俺は愉悦   作:ガンタンク風丸

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息抜きに書いた。後悔はしていない。


プロローグ
俺は愉悦


 とある日、一人の少年が車の玉突き事故に巻き込まれて死んだ。

 その少年は自転車に乗っていたようだった。というのもその少年の血のついたボディのひしゃげた自転車の骸が近くに転がっていたからだ。

 そんな少年は玉突き事故を起こした数台の車に挟まれるような形で巻き込まれ、上半身と下半身を捩じり切られるようにその命を散らしたとか。

 惨いの一言しか出ないようなその死に様はそんな光景を見ていた神様の目に偶然にも止まった。そしてそんな偶然はさらに偶然を巻き起こすスイッチでもある。

 神様はその少年の魂を自らの御前へと招き入れた。最初はとても困惑していた少年だったが徐々に落ち着きを取り戻した。

 そんな少年に神様は言う。「転生してみないか?」と。

 少年は頷いた。そして二度とあんな風な怪我を負いたくないからか「強力な自己治癒力と強靭な身体が欲しい」と言った。

 神様はそれに頷く。そんなものお手の物だと言わんばかりに。しかしいざ転生させるとしても何処がいいのだろうか?神様は少年に問いかけるように言った。

 少年は「じゃあ……」と呟き、数秒考えてから言った。「fateの世界に行きたい」と。その言葉に神様は頷き、手を振った。

 その手の動きに呼応するかのように少年の目の前に重厚な扉が現れる。

 少年はその扉を開け一瞬躊躇するように足を引っ込めたが、意を決するように深呼吸すると、神妙な面立ちでその扉の中へと入っていった。

 少年の姿が消えると同時に扉も自動的に閉じて光の粒子となって消える。神様はそれを見留てからもう一度手を振る。するとまた何も無い宙に映像が浮かび上がった。それは今転生させた少年の姿だ。神様はそれを見て確かに成功したなと満足気に頷くと、その映像を手を振って消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  白い壁紙、白い天井白い床。全てが白ずくし。そんな場所は共通して一箇所しか俺は知らない。

 首を動かせないので目を動かさないと周りを見ることの出来ないこの身体で俺はそう思う。というのも今しがた神様が出した扉を潜って目が覚めた瞬間視界に映った景色がこれだったのだ。

 ……簡単に場を把握しよう。ここは病院で俺は乳児だ。

 ……分かっていても非現実的過ぎる……。いや、そもそも転生したという時点で非現実的か。

 憶えているのは車の玉突き事故に巻き込まれて上半身と下半身をグッバイさせて死んで神様に転生させてもらったところまでだ。うん、思い出しただけでも非現実感があり過ぎるな。

 だがそう悲観していてもなにも始まらないし。せっかく転生したのだ。その第二の生を楽しむべきだろう。そもそもこの世界が型月世界であるfate時空な事は分かっている。後は自分が何者であるか把握するのみだ。

 

「だぁ~」

 

 それにしてもやはり発声は出来ないな。赤ん坊だし当たり前か…………ってお?なんかナースさんが近づいて来たぞ。

 

「抱っこしますねー」

 

 そう言葉をかけられて抱き上げられる乳児である俺の身体。そしてそのまま抱かれたまま運ばれた先にきっとこの世界での俺の両親がいる筈、と思考し身を委ねた先にいたのはオールバックにした白髪の目立つ神父服を着た男性と女性だった。

 

「おお見なさい。私達の息子だ」

 

 ……ヤバイ、既視感(デジャヴ)がマッハだ。

 

「名前はもう決めているんですか?」

 

 ナースは俺を愛おしげに抱くオールバックの神父服の男に問いかけるように言う。男はそれに笑顔で頷いて言った。

 

「ええ、綺礼。それが息子の名前です」

 

 その時俺は既に半分察していたがその言葉を聞いて自分がfateの『言峰綺礼(マーボー)』に転生した事を認知した。

 ……にしても、俺……麻婆神父か……。

 ガチ?

 

 

 

 

 

 やあ俺の名は言峰綺礼、三歳だ。

 今俺は父、璃正と共に聖地巡礼の旅をしている。

 現在は太陽の沈まない国として有名なスペインのバルセロナにいた。今回赴くのは誰もが知っているであろうサグラダファミリア大聖堂だ。ガウディが設計した事でも有名なこの大聖堂は俺の父のお気に入りの一つでもあった。

 

「綺礼よ。見なさいあの美しいステンドグラスを、やはり此処は素晴らしい」

「そうですね父上。それよりも早く八極拳を教えてくれませんか?私にはあれの方が興味があるのですが」

「ふむ、では祈祷が終わってから教えようか」

「分かりました」

 

 言峰璃正。かなりいい父親してますよ。旅の途中も気遣ってくれるしなによりやはりだが八極拳が凄い。まあ原作と同じように俺も執行者楽しそうだからなるつもりだしそのうち殺人拳へと変わるんだろうけど。

 そもそも俺はこの転生で言峰綺礼の大まかな人生を歪める気は無かった、というか予測できないことが起こるのが面倒なのでその軌跡に沿う形となった、というのが正しいか。

 まあ今は聖地巡礼、そして璃正に八極拳を習い教徒に重んじる。これだ。

 俺と璃正は共に並んで膝を付き祈祷する。三年間やって思うがこの瞬間は結構落ち着くものがあるな。

 

「ふむ、そろそろ行くとするか、綺礼」

「了解です」

 

 よし、これでマジカル八極拳へ一歩繋がるぜ。目指せ元祖マジカル八極拳を超える超☆マジカル八極拳。

 目標はそうだな……北斗の拳?

 原作通りに、尚且それを上回る形で行こうじゃないか。

 

 

 

 

 ヤバイ、璃正パナイ。

 八極拳習ったは良いけどこれをマジカル八極拳にするのそこまで難しくはなさそうだ。だが俺が目指しているのは超☆マジカル八極拳。具体的には「アタァッ!」って叫んで小指一本で敵を爆散出来る様な奴。

 まだまだ頑張らなければ。璃正も言っていたが鍛錬は鍛錬するだけその目標に近づくと言う。つまり鍛錬あるのみ、いやぁどんどんマジカル八極拳に近付いていってるよ。

 本来なら代行者としての活動中に習得するんだけどな……マジカル八極拳。まあ殺人術とかはまだだが人体の構造を知る機会はいくらでもあるし、図書館とか、路地裏とか。

 

「父上、次は何処へいくのですか?」

「次はイタリアのミラノ大聖堂に行こうと思っている。その次は……まあ、おいおいとなるな」

「そうですか。分かりました」

 

 イタリアか……本場のピザが食えるな。是非とも璃正と一緒に行きたいな。あのオッサンいつもホテルでササミ肉のヘルシー料理食ってるもん。

 偶には良いだろうコッテリしたの食ったって。神も七日に一つ休息の日を設けている程だ。時たま楽をしても罰はあるまい。

 にしても早く八極拳の続き教えろや璃正。

 

 

 

 

 七歳になった。もう完璧に八極拳を習得した。多分璃正に勝てると思う……でも修行中組手を幾度もしたが本気の打ち合いはしなかったからなあ。今思えばかなり勿体ない事をしていたかもしれない。

 そんな璃正だが最近様子がおかしい。というのも何か言いだそうとしては黙り込み、また何か言いだそうとしては黙り込むを繰り返しているのだ。その癖俺が「どうしたのですか?」と聞くと「いや、何でもない」と白を切ってくるしオッサンお前なんか絶対あんだろ。

 イライラするが仕方がない。とりあえず自己鍛錬でもするか、くらえ木の幹よこれがマジカル八極拳だ!

 うおぉ、幹が打撃点から粉微塵に吹っ飛んだ。流石マジカル八極拳。だが超☆マジカル八極拳にはまだまだ遠いな。

 はぁ、型の練習でもするか……ん?オッサンが来た。なんだ?

 

「綺礼、お前に聞きたい事がある」

「何でしょうか父上」

「お前ももう七歳だ。筆記等の最低限の事は教えたつもりだがやはりそれだけでは足りんだろう。綺礼、お前学校へ行く気は無いか?」

「学校……ですか?」

 

 ああそう言えばそうだな。確かに今どきの俺のような年頃の子供だったら学校に通ってなくてはおかしいかもしれない。それにこの親ばか気味のオッサンの事だ。そういう所にも何か責任のようなものを感じているのだろう。

 だが学校に行くというのは必須だ。何せ本来の言峰綺礼行っていたし。だがそうするとなる飛び級で進学して主席合格を叩き出さなければならないという鬼畜縛りがある。

 ……どうする。俺。

 俺の理念は『事実をあまり捻じ曲げずに聖杯戦争まで行く』だ。

とするならばやはりこれは絶対に通らなければならない。主はいつも見守っていて下さるとか言うが、明確に道の示されている俺って神様に祝福されてんのかな?まあ別にどうでもいいが。

 だが一度そう思い至ると、なにかスッキリするものがあった。よし、決意は固まった。俺は学校行って必死こいて勉強して飛び級首席合格する。これで決まりだ。

 

「どうする?綺礼。私は別に行かなくても構わないが……」

「いえ、行きます。それは私にとって必要なことでしょうから」

「そうか……ならば行くがいい。既に手配はしてある」

「感謝します、父上」

 

 いやぁほんと感謝感激雨霰だね、全く。

 

「それで?私は何処にいくのですか?」

「私も縁のある『聖イグナチオ神学校』というところだ」

「『聖イグナチオ神学校』ですか」

「ああ、制服は既に用意してある。あと靴だな。そう言えば拠点として使う住居も必要であったか、今すぐに準備せねば。しかし綺礼の入学式を見れるわけか、これは是非とも写真に収めて置かなくてはならんな…。あと綺礼が楽しく学校生活を送れるよう根回しも………」

「父上……?」

「ん?なんだ綺礼?」

「いえ……何でもないです」

 

 なんだ!?なんかいきなりブツブツと言い出したぞ!?怖い!いい歳のオッサンがやってるから尚!

 そしてそう思いながらも顔に出さない俺は凄いと思う。

 

 

 

 

 その後一週間も経たないまま俺は璃正に連れられてスペインにある聖イグナチオ神学校に来ていた。全くもって行動力のあるオッサンだと思う。まあ一度決めた事や約束事は最後まで通す頑固ジジイだからなぁ璃正。これも個性か。

 

「大きいですね……」

 

 俺は西洋味溢れる門とその上方から垣間見えるカトリック教会を丸ごと改築したかのような建物を仰ぎ見ながら呟いた。

 

「そうだろう。歴史も深く校内には礼拝堂もあってな、とても素晴らしい学校だ」

「父上がそこまで絶賛するとは……期待が持てそうですね」

「その期待、正に叶うから今に噛みしめておくといい、綺礼よ」

 

 ホント、間違えてマジカル八極拳を使ってしまい器物破損とかしないように注意しないと。

 その後、途中編入なことから綺礼の入学式を見れないという事を知った璃正がむせび泣いた。

 

 

 




 ジャンヌが落ちないせいで限界突破ができない件。ステンノ様の運EXは何処へやら。

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