それでも良ければお読みください。
不意討ちで落ちてきた青黒い雷。
マーサとの再会により沸き立っていたパパス達は誰も反応できなかった。
しかし、魔王の狡猾さを知っているマーサは別であった。
皆に身を屈めるように指示を飛ばすと、自らは立ったまま天に向けて手を掲げる。
どのような雷であろうと、高い所に落ちるのが道理。
青黒い雷はマーサに轟音を轟かせて襲い掛かった。
「マーサーー!!」
目も眩むような青黒い雷は目の前のマーサに容赦なく降り注ぐ。
パパスは開けることができない自分の目を恨みながらも悲痛な叫び声をあげる。
「どうしましたあなた?」
「へ?」
パパスの叫びに呼応するように返される返事。
パパスは何とか目を擦り擦り開けるとそこには無傷のマーサが何事もなかったかのように立っている。
パパスが口をポカンと開けて呆然としているとレイシアが苦笑いを浮かべながらやって来る。
「パパス様、マーサ様は呪文にはメタル系並の異常な耐性を持っているのでこういう結果になったのですよ」
「もうレイシア、『様』はつけなくていいわよ。それと私を魔物みたいに言わないでちょうだい。私もか弱い女性なのよ」
「はいはい、ですが今の雷はいったい?」
マーサの不満を軽やかにかわして、レイシアはマーサに尋ねる。
「たぶん魔王が放ったものでしょうね。雷だからデイン系かドルマ系。デイン系は勇者の家系しか使えないから、これは地獄の雷のドルマ系でしょうね。私達を皆殺しにしようとしたことを考えると、ドルモーアかドルマドンかしら。ただしあまり威力がなかったからドルモーアじゃないかしら」
「いえ、あれはドルマドンだと思いますよ。マーサでなければ消し飛んでいます…」
「そう?」
今あったことなのに笑顔で話すマーサを見てパパス達男性陣は女性の、マーサの凄さを思い知った。
話はそれまでとしてパパス達は先を急ぐことにする。
このままここにいると先程のようなことがあったり、手勢を差し向けられる恐れがあったからだ。
マーサがいた頂上の頂きから南に進むと再びエビルマウンテンの内部に繋がる洞穴があり、降りていく。
今までであれば、闇の中を進んでいく恐怖感があったのだが、マーサが加わっただけなのに周りが明るくなったような気がするのも不思議な感じがした。
後に語られたことだがこの時マーサは人知れず『レミーラ』を唱えていたらしい。
注)レミーラとは、ドラクエⅠのみに登場した不遇な呪文。洞窟などを照らすためだけの照明呪文。
パパスが先頭にたち降りていくと、少し先から赤い光が見えてきた。
そしてさらに進むと熱気がパパス達を迎えるように包み込む。
「このまま進むのも危険ね。フバーハ」
マーサが呪文を唱えると、パパス達を蝕もうとした熱気がたちどころに消え失せる。
「ありがとうマーサ」
「ありがとうございますマーサ様」
皆が口々に礼を言う後ろで
「私の立場が……」
と項垂れるレイシアがいたのは言うまでもない。
熱さをものともしなくなったパパス達を迎えたのは、ここが火山の火口であることをまざまざと思い知らせる溶岩の川であった。
「さすがにこれではどうするレイシア」
「少し下がってくれますか」
パパスがレイシアに尋ねると、レイシアが皆に下がるように指示をだす。
皆が下がったのを確認すると
「マヒャデドス!!」
と呪文を唱える。
辺りが冷気に包まれ、溶岩に絶対零度の冷気が襲いかかる。
しばらく熱気と冷気の押し合いがあり、周りを水蒸気が埋め尽くすことにはなったが、溶岩が凍りつくことはなかった。
「魔界の特別な溶岩のようですね。これでは進めませんね。少し戻ってこの溶岩をどうにかするアイテムを探したほうがいいと思います。さすがに魔物もこの溶岩を渡ることはできないと思いますのでそういうアイテムがあると考えられます」
「そうだなそうするか」
レイシアの意見に皆が頷いた時である。
今まで額に手を当てて考えていたマーサがなにかを探し始めた。
「どうしましたマーサ?」
「これを使ってレイシア」
マーサが取り出したのは美しい彫刻がなされ、神聖な感じがする水差しであった。
「マーサこれはどうしたのだ?」
レイシアに渡された水差しを見てパパスがマーサに尋ねる。
「以前人間にしてあげたヘルバトラーさんがお礼にとくれたものでなんでも『聖なる水差し』というそうです」
(あのジャハンナの長老か)
マーサの話を聞いた皆の頭の中には人の良さそうな笑顔を浮かべたジャハンナの長老が思い出されていた。
「おおっ!これは!!」
マーサに渡された『聖なる水差し』の水を煮えたぎる溶岩にかけるとたちどころに溶岩は冷え、固まり黒い道が出来上がった。
「では行きましょうか」
笑顔でマーサが先に進んでいく。
パパス達はそれについていくしかなかった。
しばらく歩くと数引きの魔物と遭遇する。
「マーサ下がれ魔物だ」
「待ってあなた」
剣を抜き戦闘態勢に入ろうとするパパスをマーサが制する。
マーサは一歩一歩魔物に近づいていく。
「マーサ危険だっ!」
「大丈夫よあなた」
パパスの制止を制して魔物の前に立つ。
すると
「マーササマコンナトコロデドウカナサレタノデスカ?」
片言の言葉で魔物が敬語を使ってマーサに話しかける。
「少し魔王にあって説教してくるのよ」
「ガンバッテクダサイ。ワレワレハマーササマヲオウエンシテイマス」
「ありがとう。でもそんなことを声高に言うと魔王派の魔王にひどい目にあわされるわよ」
「ソンナノカンケイアリマセン。ワレワレハイツマデモマーササマノミカタデス」
そのような会話が交わされた後に、魔物はマーサに敬礼をして去っていった。
その光景にはさすがのレイシアも絶句するしかなかった。
「さあ行くわよ」
「はいっ、マーサ様」
皆はマーサに返事をすることしかできなかった。
そして、メンバーの中でもマーサの地位がトップになっていたのは言うまでもない。
マーサのキャラがゲームであまり出ていなかったとはいえやり過ぎた感じもしますが、このままこんな感じのマーサで終わりまで通します。