申し訳ないです。
桁違いの威圧感、心の底から沸き上がる恐怖感をなんとか抑えつけてパパス達は前に進む。
パパス達が異空間に入った瞬間、入口が閉じ逃げることができなくなる。
しかし、幾多の修羅場を潜り抜けてきた一行は動じることなく進み、ついにこの空間の、エビルマウンテンの、魔界全土の支配者大魔王ミルドラースの前にたどり着いた。
姿は老人であるが、身の丈は人の3~4倍ほどあり、腕はまるで龍の体のようであり、外側は緑色内側は龍の腹のようになっている。
白いマントで身を包み、じっと腕を組んで瞑想をしている。
「お前が大魔王ミルドラースか?」
パパスが覚悟を決めて問いかける。
ミルドラースはしばらく間をおいた後瞑想を解き、目を開く。
その時だった、今までの威圧感などたわいもない物と思われる程の圧倒的な底知れぬ恐怖感をもたらすオーラのようなものがパパス達に襲いかかった。
「よく来たな人間どもとマーサよ」
低くドスが効いたミルドラースの声。
ミルドラースはさらに続ける。
「勇者でもないのによくここまでたどり着いたものだ。その勇気に免じてマーサを置いてここからさるのなら今一時その命を助けてやろう」
見下したような冷酷な瞳でパパス達に視線を向ける。
「何を愚かなことを、我々はお前を倒すためにここまで来たのだ!覚悟しろ!」
パパスが皆の代弁をするように宣言する。
後ろに控えている皆もそれぞれの得物を構えて戦闘体勢をとる。
「今一時命を長らえてやろうという心意気を無にするか。愚かなる人間どもよ!来るがよい!死よりもおぞましい一時を与えてやろう」
ミルドラースはそうパパス達に告げると身に纏う白いマントをはためかせ、宙を滑るようにパパス達に襲いかかった。
そのスピードは老人の物とはとても思えない程のスピードで、パパス達も老人の姿に騙されないように構えてはいたが、かわすことができない。
先頭に立つパパスがなんとかメタルキングの剣で丸太のような腕から繰り出される鋭い爪の切り裂きを受け止めようとする。
しかし、その力は今までの味わったことがないほどのもので耐えきれずパパスは後方に弾き飛ばされる。
「次は俺だ!」
パパスが吹き飛ぶと同時にその影からバルバルーが大剣を降り下ろす。
「甘いな」
ミルドラースは難なく最小限の動きをもってかわす。
「そちらこそ」
かわされるのを予想していたかのように避けたミルドラースが動いた場所にレイシアが呪文を放つ。
「メラゾーマ」
巨大な火球がミルドラースを襲う。
火の粉を撒き散らしながら襲いかかるメラゾーマ、しかしその様を見てもミルドラースは余裕を崩さず、徐に右腕を振るうと、メラゾーマはいとも簡単に霧散した。
「まさか!」
あまりにも圧倒的な力に恐れを抱く皆だが、一人の女性が勇気づける。
「あんなのこけおどしよ。休まず攻撃を続けましょう」
マーサはそう皆に声をかけるとミルドラースの前におどりでる。
「グランドクロス」
マーサが指で十字を切ると、ミルドラースに十字の光が襲いかかる。
その光は神々しくもあり、皆を癒すような生半可な光ではなく、あらゆる邪悪な物を焼き尽くすような苛烈極まるものであった。
「グフッ!」
マーサのグランドクロスにより揺らめいたミルドラースに巨大なボウガンの矢が放たれる。
回りに突風のような衝撃波を撒き散らしながら飛ぶボウガンの矢はミルドラースの左腕に刺さる。
紫色の血液が散る。
「畳み掛けるぞ!」
ボウガンの矢を引き抜いているミルドラースに皆が一斉に攻め立てる。
「食らえ剣の舞!」
「受けろや五月雨切り!」
最初に飛びかかったのはパパスとバルバルーであった。
パパスは舞を踊るように切りつけ、バルバルーは豪雨のような斬撃を見舞う。
かわせないと判断したミルドラースは腕を交差して防御の体勢をとる。
『大防御』どんな攻撃をも10分の1以下にする最大の防御である。
パパスとバルバルーの攻撃は小さな傷にしかならない。
「では次は私が!魔神切り」
パピンが当たれば大きなダメージを与えられる魔神切りを放つ。
動きを止めているミルドラースには当たると判断したためである。
地を蹴り飛び上がったパピンは大きく剣を振りかぶり降り下ろす。
ミルドラースは交差した腕の間から視線をパピンに向ける。
『あやしい瞳』
パピンはミルドラースの視線を受けた瞬間強烈な睡魔に襲われ、そのまま攻撃を繰り出す前に落下した。
「危ない」
落下したパピンをすんでのところでプオーンがキャッチする。
「許さないぞ」
パピンをそっと横たえるとプオーンは灼熱の炎を吐き出した。
「迎え撃つか」
ミルドラースは大防御を解くと、口から絶対零度の冷たく耀く息を吐き出した。
全てを焼き尽くす炎と、全てを凍らす息、対極に位置する攻撃のぶつかり合い。
白い水蒸気が辺りを凄まじい勢いで覆い尽くす。
最初は拮抗しているように思われたが、次第にミルドラースの方が押し出す。
そしてついに灼熱の炎が冷たく耀く息に飲み込まれた。
「フバーハ」
プオーンとパピンが息に飲まれるすんでの所でレイシアの『フバーハ』が二人を覆い致命傷は免れた。
水蒸気で視界が遮られる中ミルドラースの一瞬の隙をパパスがつく。
地面を強烈な脚力で蹴りあげあたかも弾丸のようにミルドラースに突っ込む。
「ギガデイン」
マーサがパパスのメタルキングの剣にギガデインの雷を纏わせる。
「これで終わりだギガスラッシュ!!」
バリバリと音をたてながら放たれたパパスの研ぎ澄まされた一閃はミルドラースを袈裟懸けに切り裂いた。
「グハアッ」
大量の紫色の血液を撒き散らしがらミルドラースは地に足をつき、膝をついた。