……まあ、それは窺い知るに足ることだろう。
「新撰組三番隊隊長、斎藤一。参上仕った」
「……これは?」
「まあこれで良い。そもそももう飽きたわ」
「ぐぬぬぬぬぬ……、最初から
アサシンは恨めしげにアーチャーを見るがそんな視線にもアーチャーは愉しげに笑みを浮かべるのみ、それにアサシンは尚更恨めしげな視線に力を篭めるのだった。
その時ちょうど図ったかのようにマスターである綺礼との念話のパスが繋がった。まあ当然だろう、仮にも宝具をバンバンと使っていたのだ。気付かないはずがないし、何か言って来ない筈も無い。
『アサシン……お前』
『すみませんマスター、目の前にアーチャーがいるんですよぉ……』
『……そうか』
『マスタぁぁ……』
自らのマスターである綺礼はその一言だけでどうやら状況を察した様子だった。アサシンはどうせ無理だと思いながらもすがり付くように念話を繋ぐ。
しかし。
『まあそんな事はどうでもいい』
『どうでもいい!?』
『帰りにアップルパイを買ってこい。分かったな、アサシンよ』
『え!?あ、ちょまっ、マスター!?』
アサシンはその良くわからない命令に白黒しながらも叫ぶがその叫びを言い終える頃には既に念話は切れており、その叫びは心の叫びに留まるのだった。
そんな様子のアサシンを一人気にかけるのは呼び出した隊士である斎藤一のみ、一は戸惑い混じりに言う。
「……沖田よ。この状況は何なんだ……?」
「うぅ……一さん…、もう嫌です、この人たち……コフッ」
「沖田!?」
「ふむ、まあ悦い光景ではあったな。喜劇止まりだが」
「弄りがいがありますねアサシンは。フフフ……」
「あんた達……これ、聖杯戦争始まっているのよね……?」
「まだ監督役であるおじ……あの男は開戦を宣言してないみたいよ?つまりまだ聖杯戦争は始まっていないわ、凛。そもそも私達が聖杯戦争だって言うのに冬木にまだいる時点で気付くべきじゃない?」
フフフと笑いそう告げるカレンの顔には『してやったり』と書いてあり、凛は尚更苦虫を噛み潰したかのような表情をする。まあ、それもカレンからしてみれば面白いだけなのだが。
遠坂邸、そこに今俺はいます。
目の前には璃正が四つん這いになってブツブツと何かを暗い雰囲気で呟いていた。正直に言おう、怖い。
でも気持ちは分かるよ。こんなの大スキャンダルだからね。
全英霊が召喚された今、普通ならば聖杯戦争の開戦の狼煙を監督役である璃正が挙げなければならないのだが……。コイツは普通に孫に惚気けてド忘れしていたのだ。本当に大丈夫かよ璃正。
「綺礼よ……私は……私は」
「父上、過ぎたものは仕方がありません。今すぐにでも発表すれば……」
「しかしカレンや遠坂嬢を逃がさなくては……」
「この際いてもらいましょう。なに、アサシンの宝具で交代交代警護させれば問題ありません」
宝具はなくてもそれ一体一体はちゃんとした英霊ですし。ハサンズ何かとは比べ物にはならん。
「そう……だな……」
あーチクショウ、なんで腐れジジイの懺悔なんぞに付き合わなければならんのだ。いやね?確に冬木にいさせたら危ないけどこの聖杯戦争にそんな卑怯なことする奴なんぞいない事は分かってる。……衛宮切嗣がどうするかは分からないけど……まああの魔術師殺しさんだ。一般人に手を出すことは無いはず。
「それよりもです父よ。今夜アサシンの脱落偽装をする以上、今すぐにでも発表したほうが宜しいのでは?」
「……ハッ!そ、そうであった。すまん綺礼よ、私は教会に行ってくる」
俺はコケそうなぐらい慌てて走り去っていく璃正を見送りながら一人思考する。
原作を知っている以上バットエンドになどしたくはない。しかしその為には間桐桜を救い、蟲爺を殺し、青髭と龍之介も殺し、聖杯を浄化しなくてはならない。
蟲爺はもう俺にでもどうにかなるだろう。なにせ璃正の部屋で秘蔵の洗礼詠唱術式見つけたし?一発で昇天出来ちゃう蟲爺。
しかし今はまだ蟲爺には手を出せない。というか俺の立場的になぁ……、うん、やっぱ璃正殺すか?いやでもなぁ育ての親を殺すのは偲びねぇし……。
「とりあえずは、
原作既知者舐めんな、お前の居場所なんざ分かってんだよ下水道だろう?ウェイバー君感謝、君がアニメであんなにわかりやすく図解してくれたお陰さ。
ジル・ド・レェぐらい俺一人でいけっかな……?一応アサシンを連れてくか。となると夜だな、それも偽装後にしなければ。
「……難儀なものだ」
思わずため息をついてしまった俺は悪くないと思う。
というか、あの
冬木市、新都と橋を跨いで存在する深山(みやま)町の高台に俺は居る。隣にはアサシンと召喚した隊士、斎藤一が旗を持って立っている。この頃お前旗ばっか持ってるよな。
「やれ、アサシン」
「分かりました。一さん、行ってください」
「了解だ」
「あ、そうそう別に戦ったって構いませんからね?」
「元よりそのつもりだ。たとえ呼ばれた理由が道化の噛ませ犬だとしてもこの身は新撰組三番隊隊長、斎藤一なのだ。戦わない方がおかしいだろう?そう思わないか、沖田よ」
「あー……確かにそうでした」
ゲンナリと沖田は首肯する。なんか全体的に疲れているのはきっとここに来るまでの間、アーチャーとカレンに弄られまくったせいだろう。良いじゃんカレンに構ってもらったんだろ?喜べよ。
まあもちろんそんなこと言わない。綺礼らしく仏頂面で眼下に広がる深山町と川の先にある新都だけをじっと見つめている。ああ、確かあそこら辺に美味しいアップルパイを売るパン屋があったはず……ってあれ?
「……おいアサシン、アップルパイはどうした?」
「あっ、忘れてました」
「おい……」
「し、しょうがないじゃないですか!あの二人に絡まれてたんですよ!?しかもアーチャーに至っては『逃げたら殺す✩』とかもの凄い良い笑顔で言ってくるし!」
ああ、うん。まあ……そうだね。
「同情の視線が一番痛いですっ!?」
よし、アサシンの事はこの際、放って置こう。アップルパイも買ってこなかった事だし。
「斎藤一、だったか」
「なんだ?沖田のマスター?」
「行ってこい。コイツは収拾がつかんだろう」
「……そうだな。では―――斎藤一、参る」
「えっ、あっ、ちょ!?一さん!?」
おーおーはえーな。頑張れば追いつけそうだけど。……てあれ?
やべ。あいつダンダラ模様の浅葱色の羽織羽織ったまんまじゃん。
「アサシン、今すぐ奴に羽織りを脱げと伝えろ、不正をしたことがバレる」
冬木の聖杯戦争にどうみても東洋圏の英霊にしか見えない奴がいたらおかしいからな。西洋圏しか出ないはずなのに。まあそれかキリスト教に関わりのあるヤツとか。
「えっ、わ、わかりました」
アサシンは旗を持ったままそう返事し、念話にて一に呼びかけている様だった。俺も遠見の魔術を使って観戦するとするかね。
斬り合いにおいて必要な技術とは何か、それは『決して動きを止めない』ことである。
そして斬り合いに必要な動きとは何か、それは『斬る』『突く』の二つのみ。しかし実質的には『斬る』だけで事足りるのが普通だ。
なにせ『突く』場合相手の骨や筋などに引っ掛かり抜けなくなり動けなる場合があるからだ。
故に『突く』は下策、そんな動作を戦闘中にやるものなど皆無に等しい。
しかしここで疑問になるものがある。それは『それなら何故流派などが存在するのか?』だ。
その理由は簡単だ。ただ、自信をつけるだけ。もちろん達人の域に達すればその技も戦闘中使い物にはなるだろう。まあ、使い物になる程度だが。
それに新撰組の戦闘は多対少が普通であり、戦闘中に流派の剣技など使うもへったくれも無かったのもあるのだが。
「そもそも捕縛が普通だったしな……」
どちらかというと仲間同士の局中法度違反による粛清……まあつまりは内部抗争の方が多かったくらいだ。というか隊士の中にはそれでしか人を斬ったことが無いものだっていただろう。
「だがまあ……攘夷維新。解散あれど何はともあれ叶った事は救いだったというべきか、幕府倒れたがな。そんな事を考えていた奴の方が少なかった気もするが……」
基本的に世にあぶれた荒くれ者だ、浪士や農民などで構成されていた組織なんだから仕方がない。攘夷の心を持っているからこそ入った……というのも勿論いるだろうが純粋に戦いたいとかいうバトルジャンキーもいたはずだろう。地味に沖田にそのケがあるし。
普段は子供好きでいいやつなんだがなぁ……。
「あれが目標か」
目の前には赤い屋根の西洋風の豪邸、しかしその庭には結界が敷かれているのが見て取れる。
「ふむ、『突く』か……」
普通なら下策、しかし俺にとっては極めた剣技であり一番得意な剣である。
重要なのは標的を穿った瞬間に元の型に戻り刀を素早く引くこと。それさえ出来れば誰だって『突く』事を戦いの中で使うことが出来る。心臓や脳天を一発で穿てるのだ、これ程致死力があり有用な剣は無い。
まあ大体の人間は元通りに『引く』ことが出来ずに引っ掛かり動けず敵にバッサリやられて死ぬのだがな。よく戊辰戦争ではそんな死に方をしていたやつがいたものだ。
狙うは結界の起点であろう宝石、計七つのそれらの位置を記憶し、目を瞑る。
心眼、修行や鍛錬によって培われた洞察力は文字通り心の眼。
神秘も浅い斎藤一は普通なら見えないが、これによって結界を『感じ取る』。
故に、宝石を起点に回る探知の魔力結界の隙間も感じ取る事が可能である。
「―――ハッ!」
穿つ。結界が一つ壊れる。しかし、あと六つ。
斎藤一はそのまま地を蹴り立て続けに宝石を破壊していく。そして、真ん中にある宝石をも破壊し終えた。
「ふむ、呆気ないな」
夜には半分異界と化す京都の町に比べればこんなもの易すぎる。
しかし、これだけでは終わらない。続きが存在する事は分かっている。
斎藤一は改めて自らの愛刀に入れる力を強め、気を入れ直す。
そしてソレは現れた。
「主役の登場だ。ひれ伏せよ噛ませ犬」
「フン、ただの噛ませ犬だと思うなかれ。仮にも俺は新撰組三番隊隊長なのだからな」
「ハッ、ほざけ。しかしその死に様、
「そうだな。確かに戦えて嬉しいぞ、南蛮の王よ。――――では、斎藤一、いざ参る」
「面白い。その威勢、評価に値する。踊れよ、雑種」
三日月に歪められたアーチャーの笑顔と共に、王の財の扉は開かれた。
カルナ欲しくて20連、出たのはマルタのみとか腐っとるー。
え?なんでディルムッドを変えようなんか思ったかって?この20連で輝く顔が3枚も出たからだよ!カルナ寄越せ!