「次に行く防具屋も期待できるな」
「楽しみです!」
ジャハンナの武器屋を出たパパスたちは防具屋に向かっていた。
武器屋の品揃えの素晴らしさから、防具屋への期待もうなぎ登りである。
まして、王でありながら武人であるパパスとかなりムッツリではあるがねっからの武人であるパピンは期待が表情に顕著に表れていた。
サンチョに至っては身の丈ほどある巨大なボーガンを片手に、もう片手にリュカを抱いて両方に頬擦りしている状態である。
しかし、そんなメンバーのなかでも1人だけ顔色が優れない者もいた。
「どうしたレイシア、顔色が悪いが?」
元気がないレイシアを心配しパパスが声を掛ける。
「いえ、大丈夫です。ただ何か嫌な予感がして…」
気丈に返すがやはり元気がない。
「『虫の知らせ』というやつか何事もなければよいが…」
この予感が的中する防具屋に少しずつ、着実に近づいていた。
「へい、らっしゃい!!」
パパスが防具屋に入ると威勢のよい声が店内に響き渡る。
その店の店主であるが、声もでかければ、体もデカイ。
普段なら圧倒されてもしかたがないが、今回は防具への期待が大きいのですぐにきりだす。
「防具をみたいのだが」
「うちは魔界一ですよ!こちらになります」
待っていましたとばかりに笑顔で店主はパパスたちをつれていく、
「こ、これは!!」
「逸品揃いです…」
パパスとパピンの驚きの声が店内に響く。
「だろ。まああんたが着ているメタルキングの鎧にゃあ敵わねえがどれも自慢の逸品だ。ゆっくり見ていってくれ」
パパスたちの驚きを満足そうに見届けると店主はカウンターにどっかりと腰をおろした。
そこからは全てがパパス達にとって初めて見るものばかりなので満足するまで手にとったり、装備できるかを確かめたりしながら、パパスたちにとっては至福の時を過ごした。
「欲しいものを持ってきてくれ」
パパスが皆に呼び掛けると、皆がそれぞれ気に入ったものを手にして戻ってきた。
「少し数が多いですが…」
「俺はこれくらいしかねえな」
「僕もあまり装備できるものがなかったよ…」
パピン、バルバルー、プオーンがそれぞれ戻ってきた。
サンチョ、レイシアも戻ってきたのでそのままカウンターに向かった。
「ん、これは?」
カウンター先ででかでかと『店主のオススメの逸品あります!!!』
とでかでかと目立つ所に掲げられている看板がある。
「ほう、これほどの品揃えの中で店主が進めるとは興味があるな、店主見せてもらえるか」
パパスは店主に持ってきてくれと頼もうとした時だった
「パパス様、もう時間も遅くなりました。そろそろ精算して帰りましょう。」
毅然とした態度で反論するレイシア。なにやら鬼気迫る顔である。
「なにを言っていー」
「へい、だんなこれが家の最高の逸品だ!!」
満面の笑顔で店主は現れた。
その手に握られていたものは………。
「……こ、これは!?」
「………」
声が漏れたパピン、そして黙り込むその他一同。
「天使のレオタードだ!!その昔天使が着ていたという物をモデルに作られた逸品で、その呪文耐性、防御力どれも文句ない逸品だ。さあこれしかない逸品だ。魔王と戦うならこれしかない!!」
店主は鼻息を荒くして捲し立てる。
「素晴らしい、魔王との戦いにこれほど適したものはありませんよ!!」
パピンがとてつもない勢いで賛同する。
「……。レイシアよ一度着てー」
「拒否します。これを着て町を歩いたり、魔王と戦うなんでどんな痴女ですか!!」
顔を真っ赤に染めて断固として反対する。
「うーん、ここまで反対されたらな」
考え込むパパスに店主とパピンがタッグを組んで崩しにかかる。
「命がかかってるんだ、恥じなんか捨てるべきだぞ。歴代の魔王と戦った勇者たちも装備していたんだ」
「これは防御だけでなく、我々の戦いで荒んだ心も和らげます。ぜひぜひ」
二人はこんこんとパパスとレイシアに時始める。パピンに至ってはパパスの耳元でなにかを呟いていることさえある。
説得が続くこと一時間。
パピンの説得か、洗脳が効いたのかパパスがレイシアに必殺の一言を叩きこむ
「頼むレイシア。マーサを救うためだ!!」
「!!、マーサ様のため……」
今まで頑なに拒んでいたレイシアがぐらつく。
「今ですパパス様!!」
「いけーっだんなー!!」
呆れているバルバルー、プオーン、サンチョをよそに、パピンと店主が声援をとばす。
「頼むレイシア、マーサの―」
その時だった。
パパスの胸元が激しく赤く光出した。
「あ·な·た、愉しそうですね」
魔王すら後退りするのではないかという圧倒的な威圧感を持った声が店内に響き渡る。
以前は女神のようで優しさに溢れた声であったが、今は邪神をも彷彿とさせる声だ。
「ま、ま、マーサ!!」
それからのパパスの行動は迅速であった。
赤く禍々しい光を放つ石を取り出すと、自分の前に置き、地に頭をつけ謝罪を始めた。
土下座である。
「いつもそのようにレイシアに対応していたんですね。帰ったらお·は·な·ししましょうね。それにパピンさんについては奥さんに話させて貰いますから」
『……』
二人はただの屍と化した。
「あ、でもレオタードを着て顔を赤らめるレイシアも見てみたいかも」
マーサの意外な声もありレイシアは逃げ場を失った。
「もういいですよ!」
自暴自棄になったレイシアは店主から天使のレオタードを引ったくると試着室に入って行った。
しばらくすると、真っ白で純白で羽飾りが着いたレオタードを着たレイシアが現れた。
背中部分は大きく開き、胸元はかなりささやかに、どこがとは言えないがかなり際どく鋭角になった部分もある。
健康的な褐色の肌も純白のレオタードによって映えている。
真っ赤になったレイシアは皆の視線に耐えられなくなり走り去った。
「可愛いレイシアが見れたのでよしとしましょう。今回だけは許しますが次回はないと思ってくださいねあ·な·た」
『ははあ』
パパスとパピンは石が明かりを失うまで土下座を続けた。
レイシアは天使のレオタードを着てその上に賢者のローブを着るようになったという。
装備に関しては次回冒頭でまとめさせてもらいます。